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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ3年目

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104/113

アリスター――チェルシー戦


---


十一月の週末だった。


ヴィラの試合のない日だった。


ニコラスはアパートのソファに座っていた。テレビをつけた。プレミアリーグの中継が始まった。


マンチェスター・ユナイテッド対チェルシー。


オールド・トラッフォードだった。スタジアムが赤く染まっていた。


---


スタメン発表が出た。


ユナイテッドは四三三だった。アリスターがトップ下に入っていた。マイヌーがアンカー、アマドが右ウイングだった。


チェルシーはパーマーがトップ下、カイセドがアンカー、ガルナチョが左ウイングだった。


両チームとも技術のある選手が並んでいた。


ニコラスは画面を見た。


---


## アリスター視点


オールド・トラッフォードのピッチに出ると、サポーターの歌声が降ってきた。


チェルシー戦だった。毎年、この試合は特別な重さがあった。


アップをしながら、アリスターはピッチの感触を確かめた。芝が少し湿っていた。ボールの転がり方が速くなる。頭に入れた。


チェルシーのスタメンを確認した。パーマー、カイセド、ガルナチョ。技術と強度を持った選手が並んでいた。


ロッカールームでブルーノがアリスターに声をかけた。「頼むぞ」


ブルーノは今季からベンチが増えていた。三十六歳だった。それでも練習の質は落ちていなかった。むしろ経験が言葉になって出てくる年齢になっていた。


「任せてください」とアリスターは言った。


ブルーノは笑った。「そういう顔をしてるときのお前は信用できる」


---


試合が始まった。


チェルシーのプレスが速かった。カイセドが中盤を支配しようとしてきた。前半の入りは押し込まれた。


アリスターはボールを受けるたびに、プレスを一枚剥がす動きをした。受ける前に体の向きを作った。来る前に次の場所を決めた。


ペドリから学んだことだった。「ボールを持ってから考えるな。持つ前に答えを出せ」。


マイヌーがアリスターを見ていた。アリスターが右へ流れると、マイヌーが中を締めた。アリスターが中へ入ると、マイヌーが右のスペースを使った。練習で積み上げてきた形だった。


前半二十分、アリスターがハーフスペースでボールを受けた。チェルシーのDFが一枚出てきた。アリスターはワンタッチでアマドへ出した。アマドがペナルティエリアへ侵入した。クロスを上げた。FWが飛び込んだ。惜しかった。GKが弾いた。


前半三十五分、またアリスターがボールを持った。今度はコルウィルが早めに出てきた。アリスターはその動きを読んでいた。コルウィルが出た瞬間に背後へスルーパスを通した。アマドが抜け出した。GKと一対一になった。シュートはGKに当たった。


決まらなかった。でもオールド・トラッフォードが沸いた。


前半は〇対〇で終わった。


---


## ニコラス視点


ハーフタイム、ニコラスはテレビを見続けていた。


アリスターのプレーを目で追っていた。


パスが速かった。ワンタッチで出す場面が多かった。でも雑ではなかった。一つ一つのパスに方向と強さと意図があった。受け手が次の動作に移りやすい場所へ、受け手が動きやすいタイミングで出していた。


チェルシーの守備がアリスターを意識し始めているのがわかった。前半の後半から、カイセドがアリスターへのコースを切るポジションを取り始めていた。


パスの出し手を消そうとしていた。


ニコラスはその動きを見ながら、後半がどうなるかを考えていた。


---


## アリスター視点


後半、チェルシーの守備が変わった。


カイセドがアリスターの近くにいる時間が増えた。アリスターがボールを持つと、すぐ寄せてきた。パーマーも前からプレスをかけてきた。


アリスターへのパスコースを消しにきていた。


でもアリスターはそれを感じながら、逆に落ち着いた。


相手がこちらを気にすれば、どこかが空く。


マイヌーへの縦パスのコースが増えた。アリスターはマイヌーをうまく使った。マイヌーが持ち上がって、アリスターが前へ出る。そのリズムが生まれ始めた。


後半二十分、アリスターがペナルティエリア内のFWへスルーパスを通した。GKと一対一になった。シュートはGKに弾かれた。


後半二十五分、今度はアリスターがアマドへ斜めのパスを通した。アマドがシュートを打った。DFに当たってコーナーになった。


チェルシーの守備がさらに締まった。


ペナルティエリアの中でボールを受けようとするFWに対して、DFが枚数をかけてきた。アリスターのパス先を全部消しにかかっていた。


後半三十三分、アリスターがボールを持った。


マイヌーから受けた。チェルシーのDFが中を固めていた。FWへのパスコースが全部消えていた。カイセドが寄せてくる。


アリスターはそのまま打った。


ペナルティエリアの外だった。左足だった。


ボールが伸びた。GKが反応しようとした。間に合わなかった。


ゴール左上に突き刺さった。


一対〇。


オールド・トラッフォードが揺れた。


---


## ニコラス視点


テレビの前でニコラスは身を乗り出していた。


見ていた。後半、チェルシーがアリスターのパス先を消しにきた。ペナルティエリアの中が固められた。その分、外にスペースができた。


アリスターはそれを使った。


パスを警戒した相手が、逆にシュートコースを作った。


ニコラスはその場面を頭の中で繰り返した。


アリスターのプレーの核心は、相手を動かすことだった。パスで動かして、空いたスペースを使う。今日のロングシュートも、その延長だった。パスを消しにきた相手が、自分たちでスペースを作った。


---


その後、チェルシーは前に出てきた。


ガルナチョが左サイドで仕掛けてきた。パーマーが中央で受けて、ミドルシュートを打った。ヨロがブロックした。


攻め込まれる場面が続いた。


でもアリスターが落ち着いてボールを回した。焦らなかった。チームを落ち着かせた。


後半四十二分、アリスターがマイヌーへ落とした。マイヌーが前へ出た。相手のDFが食いついた。その瞬間、アリスターが走ってマイヌーから受けた。スルーパスをアマドへ通した。アマドが持ち込んでシュートを打った。二対〇。


試合はそのまま終わった。


---


試合後、ヒーローインタビューが始まった。


アリスターがマイクの前に立った。汗をかいていた。でも表情は落ち着いていた。


「今日のゴールについて」とインタビュアーが言った。


「チームが動いてくれたからです」アリスターは言った。「相手が中を固めてきた。その分、外が空いた。あそこで打つのは自然な判断でした」


「司令塔として今季の手応えは」


「まだ途中です」アリスターは言った。「でも昨季より、チームと繋がれている感覚があります」


「チェスターフィールド出身のプレミアリーガーとして、地元のファンへ一言」


アリスターは少し笑った。「チェスターフィールドから、どこへでも行けます。そういう場所です」


ニコラスはその言葉を聞いた。


テレビを見ながら、アリスターにメッセージを送った。


```

見ていた。

チームの動かし方が良かった。

相手が中を固めたのに、外を使った。

```


しばらくして返信が来た。


```

ありがとう!!

見てたのか

そういうとこ褒めるんだな笑

ロングシュートじゃなくて

```


```

ロングシュートはその結果だ。

```


```

確かに笑

代表合宿で会おう

そのとき話したいことある

```


```

何を

```


```

それは会ってから

ていうかヴィラも勝ち続けてるじゃないか

今季やばいな

```


```

まだだ。

```


```

またそれ笑

まあ今季も楽しみにしてるよ

```


ニコラスはスマートフォンを置いた。


テレビはすでに次の試合の中継に切り替わっていた。


アリスターが代表合宿で話したいことがある、と言っていた。何かはわからなかった。


今日のアリスターのプレーが頭に残っていた。


相手を動かして、空いたスペースを使う。パスで動かして、最後にシュートで終わらせる。


言葉にしようとしたが、まだうまくまとまらなかった。


次に会ったとき、話せるかもしれない、とニコラスは思った。


---

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