アリスター――チェルシー戦
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十一月の週末だった。
ヴィラの試合のない日だった。
ニコラスはアパートのソファに座っていた。テレビをつけた。プレミアリーグの中継が始まった。
マンチェスター・ユナイテッド対チェルシー。
オールド・トラッフォードだった。スタジアムが赤く染まっていた。
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スタメン発表が出た。
ユナイテッドは四三三だった。アリスターがトップ下に入っていた。マイヌーがアンカー、アマドが右ウイングだった。
チェルシーはパーマーがトップ下、カイセドがアンカー、ガルナチョが左ウイングだった。
両チームとも技術のある選手が並んでいた。
ニコラスは画面を見た。
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## アリスター視点
オールド・トラッフォードのピッチに出ると、サポーターの歌声が降ってきた。
チェルシー戦だった。毎年、この試合は特別な重さがあった。
アップをしながら、アリスターはピッチの感触を確かめた。芝が少し湿っていた。ボールの転がり方が速くなる。頭に入れた。
チェルシーのスタメンを確認した。パーマー、カイセド、ガルナチョ。技術と強度を持った選手が並んでいた。
ロッカールームでブルーノがアリスターに声をかけた。「頼むぞ」
ブルーノは今季からベンチが増えていた。三十六歳だった。それでも練習の質は落ちていなかった。むしろ経験が言葉になって出てくる年齢になっていた。
「任せてください」とアリスターは言った。
ブルーノは笑った。「そういう顔をしてるときのお前は信用できる」
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試合が始まった。
チェルシーのプレスが速かった。カイセドが中盤を支配しようとしてきた。前半の入りは押し込まれた。
アリスターはボールを受けるたびに、プレスを一枚剥がす動きをした。受ける前に体の向きを作った。来る前に次の場所を決めた。
ペドリから学んだことだった。「ボールを持ってから考えるな。持つ前に答えを出せ」。
マイヌーがアリスターを見ていた。アリスターが右へ流れると、マイヌーが中を締めた。アリスターが中へ入ると、マイヌーが右のスペースを使った。練習で積み上げてきた形だった。
前半二十分、アリスターがハーフスペースでボールを受けた。チェルシーのDFが一枚出てきた。アリスターはワンタッチでアマドへ出した。アマドがペナルティエリアへ侵入した。クロスを上げた。FWが飛び込んだ。惜しかった。GKが弾いた。
前半三十五分、またアリスターがボールを持った。今度はコルウィルが早めに出てきた。アリスターはその動きを読んでいた。コルウィルが出た瞬間に背後へスルーパスを通した。アマドが抜け出した。GKと一対一になった。シュートはGKに当たった。
決まらなかった。でもオールド・トラッフォードが沸いた。
前半は〇対〇で終わった。
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## ニコラス視点
ハーフタイム、ニコラスはテレビを見続けていた。
アリスターのプレーを目で追っていた。
パスが速かった。ワンタッチで出す場面が多かった。でも雑ではなかった。一つ一つのパスに方向と強さと意図があった。受け手が次の動作に移りやすい場所へ、受け手が動きやすいタイミングで出していた。
チェルシーの守備がアリスターを意識し始めているのがわかった。前半の後半から、カイセドがアリスターへのコースを切るポジションを取り始めていた。
パスの出し手を消そうとしていた。
ニコラスはその動きを見ながら、後半がどうなるかを考えていた。
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## アリスター視点
後半、チェルシーの守備が変わった。
カイセドがアリスターの近くにいる時間が増えた。アリスターがボールを持つと、すぐ寄せてきた。パーマーも前からプレスをかけてきた。
アリスターへのパスコースを消しにきていた。
でもアリスターはそれを感じながら、逆に落ち着いた。
相手がこちらを気にすれば、どこかが空く。
マイヌーへの縦パスのコースが増えた。アリスターはマイヌーをうまく使った。マイヌーが持ち上がって、アリスターが前へ出る。そのリズムが生まれ始めた。
後半二十分、アリスターがペナルティエリア内のFWへスルーパスを通した。GKと一対一になった。シュートはGKに弾かれた。
後半二十五分、今度はアリスターがアマドへ斜めのパスを通した。アマドがシュートを打った。DFに当たってコーナーになった。
チェルシーの守備がさらに締まった。
ペナルティエリアの中でボールを受けようとするFWに対して、DFが枚数をかけてきた。アリスターのパス先を全部消しにかかっていた。
後半三十三分、アリスターがボールを持った。
マイヌーから受けた。チェルシーのDFが中を固めていた。FWへのパスコースが全部消えていた。カイセドが寄せてくる。
アリスターはそのまま打った。
ペナルティエリアの外だった。左足だった。
ボールが伸びた。GKが反応しようとした。間に合わなかった。
ゴール左上に突き刺さった。
一対〇。
オールド・トラッフォードが揺れた。
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## ニコラス視点
テレビの前でニコラスは身を乗り出していた。
見ていた。後半、チェルシーがアリスターのパス先を消しにきた。ペナルティエリアの中が固められた。その分、外にスペースができた。
アリスターはそれを使った。
パスを警戒した相手が、逆にシュートコースを作った。
ニコラスはその場面を頭の中で繰り返した。
アリスターのプレーの核心は、相手を動かすことだった。パスで動かして、空いたスペースを使う。今日のロングシュートも、その延長だった。パスを消しにきた相手が、自分たちでスペースを作った。
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その後、チェルシーは前に出てきた。
ガルナチョが左サイドで仕掛けてきた。パーマーが中央で受けて、ミドルシュートを打った。ヨロがブロックした。
攻め込まれる場面が続いた。
でもアリスターが落ち着いてボールを回した。焦らなかった。チームを落ち着かせた。
後半四十二分、アリスターがマイヌーへ落とした。マイヌーが前へ出た。相手のDFが食いついた。その瞬間、アリスターが走ってマイヌーから受けた。スルーパスをアマドへ通した。アマドが持ち込んでシュートを打った。二対〇。
試合はそのまま終わった。
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試合後、ヒーローインタビューが始まった。
アリスターがマイクの前に立った。汗をかいていた。でも表情は落ち着いていた。
「今日のゴールについて」とインタビュアーが言った。
「チームが動いてくれたからです」アリスターは言った。「相手が中を固めてきた。その分、外が空いた。あそこで打つのは自然な判断でした」
「司令塔として今季の手応えは」
「まだ途中です」アリスターは言った。「でも昨季より、チームと繋がれている感覚があります」
「チェスターフィールド出身のプレミアリーガーとして、地元のファンへ一言」
アリスターは少し笑った。「チェスターフィールドから、どこへでも行けます。そういう場所です」
ニコラスはその言葉を聞いた。
テレビを見ながら、アリスターにメッセージを送った。
```
見ていた。
チームの動かし方が良かった。
相手が中を固めたのに、外を使った。
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しばらくして返信が来た。
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ありがとう!!
見てたのか
そういうとこ褒めるんだな笑
ロングシュートじゃなくて
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ロングシュートはその結果だ。
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確かに笑
代表合宿で会おう
そのとき話したいことある
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何を
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それは会ってから
ていうかヴィラも勝ち続けてるじゃないか
今季やばいな
```
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まだだ。
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またそれ笑
まあ今季も楽しみにしてるよ
```
ニコラスはスマートフォンを置いた。
テレビはすでに次の試合の中継に切り替わっていた。
アリスターが代表合宿で話したいことがある、と言っていた。何かはわからなかった。
今日のアリスターのプレーが頭に残っていた。
相手を動かして、空いたスペースを使う。パスで動かして、最後にシュートで終わらせる。
言葉にしようとしたが、まだうまくまとまらなかった。
次に会ったとき、話せるかもしれない、とニコラスは思った。
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