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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
ルガーノ

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22/110

限界



-----


三月に入って、最初にそれに気づいたのはドスサントスだった。


練習後、ニコラスがいつもより早くグラウンドを離れようとしたとき、ドスサントスが声をかけた。


「大丈夫か」


「大丈夫だ」


「足、重そうだったぞ」


「そうか」


「そうだ」ドスサントスは少し間を置いた。「お前が走りで負けるのを、今日初めて見た」


ニコラスは少し止まった。自分ではわかっていた。今日の練習、いつもより体が重かった。スプリントのタイミングが、コンマ数秒遅れていた。


「疲れているかもしれない」と言った。


「かもしれない、じゃないだろ」ドスサントスは言った。「何節連続でスタメンだ」


「数えていない」


「俺が数えている。リーグ、カップ戦、UEFA、全部合わせたら先月だけで九試合だ。代表も入れたら十一試合。しかも全部スタメン」


ニコラスは黙っていた。


「普通の選手なら壊れてる」ドスサントスは言った。「お前だから持ってるだけで、限界が近い」


-----


ファリネッリに呼ばれたのは、その二日後だった。


「最近の試合のデータを見せたい」と監督は言って、タブレットをニコラスの前に置いた。


スプリント距離、最高速度、走行距離。一月と二月のデータが並んでいた。


一月より二月の方が、全ての数字が落ちていた。


「見てわかるか」


「わかります」


「ゴール数は落ちていない。でも体のデータは落ちている」ファリネッリは言った。「数字が維持されているのは、お前の技術と経験のおかげだ。でも体は正直だ」


ニコラスはデータを見ていた。


「休ませるべきでした」と言った。


「私も判断を間違えた」ファリネッリは静かに言った。「お前を使い続けた。チームが勝てるから、使い続けた。でもそれはお前への負担を無視した判断だった。申し訳なかった」


ニコラスは少し驚いた。監督が謝った。


「監督のせいではない。俺が出たかった」


「でも俺が止めるべきだった」ファリネッリは言った。「お前はまだ十九歳だ。プロキャリアは長い。一シーズンで体を壊してはいけない」


しばらく沈黙があった。


「三月は週に一試合を基準にローテーションを組む」とファリネッリは言った。「カップ戦とUEFAは、場合によってはスタメンを外す」


ニコラスは頷こうとして、少し止まった。


「UEFAは外れたくない」


「なぜ」


「あの舞台でゴールを取りたい。まだ足りない」


ファリネッリはニコラスを見た。しばらく黙っていた。


「わかった。UEFAはスタメンで使う。その代わりカップ戦はローテーションに入ってもらう。それで交渉しよう」


ニコラスは頷いた。


「ありがとうございます」


-----


三月の第一週、リーグ戦でゴールが止まった。


二節続けてノーゴールだった。


アシストは一つあった。決定機も二つあった。でも決まらなかった。GKに止められた。ポストに当たった。体のキレが、いつもより一歩遅かった。


ドスサントスが試合後に来た。


「ノーゴールだったな」


「そうだ」


「珍しいな」


「珍しくない。ゴールが入らない試合はある」


「いや」ドスサントスは言った。「お前に限っては珍しい。今日の決定機、いつもなら両方入れてた」


ニコラスは何も言わなかった。わかっていた。


「無理するな」とドスサントスは言った。「俺たちのために体を壊すな」


「壊れない」


「今はな」ドスサントスは言った。「でも今のペースで走り続けたら、いつか折れる。お前のことが心配だ」


ニコラスはドスサントスを見た。


「俺が休んだら、チームが困る」


「俺たちのことは心配するな」ドスサントスは言った。はっきりとした声だった。「お前のプレミアへの道を、俺たちのために諦めてもらいたくない」


-----


チミニャーニが来たのは、その夜だった。


練習施設に残っていたニコラスのところに、チミニャーニが一人で来た。


「少し話がしたい」と言った。


珍しいことだった。チミニャーニが個人的に話しかけてくることは、ほとんどなかった。


二人でベンチに座った。


チミニャーニはしばらく黙っていた。


「お前は来夏プレミアに行く」と言った。質問ではなかった。


「そのつもりだ」


「それは正しい」チミニャーニは言った。「お前に必要なのは、選手層の厚いクラブだ」


ニコラスは少し間を置いた。


「どういう意味だ」


「ここではお前に頼りすぎている。お前がいないと攻撃が機能しない。だから疲れていても使い続けた。それはお前にとって正しくない」チミニャーニは静かに言った。「プレミアのビッグクラブには、お前と同じくらいの選手が複数いる。試合によってローテーションされる。休める。そうでなければ、お前の本当の力が出せない」


ニコラスはチミニャーニの顔を見た。


いつも冷静で、無駄なことを言わない男だった。今日もそうだった。感情的ではなく、ただ事実を言っていた。


「ルガーノが嫌なわけじゃない」とチミニャーニは続けた。「お前と一緒にやれて、俺は楽しかった。でもお前の成長のために、ここは小さすぎる」


ニコラスはしばらく黙っていた。


「お前がそれを言うか」


「俺だから言える」チミニャーニは言った。「俺はここで満足している。でもお前は違う。お前の目はまだ先を見ている」


-----


ビスリミが来たのは翌日だった。


今度は食堂だった。ビスリミが隣に座って、しばらく黙って食事をしていた。


やがて口を開いた。


「お前、今月疲れてるな」


「そうだ」


「無理するな」


「みんなそれを言う」


「みんな同じことを思ってるからだ」ビスリミは静かに言った。「俺はお前のためにスペースを作り続けた。それが楽しかった。でも」


ビスリミは少し間を置いた。


「お前には、俺より上手い選手がスペースを作るべきだ。プレミアには、そういう選手がいる」


ニコラスはビスリミを見た。


ビスリミはいつも静かだった。でも今日は、その静けさの中に何か別のものがあった。


「俺はここでお前と一緒にやれてよかった」とビスリミは言った。「でもお前が次に行くことも、嬉しい」


ニコラスは何も言えなかった。


しばらく食堂に沈黙があった。


「ありがとう」とニコラスは言った。


ビスリミは小さく頷いた。それだけだった。


-----


三月の中旬、ゾーイに電話した。


「最近のパフォーマンス、見ていますか」


「見ています」とゾーイは言った。「疲労ですね」


「そうだ。スタミナが課題だとわかった」


「スタミナというより、過密日程の管理の問題です」ゾーイは言った。「十九歳で一シーズンにリーグ、UEFA、カップ戦、代表を全部フルでこなすのは、フィジカル的に正しくない」


「でもゴールを取りたかった」


「わかっています。でも来夏のプレミア移籍に向けて、体を守ることも同じくらい大事です」


ニコラスは少し間を置いた。


「チームメイトたちが、プレミアに行くべきだと言った」


「どういう意味で」


「選手層が厚いクラブに行けば、ローテーションされる。休める。本当の力が出せる、と」


ゾーイはしばらく黙っていた。


「チミニャーニが言いましたか」


「チミニャーニとビスリミとドスサントス」


また沈黙があった。


「……いいチームですね」とゾーイは静かに言った。


「そうだ」


「三人とも正しいです」ゾーイは言った。「プレミアのビッグクラブには、同じレベルの選手が複数いる。あなたはそこでローテーションされながら、長いシーズンを戦える。そうでなければ、あなたの本当のポテンシャルは引き出せない」


ニコラスは窓の外を見た。


三月のルガーノだった。湖の向こうに春の気配があった。


「スタミナも鍛える」とニコラスは言った。


「それは大事です」ゾーイは言った。「でもそれと同時に、休むことを覚えてください。休むことも、トレーニングの一部です」


「休むのが苦手だ」


「知っています」ゾーイは少し笑った。「あなたが台所に立てるようになったのは、休み方を少し覚えたからです。コンヤのとき、私がそう言いましたよね」


ニコラスは少し間を置いた。


あの夜を思い出した。カップ戦で負けた夜。一人でグラウンドに残っていた夜。ゾーイが「台所に立つだけでいい」と言った。


「覚えている」


「では今夜も、台所に立ってください」


ニコラスはしばらく黙っていた。


「スープを作る」


「よかった」


電話が切れた。


ニコラスは台所に立った。


玉ねぎを切った。鍋に入れた。火をつけた。


コンヤであの夜覚えたことが、今夜もここで繰り返された。


疲れたら、台所に立つ。


それだけでいい。


-----


三月の終わり、ニコラスはローテーションに入った。


カップ戦の一試合をベンチスタートにした。六十分から出場して、一点を取った。


フル出場よりも体が軽かった。


スプリントのタイミングが、コンマ数秒だけ戻っていた。


ドスサントスが試合後に言った。


「戻ってきたな」


「少しだけ」


「それで十分だ」ドスサントスは笑った。「お前が少し戻るだけで、チームが変わる」


ニコラスは何も言わなかった。


でも、チームメイトたちがあの夜に言ってくれた言葉を、まだ胸の中に持っていた。


お前には、俺より上手い選手がスペースを作るべきだ。


選手層の厚いクラブへ行け。


お前が次に行くことも、嬉しい。


プレミアへの道は、ルガーノの仲間たちが背中を押してくれていた。

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