拍子抜けだった『木霊王の古祠』の道中
同じ古祠であっても、中の様子は全く違った。
『木霊王の古祠』の内部は、地下墓地へ向かった時の道と似ていた。事実かどうかは別として世界樹の根があった場所を道として整備されたと言われている……当然、光源はない。
「サクリウス=サイファリオ。ここでは火気厳禁。仲間にも伝えておいて下さい」
「わかった。それと俺の事はサクリで良い」
メディスからの警告。まさかフルネームで呼ばれるとは思っていなかった。
「そう……わかった」
そうなると、光源はどうするべきか?
「どうしたの?」
「この中では火が使えない。でも暗くて……どうしたものかなって」
「あ~、それなら……少し待ってて」
ワカナディアはそう言うと、一度戻って行った。……待つこと数分。
「お待たせ。これを使って下さい」
「ランタン? いや、でもそれも火……じゃないのか」
一瞬、魔道具かと思ったが、それも違ったようで。
「ゴールデンパロットです。洞窟の中なら飛べないので暴れないですよ」
小さな籠に入ったインコは金色に輝いている。
「もしかして……」
思わず、チラッとユイディアの髪を見てしまう。ユイディアの金髪も仄かに輝いているが、ゴールデンパロットほど明るく輝いているわけではない。例えるなら、ユイディアの髪の明るさはテレビくらいの明るさだが、ゴールデンパロットは周りを照らせる白熱電球くらいの明るさで輝いていた。
「はい、理屈は一緒です。日が沈むと輝きは無くなってしまいますが、まだ早朝。流石に間に合うでしょう」
チラッとメディスを見る。
「充分よ。それに最下層は明るいわ」
「……わかった。行こうか?」
内心、この「ゴールデンパロット欲しいな~」とか「シルバーパロットっているのかな?」とか考えたりしつつ、最下層目指して『木霊王の古祠』を進み始めた。
薄暗い洞窟内を進んでいく。前回も思ったが道案内が居なければ迷うことは間違いない。……と、考えて「そーいや、『邪竜討伐軍』には道案内いないよな?」との考えに至り……だから時間が掛かるのかと納得していたりした。
「なんか、冒険って感じね!」
「そうですね」
カナディアラがユイディアを話し相手に浮かれている姿がどう見ても子供のソレだった。ユイディアも充分小さい方なのだが、カナディアラの方が低い。
彼女は将来的には強くなることは知っているものの、今は最初の『天職進化の儀』すら行っていないので【学鍛童】のまま。ノーマル職よりステータスが低いので、保護対象であることを忘れないようにしないと。
「姫様は冒険者になったら、どんなことをしたいのですか?」
「カナディで良いよ。ユイちゃんって呼んで良い?」
「もちろんです、姫様……じゃなくて、カナディ」
「うんうん。姫様呼びされちゃうと問題が起きる可能性あるしね。仲間になるんだから、友達として接してくれたら嬉しいな。それで冒険者になったらだけど、まずは身体を鍛えたいかな。ずっと動かさず、生命を維持する最低限のエネルギーしか供給されていなかったから、まずは冒険者として耐えられる肉体を作って、沢山の経験を積みたい」
まぁ、ほぼ7歳の身体なわけで鍛える必要はある。ただ、【学鍛童】はレベルクラウンに達しているので、鍛えるにしても『天職進化の儀』の後だろうけど。
……あれ? そういえば……。
「カナディ。封印された間の意識があるんだよね? どういう状況だったの?」
精神年齢が幼いままではなかった理由は多分それが原因になるだろうと予想し、2人の会話に割り込むのは申し訳ないなと思いつつも、一応確認する。
「幽体離脱状態だったのだと説明はされていたの。実は木の上位精霊エントの力を借りて幽体になったわたしは、中位精霊ドリアードのサポートを得て城の様子を見守りながら封印が解かれる日を待っていたの」
「じゃあ、これから会うエントと既に面識が?」
「もちろんあるよ。幽体だから簡単に移動できるしね。だから、孤独にもならずに済んだし、色々学ぶこともできたの。こっそり城で話を聞いて勉強もしたしね!」
「……偉いなぁ。俺なんて勉強億劫だったのに……」
……まぁ、厳密には母さんが死んでしまってから立ち直るまでに時間が必要だったのに、父さんが再婚してからの環境が最悪だったからでもあるんだけどね。
「わたしは逆に遊びたくとも遊ぶ手段が無かったから……それも経験したいな」
なんか俺に向けて期待の眼差しを送られている気がする……多分、気のせいだろう。
移動中は普段より緊張する。理由は非戦闘要員が4人もいるから。……敵は弱いんだけどね。
「サクリ君、気づいている?」
「うん……カオリン出番だよ」
「えっ?」
メアリヤッカの警告を聞き、カオリアリーゼに指示を出す。……もちろん、手に負えない強さであれば俺達も手伝う気満々ではあるが……まずはカオリアリーゼとユイディアのレベル上げを優先する。レア職だから、ここのゴブリン達相手でも経験値が結構入るだろう。ちなみに俺とマオルクスは最終手段であり、もし彼女の手に負えない強さや量だった場合アミュアルナとメアリヤッカでサポートをする感じで段取りは打ち合わせ済み。
俺とマオルクスが戦いに消極的なのは、単純に護衛対象達にユニーク職のスキルを見られたくないということが大きい。
「……ゴブっ!」
「「ゴブゴブっ!!」」
近くにゴブリンが1体。その後方に1体。……2体と思わせて、声はもう1体分聞こえていた。なので、最低3体。……しかし、ゴブリンはズル賢い。声が聞こえないから3体という保証はない。
「では、いきますっ!」
「《対物障壁》」
いつの間にか呪文を詠唱していたのか、ユイディアが魔法を発動させ、防御力が大幅に上昇する。
「やあっ!」
片手剣で斬りつけたカオリアリーゼの一撃はゴブリン1体を一撃で倒す?
「はい、次ね!」
いつの間にか2体目を瀕死にしていたアミュアルナがゴブリンをカオリアリーゼに跳ばす。
「はっ!」
先に倒したゴブリンを見ると何時の間に鳩尾に窪みが出来ており、アミュアルナが殴ったらしい跡だと解った……本当にいつの間に……。
「あと1体だと思うから、カオリンがんばっ! ユイちゃんも見えるところに移動してね」
メアリヤッカが周囲を警戒しつつ指示を出し、慎重な戦闘の様子にかなり安心していた。
「……」
『光霊王の古祠』と同じく、『木霊王の古祠』も地下10階までの階層に別れているらしい。前回は休憩なしで降りきってしまったが、流石に今回はそういうわけにいかず。既に隣を歩くコノミリナさんは息があがっていた。
「この辺で一度休憩にしよう」
振り返ってリサエラさんやサツミルさんも疲労しているのを表情から確認する。……まぁ、当たり前なんだよね。ただでさえノーマル職とレア職でステータスの成長具合が違うのだから。
「そうだね」
マオルクスがそう言って適当に腰を下ろし、それに倣って各自で腰を下ろして休憩を取り始める。周囲の警戒は俺とメアリヤッカで充分だろう。即対応できそうにないなら、2人で先行して倒してしまっても最悪構わない。
だって、ゴブリン達は何処からでも湧いてくるから。
「あの、サクリさん。サクリさんの冒険者としての目的って何ですか?」
「俺?」
「はい。さっきカナディの話を聞きましたから」
気がつけばワカナディアも俺達に馴染もうと頑張って話していたようで、最初より少し距離間が近くなった気がする。良い事だと思いつつも、何て答えようかと少し考える。
「うーん……今話せる事は、幸せになって欲しい人達がいるんだ。でも、それは今ではなくて邪竜王が討伐された後の話。だから、その人達がそれまでに不幸な事が起きぬよう、居場所を確認しながら見守りたい……って感じなんだけどね」
「……? その人達ってサクリさんの何なんです?」
「恩人かな。もちろん、俺が一方的に思っているだけで相手は俺のことなんて何も知らない。会った事すらないんだから。……まぁ、そういう訳で詳しく説明するのは難しい」
それを聞いて、マオルクスがクスッと笑う。
ワカナディアはよく解らないようではあったが、話せないという事は伝わったようだった。
「今の内に言わせてほしい。コノミリナさん、リサエラさん、サツミルさんには本当にごめん。想定外の事態とはいえ、3人を巻き込んでしまった。でも、言葉の通じないルースヴァルトの里に3人を置いて行く事もできず……こうして同行して貰うことが一番安全だと判断した。結果として怖い思いをさせていると思う。本当に申し訳ない」
そう言って、深々と頭を下げた。
「わたしは平気ですよ」
「わたしも楽しいです」
「頭、あげて下さい」
顔をあげると元々怒ってはいないと判ってはいたものの、理不尽さを感じていたのではないかと心配していた。けど、取り越し苦労だったようだ。
「サクリさん達が意図的に危険へ誘っているわけではないことくらい理解していますよ。それに何かあっても守って貰えると信用しています。おかげでサクリさん達の人となりを知ることもできましたから」
サツミルさんがそう言ってニコッと微笑む。彼女の意図的なあざとい笑顔しか見ていなかっただけに初めて自然な笑顔を見た気がした。
「あぁ。何があっても3人のことは俺達が絶対に死守する」
……でも、可能なら魔人族は襲来してほしくないな、マジで。
「よし、そろそろ行こうか? ……待たせて悪いな、メディス」
重い腰を上げて再び最下層を目指す。……ほんと、このままゴブリンだけでありますように。
幸い、多少ゴブリン達のレベルが上がったくらいで想定以上の問題も発生することなく、無事に目的地に辿り着いた。
「お疲れ様。到着よ」
「到着だってさ」
最下層に辿り着いた今となってはメディスの姿は全員に見えていた。ただ、彼女の声は【風水士】のいない現状、俺にしか聞こえないのは、前回で学習していた。
「なら、もうゴブリン達の襲撃は終わりね」
マオルクスの一言に4人の緊張が解ける。……まぁ、本当は怖かったと思うんだよな。
「もう待ちくたびれているようだから、真っ直ぐエント様の元へ案内するからね」
有無も言わさぬ勢いで、俺達の休憩は許されず、一番奥の部屋へと向かって歩いた。
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