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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ1年目

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27/110

スペイン語


-----


練習の翌日、パウ・トーレスがまた話しかけてきた。


「昨日、スペイン語を教えてやると言ったが」


「言った」


「断られたけどな」


「また今度と言った」


「今日がその今度だ」トーレスは笑った。背が高くて、笑うと少し子供みたいな顔になった。

「ロメロって名前、スペイン系か?」


ニコラスは少し間を置いた。


「父がスペイン人だった。もういない」


短く答えた。それ以上言うつもりはなかった。


トーレスは笑うのをやめた。でも暗くもならなかった。ただ、そうか、という顔をした。


「バレンシア出身か?」


「知らない」


「知らない?」


「聞いたことがない」


トーレスはしばらく何かを考えるような顔をした。それから「そうか」とだけ言った。


それ以上聞かなかった。


その代わりに、翌日から変わった。


-----


すれ違うとき、トーレスがスペイン語で声をかけてくるようになった。


「Hola.」


「Buenas.」


「Bien jugado.」


意味はわからなかった。でも挨拶だということはわかった。最後のやつは練習でゴールを決めた後だったから、おそらく褒めている。


ニコラスは毎回「ありがとう」と英語で返した。


トーレスはそれで満足しているようだった。正確な返答を求めていない。ただそこに言葉を置いている、という感じだった。


ニコラスにはその感覚が理解できなかった。でも不快でもなかった。


-----


木曜日の練習中、マルティネスがミスをした。


シュート練習で、ニコラスのシュートがファーポストに当たってゴールインした。マルティネスはポジションを少し外していた。GKとしてあってはならないミスだった。


マルティネスが独り言を言った。


スペイン語だった。


意味はわからなかった。でも声のトーンが、低くて短くて、自分に向けた言葉だということだけはわかった。怒りではなかった。もっと内側に向いた、責めるような声だった。


ニコラスはそれを聞いた瞬間、手が止まった。


父が台所で独り言を言っていた。


夜、酔っていないとき。皿を洗っているのかもしれない音がして、それからつぶやく声がした。英語ではなかった。ニコラスは七歳か八歳で、意味などわかるはずもなかった。でもその声のトーンを——低くて、短くて、自分の内側に向けた声を——


覚えていた。


「ニコラス、次」とコーチが呼んだ。


ニコラスは手を動かした。助走して蹴った。


何を考えていたのか、もうわからなかった。


-----


その日の午後の練習で、ニコラスはゴールを決めた。


ティーレマンスからのパスをフリックして、ロジャーズが落とした。ニコラスはペナルティエリアの中でそれを受けて、GKの逆を突いた。


練習用のゴールネットが揺れた。


チームメイトが軽く拍手した。ロジャーズが「ナイス」と言った。


ニコラスは走りながら減速して、ゴールの横で少し立った。


目が熱かった。


なぜかがわからなかった。試合ではない。練習のゴールだった。チームメイトは次の動きに移っていた。


ニコラスは目を伏せた。


まばたきをした。


それだけで、熱さは消えた。


誰にも気づかれなかった。


何が起きたのかは、自分でもわからなかった。マルティネスの声を聞いてから、何かが体の中で動いていた。それがゴールの瞬間に出てきたのか。でもそれが何かを、言葉にする方法をニコラスは知らなかった。


知ろうとも、しなかった。


-----


その夜、ニコラスはスマートフォンで何かを調べた。


スペイン語。基本。


いくつかの単語が出てきた。


「Hola」——こんにちは。


「Buenas」——こんにちは、こんばんは。


「Bien jugado」——よくやった。


ニコラスはそれを読んだ。


トーレスが毎日言っていた言葉だった。わかっていたことではあった。でも文字で見ると、少し違う重さだった。


「Bien jugado」。


父がそれを言ったことはなかった。


言える人間ではなかった。あの家でそういう言葉は、空気に乗らなかった。


ニコラスはスマートフォンを置いた。


天井を見た。


別に何も思わなかった。ただ少し、時間が経った。


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翌日の練習前、トーレスがいつものように「Hola」と言った。


ニコラスは少し間を置いた。


「……Hola」と返した。


トーレスは一瞬だけ驚いた顔をした。それからゆっくり笑った。


「なんだ、やるじゃないか」


「昨日調べた」


「正直だな」


「嘘をつく理由がない」


トーレスはまた笑った。「お前は面白い奴だな」


ニコラスは答えなかった。


面白い、という意味がよくわからなかった。でも悪い意味ではないのだろうと思って、それ以上考えなかった。


-----


練習が終わった後、マルティネスが横に来た。


「スペイン語、覚え始めたと聞いた」


「トーレスが言ったのか」


「あいつはすぐ話す」マルティネスは肩をすくめた。「父親がスペイン人だったんだって?」


「そうだ」


「話せないのか」


「教わっていない」


マルティネスは少し間を置いた。


「教わっていない、か」


それ以上は言わなかった。ニコラスも言わなかった。


マルティネスはしばらく前を見て、それから「まあ、ここにいればそのうち覚える」とだけ言った。


「トーレスがうるさいからな」と付け加えて、先に歩いていった。


ニコラスはその背中を少し見た。


大きなGKだ、とまた思った。


ゴールの前に立つ人間の体だ、と。


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