ユニーク職【妖精操士】と契約妖精の関係について
エントとの話も終わり、いまいちスッキリしない状態にはなっていた。だって、結局のところは何もわからんし。
ただ、判った事として。上位精霊は未確定を含む未来を見る事ができる。その結果、起こりえる可能性の高い未来を早めに回避するために一番成功率の高い俺に依頼をしてきたということ。
だからこそ、女神ナンス様の思惑は知らず、結果論だけで語っているということ。その上でヒューム族の為というより、世界のバランスを一番大事にしており、均衡を乱す存在の排除を優先している。
タダ働きはしないという俺の性格も熟知していて、必要な物資や情報と成功報酬も用意していて、断り難い状況を予め用意している。
……まぁ、それだけかどうかは聞いても答えてはくれないだろうけど。
「……」
「大丈夫?」
マオルクスの声で初めてコノミリナさん、リサエラさん、サツミルさんの体力の限界であることに気づいた。
「……ごめんなさい。何か、この階に来てから疲れが……」
コノミリナさんがやっと声を出しているという感じで答えている。本当に辛そうだ。
「メディス、この辺で休ませたいんだけど」
「……仕方ないわね。クイーンの元にはサクリだけ行けば良いから、他は倒れる前に休んで貰いましょう」
メディスは俺達を小さな部屋のような穴に案内する。
「ここなら邪魔にならないから、自由に使ってどうぞ。それではサクリ……こっちに」
「待って。わたしも一緒に……」
「いや、俺だけで行くよ」
俺と一緒に向かおうとするマオルクスを制止する。
「3人の傍にみんなは居て。護衛対象を疎かにできないし、カオリアリーゼとユイディアは古祠に来たのは初めてだから、精神的に余裕があるのは3人だけだと思うから」
まぁ、慣れているだけならカナディアラもそうだろうけど、彼女はまだ正式な仲間じゃないし、自衛もできない身だからね。
「クイーン様、連れて来ました」
「ようこそ、サクリウス様。わたしがこの『木霊王の古祠』を治めるフェアリークイーンです」
パッと見の印象は光のフェアリークイーンの双子の姉妹である。瞳や髪色、髪型は違っているが、輪郭的なものや身長も一緒。160センチくらいの8頭身美女だ。髪型は膝丈まである緑色のローテイルを三つ編みにしてあるメディスと同じ髪型。声は優しい感じで良い声だとは思うけれど、癒し系ボイスな割に口調は凛としたものだった。
「サクリウス=サイファリオです」
「……まさか、本当に現れるとは正直思っていませんでした」
……どういうこと?
「貴方の存在はエント様から。そして貴方の人となりはメディスから聞かせて頂きました。今回お呼びしたのは、メディスの件もありますが、【妖精操士】について話すためです」
……おおぅ、助かる!
「是非、お願いします」
「では、知っているとは思いますが【妖精操士】とは、かつて【勇者】が賜った天職です。当時、現在の光のフェアリークイーンと契約していました」
「契約の件は本人から聞きました」
「まぁ、彼女にとっての自慢でしょうから……そんなことより、貴方にとって【妖精操士】は契約を交わした妖精の力を借りて戦う天職ではあるのですが、そもそも力を貸す側の妖精は義務じゃないのです。……意味が解りますか?」
とりあえず、首を横に振る。
「仲が悪い場合、こちら側が力を貸そうと思わないってことです。結果、貴方は厳しい状況に陥る可能性があります。ですが、余程仲が悪かった場合は正直知った事ではないと判断することもあるのです」
……とんだ欠陥天職じゃないのか?
「実はこれは操士系天職なら総じて言えることではあるのですが、契約が必要という時点で想像できる通り、対等な関係であって使役や奴隷じゃないんですよ」
……お、おぅ……ガチで勘違いしてた……そうか、言われてみれば相手がいるもんな。
「我々妖精族がヒューム族から欲するものは『愛』です。とは言っても、ヒューム族同士の愛とは若干意味が違います。我々の言う『愛』とは半身として共に生きること。召喚した我々が殺された場合、貴方も死ぬ宿命を背負います」
「それって、その契約を結んだ妖精のみを愛せって意味?」
「いいえ。ヒューム族の発情や繁殖行動に興味はありません。……そうですね、例えば伴侶と仕事の関係に近いかもしれません。伴侶を愛すために仕事は辞めないでしょう?」
……この場合、仕事が妖精ってこと? まぁ、言いたいことは何となく伝わったけど。
「えーっと……とりあえず、互いに生きるために必要な存在となるって意味だと解釈したのだけど合ってるかな?」
「えぇ、だいたい合ってます。ただ、我々にも意思があります。その意思を蔑ろにすることは許されません。我々は物ではない……解りますね?」
多分正しく理解できているだろう……要は普通の恋愛関係とは違うってことだな。
「これも知っているとは思いますが、貴方と契約が可能な妖精はかなり前から貴方のことを知ることができます。そして、実際に会えば意思疎通が可能となります。貴方にとってはメディスのことです」
「それは理解してます」
ルーチェの時に説明して貰ったから理解できている。
「一応、彼女と契約を結べば【妖精操士】のスキルを使用することは可能になるでしょう。しかし、彼女の気持ちを無視するような指示はお互いの信頼関係が無いと聞いて貰えない可能性もあります。逆に信頼関係がしっかりしていれば、貴方のために意に沿わない指示にも従ってくれることもあるでしょう」
「それはメディスの機嫌をとれってこと?」
「違う!」
そう答えたのはメディス本人だった。
「道具扱いするなってこと!」
「するわけないだろ……言葉が通じて、考えを伝えあえるんだから」
そう答えると何故か彼女は鳩が豆鉄砲を喰らったかのようにポカーンとしていた。
「……居たんですよ。かつて、妖精を道具のように扱った人物が」
クイーンが説明を再開する。
「それって、【勇者】?」
「えぇ。かつての【勇者】も複数人との妖精と契約をすることが可能でした。しかし、信頼関係を築けず、最終的に契約を維持できたのは、今の光のフェアリークイーンのみでした」
「もしかして、貴女も?」
「いえ、わたしは一度も契約をしませんでした。そして、その決断を今も後悔していません。何故なら、彼には恋人の素養が無いと判断したからです」
……確か、光のフェアリークイーンもそんな話をしていたような?
「あの、その恋人の素養って何ですか?」
「それはお互いがお互いを自身の半身として思い合う、先程説明したような関係のことです」
……つまり、【妖精操士】のパッシブスキルではないってことか?
「うーん。俺は少なくともそういった扱いを彼女にするつもりは毛頭無かったんですけど、その【勇者】も【妖精操士】の天職を賜っていた。つまり、特定の妖精と意思疎通が可能な状態だった。……でも、それってナンス様が俺に【妖精操士】を授けることを決めていたから、メディス達と話ができるようになったってことにならないか?」
だとするなら、エントの説明に矛盾が生じて結果ありきで運命を操作していることになる。ルーチェとの恋人の素養だって、ナンス様の計らいということになるわけで。
「それは逆ですよ。貴方がヒューム族以外にも見せた優しさが【妖精操士】という天職を引き寄せ、結果としてメディスと意思疎通が可能になったのです」
「だとするなら、【勇者】は変じゃないか?」
【妖精操士】を賜っておいて妖精と信頼関係を築けなかったのは矛盾している。
「いえ、彼も異種族に優しかったのです。ただ、スキルとして使用する際に妖精の負担を全く考えていなかったんです」
「……なるほど。だから、道具扱いするなって警告したわけか」
「そういうことです」
仮に道具扱いしても【妖精操士】のスキルは使用できるのだろう。ただし、それに従うかどうかは妖精側が決める。だから、妖精はスキルの一部ではなく協力作業だということを認識するようにってことか。
「助言どうもです。ですが、無くてもそういう扱いはしないですよ」
「……ふ~ん」
メディスはまだ半信半疑のように思っているみたいだけど、それも仕方ないのかな。
多分、【妖精操士】は『竜騎幻想』とは別のゲームなんだろうな。信頼度を上げて妖精……プルームからプリュメリアへと進化させる、恋愛シミュレーション要素があるのかもしれん。
「では、メディス。契約をしますよ」
「待ってください」
メディスが契約に対して躊躇しているのは最初から気づいていた。それに、俺もまさかとは思うが、妖精に対して女難が発動しないかどうかが不安だった。……まぁ、人同士の恋愛とは違うから女難の対象外だよな?
「クイーン様。もし契約してしまったら解約はできるのですか?」
「いいえ、指示を無視はできますが、解約はできません」
「ですよね。……あの、ごめんなさい。その……サクリをそういう対象に見れません」
うーん。理解はできるんだけど、やっぱり傷つくなぁ。何て言うか、好きでもない人に勝手にフラれたような感じなんだよな。
「その判断をわたしが咎めることはできません。ですが、本当に決断してしまって良いのですか?」
「その、そうではなくてですね……別にサクリを嫌と言っているわけではなくて、現段階で判断ができないというか、無条件で信頼できないんです。その、解っているんです。異種族との絆ができる貴重さを。そして得られるモノの大きさも」
……ん? メディス側にも何か形あるものが得られるのか?
「ただ、判断材料が足りなくて、一度きりの決断を後悔したくないんです」
「何が言いたいのですか?」
そう尋ねるクイーンは若干怒っているようにも見えた。
「その、猶予が欲しいんです。もう少し、サクリと共に一緒にいて、彼のことを知りたいのです」
「彼の人となりは貴女が一番よく理解しているはずよ?」
……あ~、俺の記憶を知っているんだっけか。
「知ってます。ですが、わたしが知っているのは過去の彼。今の彼と少しの間行動を共にして見定める時間が欲しいんです」
「……はぁ。仕方ないですね……貴女に契約の仕方を教えます。猶予は彼がデンドロム王国を出国するまで。それまでに決断して契約するならしてしまいなさい」
「ありがとうございます!」
こうして、メディスが少しの間だけ俺達と同行することになった。
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