世界樹の森で木のプルームとの出会いとワカナディアとの再会
一応トリプルっぽいブッキングの護衛クエのため、俺達はデンドロムの北方の町リヴァヴィルに向かい、そこから別れて行動することになった。
護衛クエを遂行するのは、受けた時一緒にいたメンバーのユイディア、カオリアリーゼ、メアリヤッカ、アミュアルナ、マオルクスと俺の6人と、依頼主であるコノミリア、リサエラ、サツミルの計9人での馬車移動である。他のメンバーはリヴァヴィルに残って、いくつかクエストを受けてくる連中と素材を集めに行く連中で別れるそうだ。
メンバーを分ける判断をした理由は『世界樹の森』へ向かう際に辺境にある村トレーポコを経由することになるんだけど、そこにサティシヤやアッツミュを向かわせることに抵抗があったからだ。
銀髪や銀眼は辺境の田舎ほど迷信じみた噂の影響が大きい。そんなものの所為で彼女達が傷つけられるのは嫌だったので回避したかった。
「そういえば、気のせいか判らないけど、デンドロム王国って少し寒くない?」
そう、涼しいを通り越して寒い。特に夜はかなり冷える。でも、その理由は理解していた。
「確かにグアンリヒト王国よりは寒いかもしれないですね」
メアリヤッカの疑問にカオリアリーゼは肯定する。
「国に入る時に水力式リフトで入ってこられたと思うのですが、デンドロム王国の大地は世界樹の根によって支えられていて、近隣の国よりも地面が高い位置にあるんです。その影響で潮風の影響が受け難く、空気が冷たいので、美味しい野菜が育つんですよ」
まぁ、実際には南東の方は多少潮風の影響を受けているかもしれないが、今いる北の方はほぼ無いだろう。
「世界樹の根って、全方向に伸びているの?」
「主に南東に向かって大きく伸ばしている感じだね。だから、世界樹の北西側は高い場所が少ないの」
そんな雑談を彼女達がしていると、依頼人の1人、サツミルが俺に話しかけてきた。
「あの、サクリさん。サクリさん達はシャドウ級冒険者ってお伺いしたんですけど、リヴァヴィルの町まで居た仲間にノーマル職の方がいましたよね? 彼女達も依頼人ですか?」
「いや、俺達のチームにはノーマル職が3人いるよ。彼女達は素材を優先して得られる代わりに完成品を優先して提供してくれるし、自分達のスキルの熟練度を上げるためにチームを利用して、俺達も彼女達に優遇して貰っているって関係なんだ」
「そうなんですね。じゃあ、あの方々は見た目が若いわけでなくて、実際に若いんですね」
「若いって……年齢ほぼ一緒だよ。仲間になった時はレベル1だったし」
「えっ?!」
シオリエルもユミウルカもレベル9。しかも、レベルクラウン目前である。
「……そっかぁ。冒険者になるのも良いのかも……」
……仲間に入れて貰うのは、かなりの高難易度だとは思うけどね。
正確な距離を測った訳では無いから感覚的な話になるんだけど、街と町の間は大体馬車で3日程度の時間を掛ける。もちろん、日中のみ走らせること前提で。また、街や町から村までは徒歩で3日以上掛かる。ちなみに徒歩3日は馬に乗って走ると1日。しかし、馬車なので1日半といった距離。
「宿屋、ありますかね?」
「いや、無いでしょ」
ユイディアが問いかけて来たので、サクッと否定する。そういう事を聞くと言うことは、ユイディアが辺境に来るのは初めてだったのだろう。……ということは、カオリアリーゼも同じということか。
辺境の村トレーポコ。食堂があって、雑貨屋があるくらい。村人の殆どが農夫であり、流石ベースはゲーム世界だからというのもあるだろうけど、ありとあらゆる野菜が季節感を無視して育っている。成長速度も速いから種さえあれば飢える心配もない。
とりあえず、村長に村の外でキャンプを張る許可を貰い、翌朝には森へ向かうことを告げると、村長もよくある話なのか村の施設は自由に利用しても大丈夫だと言ってくれた。
……まぁ、キャンプとは言っても、コテージは置いてきたので、久しぶりにテント生活だ。もちろん、俺はテントを1人で使用する。……実は初めての経験。
酒場でテーブルを囲み食事をしていたら、俺以外はみんな農夫の若い連中に大人気。まぁ、依頼主である3人は俺から離れずにいたため、近づいても離れていくんだけど……若い女性に飢えているのだろうか?
俺的には女性に絡まれなければ問題無いわけで。
「……ん?」
「どうかしました?」
「……いや、何でもない」
……わけないんだよなぁ。
外からプルームが1人入ってきて、テーブル……俺の目の前に座る。彼女は葉っぱのような翅と緑色の瞳を持ち、股上まである緑色の髪は三つ編みに束ねていた。
「……見えているよね?」
とりあえず頷く。ここでうっかり言葉にした日には周りには独り言に思われる。
「この辺にいる他の子は見える?」
首を横に振る。
「話、したいの。外出られる?」
とりあえず頷いて隣に声を掛ける。
「済みません。先に戻りますね……マオ、先に戻るから宜しく」
そう言いながら依頼主3人の方に視線を向ける。
「うん、わかった!」
マオルクスは移動中の際には本来の姿で移動していたが、村に入る際に子供化している。多分、処世術なのかもしれないし、慣れかもしれない。
酒場を出ると緑色のプルームは店の前で俺が出てくるのを待っていた。
「貴方の名前、サクリウス=サイファリオって名前で合ってる?」
「合ってるよ。君は?」
「わたしは木のプルーム、メディス。ゆっくり話せるところに案内して。……独り言呟く変な人に思われなくないでしょ?」
俺は彼女に頷くとテントへと案内した。
翌早朝、『世界樹の森』へ向けて出発する。
メディスと名乗ったプルームの彼女は昨夜の内に『世界樹の森』へと帰った。
彼女の話とは、主に3つ。
最初は何をしに来たのか確認したいとのことで、『木霊王の古祠』に向かうように言われたから向かっていると伝えた。
次に俺の天職が本当に【妖精操士】なのか確認しに来たようだった。どうやら【妖精操士】の存在は妖精族には有名らしく……まぁ、だろうけどさ……彼女はとても関心があったようだ。
最後にプルームの姿を見る事ができ、会話が可能なことの意味を理解しているのかと問われ、当然知っていると答えた。……既にルーチェ相手に学んだことだから。だからこそ、ルーチェ以外のプルームを見る事ができるとは思わなかった。
「『邪竜討伐軍』は王都に戻ったみたいね」
「我ながら良いタイミングだったな」
……ついでにルートも正解だったようだ。
村を出た時点で本来の姿に戻ったマオルクスが隣を歩く。森の中を馬車で移動するのは難しいとのことで、預かって貰って徒歩移動することになった。
昨日の夜の酒場での情報収集で、『邪竜討伐軍』の動きを探るように予め指示していた。そうでなかったら、みんなは村人をわざわざ相手にしなかったんではないかと思う。ユイディアとカオリアリーゼを除いて。この2人は付き合いが短いから、正直判らん。
「着いた。ここからは一層気を引き締めて。コノミリナさんとリサエラさん、サツミルさんは1人で動かず、俺達の誰かを付き添わせて下さい。何かを見つけて採取しようと一歩前に出た時に狙われることもあるので」
「「「わかりました」」」
3人の確認がとれたことで森を進んでいく。
ヒューム族の管理外の森に入るのは初めてだったけど、生態系なんて無視なんだなっていうのが最初の印象だった。
種類は纏まって生息しているものの、気候ガン無視の生え具合はまさにゲーム世界を感じてしまう。でも、俺とマオルクス以外は何とも思っていないのだから、きっと普通のことなのだろう。
「あの、サクリさん。一緒にアレを採って頂いて良いでしょうか?」
サツミルさんが俺にピトッと寄り添って指でカカオの実を示す。
「あぁ、いいですよ。俺が取りますね」
背中の大剣を抜いてカカオの実の傷つけぬように切り落とす。
「はい、3つ」
「ありがとうございます」
6つくらい採れたので、残りは自前にするとして、他のアイテムが見つからなかった。
森の中を暫く歩き回るものの、一向に『音精の殻木』と『ファウナー』が見つからない。このまま歩いていても依頼主達の疲労具合も心配だし、どうしたものかと悩んでいた。
「こんな森の外側で何しているの?」
そう声を掛けてきたのはメディスだった。……よく俺の居る場所が判ったなぁ。
「『音精の殻木』と『ファウナー』を探しているんだけど、知らない?」
「それなら見たことがあるわ。もっと奥だから付いて来て」
そう言って、先を飛んでいく。
「みんな、悪いけど俺に付いて来て」
リーダー特権を使用して全員を付いてこさせる。まだ、プルームの存在は言わない方がいいよな? 仲間だけじゃないし。
向かう方向は世界樹のある方。つまり、どんどん奥へと進んでいく。
……本当にあるのか?
「あります。もう少しだから」
確かに『竜騎幻想』でも森を進んだ奥に戦場マップがあったんだけど、神視点で森を歩くのと自分視点では見え方が違うんだよね。
「……ほら、アレでしょ?」
幹の色がピンク色の木が1本だけ生えている。まぁ、見たところで俺には正解が判らない。
「コノミリナさん、アレが『音精の殻木』じゃない?」
「……多分? 確認したいのですが……」
「じゃあ、今度はわたしが一緒に行きます」
そう言ってメアリヤッカが付き添って木の元へと行く。もちろん、俺達も後を付いて行くのだが、開けた場所に出た時に何者かの気配がした。
「止まって。囲まれている」
心当たりはあった。むしろ、どのタイミングで来るかと待ち構えていた。
「武器を抜いて構えて。依頼主達を守れ!」
……予定では襲ってくるのはゴブリン。しかも雑魚というわけでなく、確か5以上の高レベル。ただ数はそれほど多くなく、俺達なら負けることは無い。ただ、問題は依頼主が死んでしまうとゲームオーバーになる……それはゲームでの話であって現実はもっと厳しい。
「カオリアリーゼとアミュアルナは防御専念。攻撃はメアリヤッカとマオルクス。ユイディアは補助魔法と回復にのみ専念で」
そんな矢先、足元に矢が刺さる。……矢を射たのはゴブリンではなくエルフだった。
エルフ……囲まれているのだから1人ではない。
「待ってくれ。敵意は無い」
そう言ってみたが、返事の代わりに再び足元に矢が刺さる。……威嚇だよな、これ。
エルフの1人が何か言う。言葉が通じない……そうだ、通じないよな、エルフ語……誰も話せないじゃん!
そうなんだよ。前も思ったけれど、確かに『竜騎幻想』の世界であるイヴァルスフィアにはエルフはいるものの、ユニットとして登場することはない。一部のヒューム語が話せるNPCが片言を話す感じでクエストに関与するだけで、メインストーリーには絡まない。
……記憶にないんだよ。俺の推しに関わるクエストに出ないし、対応手段が判らない。
「……多分、森から出て行けって話だよな?」
「そうですね」
ユイディアも困ったように答える。
「エルフ語判る人……いないよな?」
返事がない。……さて、どうしたら良いモノか。素材を回収できなければクエスト失敗。命を失うくらいなら失敗の方が良いかもしれないが、欲しい素材は目の前にある。だが、エルフはさっさと撤収しないと本気で殺しに来るかもしれない。
……出直すべきか?
「待って!」
女の子の声。……ヒューム語だ。続けてエルフ語で何か言っているが当然内容は解らない。
かなり遠くから叫んでいたようで、数秒後にガサガサと草木の中を突き抜けてエルフの女の子が現れる。俺は彼女に見覚えがあった。
「やっぱり、サクリウスさん! お久しぶりです。わたし、ワカナディアです!」
忘れるわけがない。彼女は以前助けたエルフ兄妹の妹だった。
「……助かった……それにしても、ヒューム語話せるようになったんだ?」
ワカナディア。確か、正式には『ミーミルエント家のワカナディア』というのが正しい呼び方だったかな? まぁ、亜人族達も慣れていてヒューム族に合わせてワカナディア=ミーミルエントと名乗ることも多いらしいけど。
「わたし、成人したんです。ですので、スキルでヒューム語が話せるようになりました」
深い緑色の瞳に尻に届くほどの長く明るい緑色の髪は首下で束ねて低い位置でのポニーテールにしている。以前とは違い革の鎧を身に纏い、腰には鞭を下げて武装していた。
「そっか。成人おめでとう」
「ありがとうございます」
そう言って俺に抱き着いて来たが……多分、エルフなりの歓迎を現した表現なのだろう……多分。きっと深い意味はないと思ったが、隣でメディスがかなり驚き過ぎて固まっていた。
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