上位精霊、妖精女王と会うのは繰り返し作業だと思っていた
最上層を最奥まで進む。そして確信する。現実でもマップは使いまわされているのだと。
……壁や柱の材質は違うけれど、間取りが一緒なんだよね。最初はたまたまかと思ったけれど、3カ所行って全部一緒ならば同じ間取りと結論を出しても間違いではない……と思う。
「……よく……来てくださいました……」
そう言ったのは大きな鳥だった。それこそ、ルミナス様やエント様と同じくらい大きな藍色の鳥。顔つきや嘴の形、足の形状から見て猛禽類がモデルだろう。……多分、鷲?
「大丈夫ですか? 宜しければ治療をさせて下さい」
そう言うと、ユイディアはその鳥の元へ向かい回復魔法で癒していく。
「MPの補助をするね」
サキマイールはユイディアの傍で歌い始める。多分、MPを回復する歌と【聖女】のスキルの同時使用だろう。
「ありがとう……わたしはガルーダ。風の上位精霊です」
「冒険者チーム“サクリウスファミリア”のリーダー、サクリウス=サイファリオです」
「話は聞いています。貴方達があの者達と鉢合わせしなくて本当に良かった」
「何があったんですか?」
……もちろん、戦闘があったことは判ってる。そうではなくて、何者が何のために襲って来たのか? そして、結果どうなったのか? ……まぁ、何者かは何となく想像できていた。
「見ての通り襲撃されました。……魔人族です。あれだけ警戒していたのに、どうやって……」
……やっぱり。情報交換をしているということは、『光霊王の古祠』での襲撃も知っているはずだから、当然警戒していたのだろう。それでも、その警戒を掻い潜って襲撃できるくらいのスキルが魔人族側にはあるということなのだろう。
しかし、上位精霊であるガルーダが傷だらけになるなんて、かなり強かったのだろうか?
「経緯を説明しましょう。事の始まりは『邪竜討伐軍』が来たことです」
「えっ?」
『邪竜討伐軍』が来たことで襲われたってこと?
「【剣の乙女】に狂飆剣“テンペストエッジ”を渡した後、空間が裂けて魔人族が現れました。連中は『邪竜討伐軍』を襲いました。恐らく連中の狙いは【剣の乙女】が所持している剣ですね」
「そうなんですか?」
……だとするなら、『光霊王の古祠』で俺達は何故襲われた?
「連中の発言と行動が欺くための罠でもない限り、そういうことだと思います」
「では、奪われてしまった?」
「いえ。ただ、『邪竜討伐軍』は連中の狙いが【剣の乙女】だと思ったようで、彼女の仲間が守っていました。撤退しながらの戦闘だったので中は御覧の有り様ですが、幸いにも精霊にも妖精にも死者はいません……命があっただけ良かったと思うしかないですね」
……ガルーダの話から察するに、かなり激しい戦闘だったのだろう。そして、精霊や妖精が狙いでは無かったため、重傷者はいても死者はでなかったということか。
「それで『邪竜討伐軍』は?」
「撤退しましたよ。……1人を犠牲にして」
「……いつかやると思った……」
間近で見ているわけではないから判断できないけど、アイツ等絶対に経験値稼ぎをしていないんだよな。ゲームじゃないんだから、「全滅したらコンティニュー」なんて仕様はないからな?
でも、今の話で判断できることは……アイツ等は魔人族を返り討ちにできる程の戦力が無いと言う事実。……弱すぎだろ?
「しかし、彼女達が魔人族を惹き付けてくれたおかげで、我々は無事だったとも言えます。もし、連中の狙いがわたし達だったとしたら、今頃は……」
「そんなに強かったのですか?」
「少し応戦した程度ではありますが……相性的に最悪だという感じではありました」
つまり、風精霊や風妖精の対策を万全にして攻めてきた? ……まぁ、当たり前か。
思えば『光霊王の古祠』でも光精霊や光妖精対策をしていたよなぁ。そして、今回の一件で魔人族の狙いがムッチミラの剣ということが明確化されたわけだ。
こちらが狙われる理由がないことに安心する一方、剣がムッチミラに集まると魔人族は困るということなのか? それとも、奪った剣で何かをするつもりなのか?
……どっちにしても無関係なら良いなぁ。頑張れ、『邪竜討伐軍』!
「ところで、サクリウス=サイファリオ。今のトゥーベントを見て、何を思いますか?」
「どういう意味ですか?」
「話には一応聞いてはいますが、貴方の口からどのような考えの持ち主なのか確認したいのです。聞かせて頂けますか?」
何となく聞きたいことは理解できる。ルミナス様やエント様と似たような話なのだろう。
「転生者によるこの世界への干渉が酷いですね。ただ、解って欲しい事もあります。持ち込まれた現象は間違いなく異世界のアイデアが原型だと思います。ですが、アイデアを出した転生者は世界に干渉して文明を破壊しようとは考えていない可能性もあります。それこそ、ただ「便利なので快適に暮らして欲しい」という願いから出た物もあるかもしれません。……ですが、どんなモノであっても悪用は可能で、それは転生者じゃなくても可能ということです」
どのようなモノを使用するにもルールが存在する。そのルールを守らなければ便利な道具も人を傷つける危険な武器になる。
「そうですか……やはり転生者は排除した方が……」
「それは意味がないですね。大事なのは、危険な行為はダメということを周知すること。どんな道具も危険な使い方ができます。危険だからと避けていたら道具の正しい使い方を学習できません。正しく使う……これが大事なんですよ」
……まぁ、教えたところで聞かない連中やわざと危険な使い方をする奴はいるんだけどね。
「そうですね。どんな便利なモノでも凶器へと変わる。また逆に人を傷つける武器も正しく使えば失うはずの命を守れるかもしれない。求められるのは使う人のモラル」
ガルーダは満足そうに頷く。
「わたし達は、世界を破壊する転生者を敵と認識しがちです。ですが、転生者は何も知らず、善意で便利なモノを提供しているだけかもしれません。そして、悪意があるかどうかは判らない。……世界を壊そうとする意図がないのなら、いきなり排除という考え方はダメかもしれませんね。注意、警告を与えた上で観察。その様子から判断しても良いのかもしれませんね……シルフ達、例の物を」
……実際難しい話なんだよな……特に悪意の有無を見定めることが。無知故の優しさであれば優しく注意するだけでも改善される。ただ、自己満足のために他者の迷惑を気にしない人も存在するだろう。そういった輩は問答無用で排除したいというのは賛同できる。
「これは、約束の前払い分の報酬です。わたしから伝えることは、他の方と同じで「今は仲間を集めて力をつけて」ということだけ。気付いていると思いますが、貴方が相手をするのは国の中枢に深く入り込んでいる者です。半端な力ではねじ伏せられてしまうでしょう」
「ありがとうございます」
例によって宝箱がシルフ達によって運ばれ、眼前に置かれる。
「中身を確認しても?」
「えぇ。大丈夫ですよ」
箱を開けると、最初に目に入ったのは藍色の本……風の魔導書。3冊の全てをアッツミュに渡す。次は魔器が数種類。続いて大きな霊石や貴重な素材。宝石も入っていた。
「ありがとうございます。大切に使わせて頂きます」
箱ごと持ち歩くことが困難であることで、中身だけ頂くという方針に切り替えたのだが、正直くれた人の前で漁るのは心苦しい。行儀が悪い事を承知しつつも、大きな箱を運ぶ手間を考えると許して欲しいところ。
「えぇ、それだけ貴方達に期待しているということですよ」
……おぅ、露骨なプレッシャー。まぁ、失礼なことしているのだから当然か。いや、仲間の負担を減らすためとはいえ本当に申し訳ない。
「それと、別件で1つ、お願いがあるんですよ」
すると、彼女の右の翼が上に持ち上がる。ちょうど翼で隠れていた場所に玉のような物体があった。
「今は魔法で状態維持しており、辛うじて生きてはいますが、この者は残って、最後まで戦い抜いたヒューム族の英雄。まさに今、死へ向かう彼女の命を救ってほしいのです」
「見せて頂いても?」
ガルーダが頷くのを確認した後、その球体へと近づく。よく見ると中が透けており、四肢が切断された女性が封じられていた。
球状に張られたバリアは透明度が低く、詳細は判らない。ただ、予知夢からサオリスローゼなのではと考える。
「……これは……」
ユイディアがガルーダの治療を止め、こちらの様子を見に来たが続く言葉を紡げない程に厳しい状態の彼女を見て衝撃を受けたのだろう。
「この方に心当たりは?」
「正直、よく見えなくて判断できないけど……予想はできる」
ただ、そもそもサオリスローゼが『邪竜討伐軍』に加わっていることが驚きだった。
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