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遺跡『風霊王の古祠』へ行く方法

「サクリ……わたし、【詩人】になったよ。歌、憶えないと……」


「スキルの補助があるから、直ぐだよ。なんならリリアに相談してみるのも手だと思うよ」


「……」


「……」


 サキマイールは【聖女】から【詩人】に天職進化したものの、嬉しくないはずがないのに渋い表情をしていて、俺もそれに理解を示した。


「あのぉ……」


「ん?」


 慎重に声を隣にいる人物に掛けてみるも、嬉しそうに微笑んでくる彼女に俺は戸惑いを隠せない。こんな反応をされたのは前世も含めて人生で初のことだから。


「えーっと、何をしているのかな?」


「特に何も……強いて言うなら、サクリ君の隣を守っているって感じ?」


「……そ、そう」


 思わず俺はサキマイールに視線を向けて、彼女は顔を横に背けた。


 ヒカルピナはずっとこの調子である。正確に言うならば、彼女の経験値稼ぎや俺が自室や風呂トイレにいる時は別行動をするものの、食事時や休憩時は常に俺の隣をキープしている。すれ違っても良いと思うのに、合流してから毎日ずっと隣をキープしている。……2人で話したい人もいるのに、何の用事もないのに同じ人を独占する行為は正直、あまり良い傾向ではないと思う。


「ねぇ、そろそろ『風霊王の古祠』に行かない? あたしはもう準備万端なんだけど」


「そうだねぇ。けれど、まだ問題があってさ」


「どうしたの?」


 ヒカルピナには俺が突然独り言を話し出したように思えたのだろう。心配そうに俺を見る。


「『風霊王の古祠』にそろそろ向かおうと思うんだけど、手段が無くて」


 何故なら、『風霊王の古祠』は遥か上空にあるのだから。




 トゥーベント王国とアスパラオウム王国の間は浮島が特に多い。その大小様々な空に浮く島々の一帯を大陸に住む住民は『浮遊島塊群』という地名で呼んでいる。


 その『浮遊島塊群』の島の1つに『風霊王の古祠』への入り口が存在している。島の殆どに亜人種も含めて人は住んでいない。よって、その島に行くための手段は設置されてなく、スキルや魔法で飛べない者は行く事ができない。


 一番の問題は、俺がホーコリンを拾ったということ。そもそも『竜騎幻想』には神器はあってもオートマタは存在していない。ゲーム内でも名称だけであって実物はでてこない。「これ、神器じゃね?」っていう怪しいアイテムはいくつか存在するけど、公式が明確に神器だと謳っているアイテムは知る限り存在していない。


 ……そんなアイテムが明らかに何らかの意図で俺の元に集められている。


 そして、そんな神器を手に入れた後の展開は俺の傍から持ち歩かずとも離れず。強敵が現れて神器を使った一撃を放つと、分解再構成され、美少女になって現れる。


 ……重要なのは、強敵が現れるというところ!


 明らかに『風霊王の古祠』へ行ったら魔人族が現れる……そう女神ナンス様が警告している気がしてならない。


 ……どうやって全員で向かえば良いのか?


 まぁ、向かう手段は思い浮かばないものの、何時魔人族が現れても良いようにレア職とユニーク職を中心に経験値稼ぎをして貰っている。もちろん、ついでにチームメンバーの連携やお互いのスキル確認も目的に含まれてはいるんだけどね。


「サクリさん、進化できました! 全部サクリさんのおかげです!!」


「おめでとう!」


「おめでとうございます!」


 カノエルンも高速経験値稼ぎでレベルクラウン到達へ。彼女に関しては本当に努力の結晶である。……まぁ、うろ覚えの育成方法が合っていて本当に良かった。間違っていたらと思うと申し訳なさでゾッとする。


 【魔術士】は基本、自分と相性の良い魔導書を使用して魔法をぶっ放していれば進化できる。だけども、魔導書そのものが無いとなると魔法が使えない。そこで魔法使いものでありがちな魔力を身体などに巡らせて強化したり操作したり増減させたりして、彼女に会う戦闘方法を確立させ、魔力を使って実戦を行う。……そうすることで彼女は【呪術士】へと進化した。


「ありがとうございます」


 笑顔の彼女ではあるが……個人的には「ありがちだけど、こうなったか」という仕様だった。




 翌日の遅めの昼食時。6人席に俺が座って昼食を待ち構えているとヒカルピナ、サキマイール、マオルクス、アッツミュ、ユイディアが競争するように席に着く。


「お腹減ったねぇ」


 ヒカルピナが俺の隣に座り声をかけてきたが、「うん」とだけ返事しつつ、頭の中は浮遊島へ向かう方法に行き詰っていた。


「そういえば、天職とかステータスとかスキルって、法則がありそうだけど、仕様ってどうなっているんだろう?」


 ヒカルピナの疑問。ここにアッツミュとユイディアがいるので、メタい発言は遠慮してほしいところだが、彼女が元々ゲーマー故に出る疑問だという事も理解できた。


 どうせ成長するなら効率よく成長させたいだろう。自身の命に直結するなら尚更。


「じゃあ、ざっくり簡単に俺の知る範囲の知識で……今、言った項目の中でステータスはそんなに気にしなくて良いよ。自分の能力値を数値化しているだけだから。項目毎にレベルアップするまでに最大1上がる可能性があって、上がるかどうかは自分次第。例えば腕立てすれば筋力が上がるでしょ? 走り込みすれば敏捷や耐久があがるって感じ。レベルクラウンまでに毎回上がっていれば最大10増えるってわけ」


 実は上位天職には戦力的に敵わないのはそれが原因で、能力値に差があるんだよね。


「スキルは天職によって決まる。何種類かの天職で共有されているスキルもあるし、その天職じゃないと使えないスキルも存在する。これは努力でどうにもならないから、天職次第で内容は決まる。アクティブスキルは自分が使用することで発動するのに対し、パッシブスキルは勝手に発動する。必要コストがあるパッシブはMPがなければ発動しない」


「その辺はRPGと一緒だね」


 多分、アッツミュとユイディアは理解するのが難しいかもしれんなぁ。


「天職は……気にするなとは言えないなぁ。生まれたタイミングから【学鍛童】という天職を持っている。レベルクラウンまで成長するけど、それまでに行った努力の内容で決まるんだよ」


 ……でも密かに俺は、その説は間違っているのではないかと思っている。




 数日後。時間だけは過ぎていくが大きな問題は解決できない。でも、俺達“サクリウスファミリア”が避けることのできない……ゲーム的に言うなら「先へ進むためのフラグ処理強制シナリオ」として存在しているのが、上位精霊への面会。


 ……ゲームじゃないので無視しても先に行けるだろうけど、これまでの経緯を考えると絶対に後悔させられることになるだろう。……でも、ならば行き方くらい情報が欲しいよなぁ。


 もちろん、俺が悩んでいる間もチームメンバーの経験値稼ぎは進み、【詩人】になったサキマイール、【ハイエルフ】に進化したワカナディア、【槍士】に進化したヨークォットも順調にスキル使用のコツを掴んできている。特に【呪術士】に進化したカノエルンは成長が凄まじく、まるで【魔術士】だった頃のストレスを発散しているようだ。


 元々は熟練度が多少はあった杖から彼女の武器は変更され、特殊な糸のようなモノになった。ソレに魔力を流し込むと自在に操り、長さと強度を変更できる。もちろん、魔力を流さなければ元の長さと強度のただの糸のようなものに戻る。……物に魔力という名の念を込めて戦うから【呪術士】という天職名になったのではないかと推察……多分ね。


「いらっしゃいませ~」


「あっ、サクリウスさん。丁度お伝えしたいことがありまして……」


 今日も『風霊王の古祠』へ向かう方法に頭を悩ませていると、昼食を食べに来たナッツリブア冒険者支援組合の受付の方が俺を見つけて話しかけてくる。


「あぁ、お疲れ様です。昼食ですか?」


「えぇ。でも、それはついでで、サクリウスさんが欲しがっていた情報が入って来ましたで、ご連絡に。実は、『邪竜討伐軍』がアックアイル王国へ向けて出国しました」


「おおぅ、思ったよりゆっくりでしたね。これまでの国内での動きとか把握してますか?」


 話を聞きながらも時間が無いことに内心焦る。自分達も早くアックアイル王国へ向かわないといけない……手段を見つけられない現状に実はかなり追い詰められていた。




 ちなみに『竜騎幻想』ではどうなっているのか?


 答えは簡単で、この世界には飛空艇が存在する。それに乗って行けば簡単に辿り着ける。ただ、戦略SRPGだから当然なのだが、プレイヤーが飛空艇を自由に操作することはできない。だって、勝手に戦場マップに移動しているからね……飛空艇云々はイベントアニメーションだけの存在なわけで。


 じゃあ、飛空艇買えば?


 それは不可能で飛空艇は量産技術が存在せず、現状各国の王家が所持しているくらいで一般人が所有できる代物ではない。王家が所持しているのだから、乗せて下さいと言って乗せてくれるものでもない。


 飛空艇が無理なら、気球とか前世の知識を利用すれば何とかなるんじゃ?


 ……無理。作り方知らん。他の転生者も作らない辺り、いろいろと面倒なことがあるのかもしれない。


 俺1人であれば、辿り着けるかもしれない。どうせ、失敗して落ちても死なない。消費MPがエグイ事になるのは間違いない。それに俺が1人で登って行く間、襲撃がないという保証もない。だから、短時間で移動し終えるか移動中でも戦うか……どっちも無理っす。


 ……結局のところ詰んでいる。


「何か悩んでる? 相談乗るよ?」


 そう声を掛けてきたのはトモリルだった。変身は解除しているのか本来の姿ではあるが、グラスビットは子供に見えるだけだから、エルフよりは視線を集めることはないかもしれない。


「『風霊王の古祠』へ行かなきゃなんだけど、手段が思いつかない。浮遊島塊群にあるんだけどさ。なんか方法思いつく?」


 ……聞いては見たけど無理だよな……なんて思っていた。


「ん? そんなの魔法ですぐ行けるよ。連れて行こうか?」


「……はい?」


 ……やはり、上位精霊かナンス様か知らんけど、ちゃんと手段は用意してくれているのね。


 この言葉が決め手となって、明日からの移動開始を指示した。

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