第一章 第4話 盗まれた王冠と動き出した策士
魔王がこの世界にやってくる二日前。
隣国アヴァンディールでは、急遽前王が退き、新たな王の戴冠の儀式に向けて最終調整が執り行われていた。
「なにっ!?王冠が盗まれた…だと?」
「はっ!面目次第もございません!!ウィストリア様のご指示された通りに新調した王冠を職人がいる村から荷馬車を護送させて運ばせていたのですが、突然崖の上から狐の姿をした魔族が荷馬車に取り付いて僅か数秒の間に王冠を持ち去られしまいました…大変申し訳ありません!!」
「なんと言うことだ。これが王様の耳に入れば私が咎められることに……くっ。」
王家筆頭家老ウィストリア・ハイデンが頭を抱えていると入り口の扉から王宮騎士団副団長が入って来た。
「失礼致します。明日の戴冠の儀式に向けて少し確認しておきたい事があり、ウィストリア様にご助言を頂けないかと……どうかなさいましたか?ウィストリア様。」
「すまぬが話なら後にしてくれ、今はそれどころでは………いや、待てよ。」
ウィストリアは、暫しの間考え込んだ後、急に何かを悟ったように踵を返し副団長に檄を飛ばした。
「至急、我が直属の部隊を集めよ!!!これより極秘任務を言い渡す。」
ウィストリアは、反射する窓に自分の顔を眺めるとニヤリと口の端を歪めた。




