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第一章.第3話 魔王脱出?

 緊急事態発生!!


 砂漠の真ん中にポツンと禍々しい妖気を帯び渦巻く城、通称魔王城。

 そこから1キロ程離れた場所になぜかよく分からないが、神社や仏閣で目にする鳥居のようなオブジェが一つだけ存在していた。


 「なんでこんな所に鳥居が…って、そんなことはどうでもいい。それよりもこんなわけの分からねぇところから早く抜け出して、元の世界に帰るための方法を探さねぇと。」


 「魔王様。ここにおられましたか!」


 「!?」


 頭上を見上げると鳥居に長い尻尾を巻きつけたまま遠心力を使い、2メートル程前方に着地する忍装束の女魔族の姿があった。


 「お一人でどこかへお出かけですか?私もお供させてください。」


 この女は、確かあの勇者との戦闘の際に見事な足蹴りをお見舞いしていた忍魔族。


 「いや、一人でも平気だ。気を使ってくれなくていい。」


 魔王が視線を背けると忍魔族は、回り込み顔をグイッと近づけてきた。


 「そうは参りませんっ!!魔王様にいつ危害を加えようとする勇者のような輩が現れるか分かりませんので、どうかこの私をお側に置いて下さい!」


 まずいな。この忍魔族に跡をつけられたらさっき地図で見た、隣国に行って人が住んでいそうなエリアで元の世界に帰るための聴き込みをする俺の計画が水泡に喫するかもしれない。ここは何としてもこの忍魔族を阻止しなくては……


 「そうか。君の気持ちはよ〜〜く分かった。私もそろそろ城に帰ろうかと思っていた所だったんだ。もう少ししたら城に直ぐに引き返すから君は先に戻って何か飲み物の準備をしてきては、くれないか?」


 忍魔族は、表情をパァッと明るくすると鳥居の上へ再び跳び乗った。


 「分かりました!!直ぐに城に戻って魔王様のお口に合うお飲み物を準備して参ります!」

 

  猛スピードで城まで駆け抜けて行くと忍魔族の姿は、あっという間に見えなくなった。


 「さて…俺も行くとするか。」


 魔王は、踵を返すと城とは反対方向に歩みを進める。


 「魔王様ぁ〜〜っ!!!」


 「…はぁ」


 溜め息混じりに魔王が振り向くと血相を変えた様子の狼魔族が話しかけてきた。


 「そんなに慌てて、一体どうした?」


 「そ、それがっ!!に、人間達がぁっ!!!攻めて参りましたぁ!!!!!」





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