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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ1年目

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35/110

ファイター


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十一月、CLリバプール戦から数日後のリーグ戦。


その試合、エメリーはワトキンスをベンチに置いた。


CLで連戦が続いていた。ワトキンスに休息を与えるための判断だった。ニコラスが一トップで先発した。


ロッカールームを出るとき、ワトキンスの顔を見た。


目が違った。静かなときの目ではなかった。燃えていた。でも火の出し方を探しているような、蓋をされた燃え方だった。


何も言わなかった。ニコラスも何も言わなかった。


-----


前半は〇対〇で終わった。


ニコラスは決定機を一度作ったが、シュートがGKの正面に飛んだ。相手の守備が整っていた。一トップでは孤立する場面が多かった。


ハーフタイム、ロッカールームに戻ると、ワトキンスがエメリーのところへ行った。


「出してくれ」とワトキンスは言った。声が低かった。


「後半から使う」とエメリーは答えた。


「前半から出るべきだった」


ロッカールームが少し静かになった。


エメリーは動じなかった。「そうかもしれない。でも俺が決める」


ワトキンスは何も言わなかった。でも体が動いていた。隅のほうへ行って、壁に手をついた。深呼吸を一回した。それだけだった。


ニコラスはそれを見ていた。


怒っていた。でも崩れなかった。壁に手をついて、一回深呼吸して、もう次の準備をしていた。あの感情の出し方は、弱さではない。それだけ試合に出たいという燃料が、33歳のまだこんなに太かった。


-----


後半が始まった。


ワトキンスが入った。ニコラスと交代だった。


最初の十分、ワトキンスは誰よりも走った。前からプレスをかけた。裏への抜け出しを繰り返した。


六十七分、ティーレマンスからボールが来た。ワトキンスが受けた。DFが一枚来た。


止まらずに蹴った。


入った。


一対〇。


スタジアムが揺れた。


ワトキンスは拳を握った。声を出した。チームメイトが飛んできた。


ニコラスのところへも来た。


肩を叩いた。言葉はなかった。でも叩き方が、いつもの短い頷きとは違った。何かを込めた叩き方だった。


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試合は一対〇で終わった。


ロッカールームで、エメリーが言った。「後半の入り、良かった。ワトキンス、前半のことは聞こえていた。その気持ちは正しい。それがあるから、お前はここにいる」


ワトキンスは頷いた。もう顔が戻っていた。静かな目だった。


着替えながら、ニコラスは今日のハーフタイムを思い返した。


壁に手をついて、深呼吸を一回した。


怒ることと、そこから動くことを、あの選手は知っている。34年間かけて学んだことだ。


ニコラスには怒りがない。ベンチに置かれても、使われなくても、感情が動かない。それが強みでもあった。でもワトキンスの燃え方の中に、自分にはないものがあった。


何かを言語化できなかった。


でもその夜、いつより早く眠れた。


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