地下墓所で死霊術士との戦闘は例によって想定外へ
デラフトウッドへ向かう道中に考える。『竜騎幻想』の世界よりも上位の天職に入る経験値が少なすぎるのではないか? もちろん、『竜騎幻想』でも取得経験値は減る。『竜騎幻想』に限らず雑魚から得られる経験値は少ないのは当たり前なのだけど……少なすぎない?
一般常識的な意味で言うと、1年間で1レベル上昇する。それに比べたら破格の速度で成長していることは俺も認めている。ただ、早めに天職を進化させ既に戦闘を何回か経験しているアミュアルナとアッツミュですら、まだレベル2。ほとんどがレベル1のままである。
そこで主にカナシリアに護身術を兼ねた戦闘訓練を兼ねて、道中のゴブリン達の退治を指導することにした。サポートする形でシオリエルとユミウルカにも戦って貰い、サポートはマオルクスと俺で行う。……多分、これでほぼ大丈夫なはず。
その間にリリアンナを中心にレイアーナとクレアカリンでカオリアリーゼとユイディアから事情を聞き出して貰っていた。
「どうして家に戻ることになったんですか?」
「わたし、【修道士】だったんです」
リリアンナの問いに答えたのはユイディアだった。俺は黙って視線はカナシリアの方を見つつ、耳はその会話を聞くことに集中していた。
「普通【修道士】なら、そのまま大聖堂で働くって話にならなかったのですか?」
その問いにカオリアリーゼが何か言いかけるのをユイディアが制する。
「ならないですね。大聖堂で働く方々が必要だったのは【聖女】でしたので。厳密には【聖女】が誕生したのは大聖堂という事実が欲しかったんですよ。なので、もう不要なのです」
まぁ、数は少ないかも知れないが、金髪金眼なんて大陸中に沢山いる。それだけの理由で特別扱いはされないというのは道理である。
……無理矢理残っていても居心地は最悪だろうしな。これからは期待された分失望されるわけだから。
「本当に酷い話ですね。勝手に期待して呼び寄せておいて、違ったから帰れって」
怒るリリアンナにユイディアは「そうですよね」と笑顔を見せた。
「そこです」
事前に寄りたい場所と指定され、洞窟の入り口に来ていた。そこは国の北西にある世界樹から伸びた根の跡だと言う。つまり、理屈では地下を通れば世界樹と呼ばれる大樹の近くまで行けることになるのだが、落盤だったり人工的に埋められたり等で行くことはできないと言われている。……試した人がいないので誰も把握はしていないらしいけど。
「ここから入るのですが、中は狭い上に滞在時間も短く予定しています。ですので、護衛の人数を最低限にしてほしいのですが……」
と、ユイディアがリリアンナに話す。……すっかり仲良しになったようだ。
「どうします?」
「カオリアリーゼさんも同行しますよね?」
「はい、もちろん」
俺の問いに彼女も即答。……まぁ、予定通りの反応である。
「じゃあ、マオ、アミュタ、アッチュ、レイアの4人は俺に付いて来て。残りは馬車の警戒と帰り道の確保」
確か、このマップの出撃ユニット数は4人だったはず。別にもっと大勢を配置しても構わないとも思うけど、狭すぎて戦えない状況は避けたい。
リリアンナが一緒に行きたそうにこちらを見ているが、この際はスルーである。
「では、行きましょう」
洞窟にカオリアリーゼを先頭に並んで入って行く。
『竜騎幻想』では一瞬で共同墓地まで瞬間移動するのだが、実際には人の手が加えられていると判る階段を下り、5分ほど歩いた後に分岐された道の先に広い空間へ出た。
「少々時間を下さい」
「わかりました。カオリアリーゼさんはユイディアさんの傍に居てあげて下さい。アミュタも少し離れたところで武器を構えておいて。レイアとアッチュとマオは俺の傍にいるように」
そう言って、出入り口付近に大剣を鞘から抜いて立つ。
「そこまで警戒しなくても大丈夫ですよ」
ユイディアがそう言うけれど、大丈夫じゃないことは既に知っていた。
「お構いなく。こちらの仕事の都合なので」
「……解りました」
墓標の1つにユイディアが片膝を付き、祈りを捧げ始める。その様子を見守って数分後、大量のアンデッドが湧いて現れる。……これもまた想定通りである。
『竜騎幻想』でのバトルマップでの表示とは違い、実際に見るのは初見ではないのに気持ち悪い。
「敵はスケルトンのレベル3。全部で18体です」
……うん、予定通りで良かった。
「了解」
レイアーナの報告に返事を返し、まずはユイディア達と合流することが最優先。思い出すまでもなくユイディアとカオリアリーゼのどちらでも死亡すれば敗北である。
「ここは、光だね」
そう言って、アッツミュは白い魔導書を手に取る。
アッツミュが呪文を詠唱している間にマオルクスが全員に強化魔法を掛ける。
「マオ、火系はダメだからね?」
「わかった」
アンデッドは火属性も弱点ではあるが、地下故に酸素不足になる可能性もある。まぁ、密閉空間ではないから死にはしないだろうが、運動能力に影響がでるかもしれないし、何より燃えているアンデッドをアミュアルナは殴り難いだろう。
「《閃矢の行射》」
アッツミュの詠唱が完了し、彼女の放つ光の矢がスケルトンに突き刺さり、その連撃で消滅する。アミュアルナの攻撃も打撃属性で瞬殺し、何とか俺達は合流することができた。
……うん、予想通りまだカオリアリーゼは戦力になっていない。
「お前等、強いな。……つーか、話が違わないか?」
男の声。一瞬で全員が緊張する。
前に仲間には話した内容ではあるが、野獣や魔獣の類も確かに脅威だ。それ等より怖いのは妖魔であり、その理由が武器や防具を装備できるから。だが、それより怖いのが人である。何故なら天職によって行動パターンが特定できないからだ。
それにコイツは、「話が違う」と言った。それが俺をより一層警戒させた。
「お前、何処から?」
油断させるために定番な台詞をワザと言ってみる。何故なら、交渉役であるリリアンナがいない。何かあっても俺なら反応できる自身があった。
「さぁ、何処からだろうな? もしかしたら、この部屋にずっと隠れていたかもしれないな」
……まぁ、嘘だろうな。
絶対までは言い切れないものの、レイアーナの〈アナライズ〉もあったわけで、見破れる可能性はあったし、何時来るか判らん俺達を部屋で見張っていたのなら、行動を解っているということになる。全身を黒いローブで包み、顔はマスクで隠している……怪しさ大爆発だ。
「それで、目的は王族の娘か?」
「いや、2人ともだが……面倒だからお前達全員にしておくわ……来い、ボーンストライカー」
床に魔法陣が描かれるとボーンストライカーと呼ばれたスケルトンが現れる。まぁ、これはレイアーナの解説を聞くまでもなく、ボーンモンクの上位個体であることは知っていた。
「アミュタ!」
「うん、大丈夫」
アミュアルナが攻撃を仕掛けるが、ボーンストライカーはそれをあっさりと避ける。その勢いで反撃をされるが、それを彼女も掠めることもなく避けた。
「《閃槍の投擲》!!」
アッツミュの貫通する光の槍が射線上に並んだスケルトン達を貫く。
そんな中、俺は地味にスケルトンを剣の腹で殴る。
「アミュタ、スケルトンは俺達で処理しておくから、ストライカーを頼むね」
「オッケー!」
……【妖精操士】や【念動士】のスキルも見せられん以上、2人が頼りなんだよな。
「やっぱり、ストライカーって攻撃避けるね」
アミュアルナは何度か攻撃を仕掛けているが、攻撃が当たらない。そして彼女も攻撃をまた貰っていなかった。
「じゃあ、〈アグレッサー〉しますかね」
【戦士】のスキル、〈アグレッサー〉。命中率を大幅アップさせる。これで空振りするなら少し厄介だろう。
「ハッ!」
彼女の回し蹴りがヒットする。……割と普通に。
ガコーン!!
彼女の蹴りは胸にある魔石を蹴り飛ばしたようで、結果一撃でストライカーを粉砕してしまった。
「……倒しちゃった?」
「油断しない! まだマスク野郎が……って、あれ?」
骨退治に夢中になり過ぎていたからなのか、それともアイツの存在感が薄すぎたのか?
とにかく、気づけば居なくなっていたことに驚く。
「とりあず、大丈夫みたいですね。敵は全滅しました」
レイアーナの報告で警戒を緩める。……名乗りもしないマスク野郎の登場は想定外だった。
「守って頂きありがとうございました」
ユイディアは墓参りを終えた後、地上に戻ってきてから礼を述べた。
「襲ってきた『仮面の死霊術士』に心当たりはありますか?」
……何てキャッチ―な名付け方……レイアーナのネーミングセンスに内心「マスク野郎」より良いな……なんて思いながらユイディアの返事に関心があったが、彼女は首を横に振る。
「そうですか」
「とりあえず、今はデラフトウッドへ行くことを優先しよう」
レイアーナが何か考え事をしているが、とりあえず護衛依頼を続行する。しかし、俺もまたアイツの「話が違う」という一言にかなり引っかかっていた。
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