チャンピオンズリーグ――リバプール
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十一月の第一週、チャンピオンズリーグのリーグフェーズ第三節。
ヴィラパークに、リバプールが来た。
CLとプレミアは別の大会だった。当然のことだが、ピッチに立つと、その違いが体に入ってきた。
試合前のセレモニー。アンセムが流れた。
ニコラスはそれを聞きながら、ピッチの中央に立っていた。
コンヤでUEFAヨーロッパリーグに出たことがある。でもチャンピオンズリーグは違った。音楽の重さが違った。スタジアムの空気の種類が違った。七万人が、同じものを待っていた。
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ニコラスはアップ中にAKIを探した。
すぐ見つかった。いつもの長髪。小さい体。でも動き方に迷いがなかった。CLのピッチを、自分の庭のように走っていた。
そうだ、とニコラスは思った。
AKIはCLに慣れている。リバプールは毎年ここにいる。自分たちヴィラには、この舞台は新しい。でもあの選手には、プレミアと同じように当たり前の場所だ。
目が合った。
AKIが笑って手を上げた。
ニコラスは小さく頷いた。
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試合が始まった。
リバプールが違った。プレミアで対戦したときとも、また違った。
CLに入ると、スイッチが変わるチームがある。リバプールはそのチームだった。プレスの速度が上がった。パスの精度が上がった。選手たちの目が、別の光を持っていた。
AKIは左サイドで動き続けた。プレミアのときより、さらに自由に見えた。制約がなかった。CLのピッチで、体が解放されているような動き方だった。
十四分、AKIがドリブルで仕掛けた。キャッシュが出た。AKIは止まらなかった。縦に抜いた。クロスを上げた。ファーサイドで合わせられた。
〇対一。
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二十二分、ニコラスがボールを受けた。
ペナルティエリアの中。DFが一枚来た。
止まらなかった。
DFの内側に体を入れた。ボールを引き込んだ。右足を振った。
GKの右下を抜いた。
一対一。
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三十一分、またAKIが仕掛けた。
今度は中に切り込んだ。コンサが対応した。AKIは切り返して、外に流して、低いクロスを入れた。中央で合わせられた。
一対二。
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ハーフタイム。ロッカールームでエメリーが言った。
「落ち着け。あのチームはCLで変わる。それは知っていた。でも一点差だ。後半、取り返せる」
ニコラスは頷いた。
一点差。後半、また点を取る。それだけを考えた。
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後半が始まった。
五十三分、ロジャーズからパスが来た。
ペナルティエリアの外、左寄りだった。
止まらずに蹴った。
右足のインサイドで巻いた。ボールが曲がりながら落ちた。GKが動いた。
右上の隅に入った。
二対二。
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でも六十一分、取られた。
リバプールのカウンターだった。AKIが起点になった。前線へ一本、速いパスが出た。走り込んだ選手がマルティネスと一対一になった。
決められた。
二対三。
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七十五分、ニコラスがまたボールを受けた。
ペナルティエリアの右端。DFが二枚来た。
挟まれた。
でも一枚が重心を傾けた瞬間が見えた。
逆を突いた。
スペースが生まれた。
左足で蹴った。
入った。
三対三。
ヴィラパークが揺れた。
ハットトリック。CLのピッチで、ハットトリック。
でもニコラスの頭の中は、すでに次を考えていた。三対三だ。試合はまだある。
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八十三分。
リバプールがまた仕掛けた。
AKIがボールを持った。右サイドに流れた。今度はキャッシュが距離を保って対応した。
AKIは止まった。
止まって、中を見た。
パスを出した。
中央の選手が受けた。ワンタッチでシュートした。
マルティネスが弾いた。
こぼれ球が来た。
押し込まれた。
三対四。
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残り七分、ヴィラは攻め続けた。
ニコラスが走った。ボールを受けた。シュートした。
枠の外れた。
もう一度来た。ヘッドで合わせた。
GKが止めた。
試合が終わった。
三対四。
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ロッカールームは静かだった。
ハットトリックを取った選手のいるロッカールームが、これほど静かなのは不思議な光景だった。でも誰も何も言わなかった。
ニコラスは着替えながら、試合を頭の中でなぞった。
三点取った。
でも四点取られた。
ハットトリックは個人の記録だ。でも試合はチームのものだ。三点取っても、四点取られれば負ける。
リバプールはCLで生きている、と思った。あのチームはこの舞台を知っている。AKIも、チームメイトも、CLのピッチで別のスイッチが入っていた。
自分たちはまだ、その舞台に慣れていない。
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通路でAKIと鉢合わせた。
AKIは笑っていた。でもいつもの軽い笑顔とは少し違った。試合の後の、充実した顔だった。
「ハットトリック、すごかった」とAKIが言った。「本当に。でも——」
「負けた」とニコラスは言った。
「そう」AKIは少し真面目な顔になった。「CLはそういう大会だよ。プレミアとまた違う」
「わかった」
「でも今日のゴール、全部違うコースだったの気づいてた?」
ニコラスは少し間を置いた。
「気づいていなかった」
「一点目は右下、二点目は右上、三点目は左。全部コースを変えてた。意識してた?」
「していない」
AKIはそれを聞いて、また笑った。
「やっぱり。体が変えてたんだ。すごいな」
ニコラスはAKIを見た。
「CLはどう違う」
「え?」
「プレミアとCLで、何が違う」
AKIは少し考えた。
「……相手が全員、CLを知ってる。プレミアは毎年新しいチームが来るけど、CLに来るチームは大体いつもここにいる。だから試合の進め方を知ってる。焦らない。どこかで必ずチャンスが来るって信じて動いてる」
ニコラスはその言葉を聞いた。
焦らない。チャンスが来ると信じている。
「来年はもっとやる」とニコラスは言った。
「俺も」AKIは笑った。「でも今日は俺たちが勝った。おやすみなさい」
先に歩いていった。
ニコラスはその背中を少し見た。
あの選手はCLを知っている。今日の自分たちには、まだないものを持っている。
来年。この舞台でもっとやる。
それだけを、静かに思った。
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