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王位継承権第一位【風水士】カナディアラ=M=ソーンブルグ

「落ち着いて。さぁ、あなたが賜った新たな天職は?」


 ……あぁ、始まった。むしろAパートキャンセル助かる。


 流石に何度も見せられれば、今から何が始まるのか判るというもの。


 ちなみにAパートというのは、【剣の乙女】や主要キャラクター達が踊ったり、格好良く戦ったりアニメーションと共にオープニングの主題歌が流れるモノで、ゲームジャンル問わずゲーマーであれば、何度か聞いたらキャンセルするヤツである。


「【風水士】よ。城の者に伝えておいて。わたしは『邪竜討伐軍』に入って、デンドロム王国第二王女としての責務を果たすわ。……だから、わたしのことはお気遣い無くってね」


 ヒューム族で屈指の低身長。どう見ても幼い容姿で16歳には見えないが、もちろん【学鍛童】のレベルクラウンを確認した上で『天職進化の儀』を受けている。深い緑色の瞳に淡い緑色の髪。それは膝丈まであって、高い位置でポニーテールを作り身長を稼いでいる。……指摘すると蹴られるので注意である。ちなみに「小さい」までは怒られるだけなのでセーフだ。


 彼女の名はカナディアラ=M=ソーンブルグ。彼女自身が言うようにデンドロム王国の第二王女なのだが、第一王妃の娘にして王位継承権第一位だったりする。


 彼女の特徴は初期レベルが1ではあるものの、レベルが上がる時のステータスの上昇率が他ユニットと比べて大きく、大事に育てると頼りになる強ユニットの1人になる。ただ、彼女を入手するには好みによってはデメリットが2つある。


 1つは最初にデンドロム王国に入国する際に陸路で入らなければならないということ。それと、もう1つは彼女が仲間に加わるのはストーリー終盤であるということ。しかも最初のクラスのレベル1。他のユニットが育ち切った後に加わるため、育成に気を使う必要があった。


 ただ、大事に育てると【風水士】のレベルクラウンから条件に関係なくスーパーレア職の【精霊術士】に進化し、ウルトラレアの【豊緑騎士】までレベルを上げるだけで進化するので有能なことには変わりない。


 一応初期武器が鞭なので、1マス先の敵を一方的に殴ることができるというメリットのようなモノもあるんだけど……彼女が仲間に加わる頃にはメリットとは言い辛い。


 ……そう、ストーリー終盤なんよ。


 意味が解らんのは、現状の『邪竜討伐軍』の動きから察してカナディアラが仲間に加わる要素は全くないわけで。でも俺が今、この夢を見ている以上は近い内に会うということ。


 そんなことを考えている間に画面は暗転して、続きのシーン。アニメーションは終わりゲーム画面に変わる。


「……ようこそ、『邪竜討伐軍』へ」


「お世話になります」


 カナディアラが合流するシーン。彼女は9年間封印されていて、身体はほぼ7歳児……それは言い過ぎかもしれないが、生命維持に必要なエネルギーしか摂取しておらず、同世代と比べると肉体が成長していないということになっている。


「城に戻る必要はないの?」


「戻ったら出られなくなると思う。下手したら今度こそ殺されちゃうわ。それに『邪竜討伐軍』にいると必要な物資は届けてくれるのでしょ? 正直、王女という立場からは恥ずかしいけれど、殺されるよりはマシと考えるしかないわ」


 結局、第一王女は国から出ることを拒否。第三王女は陸路ルートだと死亡確定なので、邪竜討伐に協力できるのは彼女だけ。その事実が国として手を出せない理由になっていた。


「グアンリヒト王国も、そんなにみみっちくないでしょ? さぁ、行きましょう!」


 先に進み始めるカナディアラを慌てて【剣の乙女】が追いかけて、視界が暗転した。




 ……あ~、次はクエストの最初のアニメーションか。


[デンドロム王国には3人の美しい王妃がいる]


 男性声優さんのナレーションが流れ始める。


[野性味溢れる他国の姫であった【獣操士】の第一夫人]


 彼女は西隣にあるトゥーベント王国の戦姫と呼ばれていた。政略結婚であり、おとなしいタイプの国王とは最初こそ仲が良くなかったけれど、今では最も頼りにしている相棒だと国王から言われて頼られているらしい……あっ、これは現実の話。『竜騎幻想』内ではそこまで詳しく語られていなかったと思う。


 露出多めの服装に高く巻き上げて纏めてある明るい藍色の髪、そして猛禽類のように鋭い眼光強めの深い桜色の瞳。服から露出されている肌は筋肉質でアマゾネスを連想させていた。……この世界にアマゾネスは存在しないけどね。戦う女性は珍しくないし。


[若く控えめで可愛らしい平民出身な【戦略官】の第二夫人]


 彼女は商家の娘で、『天職進化の儀』で【戦略官】を賜ったことで王城勤めとなった。【学鍛童】の頃から可愛らしく、【話術士】や【再現師】になるだろうと言われていたが、【戦略官】を賜って喜んでいたことを、確か海路で入国するルートだとクエストで知ることができた気がする。


 彼女の特徴は何と言っても若さ。国王とは16歳差で現在は確か36歳だったはず。彼女が第二王妃になった理由というのが第一王女を身籠ったことに起因する。それは『竜騎幻想』の世界だけでなく、現実でも一緒だ。尻に届く明るい黄色の髪と深い桜色の瞳。気が弱く、おとなしい印象を与える柔和な容貌の持ち主だ。


[美しくデンドロム王国最強の宮廷術士、【大魔導】の第三夫人]


 彼女は元冒険者で、第一王妃にスカウトされて宮廷術士になった経緯がある美しき【大魔導】なのだが、実は第一王女の護衛として王室に潜り込んだ存在である。最強の宮廷術士で、最初こそ何者かに命を狙われた第一王女の近辺警護を密かに行っていたのだが、第二王妃から王族以外の人間が傍にいるのは不快だとクレームをつけて排除しようとしたので、王様が悩んだ末に第三王妃として迎えたという経緯がある。


 ……俺個人としては、単に第三王妃が美しいために妻にしたのではないかと疑っている。


 股上まである明るい緑色の髪に切れ長の目に真紅の瞳。第一王女のような逞しい身体ではないのだが、スタイルの良いモデルのような容姿の女性だ。


 その3人は国王の自慢の妻で、何も知らない国民男性が羨ましいと思っている。だが、外から見る華やかな王妃達だが、この国には王子がいないと言われている。3人は1人ずつ女児を産み、3人の姫は存在するが男児はいないので、次期は女王という噂になっている。そこで、元々王族である第一王妃派、兵士達が支持する第三王妃派と商人が支持する第二王妃派の対立が見えないところで問題になっている。


[第一王妃と第三王妃は娘達と共に一緒にいることが多く、第二王妃は常に孤立していた]


 城内での王妃たちの紹介の後に母親である第一王妃と第三王妃、第三王女と4人が庭で一緒にいて楽しそうにしていた。


「ごきげんよう、皆様」


 声を掛けてきたのは腰まである金髪と金眼の幼女。彼女は笑顔で近づくとスカートの端を摘まんで礼儀正しく挨拶をする。


「ごきげんよう、リムザキュア」


「「「ごきげんよう」」」


 彼女は第二王妃の娘で第一王女。この映像当時はまだ6歳のリムザキュア姫だ。実はこの子の存在こそ王室内を狂わせた元凶でもある。


「リム、早くいらっしゃい。王様がお呼びですよ」


「はい、お母様。……失礼致します」


 彼女は母親達に頭を下げ、他の王女達には視線を向けることもなく母親である第二王妃の元へと向かっていく。


「……こんな子に育ったのも、全て教育の賜物ね……困ったものだわ」


 そう言って、第三王妃が溜息を吐く。


 当時、4歳のカナディアラは何も言わなかったが、彼女は2人の会話からある程度の事を理解するほど賢かった。




 視界が暗転する。確かタイミングは一緒のアニメーションだったはずだ。


「ユッカン、今日はこの本読みましょう?」


「いいですね、ねーさま」


 第三王女のユッカンヒルデとは、城内にいる間は一緒にいるように彼女はしていた。母である第一王妃に言われたのもあるらしいが、彼女自身が身の危険を感じて1人にならないようにしようと意識していたのと、同年齢だから楽しいというのもあったのかもしれない。


「何の本ですか?」


「【聖女】リアラインの本よ」


 ユッカンヒルデは何とも言えない渋い顔をしているが、カナディアラは気にしていない。何故なら面白いから読もうと言っているわけではないからだ。


「あのね、この本の内容はちゃんと理解した方が良いと思うの」


「何で?」


「大人の説明は都合の良いように内容を微妙に変更するからよ」


 そう言って、ユッカンヒルデに見えるように本を広げて見せる。


「……この話、他人事にならないから。最近、大人達がそんな話をしているのを聞いたことがない?」


「よく解らないよ」


 そう、カナディアラは知っていた。最近、城勤めの人達の中にリムザキュアが【聖女】を賜るのではないかという噂が流れているからだ。


「知らないかぁ。最近、お城の中で【聖女】の話をしていることが多いの。知らないと何話しているのか理解できなくなっちゃうから、お勉強必要だと思うの」


「うーん、そっかぁ。魔法のお話じゃダメ?」


「魔法の話はこの後でしよ?」


「約束だよ!」


 そう言って一緒に本を見る。カナディアラにとってユッカンヒルデには【聖女】の知識を持っていて欲しかった。あまり詳しいと警戒されるので知らないフリをしているが、彼女は独学で【聖女】に関する知識を身に付けていた。


 それだけでなく、城内で噂されている内容通り【聖女】だった場合、王位継承権に影響がでるのではないかという話まで出ていた。でも、両親はそんな話をしたことがない。つまり、故意に誰かがワザと噂を流しているということになる。


 ……と、考えているようだけど、6歳でこの推理力は鋭いよなって思う。まぁ、内容に関しては少し理屈が甘いものの、6歳ということを考えれば充分すぎる才女である。


 ユッカンヒルデとはいずれ一緒に国を支えることになるから、大事にするようにと母親から言われているので、カナディアラは今から彼女に少しずつ遊びっぽく知識を入れている。


「じゃあ、問題。【聖女】は金髪金眼の人が賜るとは言われているけれど、条件を満たせば【聖女】は2人とか、3人とか……いっぱいいると思う?」


「いな~い。だって、【聖女】はユニークだっけ? なんだよね?」


「正解!」


 ……あー、俺も幼い頃にユニークについて、そんな話をディックとしたなぁ。でも、6歳の頃の俺はユニーク職にどんなのがあるかとか知らなかったけどなぁ。


「やったー! でも、わたし達は【聖女】を賜ることないんだよね」


 自分達の髪を見ながら、ユッカンヒルデは残念そうに言うが、カナディアラは全く残念とは思っていなかった。




 視界が暗転し、次のシーンに移行する。……この流れも慣れたもんだ。


「カナディアラ、誕生日おめでとう」


「おめでとうございます、カナディアラ姫!」


 ……あぁ、これは憶えている。カナディアラの7歳の誕生日パーティの様子だ。彼女の回想シーンでアニメーションになっていた奴だな。


「ありがとうございます」


 その場には父親である国王と母親である第一王妃。それと王妃付の使用人や国王の側近の方々や官職の方々だ。


「……すまんな。本当はもっと大勢を呼んでパーティを開くべきなのだが……」


「いいえ、お父様。わたしは自身の成長を祝って頂くことも嬉しいですが、家族全員が健康な状態で一緒に祝って貰えることが嬉しいのです」


 ……立派な7歳児。7歳って小1だよな? そんな言い回しできる子供なんて、そういないだろう。 ……俺? 7歳を2回経験したけど、できる気がしない。


「そうか。……でも、それは父親として不甲斐ないというもの……そこでだ。みんなも聞いて欲しい。まだ公の場では公表を控えるが、正式にカナディアラを次期王位継承権第一位に任命する」


 そう国王が内輪で表明すると再び沢山の「おめでとうございます」が飛び交う。


「お父様。わたしで良いのでしょうか?」


「あぁ。カナディアラが良い」


 彼女の心中は複雑だった。


「リムザキュア姫が第一位になると思っていました」


「……私もそう考えた時期もあったんだが……リムザキュアは女王の器ではない」


 そうハッキリと言った父親に彼女は心底驚いていた。


 彼女がそう考えるのも当たり前で、リムザキュア姫は国王の長子として最近の公の場には必ず国王と共に同行していた。彼女自身の可愛らしさと利発さ、あと金髪金眼という祝福された存在な上に【聖女】を賜るのではないかという噂など、彼女を持ち上げるだけの情報が沢山あったからだ。


「……そんなことは……」


「リムザキュアのことは良い。今の主役はお前だ、カナディアラ。私は賢く優しいお前に期待しているんだ」


「ありがとうございます、お父様」


 この時のカナディアラは自身を高く評価してくれていることが単純に嬉しかった。


 ……まぁ、これで終われば良かったんだけど、別の意味で終わっちゃったんだよな。


「今日、出席していない王室関係者全てに通達した後、公の場にて国民に向けて発表するが、カナディアラが王位継承権第一位であることは現時点をもって私が認定する。よいな?」


 第一王妃が頷く。しかし、それは単純な喜びの感情だけではないのはカナディアラと一緒だった。王妃もまた、このまま何事もなく終わるとは思っていなかった。


 ……その翌日、デンドロム王国第二王女カナディアラは城内から姿が消えていた。




 次はどのシーンだろう……何て考えていたら、目が覚めた。やっぱり起床時間より早め。


 周りを見回す。……ユカルナがベッドの中に潜り込んでいる。多分、俺が女難に命を狙われていなければ、とっくに理性が負けている自信はある。……バレなければ、コイツは武器。女難の影響はないと思う。……まぁ、問題はそれを他の方々にバレた場合なんだけど。


主人マスター、起きたのですか?」


「……起きたのですか? では無いと思うんだが」


「細かい事を朝から気にしてはいけません」


 ……何度追い出しても、彼女は俺から離れない。初めの頃こそ必死に叩き出していたが、流石に無駄だと感じているし、周囲も諦めモードに入っている。……とはいえ、それで手を出して良いかどうかは別の話だとは思う。……言われてないけど、きっとそう。


「細かい事ねぇ……」


 ……細かい事といえば、てっきり夢に出るだろうと思っていたカナディアラの封印シーンを見なかった事に違和感があった。


 ちなみに、封印するシーンはアニメーションこそ無いものの三頭身キャラによる演出はクエスト内で行われたはずだ。


 うろ覚えではあるけど、カナディアラの封印は毒性のある棘に絡められ、彼女は眠り続けている。ゲームだから当時は気にしなかったものの、眠ったまま9年間生き続けており、一度出国して別の国のメインストーリーを進めた後に【剣の乙女】がデンドロム王国に戻ってきた際、香木剣“ミストルテイン”の力で棘の封印を解くことができ、彼女は目を覚ます。……栄養とかどうやって補給されていたのかって謎はあったりするんだけど、そこは結構適当な設定なのだろう。


 ……夢に見たってことは、彼女と近日中に会って仲間になるということなんだろうけど、タイミングが早すぎる。本当に可能なのか?


主人マスター?」


「俺はこの状況を細かい事と一蹴することが本当に良いのかと考えていた」


 誤魔化すように適当なことを言ってみたが、我ながら鋭い返しだと思う。


「その答えとして旅人が身を守るために武器を抱いて寝ることは稀によくある事です」


 ……「稀によくある」なんて、前の世界での言い回しまで学習しているのかと笑みが零れた。


「……確かに稀によくあるか」


 そもそも、『竜騎幻想』でのゲーム展開とは状況が大きく変わっている。その理由も転生者と思われる者の知識チート無双の痕跡。俺が見つけられていないだけで、他にもあると思うんだよな。


「そうですよ。ですから、主人マスターは遠慮しなくて良いんです」


「遠慮って……そういう意味じゃない」


 このタイミングでカナディアラが仲間に加わってくれるのは本当にメリットが多い。それに仲間に加えなければ、彼女は城に戻ることになり、今の状況では絶対に幸せにはなれない。これでは邪竜王を倒し終えた後も幸せになれない……むしろ死なせてしまうかもしれない。


「素直になって……抱きしめて良いですよ。ほら、温かいし、柔らかいですよ?」


「いやいや、温かい武器って何? 単に環境から熱が移っただけだろ!」


 環境といえば、封印解除には香木剣“ミストルテイン”が必要だけど、ムッチミラは間違いなく貰っているだろうし。本当にどうやってあの封印を解除するんだ?


 ……まぁ、ムッチミラが海路ルートな以上、俺が助けないと放置確定なんだよなぁ。

読んで頂きありがとうございました。

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何卒よろしくお願いします。

尚、5日間連続投稿2日目+本日中にあと3回投稿します!

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