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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ1年目

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24/111

バーミンガム


-----


バーミンガムは、グレーだった。


空の色が、チェスターフィールドに似ていた。それだけで、少し落ち着いた。


空港からクラブハウスへの車の中、ニコラスは窓の外を見ていた。街が大きかった。道が太かった。信号が多かった。ルガーノの石畳とも、コンヤの乾いた道とも、まったく違う風景だった。でもチェスターフィールドの灰色の空を知っている体には、どこか慣れた重さがあった。


これが、プレミアリーグの街だ。


-----


ヴィラパークに着いたのは午後だった。


ゾーイと一緒にクラブのスタッフに迎えられて、施設の中を案内された。ピッチを見た。スタンドを見た。ロッカールームに通された。


チームメイトはいなかった。シーズン前の静かな時間だった。


ロッカールームの壁に番号が並んでいた。ニコラスは自分の番号を探した。


9。


そこだけを見た。


-----


エメリーと初めて向かい合ったのは、翌日だった。


小柄な男だった。髪が白く混じっていた。目が静かだった。


「よく来た」とエメリーは言った。スペイン語訛りの英語だった。


「ありがとうございます」とニコラスは言った。


エメリーはしばらくニコラスを見た。値踏みではなかった。ただ見ていた。


「お前のことはデータで見た。映像で見た。でも今日、実際に見て、わかった」


「何がわかりましたか」


「最後のピースだ」


ニコラスは何も言わなかった。エメリーが続けた。


「このチームに足りなかったのは、ペナルティエリアの中で確信を持って動ける選手だ。お前はその選手だ」


「やってみます」


「やってみる、ではない」エメリーは静かに言った。「もうわかっている。だからここにいる」


ニコラスはその言葉を聞いた。


ファリネッリも最初に似たことを言った。「あなたをエースとして迎えたい」と。


違う言い方だった。でも同じ重さだった。


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初めてチームメイトと練習したのは、その翌日だった。


ロッカールームに入ると、スペイン語が聞こえた。


マルティネスとパウ・トーレスが話していた。笑いながら話していた。言葉はわからなかった。でも声が、空間に広がる音の質感が——


何かに、引っかかった。


ニコラスは着替えながら、その声を聞いた。意味はなかった。ただ音として耳に入った。


父がいつか独り言を言っていたことがある。台所で、酔っていないときに。何かをつぶやいていた。英語ではなかった。何語かは当時わからなかった。でも声のトーンが——


思い出せない。


思い出せないことに、今初めて気がついた。


ニコラスはシューズを結んだ。


隣のロッカーに人が来た。


11番のユニフォームが掛かっていた。男はニコラスをちらりと見た。目が静かだった。怒りでも歓迎でもなかった。ただ、何かを見定めているような目だった。


「ロメロか」


「そうです」


「ワトキンス」と男は短く言った。「よろしく」


握手をした。短かった。それだけで引き揚げた。


ニコラスはその背中を見た。


11番。9番のロッカーの隣に、11番がある。このチームで最も長くゴールを取り続けてきた選手が、自分の隣にいる。


それ以上は考えなかった。でも何かが、体のどこかに留まった。


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練習が始まった。


ティーレマンスからパスが来た。


速かった。


想定より速かった。ニコラスはトラップした。ボールが来る角度、重さ、スピード、すべてが今まで受けたパスと少し違った。チミニャーニのパスは正確だった。でもこれは正確というより、鋭かった。パスが到達した瞬間にはもう次の動作を要求してくる。受け手の体がついてくることを、最初から信じているような球だった。


トラップしてすぐシュートした。


枠に入った。


ティーレマンスが短く手を叩いた。


ニコラスはもう一度同じ動きをした。また枠に入った。


「速い」とティーレマンスが英語で言った。「トラップじゃなくてもう蹴ってる」


「パスが速いから」


「褒め言葉として受け取っておく」


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マルティネスとの初対面は、練習の後半だった。


シュート練習。ゴールマウスに大きな体が構えた。


アルゼンチン人だということは知っていた。代表のGKだということも知っていた。顔は見たことがあった。でも目の前に立つと、想像よりも圧があった。


縦に長い体だった。腕が長かった。ゴールを、生き物のように守る気配があった。


ニコラスは助走した。


左足でシュートした。


止められた。


マルティネスが右手一本で弾いた。


「やるじゃないか」とマルティネスは言った。スペイン語訛りの英語だった。「でも甘い。コースが読めた」


「もう一本」


「どうぞ」


今度は右足で蹴った。コースを変えた。


入った。


マルティネスは指先で触れた。でも弾ききれなかった。


「それが正解だ」とマルティネスは言った。


ニコラスはゴールを見た。


大きなGKが、ゴールの前に立っている。


父もGKだった。


その事実を、ニコラスは今この瞬間だけ思った。それ以上考えなかった。


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夜、ホテルの部屋でニコラスは天井を見た。


新しい街。新しいチーム。新しいロッカールーム。


ルガーノを去る飛行機の中で、これから始まると思った。


始まっている。


グレースに電話しようか、と思った。


やめた。もう少し、自分の中で整理したかった。


ヴィラパークは七万人入るスタジアムだった。ルガーノは一万人だった。コンヤは三万人だった。


数の問題ではないとわかっていた。でも七万人というのは、まだ体感していない数字だった。


どんな音がするのか。


ニコラスはそれだけを考えながら、目を閉じた。


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