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ボスは魔人族のアルラウネ。圧倒的な《リーフシールド》

「〈ハイアナライズ〉の結果が出ました。相手は魔人族のアルラウネ。弱点は火と金属性。物理耐性、光と水と土と木属性が無効です」


 ……何、その絶望的な耐性は?


「なーほーね。アルラウネ、了解」


 ……つまり、サイコブラストだけで倒せと?


 周りを見回してみるものの、こちらに戦力を割く余裕はない。数の多さと睡眠攻撃の面倒さは先程イヤと言うほど理解した。


 ……確かにMPには余裕があるけれども。


 リリアンナの歌のおかげでMPが常時徐々に回復している。ただし、歌っている間は反撃不能だし回避行動も鈍くなる。でも、このMP回復はチームの要の1つでもある。


「フフッ、貴方が相手? 良かった。可愛がってあげる」


 ……うーん。


 当然、このアルラウネは『竜騎幻想』には出てこない。ただ、ヒューム族の主観にはなってしまうが、美女と言って過言ではない見た目をしていた。


 サラサラの腰まである長い緑の髪に銀色の瞳。確かに肌の色は青味を帯びているけれど、露出の多い格好なのにスタイル抜群なものだから、静止画の時点でも人気がありそう。そして声も艶っぽい感じの落ち着いた低音で、絶対に人気があったと思う。


「ごめんなさい。俺の好みじゃないです」


 ……話し方は別として、ロリ声と萌え声が地声の人こそ正義なのだよ。


「大丈夫。貴方は昆虫を恋愛対象にする? しないでしょ? それと一緒」


 彼女がそう言うと、地中から棘のついた茎が鞭のようにしならせて攻撃してくる。


「ヒューム族でも昆虫に虐待するのは子供だけなんだけどな……」


 とりあえず、近づけないのが厄介だった。




「とりあえず、近づかないと話は始まらないか……」


 〈サイコブラスト〉は遠距離攻撃用のスキルである。スキルの使用に近づく必要性はない。ただ、確実に当てるとなると話は別。命中率は距離に反比例するため、MP消費量を考えたら遠距離射撃は考えられない。


 仕方なく短剣を4本取り出し、全てに〈マーク〉を付与する。


 ……〈サイコキネシス〉!


 4本同時にコントロールして何とか後ろを取ろうとした。


 ザクザクザクザク!


 目標に到達する前に召喚された大きな葉に短剣が刺さってしまったため、引き抜いて再度狙ってみるものの、再び宙に浮く大きな葉に再び刺さってしまう。


「無駄よ。何をしようとわたしの肌にその刃が届くことはないわ」


 直接近づこうにも棘の鞭に邪魔をされ、近づくことができない。


 今は4枚しか葉を展開していないが、それが上限とは思えない。俺もまだ6本余分に飛ばせるが、それらが通るという保証がない。


 ……〈アポート〉。


 投げた短剣を手元に瞬間移動される。多分、見える形で飛ばしてもダメだし、葉に受け止められるとその時点で〈サイコキネシス〉の支配が途絶えるので、再度動かす際にMPが消費してしまう。


「メディス、アルラウネに接近して攻撃を当てたい。力を貸して欲しい」


「わかった」


 木属性が無効な時点で彼女の攻撃はダメージにならない。ただ単独で近づけないなら、もう彼女に力を借りるしかない。


 あの葉っぱの盾がどういった性質の魔法かは解らないが宙に浮いているなら避けるなり退かすなりできるかもしれん。


 両手剣を下段に構えて走る。当然棘の鞭が襲ってくるが、それはメディスによる枝の槍で阻止をする。


 メディスを信じてアルラウネの元へと向かうが、そう簡単な話ではないと思い知った。




 進行を塞ぐ葉の盾を試しに剣で叩き斬ってみる。……結論、斬れなかった。正確には食い込むくらいには傷をつけることができるものの、途中で刃が止まってしまう。


「何で中途半端に……」


 強引に剣を引き抜く。剣が盾に捕らえられるくらいなら、いっそ弾かれる方が楽だ。もしかしたら、そういう狙いの仕様なのかもしれない。


 刃の食い込んだ葉に足を掛けて引き抜くと葉が動く。


「なーほーね。ならば……」


 試しに盾に直接手で触れて横に払うと簡単に動く。


「やっぱり。鋭いモノで葉を攻撃すると食い込んで捕らえる感じだけど、打撃系であれば葉が動くって感じか」


「そうよ。でも、だからどうだっていうの?」


 そう言うと、先程払い避けた葉が消える。


「この《リーフシールド》はわたしの意思で好きな場所に出現でき、不要であれば消すことができる。動かされたら新たな《リーフシールド》を出現させれば良いだけよ」


 こう話している間も棘の鞭による攻撃が続いているが、それは全てメディスが捌いている。凄すぎるけれど、余裕があるようにも見えないし、あまり負担を掛けるわけにもいかない。


「じゃあ、根競べだな」


 勢いでどんどん《リーフシールド》を払って前進しようとするが……。


「ちょっと、何してるんですか?!」


「進めないんだって!」


 例えるなら、前に出てくる金太郎飴のような? 退かした先から湧いて来る《リーフシールド》。思ったより多く、出現も早い。〈サイコキネシス〉で短剣を飛ばして多角的に攻撃してみても、全部リーフシールドで防がれてしまった。




「もう無理……一旦、距離をとって!」


 悲鳴のようなメディスの指示に従い後ろに下がる。棘の鞭は射程が短いのか下がると攻撃は止まった。


「ちょっと休憩。少し時間を稼いで」


「稼ぐって、どうやって……」


 正直手詰まりだった。そもそも俺単身じゃ近づくことができない。


 周りを見回すも大量のマンドラゴラと戦っていて、少しは減っているとは思うが、こちらに戦力を割けるほどの余裕は無いように見える。


「ん? どうしたのかしら? もう終わり? ならこちらから行こうかしら?」


「わからんよ? もしかたら、誘っているだけかもしれんし」


 ……正直、困っているけどね。


「そう? お誘いされているなら、のってみようかしら?」


「さぁ、どうでしょうねぇ?」


 思わず一歩下がる。すると、踵に何かがコツッと当たった。視線を下げるとサヤーチカがいつの間に転がっていた。……あ~、デジャブだわ。でも、これなら……。


 サヤーチカを拾ってアルラウネに向けて狙いを定める。


[攻撃してください]


 脳内で聞こえるシステムメッセージ。……やっぱりな。


「何かと思えば……こんな古びた弩で何をしようというのかしら……ほら、狙うのはココよ」


 そう言って自身の胸を指す。……デカいな……何がとは言わんけど。




「わかった。狙わせて貰う」


 多分、俺に迷いの色が無かったからなのかもしれない。……まぁ、過去の経験からその一撃の重さについては想像ができていたからこそ倒せる自信しか無かった。


 それを感じたのか、射線上に沢山の《リーフシールド》が展開される。


 黙って引き金を引く。その瞬間、弩とは思えない反動が身体を襲い身体が宙に舞う。腕だけ持っていかれるかと思っていたのに、サヤーチカの補助なのか、狙いを狂わせないように補助されているようだった。


 体感では遅れて「ドンッ」という音が聞こえ、灰色の矢弾は射線上の《リーフシールド》を全て貫いて、アルラウネの上半身を消し飛ばした。


[ユニット名:サクリウス=サイファリオの全ての情報を獲得しました。これよりサヤーチカの最適化を開始いたします]


 頭の中に再び声が聞こえて、そして……持っていたサヤーチカが粒子状になって溶けるように消えていく。


「ヤバイ……一発でMPのほとんどを持っていかれた……動けん……」


 起き上がることもできず、それを見たレイアーナが慌てて駆け寄ってきた。




 上半身を起こして貰うと、握っていたサヤーチカはもうほとんど消えていた。


「なるほど。ユカルナさんと同じ状況ってことですね?」


「そうだね。それにしても威力凄すぎる」


 完全に消えたところまで今度はレイアーナにも見届けて貰ったわけで。


 周りを見ると、マンドラゴラも一目見て判る程に数が減っていた。


 ……もうすぐ終わるな……腕が痛いし、もう少しだけ休ませて貰って……あれ?


「悪い、MP切れたから、少しだけ休ませて」


 チラチラっと仲間からの視線を感じる。気のせいか、その表情は心配しているように見えた。

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