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賭博場の人気イベントと終わった後に来た常勝少女の頼み

「天王星の星霊よ、仲間達に星々の加護を!」


 走り出して直ぐに現れたスケルトンの群れを前にマオルクスの強化魔法が掛かる。


「……《閃球の放擲(フラッシュ・ボム)》」


 アッツミュの光属性広範囲攻撃魔法により一撃で倒す。


「タロット武装……《星》!」


 まるで白魔道士のような白い衣装にコスプレしたマオルクスは、一方を指さす。


「目的地はあっちよ」


 彼女の示す方へ走りながら説明を受ける。


「《星》の能力は目的地を把握したり、目的地に向かう際の妨害者に気付くとか、案内役としてのスキルが備わっているの」


 ……おぅ、便利ですね……。【占星術士】と【符占術士】のスキルで大体の事はできてしまうのではないかと思ったりするが、本人曰くリスクもあるらしい。


「みなさん、この先直ぐにガーゴイル4体です」


「了解」


 レイアーナが〈ハイアナライズ〉をソナーのように適度にスキルを使用してくれているので、敵の位置もライバルの位置も完全に把握済み。


「ヴィエル、頼む」


 彼女が応えた瞬間、キュパーンという空気が鳴ったような音と共に目の前に居る石像のフリをしたガーゴイルが3つに切断される。


「ありがと。見えなかったけど、真空刃?」


「うん!」


 ……こんな感じでユニーク職のスキルをガンガン使って奥へと迷う事なく駆け抜けていく。


 グアンリヒトでは、『邪竜討伐軍』へ招集される可能性から、デンドロムでは王女2人と【聖女】を抱え、目立ちたくない一心から隠していたが、トゥーベントでは既にファッションショーから有名で滞在中は隠す理由が無くなったために躊躇なくスキルを使用した。




 索敵はレイアーナ、罠発見はクレアカリン、HPとMP回復はサキマイールとグレーターポーションとグレーターエーテル。攻撃は俺とアッツミュ。道案内及び戦闘&支援でマオルクスと完璧を通り越してズルとかチートとか言われても仕方ない過剰戦力でダンジョンを攻略していく。……きっと、賭博場内では歓声が上がっていることだろう。……聞こえないし、知らんけど。


 そんなことを想像しながら、下っていく。


「ここから先、敵は4体です……一応下り階段は存在するのですが、この道からは降りることができず……恐らくここが想定された最下層だと思われます」


「了解……まぁ、通れないんじゃ、そうだろうな。隠し扉の可能性はあるだろうけれど……だったら、雑魚敵をもっと配置していると思うんだよな」


 ゲーム的な言い回しになってしまうのも仕方ない。敵の配置が不自然なのだから。


 ここまでの道中で敵がアンデッド系とゴーレム系しか存在していない。これは【死霊術士】と【人形術士】によるスキルで生み出された難易度調整済みの敵ということだろう。


 途中階層で明らかに周囲の敵と比べて強い個体が存在していた。そういうバランスが前世でのRPG的な演出を思い出させ、さしずめ『中ボス』的な意味合いで配置されたのだろう。


 ……そうなると、ここからラスボス戦といったところなのだが……。


「それで、その4体の敵は?」


「アイアンゴーレム、レベルクラウンのようです」


 クレアカリンの問いにレイアーナが困惑しつつ答えた。


 ……確かに、レア職冒険者のパーティであればラスボスに相応しかったかもしれない。パーティの構成によっては倒せないチームもあるかもしれない。


「弱点は火だったよね?」


「そうですね、後は核を破壊するくらいでしょうか?」


 マオルクスが確認すると、レイアーナが補足する。


「俺達、出番ないっぽいね」


「だね、頑張って!」


 俺とクレアカリンが他人事のように応援する中、


「……《閃球の放擲(フラッシュ・ボム)》」


「火星の星霊よ、我が敵を焼却せよ!」


 アッツミュの呪文詠唱が終わるタイミングで放ったマオルクスの火属性魔法による範囲攻撃の連撃により、あっけなく瞬殺してしまった。




 ギィッ……と金属同士が擦れる音と共に扉が開かれる。扉にそれ程の重さを感じられないことから、しっかりと手入れされた扉であることは感触で理解した。


 扉の先は行き止まり。8畳程度の小部屋の中央に装飾された綺麗な宝箱が置かれている。


 クレアカリンが宝箱を一通り調べて、開けて見ると中にはメッセージと共に賞金が入っていた。


「おめでとうございます。サクリウス=サイファリオ様のチームが勝利ということでゲームは終了になります。お疲れさまでした。中継は終了となりますので、お渡しした帰還用のスクロールにてお帰り下さい」


 魔道具から音声が聞こえてくる。……多分、リアルタイムな音声ではなく、運営側が何かをすると用意していた音声が流れる……そういった類の細工だろう。


「これ、優勝チーム用の賞金だって。帰って手続きすれば、それとは別で参加賞も貰えるみたいね」


 クレアカリンがメッセージを読んだ内容を伝える。


「……なんか、思ったよりあっけなかったね」


「いや、これが本来の適正難易度だと思うよ。……俺達の普段の敵がおかしいんだよ」


 アッツミュの感想に思わず本音が漏れる。


「じゃあ、終わったし……帰る?」


 一番働いたマオルクスも、まだ余裕があるみたいでケロッとしていた。


「待ってください。参加していた何処かのチームが近づいてきます」


 出入口を見て、数秒後に女性がダッシュで部屋に入り込んだ。


「はぁはぁ……良かった……残ってた」


 現れたのは、青髪の少女だった。


「……わたしは……ヨークォット……ライランス……お願いがあって……」


「解ったから、まずは息を整えて」


 一目見て、彼女の正体に気付いていた俺は、とりあえず彼女が落ち着くのを待った。




 待つこと1分くらい。


「待たせてゴメン。あたしはヨークォット=ライランス。知っての通り、このゲームに参加した冒険者なんだけど。頼みがあって急いできたの。それは、あたしと1対1で手合わせしてほしいの」


「……手合わせ? 何故?」


 クレアカリンの鋭い問い。その声色から警戒の色が見える。


「いやぁ、実はこのゲーム常連なの。負けたのは参加してから初めての事で……貴女達、他所の国から来たんでしょ? 戻ってからだと色々面倒だから、ここで勝負してほしいの」


 ……最初は手合わせと言葉を選んだけれど、本質はやっぱり勝負だよなぁ。


 確かに、街に戻った後だと街の中で手合わせは無理だろうし、彼女は街で有名な上、俺達も間違いなく有名になっただろう。……本当に面倒だ……。


 彼女を知っている俺としては、その願いと状況説明に関しては理解できるものだ。


「俺で良ければ良いよ」


「うんうん、オッケーオッケー。正直助かる。ありがとね」


 感謝の言葉を述べるものの、何となく言葉だけって印象を受けるが、今の彼女なら当然のリアクション。


「では、行きますよ?」


「どうぞ」


 俺が応えた瞬間、彼女は鋭く槍を突き立てて来るが、それを普通に避ける。まぁ、パッシブスキルに関しては自動発動なので仕方ないとはいえ、あえてアクティブスキルは使用しない。


 大剣で槍を払いながら彼女の攻撃の様子を観察した後、焦る彼女の様子を確認してから彼女の槍を弾き飛ばした。




「負け、負け! 降参……納得だわ」


 彼女はそう言うと、槍を拾い上げる。


「付き合ってくれてありがと。……君、すっごく強いね?」


 そう言ってニコッと微笑むと、彼女はスクロールを使って帰還した。


 ……さて、俺も……。


 そう思った瞬間、顔に下からの風を感じた。迷うことなく、床を調べる。何故なら、レイアーナも言っていた。「下り階段が存在する」って。つまり、下にもエリアがあるということ。


 ただ常識的に考えて、下の階層を覗けるということは一般的ではない。だから、考えもしなかった……風を感じるまでは。


「何してるの?」


「……あった」


 ……〈テレポート〉。


 サキマイールの問いをスルーしてでも、小さな穴から見える下のエリアへと瞬間移動する。


「先、帰ってて!」


 小さな穴から聞こえる事を祈って叫ぶと、中の様子を探る。……光源、各自用意していて良かったわ。

 それでも薄暗い中、宝箱を見つけ近づこうとした矢先、コツッと硬い何かにぶつかった。




 とりあえず、宝箱の中身は風竜晶だった。……ということは……とその硬い何かを探すと茶色の大きなチャクラム。とても実用的とは思えない重さではあった。


[種族確認……適正確認……思考同期成功。これにより所有権が正式にユニット名『サクリウス=サイファリオ』へ移行されました。適応を開始します。個体名を変更して下さい]


 ……ほらね。そして、これを拾ったってことは、またこれの世話になるような危機が近日中にあるってことだ。……多分、無視しても危機は来るんだろうなぁ……。


 名前を付けようと考え、咄嗟に出たうろ覚えの武器名『宝弧輪』からホーコリンと名付ける。名付けを終えた瞬間、ホーコリンの重さを感じなくなった。


「……なるほど。確かにこれだけ軽ければ投げられるな……」


 扉らしき物が見当たらないので、スクロールを使って帰還した。

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尚、5日間連続投稿3日目+本日中にあと1回投稿します!

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