ベスト16
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十二月の第三週、チャンピオンズリーグのリーグフェーズ最終節が終わった。
ヴィラはリーグフェーズを六勝二敗で終えた。ニコラスは六節で五点取った。
ベスト16の組み合わせが発表された。
レアル・マドリードだった。
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ゾーイからメッセージが来た。
「CL組み合わせ確認しました。レアル・マドリードです。ベルナベウからの第一戦です」
「わかった」
「正直な感想は」
「やれる」
「根拠は」
ニコラスは少し間を置いた。
「リーグフェーズで六試合、五点取った。CLのピッチでも体は動く。それで十分だ」
ゾーイからすぐ来た。「それで十分です」
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ベスト16確定の夜、エメリーが練習後に一言だけ言った。
「おめでとう。でもここからだ」
誰も浮かれていなかった。六勝したが、二敗もした。その二敗がどちらもリバプール戦だったことを、全員が知っていた。
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その夜、ニコラスはCLリーグフェーズの六試合を頭の中で振り返った。
最初の試合はアウェイだった。相手のプレス速度がルガーノの比ではなかった。受けてから考えていたら潰された。体が先に動くことの意味が、CLでは別の強度を持っていた。
でも六試合で五点取った。
ベルナベウ。スペイン。
マルティネスとトーレスのスペイン語が、ロッカールームでいつも響いていた。あの音の質感が、ベルナベウでは七万人の規模で来る。
ニコラスは天井を見た。
父のことを考えた。
チェスターフィールドの台所で独り言を言っていた男。スペイン語かどうかも、当時はわからなかった。でも今はわかる。あの声の音の質感が、スペイン語だった。
ベルナベウに行けば、その音が来る。
怖いとは思わなかった。ただ、行く前からもうすでに、何かが待っている気がした。
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翌日の練習で、エメリーがレアルの映像を見せた。
ベリンガム、ヴィニシウス、ムバッペ。
ニコラスは映像を見ながら、自分がゴールを取るための動きを探した。あの守備をどう崩すか。あのGKをどう抜くか。
エメリーが言った。「レアルはどんな相手でも対応できる。崩すより、一瞬の隙を突け。その一瞬のために九十分動き続けろ」
ニコラスはそれを聞いた。
一瞬の隙。体が先に感じる、あの感覚。それがCLの舞台でも出るかどうかを、ニコラスは試したかった。
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