9番と9番
-----
九月の終わり、マンチェスター・シティがヴィラパークに来た。
シティは開幕から好調だった。ハーランドがすでに八ゴールを取っていた。プレミアで最も点を取り続けている男が、今日のピッチに立つ。
ニコラスはアップ中にその背番号9を見た。
大きかった。ニコラスより背が高く、肩幅が広く、ピッチの上に立つだけで空間を占有していた。でも動き方がゆっくりだった。そのゆっくりさは、怠慢ではなかった。次の爆発のために、最小限のエネルギーしか使わない動き方だった。
ニコラスはそれを少し見た。
プレミアで最も警戒されているFWが、どうやってポジションを取るかを、観察として見た。
-----
## ハーランド視点
アーリング・ハーランドはアップ中、チームメイトと何か話して笑っていた。
試合前でも、ハーランドの表情は明るかった。緊張もなく、過度な集中もなく、ただ今日も楽しみだという顔をしていた。それがハーランドのやり方だった。ピッチに入れば体が自然に切り替わる。それまでは普通にしていればいい。
笑いながら、視界の端でヴィラの9番を確認した。
ニコラス・ロメロ。映像は見ていた。プレミア1年目にしては落ち着きすぎている、という印象だった。実物を見ると、さらにそれが強かった。
でかい。動き方が静かだ。
チームメイトが「今日のロメロ、でかいな」と言った。
「俺の方がでかい」とハーランドは笑った。
「ほぼ同じだろ」
「俺の方がでかい」
笑いながら、ハーランドは視線をロメロに戻した。
あの静かな動き方には覚えがあった。ゴール前で爆発するために、それ以外では力を使わない。それは理論で身につけるものではなく、体がそう知っているものだ。
同じ種類だ、とハーランドは思った。
でも今はまだ、自分の方が上だ。
-----
試合が始まった。
シティのポゼッションが高かった。ボールを動かして、ヴィラを走らせた。ハーランドは前線で静かに構えていた。ボールが来るとき、体が動いた。来ないとき、ほとんど止まっていた。
十九分、ハーランドがボールを受けた。
背中を向けてトラップした。
マルティネスが出てきた。
一対一。
ハーランドはGKを見た。立ち位置が見えた。どこに蹴れば入るか、体が知っていた。
右足を振った。
左下に決まった。
一対〇。
-----
## ニコラス視点
ゴールを見た。
一対一になったとき、ハーランドの体が選んだコースが見えた気がした。あそこだ、と思ったのと、ボールが飛んだのが、ほぼ同時だった。
正確には——あそこに来ると、体が知っていた。
マルティネスもそれを知っていたはずだ。でも止められなかった。それほど精度が高かった。
あの1対1の判断は、考えていなかった。
ニコラスにはわかった。自分がゴール前で動くときと、同じだ。体が先に答えを出している。
-----
ヴィラは追いつこうとした。
三十四分、ペナルティエリアの中でボールを受けた。DFが一枚来た。右足で蹴った。GKが止めた。跳ね返りが来た。押し込んだ。
一対一。
-----
同点になったとき、ハーランドが少しだけこちらを見た。
評価でも敵意でもなかった。
何かがあった。言葉にならない何かが。
すぐ視線を切った。
試合はまだ続いている。
-----
## ハーランド視点
同点にされた。
ロメロのゴールを、ハーランドは自陣から見ていた。
跳ね返りに反応した速度が速かった。シュートが弾かれる前に、どこに跳ね返るかを体が知っていた。
あれは計算ではない。
プレミア1年目で、それができる。
ハーランド自身が1年目だったとき、プレミアで同じことができたかどうかを、少し考えた。できたと思う。でも、あれほど静かにはできなかった。もっと力任せだった。
あの9番は静かだ。体は大きいのに、動きに無駄な力がない。
来季も当たる。そのときにどうなっているかを、少し楽しみだと思った。
-----
後半、ハーランドがもう一点取った。六十三分、コーナーキックからヘッドで決めた。
二対一。
ニコラスが取り返そうとした。七十七分にシュートを打った。GKが弾いた。八十三分にヘッドで合わせた。枠の上を越えた。
試合は二対一でシティが勝った。
-----
試合後、通路でハーランドとすれ違った。
ハーランドは既にユニフォームから着替えていて、チームメイトと何か話して笑っていた。試合が終わった瞬間にスイッチが戻る、という感じだった。
ニコラスが通りかかったとき、ハーランドが気づいた。
「よかったぞ」とハーランドは英語で言った。笑顔だった。試合中とは全く別の顔だった。「あの跳ね返りのゴール、俺だったら同じことをした」
ニコラスは少し間を置いた。
「お前の一点目、見えていた」
「止められなかったろ」
「止められない。でも見えた」
ハーランドはその言葉を聞いた。笑顔のまま、でも目の中が少し変わった。
「どこに来るかわかってたのか」
「体がわかっていた」
ハーランドは少し考えた。それから笑った。でも最初の軽い笑い方とは少し違った。
「俺もそうだ」
それから「お前、プレミア1年目だろ。何年目かと思った」と付け加えた。「落ち着きすぎてる」
「そうか」
「褒めてる」ハーランドは肩をすくめた。「また会おう」
「次は取り返す」
ハーランドは笑った。今度は声が出た。
「それでいい。その方が面白い」
先に歩いていった。チームメイトにまた声をかけて、廊下が少し明るくなるような笑い声が遠ざかっていった。
ニコラスはその背中を見た。
あの笑顔の下に、さっきまでピッチで見ていた別の顔がある。ゴール前で静かに構えて、体が先に答えを出す、あの顔が。
同じ種類の感覚を持ちながら、全く違う人間だ。
-----
## ハーランド視点
バスに乗りながら、ハーランドはロメロとのやりとりを少し思い返した。
「体がわかっていた」——あの9番はそう言った。
笑いながら話していたが、その一言は本気だった。ハーランドも同じだった。GKの立ち位置が見えると、どこに蹴れば入るかを体が知っている。それは技術ではなく、感覚だった。説明できない。でも毎試合、そこにある。
プレミアにそういう選手はほとんどいない。
今日、一人見つけた。
十九歳。1年目。まだ荒削りな部分がある。でもその感覚は、磨けば磨くほど鋭くなる種類のものだ。
チームメイトが隣で何か言った。ハーランドは笑って返した。
窓の外を見た。
来季が、少し楽しみになった。
-----
ロッカールームに戻って、ニコラスは一人で着替えた。
負けた。二対一だった。
ハーランドに二点取られた。
でもニコラスの中には、損失よりも別のものが残っていた。
あのゴール前の動き方。静かで、大きくて、体が先に知っている。自分と同じ種類の感覚を、別の体で実現している。
「俺もそうだ」とハーランドは言った。
ニコラスはそれを、確認として受け取った。
自分の感覚は、間違っていない。
プレミアで最も点を取り続けている男が、同じ感覚でやっている。
ならば、次は取り返す。
あと二点多く取る。
それだけを、静かに思った。
-----




