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護衛クエスト『役割を終えた元聖女候補の追放』

 翌朝にはデラフトウッドを出発し、馬車で移動する事3日。王都アルボンニウに入った。


 やはり魔獣や妖魔は動きが活発化しているようで、街道を向かっている間もゴブリン族に襲撃されることは度々あったんだけど、街道に現れるのは最弱のようで簡単に倒せるため、危機感はないものの街道だから安全とは考え難いとは思っていた。


 ……まぁ、『竜騎幻想』でも移動中に低確率ながらもランダムエンカウントは普通にあったからなぁ。


「着いた……そろそろ武器のメンテナンスをしたいところだけど……」


「そうですね。紹介状を書いて頂いてから信頼できる方に頼まないと危険かもしれません」


 ハルチェルカが不安そうに腰に下げた細剣に触れる姿を見て、レイアーナが一応注意をしていたが、言うまでもないことは言った本人も解っているようだった。


 デンドロム王国の王都アルボンニウ。王国の南東寄りにあるお洒落な食堂や茶店、酒場が多い。これはゲームでの知識ではなく、ブライタニアに居ても知ることができる程有名な噂。それもデンドロム王国は食料の自給率が高いだけでなく、美味しくて安い食材が沢山あることでも有名だったりする。……もちろん、国外で食べようとすると高いんだけどね。


「さて、全員でワラワラ動くのは問題だな」


 街に入った時点で大きな声で宣言する。解散して各々好きに……とはいかない。初めて来た土地で名が売れていない状況だとリスクは当然存在する。


「二手に別れるか」


「あっ、わたし達は別行動でお願い」


 エルミスリーがアグリシアさんと城に行くということらしい。まぁ、彼女等は別に観光目的でもないし、チーム所属でもない。むしろ依頼主なので、好きにしてオッケー。


「んじゃ、俺は大聖堂に向かう。悪いけど同行してほしいメンツは俺から指定するよ?」


 ……どうせ、誰が行くって喧嘩になるからな。


「まず、リリアとレイア。仕事をして貰うから。それと、マオ、メア、クレアは来て欲しい。本当は大聖堂だからカロンも連れて行ってあげたいところだが、悪いけど仕事だからさ」


 カオリアリーゼ達に会いに行く際の大聖堂の様子は、正直あまり見せたくない。


「残りは広場にコテージを設置した後は街を見て回るも良し。飲食店に行って何か食べてみても良しって感じ。ただ、バラバラに動かず全員纏まって動くように」


 ……カロラインとフィルミーナ以外は心配ないと思うんだけどね。




 一足先に俺達は市街地へと入って行く。だが、衝撃的な世界観改変を目の当たりにしてしまい、移動中ちょくちょくソレを見てしまう。


「……嘘だろ?」


「多分、アレだよね?」


 多分、マオルクスが思ったアレは俺が思ったものと同じだったに違いない。


「まぁ、アレだな」


 所謂『総合デパート』という奴だ。……んなもん、ファンタジー世界にあってたまるか。もちろん、『竜騎幻想』にも存在していない。この世界の人間……普通の商人がそんなものを考えるわけもない。……なら、街中にわざわざ砦を作らせて、そこをデパートにするなんて芸当を思いつくのは間違いなく……。


「確かにこんなもん作るくらいならルミナスが依頼してくるはずだよな」


「だねぇ。……みんな、あの砦のような建物には近づかないでね」


「えっ、どうして?」


「……あれはね、少なくとも街を破壊する建物だからだよ」


 リリアンナやメアリヤッカは行きたそうな雰囲気だったが、アレは金のある人間からしてみれば中毒性があることを知っていたから、多少語弊はあるものの釘を刺す。


「多分、『竜騎幻想』を知らない転生者の仕業だな」


「……だろうねぇ。ところで、どうしてあんな言い方したの?」


「知らない? ……まぁ、多分前世の世界であれば無関係な限り気にもしないかもな」


 ネットで調べた話なので、何処まで正確だか知らないけれど、キッカケはゲームで大型店と商店街の対立のシナリオを読んだこと。フィクションだろうと思っていたが、脚色はされているものの、実話ベースなのではないかと俺の中では結論が出ている。


 あの砦はつまるところ、お金回収機。周囲の店を潰して客から金を巻き上げ、商品を買う客がいなくなったら潰して移動する。……運営した人は儲けられるが、撤退した後の街というのは生活機能を失い、近隣で生活することは不可能になるらしい。日本ならまだしも、デンドロムだったら立て直せるか?


 ……多分、そんなことも考えずにスローライフ目指した転生者が始めたことなんだろうな。


「旅の方ですよね? やっぱり“エイゴー”に興味が?」


 店に見惚れていると、反対側の道沿いにある店から出てきた店員さんと思われる女の子が話しかけて来た。


「いや、街中に砦とか凄いなって思って」


「あれねぇ……本当に迷惑で……折角店で経験値稼ごうと思っていたのに……そうだ、プリン食べていきません? 近日中に店を閉めるらしいから今がチャンスですよ?」


 食べたそうなメンバーの表情を見て、苦笑しながら俺達はその店に入った。




 プリンは俺も食べる。……けれど、入っても良いと思った理由は情報収集のため。だって、店員が退屈で客引きするくらいなら、噂話くらい聞けるというもの。


「お客さんはどちらから?」


「ブライタニアから。つい数時間前に着いた感じですよ」


「それは長旅だったね」


 中には店員の女の子1人。店主……と呼ぶには若すぎる。【調理師】の天職持ちだったとしても、店を構えるにはレベルがそれなりに高くないと稼げないだろうし、さっき「閉めるらしい」と言っていた辺り自分の意思じゃない感じだし、他に店主はいるのだろう。


「何故アルボンニウに?」


「『邪竜討伐軍』が来たと聞いて」


「あ~、そんな話もあったね。でも、正直それどころじゃないんだよね。……国的に」


 まぁ、言いたいことも解る。どうやら、転生者が深い考えも無く露骨に暴れているようだし。


「国的に?」


「【聖女】様よ。嘘か本当か本当に賜ったらしいのよ、王女様が」


「それは国にとって吉兆なのでは?」


「わたしも最初はそう思ったのだけど……どうも【聖女】様が現れてから国が荒んでいるような気がして……だとするなら、あの【聖女】は本物なの? ……って感じで、街ではヒッソリと囁かれているのよ」


 ……まぁ、偽物だからな。


「国が嘘を?」


「言うでしょ。自分の娘が【聖女】だというだけで、どれだけ他国に対して優位な交渉をできるか……多分? でなければ、国が必死に【聖女】を探そうなんてしないと思うし。実際、礼拝堂に連れて来られた【聖女】候補の子。その子は結果【聖女】じゃなかったらしいけれど、あの子の方が【聖女】っぽいし」


「そうなんだ」


 ……とは言ったものの、その【聖女】候補をこれから連れ出すんだけどね。


「はい、お待ち遠様。アルボンニウ銘菓のプリンですよ」


「わ~!」


 女子達の喜ぶ声を聞きつつ、男は黙ってプリンを食べる……混ざれんよな、流石に。




 プリンを食べて、食べたりないという不満の声は無視して大聖堂へと向かう。


 正式名称“アルボンニウ大聖堂”。デンドロム王国内で一番大きな女神ナンス様を祀り、教義を広める場でもある。……まぁ、何処の国でも一般人にとっては自然治癒の難しい病気や怪我を高額の布施で治療して貰う場である。


「こんにちは。こんな遅い時間にどうかなされましたか?」


 ……遅いとはいってもまだ17時前である。それでも、日が暮れたら一般人の来訪は断るというのも常識なことは心得ていた。


「はい。ユイディアさんとカオリアリーゼさんという方へ手紙を預かっていまして」


 ……とりあえず、大聖堂の関係者だとは思うが何者か確定していない以上、要件を伝えるのは避けたい。


「あぁ……あの2人の……入って左側の廊下。道なりに行った一番奥の部屋にいるよ」


 ……笑顔で話していたのに2人の名を出した途端、面倒そうに答えて足早に何処かへと出て行ってしまった。……噂から察するに単に関わりたくないのかもしれない。


 言われた通りに向かい、扉をノックする。


「どうぞ」


 女の子の声。間違いないだろう。


「失礼します」


 4人は扉の外で待機して貰い、俺とリリアンナだけ中に入る。それでも警戒されたのか部屋の中央まで進むと、ユイディアに近づかせないようにカオリアリーゼが俺達の前に立ち塞がる。


 ……おぉ、ユニットデザインと全く同じ姿!


「貴方達は?」


 鼻の下が伸びないように気を付けつつ、見惚れていると露骨に警戒されてしまった。


「俺達は冒険者チーム“サクリウスファミリア”。デラフトウッドでフェイストラさんからの依頼で2人を迎えに来ました」


 そう言って、彼女達に預かった手紙を差し出した。




 カオリアリーゼは手紙を受け取ると中身を確認し、ユイディアへ手紙を見せに行く。2人して目を通すと2人とも俺達に近づいてきた。


「わたしの両親を助けて頂いて、本当にありがとうございました。改めまして、わたしがカオリアリーゼ=C=フェイストラです」


 尻に届く明るい灰色の髪。金色の瞳も『竜騎幻想』のキャライラストのまま。むしろ、ゲームでは都合上、常時ヘルメット姿だったので、ノーヘル姿を崇められたのは嬉しいまである。ただ、装備はハーフプレートアーマーにガントレッドにグリーブという姿。色から察して鉄製……または鋼製品と思われるソレを身に付けていた。……多分、日頃から。


「そして、彼女が……」


「ユイディア=ベルクリスです」


 そう言って軽く頭を下げる。


 踝まである長い金髪はそろそろ輝きが失いそうになっている。つまり、日没が近いということ。カオリアリーゼと同じく金色の瞳も、僅かながら光を放っている。


 金色の瞳の輝きは村にいる時から見ていたので慣れていたが、金髪が実際に光っているのを見てしまうと、とあるアニメキャラクターを連想してしまう。


 服装は一般的なシナンス教の白を基調とした修道ローブ。


 そして、俺の期待通り2人とも声も可愛い。……声優さんの演技通りだ。


「護衛、宜しくお願いします。それと途中で寄りたいところがあるのですが良いでしょうか?」


 既に内容を知っている俺としては、周りに相談する必要もなく、即決で了承した。




 外で待機させていた4人にも入って貰い、それぞれ紹介をした後。


「出発は明日の早朝。こちらは日の出には出発できるよう待機していますが、お二人は準備ができたらなるべく早く東の広場に来てください。お待ちしています」


 そう言って部屋を出る。


「ねぇ、リリア。何故、話さなかったん?」


「……そりゃ、サクリさんが話したそうにしてたので~」


 少し拗ねたようにそう言うと、彼女は少し頬を膨らませる。


 ……あざといな。そう思いつつ苦笑いが浮かぶ。しかし、二次元でも美少女だったが三次元でも美少女って、死ぬことはないだろうけど厄介なことにはなりそうだな。


 女難に若干怯えつつ、消耗品の買い出しをしながら東の広場へと向かった。

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尚、5日間連続投稿1日目+本日中にあと2回投稿します!

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