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海路ルートの戦闘マップ。遺跡『木竜王のねぐら』

 かなり早めの昼食を食べ終えて。


「さて、行こうか」


「皆さん、力を貸してください」


 俺が出発を促すと、ユイディアが立ち上がって深々とみんなに頭を下げる。


「今回は全員で?」


「うん、全員で出撃する。正直、戦力の出し惜しみをできる状況ではないと思ってる」


 クレアカリンの問いに即答しつつ、席を立つ。


「あっ……悪い。伝え忘れていたことがあった」


 俺の一言で周りの動きがピタリと止まった。


「1つ、確認しておく。全員で出撃するとは言ったけれど……もし、国に狙われる覚悟がないなら、今回は留守番でも構わない」


「……あの、どういう意味でしょうか?」


 カオリアリーゼが不安そうに俺の真意を探る。


「少し冷静に考えれば誰でも気づく話だよ。俺達はユッカンヒルデ姫に呼び出されている。そして彼女達の目的はユイディアの身柄の拘束。しかも、ご丁寧に人質をとっている辺り、普通に呼んでも断られる前提のことだろう」


 この説明をする前に理解していた連中は別として。判っていなかった連中も大半はこの説明で状況を理解したようだった。……でも、そうでない人もいるようで。


「今回の相手はデンドロム王国の兵士。戦闘になる可能性が高い。俺はその孤児とユイディアを守るために国を敵に回す覚悟をしてある。そして、ユッカンヒルデ姫を倒さずに兵士のみを殲滅して、可能であれば国からの追撃を止めたい」


「あ~、そういうことですか……」


「『正義の味方ではない』と常々言っているのは、こういった場合もあるって事なんだ」


 俺の傍でメディスがボヤく。……主に彼女に向けての説明ではあったが、彼女の声は誰にも届かないので、他の若干名の人のために説明をしたわけだ。




 遺跡『木竜王のねぐら』は、アルボンニウの南西にある洞窟から入った先にある。これは昨日知った事実だった。


 そもそも俺は海路ルートのシナリオで『竜騎幻想』をまともにやってない。「動画」では確認しているけどね。


 仮に海路ルートのシナリオをやり込んでいたとしても、流石に遺跡の場所までは知らない。


 幸いだったのは、アルボンニウから馬車で1時間もしないで着くということ。


「よく来た、冒険者達。それで、肝心のユイディアは何処に?」


 視界の先に地面に穿たれた棒に括り付けられた女の子を確認。


「カオリン、彼女の顔に見覚えは?」


「あれはアーヤ……アーヤカペラです。間違いないです」


「……了解」


 こちらは総勢20名。未成年のカロライン、フィルミーナと戦力外のユカルナは留守番である。尚、エルミスリー、アグリシアさんはまだ戻っていない。


「もちろん、連れてきている」


「では、ユイディアをこちらに向かって歩かせなさい。確保すれば、この子は解放する」


「いや。そっちにとっては、その子の命なんて些末な問題なのだろ? 先に人質を解放してくれ。保護したらユイディアをそちらに歩かせる」


「信用ならないわ」


「知ってる。でも、お互い様なことくらい、姫様にも判るのでは?」


「そう。なら、こちらは殺害しても良いということかしら?」


 ……まぁ、お約束だよな。でも、最も強い切り札はこちらにあるんだよ。


「ふ~ん……そんなこと言うんだ? わたしは悲しいよ」


 実は、仲間の内数名、カモフラージュのためにフードを深く被ったローブ姿で来て貰っていた。その中の1人にカナディアラも含まれていた。だが、今の発言で彼女は自らフードを上げて顔を晒した。


「……貴女は?」


「カナディアラ姫の顔、忘れましたか?」


「え?」


 カオリアリーゼの発言に彼女は露骨に動揺している。


「姫、予定変更です。……お前達、殲滅だ!」


 気づいてはいたけれど、一応死角に隠れていた兵士達が武器を抜いて現れた。




「予定通りに!」


 抜剣と同時に指示を出すと全員が武器を構える。


「《対物障壁(プロテクション)》」


「天王星の星霊よ、仲間達に星々の加護を!」


「お願い、プルーム達。少しだけ力を貸して!」


 ユイディア、マオルクス、カナディアラが最初に強化と弱体を入れる。


「聞いて。妖魔相手であれば充分な準備と思えるかもしれないが、相手は人で向こうも強化済み。準備を入念にしてもアドではないと心得て!」


 そう大きめの声で注意すると「はい」やら「了解」やら、各々返事が返ってくる。


「でもね、サクリ君。術者が多いチームなのは伊達じゃないよ!」


 ハルチェルカは片手剣を抜いて敵に切っ先を向ける。


「《光精の刺角(フォーカス・レーザー)》」


 光の線が直線状にいた敵ユニットを貫く。見た目は《閃槍の投擲(フォーカス・レーザー)》と一緒だが、精霊魔法は無詠唱で発動する。その代わり光属性の精霊魔法は明るいところでしか本来は使えない。……ハルチェルカはカーバンクルと契約しているので例外のチート能力である。


 ヒュンっ!


 メアリヤッカとワカナディアによる弓による遠隔同時攻撃で敵の【魔術士】を瞬殺すると、その頃には前衛のメンバーが攻撃を仕掛けていた。


 ……杞憂だったか?


 実は敵が国であるという時点でデンドロム王国兵に対し怯んでしまうのではないかと思っていた。だが、いつも通りの動きが出来ているのは、味方にカナディアラがいることが大きいかもしれない。


「あそこの【重戦士】が邪魔ですね。【神官】への遠隔攻撃が塞がれます」


 いや、充分なくらいの火力だよ? だって、多分ゲームで言えば1ターン目だからね。




 最初は圧倒的な戦力差でこちらが押していた。


 敵ユニットに弓を使う者は無く、魔法使いは早々にメアリヤッカとワカナディアが無効化していた。ただ、ヒーラーの要であった【神官】だけは【重戦士】と共に現在も健在で、数名の【修道士】と共に今も前衛を援護していた。


 しかし、その前衛も先程ほぼ殲滅し終えて、残り敵ユニット総数も最初の約3割である6名しか残っていない。


「……本当に情けない」


「そうは言うな。相手は思ったより手練れの冒険者のようだ」


 まぁ、ユニットの強さはチート無双するような仲間こそ居ないが、育成手段は間違いなくチートと言っても過言ではない。


 奥で全く動かなかった男が【重戦士】に愚痴ると、宥められていた。……充分失礼だけどな。


「出番無いと思っていたのに……なっ!」


 最奥の【神官】の居る場所に居たと思ったら、一瞬で対面の奥に居たユイディアの傍まで距離を詰めると細剣を彼女に向かって突き立てようとするが、寸前のところでカオリアリーゼが盾で受け止めていて、反撃するものの、攻撃がかすりもしない。


「気を付けて下さい。この人は【軽戦士】です」


 【軽戦士】の特徴はその脚力を活かした移動速度と攻撃回避能力である。攻撃力は低いものの、その移動力と回避能力で装甲の薄い後衛を潰していく攪乱要員である。


「後衛を守れ。狙ってくるよ」


「……後衛の防御は任せて。それよりも……」


 それだけを言ったかと思うと、マオルクスは懐からタロットカードを取り出し、1枚抜く。


「タロット武装……《戦車》!」


 マオルクスの【符占術士】の術でパワードスーツの武装をしたコスプレ姿になっていた。




「ほぅ……行くぞ、木偶!」


 【軽戦士】の攻撃はマオルクスに通らなかった。むしろ、そのまま腕を薙ぎ払い、圧倒的な力で【軽戦士】を吹き飛ばす。


「……なんだ、それは……ゴーレムの類か?」


 ……聞かれても、俺も初見なんだよな。【符占術士】の力は。


「じゃあ、こっちだな」


 一瞬でこちらの防御をかい潜り、先程からMP回復をさせる歌を歌ってくれていたリリアンナを狙ってきたが、それも予測されていた。


「させません!」


 マオルクスの先回りは無理と判断していたアミュアルナが待ち構えてカウンターを放つ。


「今です! 《呪球の放擲(カオス・ドリーム)》!」


「《光精の叩尾(フラッシュ・ボム)》!」


「《土精の叩尾(ロック・スラップ)》!」


 アッツミュ、ハルチェルカ、サティシヤの範囲魔法が一斉に【重戦士】や【神官】を爆撃する。それで生じた隙にレイアーナの光の魔銃がタイミングよく【軽戦士】にヒットした。


「クソッ、目がぁ……!!」


 目が眩んでいる間にメアリヤッカとワカナディアの矢が彼へのヘッドショットを決めた。




「まさか、【神官】を倒しちゃうだなんて……流石姉様達ですね……」


 そう言うと、ユッカンヒルデは縛っていた紐を切り、人質を解放する。


「……何を勝手している?!」


 【神官】が苦言を喚きながら何か懐から宝石のようなものを上に掲げる。


「きゃあああああ!」


 ユッカンヒルデの足元の地面が消失し、下へと落ちていく。


 ……そっちのパターンかよっ!


「クレア! 後を任せる。予定通りに!」


 穴へ目掛けてダッシュしながら指示すると、その勢いのまま穴に飛び込んだ。

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