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『邪竜討伐軍』がデンドロム王国を出たという情報に意図を感じる

 結論から言うと、リヴァヴィルのナッツリブア冒険者支援組合では、カナディアラの正体はバレることなく“サクリウスファミリア”に入ることができた。……確かに普通、行方不明の第二王女が冒険者になるなんて考えられないだろうから、それは想定通り……いや、範囲をかなり上振れしたかもしれんけど……だった。


「あのドキドキは無駄になった……こんなことなら、最初から……」


「いや、あの時は判らんし」


 凹むカナディアラにツッコミしつつ、俺達は今、アルボンニウに戻ってきていて、デンドロム王国の組合本部へ向かっている。元々はそうなることを回避するためにリヴァヴィルの組合へ行ったのに。……世間一般でいうところの二度手間である。


「それにしても……視線が痛いね」


「少し恥ずかしいです」


 激しく同意。……なんて、懐かしい単語が脳裏を掠める。正しい日本語ではないと気づかず使っている日本人も多いかもしれない。……通じれば良いという考え方もあるけれど、間違っているという認識もセットで使わないと恥ずかしい存在かもしれない。


 前世の思い出はこの辺にして、何故視線が痛いのかというと、カナシリアとカロライン、フィルミーナ、ユカルナを除いた19人という大所帯で組合へ向かっていたから。普通冒険者は6人+数名のチームなことが多い。ただでさえ武装した人が集団で歩いているのだから目を惹くというのに、これだけ大勢でいれば注目されて当然だろう。


 俺から離れようとしないサティシヤの言葉に同じく離れようとしないユイディアが同意する。


「仕方ないよ。目的地が一緒なのに手分けして行く意味がない。ただ、現地の人の邪魔にならないように移動すれば良いと思うよ」


 同じく離れようとしないリリアンナが少し不機嫌そうに言ったのは、俺の隣を歩けなかったという不満であり、それが露骨に漏れていた。……いや、みんな離れて歩こうよ。ね?


 そんな会話を聞きながらもカナディアラは不安そうに歩いている。多分、紹介状があるから平気だとは思うけれど……問題ないと断言するには判断が難しかった。




 不安は取り越し苦労だった。本当に紹介状の効果は大きかった。


 入ると受付には男女1人ずつ居たのだが、紹介状を見せると中身を確認された後、別の女性が出て来て応対が始まった。


 冒険者ランク昇級のついでに他のメンバーの更新も行って貰い、待ち時間の間にリリアンナが担当になった女性に話しかける。


「あの、『邪竜討伐軍』をご存知ですか?」


「もちろん知ってますよ」


 そう言ってから、彼女はハッとする。


「そうですよね、皆さんの多くがグアンリヒト王国出身ですもんね。……えーっと、『邪竜討伐軍』はストロムボールへ向かい、そのまま海路で出国すると聞きましたよ」


「思ったよりも早いですね」


 ……確かに、グアンリヒト王国内にいた時よりは滞在期間が遥かに短い。


「彼等は海路で入国し、ストロムボームからアルボンニウへ来て、その足で国王様とお会いになったんですけど……」


「【聖女】を出せって?」


「いや、それがですね……これは多分デマだとは思うのですが、【聖女】は不要と……」


 ……ほぅ?


 仮に城にいる【聖女】を偽物と見破ったのであれば、優秀なのだと思う。ただ、その可能性は低いだろう。『竜騎幻想』の話を知らないと彼女が偽物だとは思わないはずだから。事前に疑わしいという情報も入手できないだろうし。


 俺の予想は、多分「女かぁ……要らない。男の方がいいわ。美形なら尚良し」くらいの考えだったのではないかと予想している。……いや、ただの偏見だから流石に自信無いけど。


「それで、どうなったんですか?」


「国王様は大変喜んで、代わりに色々協力すると……優秀な兵士を数名スカウトしていったとか……」


 まぁ、それが正解だよな。


「その後、『木霊王の古祠』へ向かって戻ってきたかと思ったら、デラフトウッドへ向かい、腑に落ちない感じでストロムボームへ向かったそうです」


「腑に落ちない……かぁ」


 リリアンナがチラッとこちらを見る。彼女の話す内容は知りたいことを知るには充分な情報量だった。




「あっ、そういえば……」


 思い出したかのように受付の女性が言い難そうに言葉を続ける。


「聞きましたか? 実は、第三王女のユッカンヒルデ様が国内滞在の間『邪竜討伐軍』の補佐役として同行していたのですが、デラフトウッドへ向かう際に王室から密命を受けていたらしいんですよ。ところが、失敗したらしくて……」


「そうなのですか?」


 ……ここまでくると意図的に情報を拡散しているようにも見える。現に彼女がカウンターに来てから元々いた受付の2人は奥に引っ込んでしまった。今、この場にいるのは俺達と彼女のみ。完全な密室ではないにしろ、何を話しても知らないで通せる環境である。


 恐らく、リリアンナも薄々感じていると思う。


「実際、ユッカンヒルデ様の城内でのお立場はかなり危うくなりまして、実は先日王位継承権を剝奪されて、王家のソーンブルグを名乗れなくなったのだとか。現在は第三王妃様のご実家であるメイビスリーフを名乗っているそうですよ」


「……でも、それってまさか……」


「そうなんです。今、ソーンブルグ家の姫様は実質第一王女のリムザキュア様のみ」


 事情を知っていればとんだ悪女っぷりなのだが、知らなければただの権力争いなんだよな。


「でも、ユッカンヒルデ姫も王様の娘なんでしょ? 王様は止めなかったの?」


「どうなんでしょう? 流石にそこまでの噂は……」


 噂ねぇ……でも、国王的には第一王女が一番可愛いと思っている。何せ『邪竜討伐軍』に要求されなくて喜んだくらいだし。でも、リリアンナが指摘するように結果として王家から追放された件に関しては穏やかではないんだよな。


「うーん……どんな命令をされていたか知らないけれど、国内問題な割に厳しいような……」


「確かにそうですよね」


 そこまで話すと、彼女は立ち上がって奥へと入って行く。


 ……うーん。悪意こそ感じないものの情報に明確な意図を感じるんだよなぁ。




 1分くらいで戻ってきた担当女性はトレイを持っていた。更新が終わったのだろう。


「お待たせしました。……サクリウス様」


「はい」


 まぁ、返事をしなくとも男は俺1人だけだから判るだろうし、彼女も最初から俺の方を見てはいたけれど、何となく習慣で返事をしてしまう。……無視するよりは絶対良いこと。


「こちら、ブロンズ級の冒険者カードとなっています。確認してください」


「どうも」


 カードの内容を確認する。


 ……MPがかなり上がっている……ゲームで言うところの【妖精操士】の成長補正という奴なのか? 筋力なら筋トレ、移動力ならランニングなど鍛える方法は思いつくものの、MPを増やすトレーニングは想像できない。でも、天職による成長補正なんて聞いたことがないし、今までの行動で何か原因があるはずなんだけど。


 確認している間にもどんどん呼ばれては新しい冒険者カードが配られている。


「……次は……ユイディア様」


「はい」


 多分、俺が返事をしてしまったからだと思うが、続く人も全員返事をしている。……個人的には良いことだと思うし、褒められることさえあれども笑われることでもないし……嫌なら黙って受け取るだろう。


「こちら、ブロンズ級の冒険者カードとなっています。確認してください。それと……こちらをお預かりしておりました」


 そう言って、封筒をユイディアに渡す。


「ありがとうございます。……これは、お父様から?」


 彼女はすぐに封を切って手紙の内容を確認していた。




「……こ、これは……」


 そう言ったかと思うと、ユイディアはリリアンナに手紙を渡す。


「読んでいいの?」


「皆さんに伝えて下さい」


「わかった……ユイディアとその仲間達に告ぐ。全員で遺跡『木竜王のねぐら』へ来られたし。時間は手紙を読んだ翌日の日没。「行く」、「行かない」の判断はそちらの自由ではありますが、こちらはユイディアが暮らす孤児院の子供を1名人質として預かっている。来なかった場合は適当に処分することになると思うので、よく考えて決断することをお勧めします。……デンドロム王国第三王女ユッカンヒルデ=S=メイビスリーフ……だそうです」


 さて、面倒な展開になったな。


 最初は『邪竜討伐軍』が海路ルートでメインシナリオを進め始めたので、こっちが陸路ルートを進めれば鉢合わせ確率は低い上にカオリアリーゼを仲間にできるという程度の考えだった。しかし、そもそも『邪竜討伐軍』が海路ルートで入国した時点で、このデンドロム王国は海路ルートのメインシナリオが進行している世界なんだよね。


 しかも、仲間になるはずのないユイディアが仲間になって同行しているわけだから、海路ルートのシナリオも予定が狂っている。恐らく、例の地下墓地での逃げた男がユイディアを拉致する予定だったのかもしれない。


「……ユッカンが……信じられない……」


 ポツリとカナディアラが悲しそうに呟く。


「まぁ、信じなくても良いと思う……ただし、その手紙の文面は事実だろうけどね」


「え?」


 俺の一言にカナディアラは理解できずに俺を見つめていた。


「多分、孤児院の子供の誰かが人質にされているのは事実。明日の日没に現れなければ殺されてしまうだろう。でも、それを企んだのはユッカンヒルデ姫とは限らない」


「……あっ!」


 ……俺の知るユッカンヒルデはそんな事をするタイプの人じゃないからな。

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何卒よろしくお願いします。

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