救われたサオリスローゼが語るトゥーベント王国の現状
「済みませんが、じっくり見るならば移動して貰えますか?」
……ん? ……あぁ!
よく見ると、ガルーダは翼を上げっぱなしの体勢をキープしているので、態勢が辛いのかもしれない。
「済みません、気が利きませんでした。……みんな、移動を手伝って!」
仲間を呼び、協力して移動する。中に入っているのは怪我……いや重傷な人。慎重に運ぶ。
「どう?」
回復魔法のスペシャリストであるユイディアとサキマイールに尋ねる。
「難しいですね。回復させて生命の危機からは救えると思います。ですが、切断された四肢を元に戻すのは……」
「普通の回復魔法ではそうね……手足を縫合してそれから回復魔法を掛ければワンチャン……」
ユイディアに続いてサキマイールも様子から判断するも、自信は無さそうだ。
翼の影から移動したこともあって、透明度は低いながらも明るくなったことで中が多少は見やすくなって、長い藍色の髪を確認できた。……まぁ、サオリスローゼだろう。
「ねぇ、サキチ。普通の回復魔法って言い方してたけど、普通じゃない方法がある?」
「あるよ。……でも、辞めた方が良いと思う。失敗すると死亡確定になるから」
何となくだけど、「他の回復手段があるだろう?」って、言われているようだった。
主な回復手段は2つある。1つはメディスによる回復。でも、ここでは不可能だ。ここが『風霊王の古祠』で風の精霊力が満ちているから。
この世界の空間は精霊の力で満ちている。例えば、ある空間に100の精霊力が存在できるとする。すると、光が10、風が10、空が10、土が10といった具合にいろんな精霊力が共存して、合計で100として空間が存在している。だが、ここは風が99で満たされている。例外は足場だが、精霊魔法が発動できるほどの精霊力は無いだろう。
……つまり、風の精霊魔法しか発動しない。
そんなところにメディスを呼んでも何もできないだろう。だから、試すまでもなく却下。そうなると、残す手段は1つ。……未来を見ているだろうガルーダも俺なら治せるとわかって言っている。
「スキル使ったらMPの回復頼む。……ガルーダ様、バリアを解除して下さい。治療します」
「お願いします」
バリアが解除され、球状の中で浮いていた身体がゆっくりと床に降りる。俺は千切れた手足をあるべき場所に置く。
……〈サイコヒール〉!
レベルが上がってMPに余裕はあるものの、かなりコストが高い。気絶する程ではないが、ゴッソリとMPが持っていかれた。
だが、まるで四肢の千切れる様子が逆再生されるかのように断面がくっ付き、HPも回復していく。回復魔法に比べて長い時間を掛けて治療を施し、とりあえず無事に回復させた。
「……ふぅ……このスキル優秀だけど、かなりしんどい……」
でも、まぁ……推しの命を救えて本当に良かった。
「……んっ……ケホッ……」
咳こんで血を吐き出す。……まぁ、治療は終わっているから、喉か口内に残っていた血だと思われる。その咳がキッカケで意識を取り戻したのか彼女の目がゆっくりと開かれ、数秒動かなかったが、勢い良く上半身を起こす。
「敵は?! みんなは?!」
「落ち着いて。……もう、かなり前に撤退しましたよ」
ガルーダが優しく彼女に語り掛ける。
「ガルーダ様、お怪我は?」
「大丈夫。治して頂きました」
「……良かった……怪我……あっ、何故わたしは手足が……?!」
そうか、切断された時は意識あったのか。
「落ち着きなさい。貴女の身体も、そこの彼に治して頂きました」
ずっと傍に居たのに彼女は今、俺達の存在を認識したように驚いていた。……どれだけ混乱しているのかと。
「助けて頂きありがとうございました」
「助けられて良かった」
この後、彼女は俺によって失う寸前の命がギリギリで救われたことをガルーダから聞いた。
「わたしはトゥーベント王国国王の第二子でサオリスローゼ=F=フォンヴァインと申します。お名前を伺っても?」
……えっ? トゥーベント王国国王の第二子? えっと、姫?!
「えっと……冒険者チーム“サクリウスファミリア”のリーダーでサクリウス=サイファリオです」
とりあえず名乗ってはみたものの、結果として俺も混乱してしまった。……サオリスローゼが姫? どういうこと?! 俺の知っている彼女とは違うのか?!
「折角助けて頂いた命、国のために使いたい……と思うのですが……気持ちはあってもダメな事って、ありますよね」
「どういうことでしょうか?」
相手が王族を名乗っているので相応の態度で接するが、違和感しかない。
「お恥ずかしい話なのですが、わたしは『邪竜討伐軍』と同行するように王妃の命にて動いていました。しかし、わたしに命じた理由というのは厄介払い。また、『邪竜討伐軍』に参加しましたが、歓迎されず……何とか認めて貰おうと率先して戦ったのですが……」
結果、置いて行かれた……と、サオリスローゼは自嘲した。
「サクリウス=サイファリオとその仲間達。本当にありがとう。とても感謝します。貴方の希望に沿うよう、こちらも力添えを惜しまないつもりです。……さぁ、妖精の女王が貴方達を待っています。……このヒューム族の英雄には少し話があるので、話が終わったら貴方達を追いかけさせましょう。さぁ、御行きなさい」
……精霊や妖精が急かしたり、長居させようとしたりするのは、外との時間のズレや精霊達が見る未来の選択による都合なのは知っている。
俺はガルーダに頭を下げると皆も頭を下げて入ってきた道へと向かう。が、振り返る。
「あっ、あの……」
「何ですか?」
「フェアリークイーンは何処にいらっしゃるのでしょうか?」
そう尋ねるとシルフの1柱を道案内に寄越してくれた。
……こんな小さな鳥が数羽であんな重い箱を運んで来たのかと思うと違和感しかない。……まぁ、飛行も持ち上げる力も純粋な力学ではないことを知っているけどね。
「ねぇ、用事って何だろう?」
「藍色の髪と瞳を持っているから、きっと契約。彼女も使命を帯びるのだと思う」
きっと、ハルチェルカやカナディアラと同じだろうとヒカルピナの問いに答えた。
シルフは言葉を発さず……いや、俺が聞こえないだけかもしれない……広めの空間に続く通路の前で頭を下げて、戻って行ってしまった。……役目は果たしたってことなのだと理解する。
中に入ると一目で判るフェアリークイーンとヴィエルが居た。女王には怪我が無く戦闘に加わることも無かったようだ。……流石に攻撃をしていたら反撃はあっただろうしね。
「あ、サクリ君。さっきは心配させてゴメンね」
「いや、無事で良かったね」
ヴィエルは俺に気付くと声を掛け、そしてフェアリークイーンとも目があった。
「ようこそ、いらっしゃいました。ご存知だとは思いますが、わたしは風のフェアリークイーンです。恐らくこれまでの旅路で事情は聴いているでしょう。ですので、単刀直入に。ヴィエルと契約をして頂けませんか? その理由もお解りでしょう?」
「もちろん、ヴィエルも望むなら喜んで」
「ありがとうございます。それでは皆様は別室にてご休憩下さい。……案内を」
一部の興味津々の連中を追い払うように纏めて別のプルームが別室へと案内する。全員が出ていくのを待ってから、彼女は例の薬品を取り出して俺の掌に模様を描いていく。
「女王様、ありがとう。あたし、幸せになるよ!」
「そうね。わたしみたいに後悔しないように、精一杯頑張りなさい」
……後悔? 気にはなるけれど、ネガティブな話っぽいし触れない方が良いのかな?
「もちろんです! ……さぁ、準備万端ですね? やり方は……わかりますよね。さぁ、しましょう。景気よくディープなのを!」
「はい?」
……いやいやいや、できんだろう!
そうは思いつつも掌を彼女に向けて出したら彼女の小さな掌と触れた。そして、彼女の唇が俺の唇に触れる。
カッと光が溢れて、目を瞑るのを忘れていた事を思い、慌てて目を瞑る。
「……ん?!」
「はい、終了ですよぉ……凄く気持ち良かったです」
目を開くとそこには身長が20センチほど伸び、三頭身になったプリュメリアが居た。
「えっ?」
ヴィエルは自分が進化したことに驚き、戸惑っている。……多分、プリュメリアに進化するというのは大変なことだと思う。何故なら、ルーチェ以外で見たことがないから数も少ないのだろう。
「……あれ? 他の皆さんは?」
「タイミング良かった。一緒にみんなところに行こうか?」
三頭身になって戸惑う彼女を見ていたらサオリスローゼがタイミング良く現れた。
「お待たせ」
みんなと合流すると、視線は俺ではなく、サオリスローゼでもなく、大きくなったヴィエルに注がれている。
「これで、ここでの用事、終わりだね……一緒に過ごした時間、楽しかった。これからも遠慮なく呼んでね。いつでも、サクリ君に応えるから」
「ありがとう。ヴィエル、これからよろしくな」
……まぁ、察していた。今のタイミングとは思っていなかったけれど。
「あのぉ……このタイミングで申し出るのは空気読めていないと思いますが……」
サオリスローゼが仲間に加わりたそうにこちらを見ていた。
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