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第三王女、【学者】ユッカンヒルデ=S=メイビスリーフ

「落ち着いて。さぁ、あなたが賜った新たな天職は?」


「残念ながら【学者】のようです。女神ナンス様……何故、【魔術士】にして頂けなかったのでしょうか?」


「希望とは違いましたか。ですが、これから努力を重ねれば、【魔術士】への進化も不可能ではありませんよ。大事なのは日々の努力と諦めない心です」


 ……あ~、うん。これはユッカンヒルデのオープニングだな。


 そろそろ夢を見る頃だとは思っていた。


 ユッカンヒルデ=S=メイビスリーフ。身長は165センチとこの世界の女性としては割と大きい身長。顔の大きさに対して大きな深い灰色の瞳。そして、この世界の人間なら誰しも憧れる淡い金髪。16歳とは思えない程異性を悩殺していく大き過ぎる胸とプリンっとした桃尻とムチムチな太もも。……日本ではエロとお笑いのネタを随時提供する不憫な美少女であり、推しの1人でもある。「可哀想は可愛い」の代名詞とも呼ばれた人でもある。


 視界が暗転し、謁見の間。国王と母親である第三王妃の前にユッカンヒルデは賜った天職の報告をする場面。


「お父様、お母様……申し訳ありません。わたしが賜った天職は【学者】でした」


「何を詫びる? 【学者】は素晴らしい職業。どんどん知識を蓄え、国を導く者として力を貸してほしい」


 国王がそう娘に声を掛けるが、当然のようにユッカンヒルデは首を横に振る。


「【学者】ではダメなのです。わたしは【魔術士】を賜って、行方不明のカナディ姉様を探しに行きたかった……」


 カナディアラをカナディ姉様と称しているが、2人は同じ歳。数ヶ月カナディアラの方が早く生まれたに過ぎない。でも、ユッカンヒルデがそう彼女を呼ぶのは幼い頃から行方不明になるまで、自身の手本として一緒にいたことが大きい。


「お母様のような【大魔導】になるべく、ずっと魔導書や魔法の研究本を読み漁っていたのに……どうして……」


「……ユッカン……」


 王妃はユッカンヒルデに近づくと抱きしめる。


「何も諦めることはありません。確かに【学者】では身を守る術がないかもしれません。ですが、何も単身で探す必要はありません。城の兵士を数名同行させて……」


「……お母様……」


 ユッカンヒルデは気づいていた。既に城の兵士でも信頼に値しないということに。




 視界が暗転し、今度は戦場へとシーンが移動した。その時点で、何のシーンなのか直ぐに理解した。


 このマップは洞窟『ドランガルフ雨流大道』。出国する際に港を塞がれ、逃げるように陸路でトゥーベント王国へ向かうために通る。その際に先回りされていて戦闘が発生するんだけど、その際にユッカンヒルデが敵ユニットとして参戦してくる。


 そして、ここでのポイントはその敵ユニットであるユッカンヒルデを倒さずに他の敵ユニットを殲滅すると、彼女は降参する。その後にイベントが発生するのだけど……。


「……どうぞ、好きにして下さい。命乞いはしません」


「何故、このような事を?」


 【剣の乙女】が問いかけるも何も答えない。


「どんな理由があろうとも、わたしは【聖女】候補だった無実な彼女を手に掛けた。それは許されるべきことではないんです」


 そう、陸路ルートシナリオでユイディアが殺されるのはこのマップである。夢の中では省略されてはいるが、実際には戦闘開始時にイベントがある。内容はユイディアが人質になっており、革命軍リーダーのカオリアリーゼの身柄を引き渡せというもの。


 ちなみに、カオリアリーゼは革命軍のリーダーではないし、そもそも革命軍は存在していない。要は王位継承権を一応持っているカオリアリーゼと彼女の親友であるユイディアの処刑である。しかも、ユッカンヒルデはそれに反対する立場なのだが、カナディアラの命と引き換えにされ、どうにもできない状態だったはず。


「……気づいてますよ。貴女はユイディアさんを殺していない。殺害を躊躇っている間に第三者に殺害されましたね?」


「……確かにそうです。でも、わたしは姉の命を守るためとはいえ、本気でユイディアさんを殺害しようとしたことは間違いありません。わたしが殺したのも同じです」


 そこで首を刎ねる気満々だったカオリアリーゼは少し悩んだ末に我慢で震える手で抜刀した剣を鞘に収める。


「……わたしは彼女の事を許せない。それでも彼女の気持ちも理解できる。ですので、【剣の乙女】に判断を任せます」


 そういうと、選択肢が現れる。1つは首を刎ねるというもの。もう1つは見逃してユイディアを埋葬する。


 どちらを選んでも、ユッカンヒルデは仲間に加わらない。この夢の中のプレイヤーは2つ目を選択したようだ。


「こんなわたしを許すのですか?」


「許すわけがない!」


 少し食い気味にカオリアリーゼがユッカンヒルデの言葉を否定する。


「だって、そうでしょう? ユイディアは別に王家の血筋でも何でもない。ただ、金髪金眼に生まれただけの孤児です。勝手に【聖女】候補とアルボンニウの大聖堂に強制的に連れて来られて、当たり前の生活を奪われた。そんな子の末路がコレですよ? 許せるわけがない!」


 ブチ切れているカオリアリーゼはその場を離れて、ユイディアを埋葬しに行った。




 視界が暗転して、今度はクエストのイベントアニメーションだった。


「カナディアラ姉様!」


 ゲーム内時間で言ったら、1年以上経過しているはず。大陸を巡った後、第一王女への反撃準備が整った後に『世界樹の森』の封印区画へユッカンヒルデと共に訪れるとイベントが発生する。


「……お姉さんは誰?」


「わたしはユッカンヒルデよ、姉様」


「……そっかぁ。大きくなったね」


 そうカナディアラが答えるとユッカンヒルデは泣いて彼女を抱きしめる。


「わたしね、何となく封印されていたのは解っているの。だから時間がいっぱい過ぎていて……だからユッカンが大人になっているのも理解はできるんだけど……」


 そう言いながら自身も混乱しているというのに、ユッカンヒルデの髪を撫でる。


「ほら、そろそろ泣かないで? これからはずっと一緒だよ?」


「うん……姉様。ごめんなさい、姉様の帰る場所、まだ用意できていないの」


「お城は……まぁ、無理よね」


 そう尋ねられ、ユッカンヒルデは頷く。


 『竜騎幻想』でも、カナディアラを封印したのは第一王女であるリムザキュアの手の者。全ては王位継承をリムザキュアに確定させるための陰謀である。ただ、不思議なのはリムザキュアの天職は【聖女】ではないんだよな。だから、王位継承権一位のカナディアラを排除し、第三位のユッカンヒルデも『邪竜討伐軍』に処分させようとした。


 多分、ゲーム内で描写されていないだけで、他の王位継承権上位の面々は既に殺害されているかもしれない。


「わたしも王位継承権を剥奪されてしまって、ソーンブルグ家の人間だと名乗れないことになっているの」


「えーっ?!」


 驚き方がオーバーなのは子供っぽい演出。まぁ、ゲームではカナディアラの精神年齢は7歳のままだからなぁ。


「……コホン。失礼いたしました。じゃあ、それも何とかしないとだね」


「それはいいんです。わたしは王位に興味はありません。是非、姉様に王位を継いで貰って、わたしはそれを支えたいと考えています」


 まぁ、彼女が女王になるのは邪竜王が討伐された後の後日譚になるんだけどね。




 再び視界が暗転……今度は何処に飛ぶのかと思ったら、とても珍しい場面だった。


「ありがとう、ユッカン……」


「おめでとうございます、カナディアラ姉様」


 場面はデンドロム王国の王城。謁見の間。今まで見てきた光景と大きく違うのは、カナディアラの頭上には大きな王冠が輝いている。


「これで大きく国は変わるわ」


 その場にいるのは、カナディアラとユッカンヒルデ、そして第一王妃と第三王妃。この場には第二王妃と第一王女……それに元国王の姿も見えない。


 今回の計画の黒幕である第二王妃は処刑された。そして、娘である第一王女もまた国外への永久追放という形で決着した。また、元国王は直接の罪はないものの、父親の責任として、自主的に第一王女……いや、元第一王女の監視役として同行することに決まった。


「まずは、この混乱した状況の収集に尽力致します」


 ユッカンヒルデは深々と頭を下げると踵を返して謁見の間を退室する。


 ……一見ハッピーエンドに見えるんだけど、実はこれ、バッドエンドなんだよな。


 実はこのシーン。エンディングではない。ユッカンヒルデ関連の最終シーンである。


 この後、アニメーションが本来は流れるはずなんだが、カナディアラ女王の評判はどんどん上がる一方、ユッカンヒルデの評判は最低のままだった。それはユイディア……【聖女】候補の殺害者としての汚名が雪がれることがないからだ。……プレイヤーは濡れ衣だと知っているけれど、ゲーム内の国民には知られていない。


 そして、国民の酷評に耐えきれなくなったユッカンヒルデは、国の運営が一段落したタイミングで宰相を辞職し、国を去る。国民から惜しまれることは無く、悲しんだのは王室の人達だけ。そんな国民に嫌悪感を抱いたカナディアラは国民に対し必要以上の愛を注ぐことなく、効率的な政治をすることになる。


 ユッカンヒルデのクエストを全部クリアした時点で、『邪竜討伐軍』からユッカンヒルデは永久離脱する。……知らないとメインシナリオ終盤でかなり痛手だったりする。


 尚、俺の記憶が確かだったら、公式の発表としてハッピーエンドもあるということらしいけれど、まだ発見できたプレイヤーは確認されていない……いや、いるかもしれんけどね。




「……ん……」


 パチっと目が覚める。まだ部屋は薄暗く、まだ日が出始めたばかりといったところ。夢を見た日は毎回早起き。そして、毎度の如くユカルナがベッドに潜りこんでいる。……ご丁寧に毎回寝たフリまでして。


 股間に異物感。やっぱりメディスが潜り込んでいた……前にルーチェから話を聞いた限りでは、カンガルー等の有袋類でいう育児嚢のような感覚らしい。まぁ、思春期男児には大変困る所業なのだが、どうせ俺の言う事なんて言っても聞かない。


「……ん? 起きたんですかぁ?」


 寝ぼけて活舌が怪しいメディスが瞼を軽く擦りながらズボンから這い出てくる。


「……さむっ……まだ早い時間じゃないですかぁ……」


「ゴメン。ちょっと予知夢を見てさ」


 ……いや、断りも無くズボンの中に納まってくるメディスも大概だけどね?


「どんな夢でした?」


「簡潔に言うと、ユッカンヒルデ姫も仲間に加わるって夢」


「その名前は、例の手紙の?」


「そう」


 メディスはヒューム語を読めない。だから俺が音読した内容を理解しているだけなんだけど、仲間になる雰囲気では無かったことくらいは当然分かっていた。


「正直、目的のためには彼女を助けなければいけないんだけど、敵対している彼女をどう助けるべきなのか……それが分からない」


 ユイディアが本来の居場所に不在なために、色々支障をきたしているのかもしれない。


 そもそも、手紙が来た原因というのも本来のシナリオとは違う動きをしているからかもしれない。この世界は海路ルートのシナリオで話が進むことを前提に動いている。それなのに、俺が陸路ルートのシナリオを攻略し始めた。当然、本来の陸路ルートのようにはならない。


 だからこそ、手紙で呼び出されるのは完全に想定外だった。でも『竜騎幻想』の存在を無視すれば、ただの冒険者が手紙で呼び出されることも稀にある日常の1つというわけだ。


「その人、本当に仲間になるのですか?」


「……これまでの例を考えると仲間になってしまう。俺の意思に関係なくね……いや、実際問題拒否できる雰囲気でもなく、戦力として有効だから断固拒否という姿勢ではないけどさ」


「まぁ、殺すよりは助ける方が良いに決まっているし、手伝えることは協力します」


 なんとなく、メディスはこちらに歩み寄ってくれているのではないかと感じていた。

読んで頂きありがとうございました。

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何卒よろしくお願いします。

尚、5日間連続投稿4日目+本日中にあと3回投稿します!

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