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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ3年目

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チャンピオンズリーグ


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十月、CLグループステージが始まった。


相手はポルトガルのベンフィカだった。ホームでの初戦だった。


ニコラスにとって三年目のCLだった。一年目はグループステージで苦戦した。二年目は準々決勝まで行った。今季はその先を目指していた。


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試合前日、エメリーがミーティングを開いた。


ホワイトボードにベンフィカの布陣が描かれていた。


「ベンフィカは中盤をコンパクトに保ってくる。プレスが速い。ボールを持ったとき、迷うと潰される」エメリーは言った。「ロメロ、今季はコーチングを始めている。試合中に声を出せ。ベンフィカのプレスは連動している。こちらも連動で外せ」


「わかった」


「キャッシュ、コンサ」エメリーは続けた。「右サイドから崩しにくる。ラインを下げるな。高いラインを保て。そのかわり、背後のケアはロジャーズが担う」


キャッシュが頷いた。コンサが頷いた。


パブロはベンチの端に座っていた。スタメンではなかった。


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試合が始まった。


前半、ベンフィカのプレスが速かった。ティーレマンスがボールを受けるたびに二枚来た。ロジャーズが逃げ道を作ったが、それも読まれていた。


ニコラスはゴール前で動いていた。


「ファー」と声を出した。


ティーレマンスには届かなかった。ティーレマンスはすでに別の判断をしていた。


「下がれ」と声を出した。


ロジャーズが聞こえていなかった。


声が届かなかった。プレミアの試合より観客の声が大きかった。スタジアムの雰囲気が違った。声の通り方が違った。


前半二十三分、ベンフィカに先制された。


右サイドからのクロスだった。キャッシュが一歩遅れた。コンサが弾けなかった。


ロッカールームへ戻る前、コンサがキャッシュに何か言った。キャッシュが頷いた。二人は静かだった。言い訳をしなかった。


---


ハーフタイム、エメリーが話した。


「悪くない。プレスの外し方は合っている。あとは速さだ」エメリーは言った。「ロメロ、声が届いていない。もっと大きく出せ。CLのスタジアムはプレミアと音が違う」


「わかった」


「コンサ、キャッシュ、右サイドのケアを修正しろ。ラインは下げなくていい。ただしクロスの入り方を変えろ」


コンサが頷いた。「修正します」


キャッシュが言った。「次は止める」


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後半が始まった。


ニコラスは声を大きくした。


「ファー」


今度はロジャーズが反応した。ファーへ動いた。スペースが生まれた。ティーレマンスがそこへ出した。ロジャーズがクロスを上げた。ニコラスが飛び込んだ。


ヘディングがゴール右に決まった。


一対一。


スタジアムが沸いた。ニコラスはいつもの場所へ戻った。


後半六十一分、ティーレマンスがミドルシュートを打った。GKが弾いた。こぼれ球をワトキンスが押し込んだ。


二対一。


試合はそのまま終わった。


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試合後、コンサがニコラスの隣に来た。


「今日の後半、声が変わった」とコンサは言った。静かな声だった。


「大きくした」


「届いていた」コンサは言った。「ロジャーズが動いた場面、見ていた」


ニコラスは頷いた。


「来週も続けろ」コンサは言った。それだけ言って、ロッカールームへ向かった。


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ベンチでパブロが試合を見ていた。


ニコラスがロッカールームへ向かうとき、パブロとすれ違った。


パブロは何も言わなかった。


でも試合中ずっと、ニコラスのプレーを見ていた。ニコラスはそれを感じていた。


何を見ていたかはわからなかった。


---


夜、ニコラスはアパートで今日を振り返った。


前半、声が届かなかった。後半、大きくした。一回届いた。それがゴールに繋がった。


CLのスタジアムは違う。音が違う。必要な声の大きさも違う。


プレミアで覚えたことをそのままCLに持ち込めない。また始めからやり直す部分があった。


でも一回届いた。


それで十分だった。今日は。


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