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【盾機士】ヒカルピナをスカウトした結果、推しも仲間に

 ……おおおおおおおっ! ぼろ儲け!!!!!


 もう、ポーカーフェイスなんて不可能とばかりに頬が緩み、笑むのを止められない。


 1億ナンスという9900万ナンス分の利益を得たことで浮かれ過ぎていた。万が一を考えて1霊銀貨しか賭けなかったことが悔やまれる。それでも、一生遊んで暮らせるくらいの額は儲けたんだけどね。


 盗られる前にサクッと銀行に預け、これらは新しいコテージ代に回そうと思っていた。


「確保~♪」


 ガシッと腕に抱き着かれて、アヤカリカかと思ったら、ヨークォットだったものだから、めっちゃ緊張すると同時に、顔が一瞬で熱を帯びるのを感じた。


 ……考えてみれば、噂通りの人物であればアヤカリカは大損害で、さらに散財を避けるために逃げているよな。


「ヨークォットさん?」


「ちょっと、付き合わない?」


「また勝負?」


「それでも良いけど……ちょっと甘いモノでも。ご馳走するからさ♪」


 まだ行くと返事する前に、強引に引っ張られる。……まぁ、返事を求められても行くけどさ。


 彼女に戦う気が無いのは直ぐに気付いた。ヨークォットの設定で、戦闘時の髪型は頭上に2つ団子を作っているのだが、今その青い髪は普通に下ろされていて膝まであるのが揺れている。それは戦う気は無いという本人なりの意思表示なのだという。




 俺達は今、酒場に居る。ただし、冒険者の店ではなく、ちょっとお洒落な雰囲気の店。客の数も少ないので冒険者姿が滅茶苦茶浮いているが、ヨークォットは気にしていない。


 彼女は店員に何かを注文して下がらせる。


「実は仲間が1人だけ来るの。……いいよね?」


 確かに女性1人が知らない男と2人っきりで酒を飲む。……世間一般的には不安にも思うよな。……ただし、彼女はそんなことないだろうと思っているけど。それにいくら推しとはいえ手を出すつもりはない。出して女難に襲撃されたら目も当てられない。


「来たよ~……あっ、初めまして。それと、おめでとうございます」


「ありがとうございます」


 初対面の女の子。灰色の瞳に尻まである赤い髪。ヨークォットと背丈が一緒なのだが、ヨークォットは何処か不遜な感じの印象を与えるのに対し、彼女はオドオドしていて人見知りしそうな感じだ。……まぁ、コミュ障という程ではないんだろうけど。


「紹介するね。彼女はヒカルピナ。あたしの師匠の娘で親友ね」


「ヒカルピナ=セレノックスです」


「丁寧にどうも。サクリウス=サイファリオです」


 そう言ってペコッと頭を下げた。と、同時に店員さんがカップを3つ置いて行く。


「はい、これ」


 ドンッと置かれた冷えた鉄製のカップの中には飴色の液体が入っている。


「奢り。甘いよ~。飲んでみて?」


 ……甘い……けれど、これは酒だ……。


「甘い。キャラメルっぽいな……ところで、呼んだのは1人だけ? 他の4人は?」


「あ~、クビにした。というか、今回はあたし達が抜けて来たって感じかな」


 予知夢のこともあって、話の先は予想出来ていた。




 アルコールが入ったからなのか、ヨークォットは饒舌に今回のチームの愚痴を話し出す。この世界では一応16歳から飲酒可能だから違法ではないけれど、甘い酒なので気をつけないと酒に酔うのは早そうだ。


 散々文句を言った末、満足したのか本題を切り出してきた。


「それでね、サクリウスさん。あたし達を貴方のチームに入れて欲しいの。ダメ?」


「うーん。俺達、この後ヴァンバードを発つよ? エステヴァトルに戻るから。だから、もうDTAにも出られなくなるんだけど、それでもチームに入る?」


「あ~、問題ないかな。ずっとゲームばっかりしていて冒険者もクソもないっしょ? ケージの中のネズミのような真似していても仕方ないし、冒険者らしい活動をしたいと思ってたから」


 彼女はスッと席を立つと俺の傍に着て胸を押し当てるように密着する。


「おねが~い。入れて?」


 この行為、どうでも良い女にされても免疫があれば、どうと言うことは無い。ただ、推しがするなら話は別で……かなり心が揺れるものの、この行為に意図があることは察していた。


 鼻の下が伸びる自覚がありつつも、これに関しては真面目に答えようとした。


「サクリさーん、楽しそうね?」


「え? レイア?」


「心配で尾行してきたんですけど、命の心配は無さそうですし、楽しそうなので混ぜて貰っても?」


 普段、仕事以外は本ばかり読んでいる彼女が珍しくも現れ、俺の隣に腰を下ろした。




「わたしは、レイアーナ=V=グリモヴァード。よろしくね」


「ご丁寧にどうも。ヨークォットよ」


「ヒカルピナです」


 自己紹介をお互いしていたが、少なくともレイアーナは2人のことを知っている。


「……話、戻そうか? 俺達のチームに加入するには方針に賛同した上で条件をクリアして貰う必要がある」


「条件?」


 ヨークォットはそっと俺から離れて自分の席に再び腰を下ろす。


「まず方針。俺達は上位精霊達の依頼で大陸中を移動している。その依頼が今のところ最優先ではあるけど、それ以外に関しては原則、正義の味方はしない。慈善事業もしない。世話になった人への恩を仇で返さない。基本的には働いたら報酬を貰う。恩を受けたら恩返しをする。仲間の要望に関しては全面協力……これが方針」


「……格好良いね。無償奉仕しないっていうのには強く同感するわ」


「入る条件。それはメンバー全員の許可を得る事」


「でも、例外もあるよね? ヒカルピナさん、貴女、ユニーク職よね? それなら、サクリさんが探し求めている人なので、無条件で加入が可能よ?」


 レイアーナはヒカルピナの天職を既に〈ハイアナライズ〉にて知っていた。




 ……もちろん、俺はDTAの最中に聞いていたけどね。だからこそ、確認。


「ヒカルピナさんは転生者だよね?」


「……そうです。わたしの前世は『皆守 陽雫』という名で死んだ時は18歳でした」


「そのことをヨークォットさんは?」


「知ってる」


 彼女は短く答えた。


「当時は春休みで……レンタカーを借りて同人誌即売会へ向かう最中にトンネルで事故があって、後ろの車に追突されて爆発に巻き込まれて死んだらしいです」


 ……やっぱり、同じタイミング、同じ場所か……。


「そうでしたか。やはり、『天職進化の儀』で記憶を思い出した感じですか?」


「そうです……やっぱり、サクリウスさんも転生者なんですね。キャラメルという単語を知っていたので、もしやとは思いましたが……」


 オドオドしていたのに、急に普通な態度になったのは俺が転生者と思ったからか。


「ねぇ、ヒカルピナ。仲間になってくれないか? 上位精霊の依頼は転生者を集めることなんだ。力を貸して欲しい」


 改めてお願いをする。


「……1人ではちょっと……でも、ヨーコちゃんと一緒なら……」


「そう言う事なら、俺の独断で問題ない。2人とも是非仲間に入って欲しい」


 ヨークォットは複雑な気分ではあったようだが、結局2人とも仲間に加わった。




 ……とても気が重い。この重さは財布の中の潤い具合のせいではないはずだ。


 ちょっと前まで懐が温かくなって笑みが止まらなくなっていた。それなのに、今はというと何を言われるか……いや、言われないまでも何を思われるか……それを考えるだけで胃が痛い。


「只今戻りました」


「た……ただい……ま……」


 レイアーナに続いてコテージに入る。「おかえり」の声もそこそこに視線は2人に注がれる。


「えーっと、紹介する。ヨークォットさんとヒカルピナさん。仲間に加えたい」


 予想通り、とりあえず反対の意思表示は無かった。




 2人が加入したことで今日中に街を発つことを中止し、明日の早朝に出発することが決まった。そこで、2人の気が変わらぬ内にとヴァンバードのナッツリブア冒険者支援組合へとチーム加入手続きをしていた。


「それにしても、驚いたなぁ……サクリって、ブロンズ級の冒険者だったんだ」


「冒険者を目指していた頃は一人旅を想像して……それでもフルパを超えるチームにするつもりは最初無かったんだけどね」


 ちなみに、フルパとはフルメンバーパーティの略で6人構成の冒険者チームのことを指す。


「見事に女ばかりじゃん。サクリって女好き?」


「否定はできんし、ホモではない。けれど、こんな状況になったのも故意では無くて、色々あったんだよ、色々……」


 ……最初は男女同数くらいが女難回避的に丁度良いと考えていた時期もありました……。


「酒場ではちゃんと返事を貰えなかったですけど、サクリさんも転生者だったんですよね?」


「あっ、うん。俺は『知念 朔理』。高校卒業したばかりの18歳だった。卒業旅行で高速バスを利用していたんだけど、その際にトンネルでの事故……多分、同じタイミングで死んでるよ」


 まだ確定ではないけれど、俺の知る4人の転生者が同じ事故で死んでいることを考えると、あのタイミングで死んだ人だけ転生しているのではないかという可能性が浮上する。……でも現段階だと、「だからどうした?」とか「何故?」となってしまう。まだ転生した理由に至る情報は足りていない。


「ちねん……さくり?」


「珍しい名前でしょ? 苗字から察するかもしれないけど、祖父母が沖縄出身で、親もネーミングセンスがね……でも、誰とも被らないから結構気に入ってた」


「偶然にも、今と前世で呼ばれ方一緒なのか」


 ヨークォットもしっかり聞いていたようで、話題は前世から名前についてへ移行した。




 帰ったら、即夕飯。数分の休憩の後に風呂に入って……それからは部屋で寛いでいた。


 コンコン。


「少しだけ話して良い?」


 入ってきたのは風呂からあがったばかりのヒカルピナ。


「どしたの?」


「……あのさ、もしかして『フロンティア・オンライン』ってMMORPGやってたよね? わたし、『ヒニャーユ』だよ」


 『ヒニャーユ』……それは、かつて少しだけ遊んでいたゲーム内での嫁だった。


 ……また知り合いなのか?


 確かに『ヒニャーユ』のリアルのことは聞いたことが無い。リアルの性別も知らなかった。会う予定もなかったし、会ってない。何の接点もない……そう思っていた。


「……どうして?」


「『知念 朔理』っていう名前、本を郵送した時に宛先聞いたでしょ?」


 ……えっ? それを憶えていたってこと? それってかなり昔の話じゃ……?


 住所と名前は言われてみれば教えたことがあった。それは事実だけど、それは俺が中1の頃の話。しかも、たった1度きりの事で、中3の夏には引退していたんだけど?


「やっと、会えた」


 彼女は俺にハグをする……やばいな、これは間違いなく女難のフラグだった。

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何卒よろしくお願いします。

尚、5日間連続投稿3日目+明日も5回投稿します!

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