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9年ぶりの姉妹の再会とユッカンヒルデの合流

 もし、メディスが居なかったら正直帰れなかった可能性は高い。もし、気絶していたら帰る手段が無いのだから彼女の貢献は大きい。


「無理しすぎよ……少しでも気後れしていたら、サクリは死んでいたのよ?」


「結果、2人は無事だったから問題ないよ」


「そういう問題じゃない!」


 メディスに散々叱られつつ、冷ややかな視線のユッカンヒルデが視界に入っていた。


「見えないとは思うけど、ここには俺の他にもう1人、プルームが居る。姫様を助けてくれたのも、彼女だからね」


「……そうですか。ありがとうございました」


 彼女の表情を見ると半信半疑って感じかな? ……まぁ、仕方ないかもしれんけど。


「さて、そろそろ……姫様は動ける?」


「はい、お陰様で……」


 立つには立ったが、割とフラフラしている。気合を入れなおして奥を見る。


「入ってきた側は行き止まりだった。だから、先に進むにはあの扉だけ。出口を目指そう」


 返事はない。お互い、どちらに向けて告げられた言葉か判断できなかったからだと思いたい。


 入ってきた時と同じ構造の重い扉を開けて奥へと進む。スケルトンの群れを倒しながら進むと、一画に横穴があって、その先に広い空間の存在が通路からも見えた。




 最初は上へ向かう道……そんな期待をして横道に入った。しかし、その期待は裏切られることになった。何故なら広い空間の先に道は無かったから。


 広い空間とは言っても、広さは24畳くらい。その空間の中央に元々突き立てられていただろう痕跡を残した大きな弩が転がっていた。


「これは……」


 そう言いながら、ユッカンヒルデが弩に近づき手に取る。


「かなり古いですね……まだ使える?」


「姫様、何か声が聞こえてきたりは?」


 姫の質問には答えず、念のため聞いてみたが、声が聞こえないなら神器ではないようだ。俺は安心して、彼女の元へ行く。


「少し見せて下さい」


「どうぞ」


 ……まぁ、状況が状況であれば無礼にも程があるというものだが、今は許されて良いだろう。


[種族確認……適正確認……思考同期成功。これにより所有権が正式にユニット名『サクリウス=サイファリオ』へ移行されました。適応を開始します。個体名を変更して下さい]


 ……おい。


 そのメッセージの後、視界が暗闇に閉ざされ、現在の個体名と思われる“灰矢の金弩”という名前が白窓に黒字で表示されていた。……多分、これはアレだ。名前を決めないと先に行かせない的な運命の意思だな。


 ……そんな急に名付けなんてと思ったけど、ふと思いついた美少女FPSゲームのキャラ名である『サヤーチカ』という名を神器に与えた。




「……はぁ、これは色々……」


「どういう事ですか?」


 多分、彼女からも俺が何かをいろいろ理解したように見えたのだろう。だから、ただのボヤキとは判断しなかったのだと思う。


「俺が判った事は主に4つだけです。1つはこの弩は神器だということ。それとこの神器は俺に用があって強制的に所有者とされたこと。ここからが重要ですが、つまり、ここは『木竜王』が封印されていた場所である可能性が高いこと。最後に、その封印は既に何者かによって解かれているということ。以上の4つだけですね」


「えっ?!」


 サラッと言ってはみたものの、とんでもない事を言った自覚はある。だから、姫様と一緒であることが色々と面倒なことになりそうだ。


「……多分、その辺に……」


 緑色の大きな水晶……『木竜晶』が抜き身で落ちていた。……宝箱にすら収まっていない辺り、弩を抜いた犯人が宝箱から拾って持ってきたのだろう。


「それは……?」


「『木竜晶』ですね。ここで確定とは言い切ることはできないですが、確率は高いです」


 光竜王だけでなく、木竜王も復活している可能性……想像するだけで恐怖心が過った。




 入口に〈リコール〉で戻ると、既に仲間が全員集合して俺達の戻りを待っていてくれていた。


「……ただいま。待たせちゃったね」


「おかえりなさい。無事成功したみたいね」


 クレアカリンが俺達の帰還に安堵しているのを見て、終わったんだなって実感する。……いや、解ってるから……ただの現実逃避ってことくらいは。


「ユッカン!」


 今にも抱きしめようとするカナディアラに対し身体を張って制止する。


「カナディ、ユッカンヒルデ姫は現在瀕死の状態。転ぶだけで死ねるから衝撃を与えないようにね」


「はっ! 回復します!」


「ユイ、回復は程々に。彼女はまだ味方じゃないから」


 ……まぁ、完全に敵という感じでもないようだけどね。


「サクリ様、妹を助けて頂き、本当にありがとうございました。この御恩はいつか必ず……」


 そう言ってカナディアラは深々と頭を下げる。


 内心、助けるかはユッカンヒルデ姫の決断次第と思いつつも、今は姉妹の再会を見守った。




「さて、そろそろ決断しなきゃいけない」


 ……決断も何も、内心はどうするか既に決めている。それでも、全員に納得して貰うための儀式は必要だろう。


「カナディ。ユッカンヒルデ姫は現在、非常に拙い立場ではある。だからこそ、今後のことを彼女に決めて貰わなければならない。……どうする?」


 ……判断材料が少なくとも直ぐ決断しなければならない中、ユッカンヒルデ姫が助かる手段は俺達の仲間になるのが現実的だ。だが、事前に彼女は命乞いをしないことも知っている。


「姉様の無事を確認した今、元聖女候補を殺害する理由はわたしにない。……わたしの事は処刑してくれて構わない。姉様を宜しくお願いします」


「待って! サクリ様。……お願いします。妹を助けて下さい!」


 ……まぁ、想像できていたし、体裁としてカナディアラの願いという形で彼女を保護した。


 全員が納得している……とは言い切れないが、俺の決断に対し異を唱える者はいなかったのは救いだった。……まぁ、後はユッカンヒルデ姫次第といったところ。


 ……それよりも……この神器であるサヤーチカはまた少女化するのだろうか? それとも、ユカルナだけの話であり、少女ではなく動物など別形態をとるのだろうか?


 もちろん、メディスの反応の良さやユッカンヒルデの決断なども色々気になっていた。




 コテージまで帰って来るまでに普通の武器などは売却し、魔石はユミウルカが全部買い取って、その合算分のお金を分配した。


 売却しなかった魔器は希望者に譲ったが、呪われた装備に関しては保留して保管庫に入れることになった。みんなは教会で浄化して貰えば良いと話していたが、後に必要になる可能性を俺は知っていたので、保管という選択をした。


「あ、ユッカン……」


 治療を終えたユッカンヒルデ姫がユイディア、カオリアリーゼと共に部屋から降りてきた。


「身体の調子は?」


「もう大丈夫です。お手数かけました」


 彼女が頭を下げた瞬間、彼女達の金髪の輝きがスッと消える。入れ替わるように、サティシヤの銀髪が輝き始めたのを見て、日が落ちきったことを屋内に居ながらにして確認した。


「ユッカン。何故ユイを狙ったの?」


 ……あ~、話してなかった。まぁ、本人から聞いた方が良いだろ。


「姉様の命と居場所を守るためです。リムザ姉様はわたし達の排除を狙っていますから」


「やっぱり……露骨に王位狙っているとは思っていたから、そんなことだろうとは思ってた」


 幽体離脱している間に仕入れた情報でも、それに関しては判っていたのかもしれない。


「先程も言いましたが、姉様の無事を確認した今となっては既に王位継承権を返上した身ですし、政略結婚にも使えないので、もう何も未練はないですね」


「そう。……とりあえず、生存確認される前に国外へ逃げきれれば、追手は来ない可能性が高いけど、何処かの国に頼るとかはできないよ? どうするの?」


「姉様は何故、この方達のところに?」


「彼がわたしの封印を解いてくれたから、恩義を返す為……だったんだけどね。結構心地良いのよ、ここって」


 そう破顔しながら答えるカナディアラに対し、苦笑するユッカンヒルデ姫。


「そうだったんですね。では、わたしも一応恩返しのため……あと姉様と一緒に居たいので、わたしも仲間に加えて頂けませんか?」


 そう問われて、カナディアラの懇願もあって、全員がとりあえず了承した。




「ねぇ、サクリさん」


「ん?」


 風呂の後、寝るまでのゆっくりしている時間の間にメディスが話しかけてきたが、その表情は困惑していた。


「何故、あの雌個体……ユッカンヒルデでしたっけ? あの人の回復を最初、身体の再生だけにしたの? 全快にすることも可能だったのに」


 元々、彼女を助けるのが目的と認識していたので、さぞかし理解できなかったことだろう。


「そうだな……まず前提として、彼女は事情を抱えていたとはいえ、敵側だった。だから、全快にした途端、こちらを攻撃してくる可能性は充分にあったんだ」


「それなら、何故敵対している者を回復して助けようとしたの?」


「仲間が殺されていない以上、身内が助けたいと思っているなら見捨てられない。元々、カナディの意思に関係なく助けることが目的だったこともあるからね」


 もしかしたら同族で争う事の無い妖精族であるプルームには理解できないのかもしれない。


「……じゃあ、敵が命乞いをしたら、誰でも助けるの?」


「状況によるかな。俺は彼女のことを知っていて、彼女にも未来を選ぶ権利があるからさ」


 疑問が解消されたのか、気のせいでなければメディスの好感度は上昇したように見えた。

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