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かつて『芸術の国』と呼ばれていたトゥーベント王国

 あれから予定より時間の掛かった旅路を経て、王都を目指していた俺達はなんやかんやあってトゥーベント王国第二都市であるヴィエトゥールに今さっき着いた。


「話には聞いていたけど……」


「そんなに違うの?」


 多分うんざりしたというのが見て判る程の表情だったのだろう。隣で俺の表情をガン見していたサキマイールに黙って頷いた。


「凄く綺麗なところですね」


 反対隣りでユイディアが感動からか感嘆の声をあげる。


「確かに綺麗……」


 カオリアリーゼも彼女に同意する。……いや、俺も同意ではあるんだけどね。


 ヴィエトゥールとは『竜騎幻想』にも出てくる港を有する大きな都市で、美味しい料理や下積みをしている芸術家がストリートアートをしているという、どちらかというと貧困層が金と名声を求めて足掻いているといった感じの活気のあるスラム街的なイメージだった。


 それが何という事でしょう……まだ建てられて数年しか経っていないような綺麗で統一感のある建物が並び、広い幅の道はレンガで整えられ、ゴミも落ちていない。噂には聞いていた観光名所で記憶と全く一致しない。……それが悪い事とは言わないけれどさ。


「どうしたの? ……って、あ~、そういうこと……あたし達浮くねぇ……」


 そう。あまりにも都市景観が良すぎて、冒険者姿の俺達の存在が浮いてしまうという話。ユキサーラの表情を見て、俺もあんな顔をしているんだろうなと思いつつ。


「とりあえず、滞在許可を得てからコテージ設営かな」


 情報はここに来る前に寄ったエステヴァトルの町で仕入れていた。それが結果的に王都ヴァンバードではなくこっちに来た理由になる。最初はそんなことになるとは思っておらず、単にサキマイール、ユキサーラ、マユシェの冒険者カードの発行とチーム加入申請のためだったんだけどね。……紹介状がないから時間はかかって大変だったが、不憫だし旅人の必須アイテムと言って過言ではないから待遇に多少の不快な思いはしたけれど、無事にゲット。


 ちなみに、何故ヴァンバードではなくヴィエトゥールに来たのかと言うと、一番の理由は王都に『邪竜討伐軍』が長期滞在しているから。俺達より結構早くトゥーベント王国に入ったはずなのに、王都から動いていないらしい。


 普段以上にジロジロと見られるのを我慢しながら、俺達は街の衛兵詰め所を探し始めた。




 ……この調子なら、ヴァンバードも似たようなもんなんだろうな……。


「何て言うか、全然は言いすぎかもだけど、ファンタジーっぽくないね」


 街についた途端に子供の姿になったマオルクスが俺の手を握りながら隣を歩く。


 無事に西の広場にてコテージの設置を終えて、マオルクスとサキマイールの3人で街の様子を見て回りつつ鍛冶屋や冒険者支援組合、冒険者の店など冒険者御用達の店を前世の記憶を頼りに探してみるものの、全く見つからない。


 手分けをすれば早いと思うんだけど、実は街の衛兵隊長に冒険者が用事も無く集団で群れないようにと注意されている。まぁ、武装した余所者が40名も街中でウロウロされたら住民的には不安でしかない。


 そこで、俺がこの2人を指名して街の施設を調べて回っているんだけど……これではタダの散歩である。


 ちなみに何故、その2人を選んだかと言うと会話内容を選ばずに済むから。


「結構最近作られた観光地って感じなんだけど、実際そうかもしれないね」


「同感」


 サキマイールの感想にマオルクスも同意する。もちろん、俺も。


「多分、転生者の仕業だろうな」


 こんな設定とかけ離れた景観に作り替えるような奴は転生者の可能性が高い。そもそも異世界の知識が干渉しなければ『竜騎幻想』通りになるはずなんだ。厄介なのは、別にこれが悪事とは思えない事。


「どう思う?」


「うーん。観光業か建築関係の仕事をしていた人が転生したとか?」


「いやいや、街のデザインや開発をするようなゲームマニアかもしれないし」


 マオルクスとサキマイールに聞いてはみたが、当然ピンとくる答えが用意できるわけもなく。多分答えた2人も会話のネタだろうと判断してくれたと思う。


「あと、気付いた? これだけ歩いていて他の冒険者を見かけない。みんなノーマル職の住人と観光客って感じしない?」


「言われてみれば……」


「だとするなら、まだ決めつけは早いと思うけれど、冒険者不在の街なんじゃ?」


 街には衛兵がマメに巡回されていて、犯罪者と争っている様子も見えない。むしろ、俺達がマークされているまである。治安が良いならば冒険者の需要も無いとは言わないがかなり低いだろう。だから、街なのに支援組合も店も無いってことか?


 ……まぁ、教会と鍛冶屋は見つけたけどね。紹介状が無いから利用するのには気が進まない。


「その可能性はあるかもなぁ……とりあえず、見てない場所を見て回ってから考えよう」


 サキマイールの推測が当たっていると思いつつも、状況的にかなり都合が悪かった。




「……ない」


「ないね」


「もう疲れた」


 どうやらサキマイールの推察は当たったらしく、冒険者の店がランクを問わず1つもない上に冒険者支援組合もない。村なら理解できるけど、ここは街である。町にすらある施設が街にないというのは考え難かった。……でも、マジで無い。


 当然ながら、俺の知る『竜騎幻想』内のヴィエトゥールには両施設とも存在している。


「これはヤバイかもしれん」


「何が?」


「冒険者の店が無いということは、依頼書が無いんだよ。治安が良くて冒険者の手を借りる程の犯罪が無いということは、それだけ冒険者を頻繁に利用する客も存在しない。どうしても必要なら、王都まで多分行くんだろう……多分ね」


 ……そして、その王都には『邪竜討伐軍』が滞在しているわけで。


 そりゃ、広場がガラガラで住民のスポーツ場になっているわけだよ。


 まだ冒険者になって日が浅いサキマイールの疑問に切実な問題であることを簡易的に答える。経験から、こういった内容を詳しく話すと理解するのに結構時間がかかるタイプだと理解していた。


「よく解らないけど、依頼を受けられないのは大変なことなの? とりあえず仕事ならクエストとかで良くない? それこそRPGみたいに」


「実はそれ、割と早めに考えていたんだけどさ」


「ダメだったの?」


 マオルクスも心配そうに俺を見上げる。


「ダメだった。いや、断定は良くないな。……多分、高確率で無理臭い。街を歩きながら見知った顔がいるかと思ったんだけど、全然見かけない。多分、街並みが変わってNPCの配置が変わった……まぁ、そんなイメージだけど、単純にNPCが引っ越したとか、依頼したい内容がそもそも解決してしまったとか、色々あったのかもしれん」


 ……つまり、何が言いたいかというと、『竜騎幻想』のクエストの記憶が使えないということ。同時に、欲しいアイテムがあったとしても、報酬目的でクエストを選べないともいう。


 だとしても、武器の劣化もあるし、メンテをするためにもコネクションは必要なんだよな。




「お兄ちゃん、歩き疲れた。お店、入ろう?」


「……そうだねぇ。何食べたい?」


「……」


 毎度のパターンから考えて、街を一通り歩いたし、適当に店に入って話を聞こうっていう合図だと思うんだけど、その様子を生暖かくサキマイールが見ていた。


「どしたん?」


「サクリって、幼い子に『お兄ちゃん』って呼ばせて喜ぶタイプだったのかって」


「喜んではいないんだけど……むしろ、8歳くらいの子供が普段通り呼ぶ姿の方が異常に見えない?」


 多分、揶揄われているのだろうけど……否定しておかないと繰り返しそうだしなぁ。


「まぁ、確かにマオちゃんが躾のされていないクソガキとは思われるかもしれない」


「嫌すぎるわ……」


 素直なサキマイールの発言をうけて、マオルクスは本気で嫌そうだ。


「あっ……ゴメンね。まぁ、理由はわかったけれど、どうして子供の姿に……」


 そう言いかけて、マオルクスが話を遮る。


「話、あの店に入って話そう?」


「オッケー」


 提案を了承し、店に入る。喫茶店のようなお洒落な店で店員も今まで他の場所で入った店に比べて真面目に働いているように見えた。


「いらっしゃいませ」


「3人なんですけど」


「はい、どうぞ~」


 ウェイトレスが案内してくれる。「適当な席にどうぞ」ではないのか。……凄い丁寧だなぁ。


「ウェイトレスさん、コレとコレ、それとコレね」


 適当に飲み物を3つ注文して、隙を見て話しかけようと思っていたら、チラシが目に入った。




「ただいま~!」


 マオルクスに続いて俺もサキマイールと一緒にコテージに入る。


「どうでした?」


「結論としては、この街は冒険者を歓迎していない。原則として冒険者に向けての仕事は存在していない。よって冒険者の店は存在していなくて、冒険者支援組合も無かった」


 リリアンナの問いに正直に答える。ぶっちゃけた話、町を拠点にした方がマシまである。多分、こういった状況が『邪竜討伐軍』の王都長期滞在の原因なのかもしれない。


「それは困りましたね……」


「それはそうなんだけど、コレなんてどうかな?」


 そう言って、サキマイールがテーブルに広げて見せた紙をその場にいた連中が覗き込む。俺は当然その輪を避けるべく、安全地帯に退避する。……まぁ、適当に距離とっただけだけど。


「……急募、ファッションショーのモデル……?」


「でも、それって【再現師】とか【話術士】とか見た目に恵まれた人の募集なんじゃ?」


 そんな声が聞こえてくる。……その条件であれば適正があるのはリリアンナだけになるけど。


「募集条件書かれていないし、急募ってくらいだから困っているんじゃない? 不要と言われたら仕方ないけど、聞いてみるだけ聞いて、次の仕事に繋がるかもしれないじゃない?」


「……うーん……」


 サキマイールの言い分が一番の後押しとなったようだ。まぁ、仕事がない以上選り好みはできないし、受けられる仕事であれば受けるべきという結論に至ったようだ。




 ……それにしても、こんなファッションショーのイベントなんて知らないし、急募みたいなクエストの存在に心当たりがない。もちろん、俺が知らないだけって可能性もあるんだけど、多分存在しないクエストが発生したのかもしれない。


 もちろん、これまでの旅でそういった現象が無かったわけじゃない。でも、それはゲームの題材にするには魅力の少ない雑用クエストの類であって、こんな目立つ知らないシナリオが発生するなんてことは無かったわけで。


 ……ただ、これだけはハッキリしている。『竜騎幻想』のメインシナリオを追いつつクエストを消化するという行動方針は、この国では無理な可能性が高い。


 女性陣の話が盛り上がっているのを眺めつつ、デンドロム王国では急いで通り抜けただけに、トゥーベント王国では腰を据えて情報を集めながら金策しないと……なんて考えていた。

大変お待たせしました! そして、読んで頂きありがとうございました。

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23人目の読者様を確認できました。ブックマークありがとうございます!

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