普通ではない冒険者チームへ語る第二王女と変わり者エルフの思い
フェアリークイーンとの会話を終えると、俺達は早々に世界樹の根元へと瞬間移動していた。多分だけど、妖精界ではいくら休んでもコノミリナ達は回復しないと考えたためだ。
「時間的な余裕はありそうだけど、体力的な問題からルースヴァルトの里で休ませて欲しいんだけど、お願いできないかな?」
「大丈夫ですよ。来た時と同じ人達に頼んでみます。とりあえず、向かいましょう」
ワカナディアは即答し、休むために里へと向かった。当然のように無言のまま里まで歩き、疲れた様子を見せないワカナディアにお願いして、部屋を用意して貰っていた。
疲労しているコノミリナさん達の世話は女性陣に任せ、俺は1人部屋で先に休ませて貰っていた。……手伝う体力はあるが、男の俺にして欲しい事は多分ないだろう。
「……やはり、納得できないですね」
メディスがボヤく。
「どういう意味?」
「どうやら貴方も知っているらしいけど、わたしは貴方の過去を知っているの。だからこそ思う。貴方はわたしの何を知って契約しようとしているの?」
「……まぁ、今は何も知らんかな。ただ、普通は見る事も会話もできないわけだから、それが可能になった時点で多分特別な関係だと思うんだよね。そんな相手が相性悪いとは思えないから、仲良くなりたいとは思うよ」
「ふ~ん」
「だからね、契約に抵抗はない。さっきみたいに恋愛みたいに言われると若干抵抗はあるけれど、友人だと思えば良いかなって」
「やっぱり、恋愛対象にならないよね?」
「それこそ、何も知らない人に恋愛感情があるとか異常でしょ? ただでさえ種族が違うし、常識も違うわけだから、友人くらいで良いんだよ」
「……なるほどね」
……あと言葉にはできんけれど、小さすぎて保護対象にしか見えんのよ。
夜。食事は宴会になるかと思いきや、仲間のみで集まっての食事となった。……まぁ、賑やかなことには違いないが、普段と変わらないと言えば……まぁ、そうなのかもしれない。
……仕方ないことだよな。こちらから宴会を催促するのは違うし、そもそも言葉が通じないのだから、初めて来た時に歓迎して貰えただけでも好待遇な上に、別格の扱いだろう。
「サクリさん。お願いがあります」
「お願いって?」
声をかけてきたのはカナディアラ。だいぶ関係的にも打ち解けていて本人らしさが垣間見えていたが、今の彼女は真剣そのものだった。
「明日からリヴァヴィルに向かうんですよね?」
……ん? 俺は話してないけど、誰かから聞いたか?
「うん。仲間と合流する予定だけど」
「わたしはリヴァヴィルで『天職進化の儀』を受けて冒険者登録をしようと考えています。その際に申し訳ないですが、登録する際のお金を貸して頂けないでしょうか?」
……おぅ、もう全員から了承を得られると思っておられる……まぁ、正しいけれども。
「金を貸すことは問題ないけど、何故、リヴァヴィルで?」
「多分、アルボンニウでは名前を出した時点で問題が起きると思うんです。ですが、リヴァヴィルであれば、偶然の一致くらいに思って貰える可能性があるのではないかって」
「なるほどね。そういえば、聞いていなかったけど、冒険者になってどうするの?」
「まずは力を身に付けます。そして、おかしくなった国を本来の姿に戻します」
国の事を憂いていたことも知っていたし、自身が非力であることも自覚しているみたいだ。でも、それは上位精霊達からの願いでもあるわけだし、やらなければならないだろう。
「国外脱出の件は……?」
「キャンセルでお願いします。わたしもエントの願いを聞いた者な上に、自分にも関係のあることである以上、自身で解決するつもりです」
……でしょうね。
エントの依頼に関係なく、『竜騎幻想』でのカナディアラのクエストを進めるとデンドロム王国の王室問題の解決と偽【聖女】を捕らえることができる。言うなれば、デンドロム王国関連の最終話的な扱いになっている。だから、もし救助しても仲間に加えなかった場合は王室と対峙することになる。……まぁ、結果は違うモノになるんだけど。
「そのぉ……最後までお付き合いして頂けますよね?」
不安そうに俺の顔色を伺うように覗き込むカナディアラに思わず苦笑いで頷いた。
「ワカナディアさんは何故冒険者になりたいんですか?」
俺達がそんな話をしていたからだろうか、サツミルさんが尋ねた。
「わたしですか? ……そうですねぇ……ヒューム族にはノーマル職、レア職ってあるじゃないですか? エルフなわたし達には無いんですよ。未成年の間は【学鍛童】として過ごすのは一緒ですが、必ず全員が【エルフ】になるんですよ。ヒューム族でいうところの、全員がノーマル職でありレア職であるって感じで。成人のエルフは全員が一応戦闘をこなせるんです」
……あー、そう言われればNPCのエルフってクラスが【エルフ】になっていた。
「わたし達だけでなく、ヒューム族以外の人は冒険者になるという選択がそもそも無いんです。でも全くいないわけでなく、だからこそ『変わり者』として見られるんですよ」
「なら、尚更何故冒険者に?」
「里に来た時に兄と会ったと思いますが、実はわたし達3人兄弟で、妹がいるんです。ですが、妹も一緒に人攫いに拉致されて、離ればなれになってしまったんです」
「……じゃあ?」
「はい。妹を探します」
ずっと笑顔で対応していた彼女がスッと真顔になった。
「皆さんに話すべきか悩んでいましたが、仲間になって貰う以上知って貰った方が良いかと思いまして。わたしは、ずっとヒューム族は悪人だと思っていました。多分、わたし達エルフ以外の種族も同様な考え方だと思います。その理由は人攫いの存在です」
……奴隷。ゲームには当然描写されていないが、この世界には奴隷制度が存在する。しかし、それは前世の知識で知る奴隷制度とは別の存在。
個人的な主観が入った言い直しをするのであれば、強制雇用契約といった感じかな。強制雇用契約自体は違法ではないが、人攫いによる本人の意思が介在しない契約は当然違法である。
「正直、ミューリ……妹が生きている保証はありませんが、それでもサクリさん達に出会ったのも何かの運命。わたしは皆さんの力を借りて人攫いを潰して回りながら妹を探したい」
フッと表情を元に戻し、期待する眼差しで俺を見ている。それにも苦笑しながら頷いた。
まだ正式に仲間に加わったわけではないのに気が早いな……とは内心思いつつも、どうせ仲間になるんだろうなとは思っている。
「それで、サクリさん。“サクリウスファミリア”って、どんなことを目指すチームなんですか?」
「目指す?」
「色々あるじゃないですか。「救国の英雄になる」とか、「最強の冒険者チームになる」とか」
「……ないない。強いて言うなら「生活費を稼ぐ」と「大陸中を見て回る」かな」
カナディアラとワカナディアから始まった会話だったが、気づけば全員の視線が俺に集まっていた。
「元々は俺が世界中を旅して回るというところからスタートした冒険者生活だしね。大それた目標なんて無いんだよ。ただ、何となく決まったルールならある」
「ルールですか?」
「そう。『タダ働きはしない』、『正義の味方にはならない』、『恩義には等価以上で報いる』の3つ。これを守れない場合は正直チームを抜けて貰おうとも思ってる」
マオルクス、アミュアルナ、メアリヤッカの3人以外が疑問を感じているようだった。確かに理解できないのも仕方ないかもしれないけれど。
「この3つは俺達仲間を守るためのルールなんだ。生活には金が掛かる。善行だからという理由だけで命は賭けられない。不義理は仲間の評判を落とす。以上の理由から3つのルールを違反したものは許されないと思った方が良い」
「……なるほど……」
全員の声がハモる。
……まぁ、この世界にはない考え方だから、浸透しなくて当然かもしれん。
「あの、わたしからも聞きたいことがあるんですけど」
そう声をあげたのはリサエラさんだった。疲労して元気がなかった3人も結構休んだおかげか食事ができる程度には回復できていた。
「ん?」
「そのぉ、今回の冒険って、普通じゃないですよね?」
ここで言う普通と言うのは、商隊護衛とか、素材調達とか、妖魔討伐など、一般的な冒険者が請け負う仕事のことを言っているのだと思う。
「違うね。普通は妖精界や精霊界と重なっている場所に行ける冒険者は存在しないと思う」
……普通はね。
「だから、3人を巻き込んでしまって、本当に申し訳ないと思ってる」
「いえ、むしろ嬉しくて」
「嬉しい?」
するとリサエラさんはサツミルさんに視線を送る。すると、彼女が話を引き継ぐ。
「何も知らないわたし達でも、今回の経験は貴重なモノだということは理解できます。普通の生活では得られない貴重な体験ができて嬉しかったんです」
……なるほどね。
正直、報酬金は払えないと言われることが一番怖かった。
「それで思うんですけど、“サクリウスファミリア”って普通の冒険者チームじゃないですよね? どんな冒険者チームなのか気になって」
……あ~、そういう意味なのね。
「えーっと……まぁ、これは仕方ないかな……口外しないで欲しいんですけど、実は俺達のチームには既にユニーク職持ちが居るんですよ」
「「「「えっ?」」」」
依頼者3人とカナディアラの4人が驚く。……〈テレポート〉は気にならなかったんかい!
「そんなわけで、若干変なことには巻き込まれがちなんだよね」
だからこそ、無責任な正義の味方はしないという方針を伝えた。
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