パブロとの会話
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二月の終わりだった。
練習が終わった後、パブロがグラウンドに残っていた。
ドリブルの練習をしていた。コーンを並べて、右足と左足を交互に使っていた。ひとりで黙々とやっていた。生意気な口をきくでも、誰かに話しかけるでもなく、ただボールを蹴り続けていた。
ニコラスはシュート練習を終えてロッカールームへ向かおうとした。グラウンドの端でパブロが蹴っているのが見えた。
立ち止まった。
先週の紅白戦でパブロへ「左」と言った。パブロが動いた。ゴールが生まれた。その後、ロジャーズが「あいつお前の声を待っていた」と言っていた。
マルティネスが言っていた。「どこへ動けばいいかを探している」。
ニコラスはグラウンドに戻った。
「コーンの間隔が広い」とニコラスは言った。
パブロが顔を上げた。「え」
「DFとの間隔はそんなに広くない。もっと狭くしてやれ」
パブロはコーンを見た。それからニコラスを見た。少し考えた後、コーンを並べ直した。
「こうですか」
「もう少し」
パブロがさらに動かした。
「そこだ」
パブロが再び蹴り始めた。間隔が狭くなったことで、動きが細かくなった。ボールの置き場所を考えながら動いていた。
ニコラスはその隣でシュートを打ち始めた。帰るつもりだったが、もう少しいることにした。
しばらく二人とも黙っていた。
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「なんで俺に声かけるんですか」とパブロが言った。
「何の話だ」
「コーチングです。他の選手にもやってますけど、俺にだけ違う感じがする」
ニコラスは少し間を置いた。「どう違う」
「他の選手には短く言うだけですよね。『裏』とか『開いて』とか。でも俺には、試合中に声がほとんど来ない」
ニコラスはパブロを見た。「他の選手は既に動き方を知っている」
「俺が知らないから来ないんですか」
「お前に何を言えばいいかがまだわかっていない」
パブロは少し黙った。「正直ですね」
「嘘をつく理由がない」
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数分後、パブロが言った。「俺、最初に来たとき、あなたのことナメてました」
「知っている」
「今も——」パブロは少し止まった。「今は違いますけど」
ニコラスは何も言わなかった。
「反転シュートのやつ、ずっと考えてました」パブロは言った。「俺がパスした後、ニコラスさんがDF二人背負ったまま反転した。俺はてっきりポストしてくれると思ってたんですよ。ワンツーで俺が決めるつもりで」
「知っている」
「でも反転して、自分で決めた」パブロは言った。「なんであの状況で反転できるんですか。あれはGKを見てるんですか」
「見ていない」
「じゃあどうやって」
「ゴールがどこにあるかはわかる。いつでも」
パブロはその言葉を聞いた。しばらく蹴るのをやめていた。
「いつでも、って」
「どんな体勢でも、どんな角度でも」ニコラスは言った。「ゴールだけはわかる。初めてボールを蹴ったときからそうだった」
パブロは何も言わなかった。
「だから反転できる」とニコラスは言った。「GKを見る必要がない。コースが良ければ、速ければ、入る」
沈黙があった。
パブロがスペイン語で何かを小さく言った。ニコラスには聞き取れなかった。
「何と言った」
パブロが少し照れたような顔をした。「怪物だって言いました」
ニコラスは何も返さなかった。
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「俺もいつかそういう感覚が持てますかね」とパブロが言った。
「わからない」とニコラスは言った。「それはたぶん持つか持たないかじゃなくて、自分が何を持っているかの話だ」
「どういう意味ですか」
「俺はゴールの感覚を持っている。お前は別の何かを持っているかもしれない」
「別の何か」パブロは繰り返した。「それが何かはわかりますか」
「まだわからない」とニコラスは言った。「でも先週の紅白戦、声が来た後の動きは速かった。声が来ると信じて待っていたから速く動けた。それは俺にはない動き方だ」
パブロはその言葉を聞いた。
「俺に声をかけてくれるのはそのためですか」と言った。
「そうだ」とニコラスは言った。「声が来ると思って待っている選手は、声が来た瞬間に速く動ける。お前がそうなれるなら、それがお前の武器になる」
パブロは少し黙った。
「俺がです か。俺のために声出してたんですか」
「チームのためだ」とニコラスは言った。「でもお前が動けるようになると、チームが動く」
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パブロがまたコーンの練習を始めた。今度は少し動き方が変わっていた。体の向きを意識しているようだった。
ニコラスはシュートを打ちながらそれを横目で見ていた。
「ニコラスさん」とパブロが言った。
「何だ」
「俺、世界一になりたいんですよ」
「知っている」
「メッシも越えたいと思ってる」
「それも知っている」
パブロは少し笑った。「チームの誰も真剣に聞いてくれないんですよね、その話。デュランさんには笑われるし、ロジャーズさんには『まあ頑張れ』みたいな感じで」
「俺もそう思う」とニコラスは言った。
パブロが止まった。「え」
「世界一になれるかどうかはわからない。でもなりたいと思っていることは本物だろう」
パブロはしばらくニコラスを見ていた。
「それ、初めて言ってくれた人、あなたが最初です」とパブロは言った。
「他の選手も本物だと思っていると思う」とニコラスは言った。「ただ言わないだけだ」
「なんで言わないんですか」
「言葉にするタイミングがある」とニコラスは言った。「それが今日だった」
パブロはまた何かスペイン語で言った。今度は少し声が大きかった。笑っているような声だった。
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しばらく後、パブロが帰り支度を始めた。
「ニコラスさん」
「何だ」
「来月の試合、俺をもっと使ってくれってエメリー監督に言えませんか」
ニコラスは少し間を置いた。「監督に言うのはお前だ」
「でも——」
「やるべきことをやれ。それが一番の言葉だ」
パブロは少し口を閉じた。それから頷いた。
「わかりました」
グラウンドを出ていった。
ニコラスはもう数本シュートを打った。
三ヶ月前、パブロが「俺の方が上手い」と言ってきたとき、何も返せなかった。今日は言葉が出た。短かったが、出た。
それだけで十分だと、ニコラスは思った。
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