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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ1年目

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26/110

11番


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九月に入った。


ヴィラの練習で、エメリーがある日2トップを試した。


「ロメロとワトキンスを並べてみる」と言った。「感触だけ見たい」


最初の十本で、エメリーは見切った。


二人が同じスペースへ吸い込まれた。ニコラスが中心に入ろうとすると、ワトキンスがそこにいた。ワトキンスが引いてポストをしようとすると、ニコラスも下がってきた。動きが重なった。


エメリーが笛を吹いた。


「やめる」と言った。「今は時期じゃない」


それだけだった。


二人は同じ一つのポジションを、交互に担う関係に戻った。


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ワトキンスは先発することもあった。ニコラスが先発して途中でワトキンスに交代することもあった。逆もあった。


エメリーは試合ごとに使い分けた。相手の守備が深いときはワトキンスの運動量を選んだ。スペースがある試合はニコラスの得点力を選んだ。どちらが上でも下でもなかった。ただ、試合ごとの判断だった。


ワトキンスはそれについて何も言わなかった。でも先発を外れた日の目は、ニコラスが知っている目だった。燃えている、蓋をされた目。


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九月の中旬、練習後のロッカールームでワトキンスがスマートフォンを見て笑っていた。


珍しかった。


「子供か」とニコラスは言った。


自分でも意外だった。先に声をかけるつもりはなかった。口から出た。


ワトキンスは顔を上げた。少し驚いた顔をした。それから画面を向けた。


二人の子供が走り回っている動画だった。まだ言葉になっていない声で笑いながら転んでいた。


「上が三歳、下が一歳」とワトキンスは言った。


ニコラスはそれを見た。


「いいな」と言った。


自分でも意外な言葉だった。でも本当にそう思った。


ワトキンスは少し考えてから、「お前の父親は?」と聞いた。


「もういない」


ワトキンスは何も言わなかった。動画を閉じなかった。もう一度画面を見て、「そうか」とだけ言った。


それ以上追わなかった。


ニコラスはその「追わなかった」という事実を、どこかに置いた。


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翌朝、ニコラスが練習前にグラウンドへ出ると、ワトキンスがいた。


一人でシュートを打ち続けていた。


前日の練習でワトキンスは決定機を一度外していた。ワトキンスは今日、その場面と同じ角度から、同じ距離から、何度も蹴り続けていた。


ニコラスは黙って反対側に立った。自分のシュート練習を始めた。


二人は何も言わなかった。ただそれぞれのボールを蹴り続けた。


朝のグラウンドに、ボールの音だけがした。


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練習後、ワトキンスが言った。


「父親はGKだったそうだな」


「動き方でわかるのか」


「GKがどこに立つかを、最初から知っている動き方だ。教わったのか」


「教わったわけじゃない」


「だから面白い」とワトキンスは言った。「教わらずに持っている」


少し間があった。


「俺は代表でも何年もやった。でも今、お前が来た。同じポジションを争っている」


ニコラスは何も言わなかった。


「それでも俺はここにいる。出番が来たときに、ちゃんとやるために。それだけだ」


怒りでも諦めでもない口調だった。ただ事実として言った。


ニコラスはその言葉を聞いた。答えが見つからなかった。でもどこかに留まった。


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代表の招集リストが発表されたのは翌週だった。


ニコラスはイングランド代表に選ばれた。ワトキンスの名前もあった。FWの枠は限られていた。スタメンは一枠だ。


クラブでも争う。代表でも争う。


その夜、ワトキンスから短いメッセージが来た。


「代表、お互いがんばろう」


ニコラスは少し間を置いてから返した。


「そうしよう」


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