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【戦士】カオリアリーゼ=C=フェイストラ

「落ち着いて。さぁ、あなたが賜った新たな天職は?」


「【戦士】です。女神ナンス様の期待に応えられるよう、日々精進します」


 幼くも落ち着いた声が教会の静寂した空間に響く。それはまるで鈴の音のように心地良く、その場を浄化するようでもあった……もちろん、気のせいである。


 ……そろそろ見る頃だとは思っていたし、予想通りの人物だ。もう間違いないだろう。


 そんなカオリアリーゼのオープニングを見て確信していた。


 尻に届く程に長い淡い灰色の髪。実はそれが拝めるのは貴重であり、普段はオープンヘルム姿で髪は中に収納してしまっているので、前髪しか見る事がない。でも、それ以上に目立つのが金色の瞳。そう、日中に光る瞳である。


 ヒューム族の女性として平均よりは高めの身長に引き締まったスタイルの良い容姿と清楚な彼女に合った可愛くも凛とした声が俺は好きで、もちろん推しの1人である。


 ただ、『竜騎幻想』のファンの中でも特に男性ファンから好印象な容姿や性能に対して評価はそれ程高くない。当然ながら、マニアには理由が既に分析されている。


「どうだった?」


 パタパタと彼女の元に少女が駆け寄る。駆け寄り方は可愛いものの、その表情は心配ということを具現化されていた。


 踝まである長い金髪は駆け寄る彼女の勢いにフワフワと舞う様子から、とても軽いのだろうとは思うのだが、普通に考えてアニメ演出というものだろう。実際にそんな長い髪が舞ったら強い風に当てられた以外考えられん。……まぁ、神演出なことに異論は認めないけど。


 そして、カオリアリーゼと同じ金色の瞳。同じ歳なのだが、身長に10センチ以上の差があり、童顔なのもあって、見た目がとても幼い。……でも、それが良い!


 ナチュラルに媚びを売るような振る舞いは幼い声色に似合ってはいるものの16歳の少女にしてはリアルなら痛いのではないだろうか……と現実なら思うが、『二次に限る』ということなのだろう。


 ……何が言いたいかと言うと「可愛いは正義」である。ただし、『二次に限る』。


 彼女の名はユイディア=ベルクリス。彼女はユニットでは無くNPCである。『竜騎幻想』でプレイヤーが動かす機会のないキャラで、配信者の方とかは主に嘗め回すように彼女を映すというのが定番行動だったりする。


 『竜騎幻想』での一番人気NPCであり、ユニットとして使わせろというクレームが出たり、良い歳をしたお兄ちゃんやお姉ちゃんが一部暴走したことでも有名な程である。


「うん、わたしは【戦士】だったよ」


「すご~い。でも、わたしはカオリンって【修道士】になると思ってた」


「そう? わたしは【戦士】で嬉しいよ。だって、【騎士】になりたいもん」


「お~。白馬に乗るカオリンも素敵だよ、絶対!」


 ……そう、2人は大親友。二次創作なんかでも、この2人は常にセット扱いだったんだよな。




 視界が暗転して、次の場面に。


 そこは孤児院……夕飯を食べた場所だ。そして、そこに幼いカオリアリーゼがいる。まぁ、ゲーム画面なので初プレイで彼女がカオリアリーゼだと判る人は稀で、判るのは既に動画などで見たことがある人だけだろう。


 ……あぁ、普通に続きなんだ。


 シーンが飛ぶかと思ったが、まだオープニングアニメが終わった後のゲーム画面での過去の場面だった。


「カオリア!」


 父親リドウセルに呼ばれ、カオリアリーゼは部屋を出ていく。そのまま玄関まで向かうと父親が少女を連れていた。


「パパ、この子……誰?」


「今日から私達の家族になる子だよ」


 普通なら戸惑う父親の一言だが、既に孤児院で多くの子供達と暮らしているカオリアリーゼは直ぐに状況を理解した。


「初めまして。わたしはカオリアリーゼ。……お名前は?」


「……ユイディア」


 先程のシーンが嘘のような不安そうな感じに妹味を感じるのだが、彼女達は同じ歳である。……見た感じだと絶対年下に見えただろうなぁ……。


「うん、ユイちゃんね! これから家族を紹介するから一緒に行こう?」


「あっ」


 そう言って、カオリアリーゼはユイディアの手を繋いで引っ張っていく。


 ……これがカオリアリーゼとユイディアの出会い。ユイディアは孤児なんだよね。ただ、何故孤児なのかは謎で、このイヴァルスフィアという世界観で金髪金眼の子供を捨てるのは考え難いんだよな。まして、女の子ならば奴隷商に売れば一攫千金。両親がお金に困って手放すのであれば、売っていると思うし。


 ちなみに公式では彼女が孤児である理由までは明かされていない。


「お帰りなさい」


「ただいま、メイネ」


 娘達が居なくなったタイミングで奥から現れた奥様とハグをした。


「怪我などはありませんか?」


「大丈夫。襲われずに帰ってこれたよ」


 ……ん? そんな台詞だったっけ? いや、俺自身うろ覚えだから絶対変わったとは断言できんのだけど……。


「本当に預かって大丈夫なの?」


「あぁ。それに見捨てることはできん。アイツとの約束だからな」


 ……確かにログの一言一句を正確に憶えているわけじゃないけど、そんな内容だったら印象に残っていそうなのに……それとも、俺がクリアした後パッチが当たったとか?


「何としても成人するまで守らなくては……」


「……可哀想に……せめて別の国で生まれていれば……」


 そこでシーンが終了し視界が暗転する。


 ……思い出してみればそんなシーンがあったような気もするんだけど、全く記憶に無い。


 ちなみにフェイストラ夫妻は心配していたが、何事もなくユイディアはカオリアリーゼと姉妹のようにすくすくと成長し16歳を迎えるんだよね。




 視界が明るくなった時、再びアニメーションだった。


「ようこそ、グアンリヒトの【剣の乙女】と『邪竜討伐軍』の英雄達」


 そこはアルボンニウにある王城だった。


 謁見の間にて国王、王妃との謁見をした【剣の乙女】。そして国王の隣には可愛らしい姫が居る。彼女は玉座の横に立ち、その距離は王妃より王様に近い。彼女の髪と瞳は金色でその存在はとても目立つ。


「邪竜王復活の噂は我々にも届いている。当然この事態を憂慮しているし、協力も惜しむつもりはない」


 ……あ~、これは海路のイベントだな。その根拠は王様の隣にいる姫様。それと一緒にいる王妃。陸路だと姫は不在で王妃は別の人だから。


 デンドロム王には3人の王妃が存在する。今いるのが第二王妃なのだが、そこにいる姫は彼女の子。このパターンが海路の特徴なのだ。ちなみに陸路だと第一王妃が隣にいる。それも全てストーリーの内容が変わって来るからだ。


「王様、デンドロム王国に聖女様が誕生されたと伺っております。是非、我々に力をお貸し頂けないでしょうか?」


「……それなのだが……」


「お断り致します」


 王様の言葉を遮って答えたのは姫様だった。


「突然の発言、失礼しました。わたしはデンドロム王国第一王女。リムザキュアと申します。そして、お求めの【聖女】でもございます。ですが、わたしがこの国を離れると国益を損ねることになってしまうのです。申し訳ございません」


 ……まぁ、仲間になるわけがない。彼女は金髪金眼というだけの偽の【聖女】なのだから。ただ、彼女が【聖女】を名乗るのにも事情があったりする。


「代わりと言っては何だが、私が推薦する優れた者を呼んでおいた。もし、気に入らんのなら無理に連れて行かなくても構わんし、我が国で人材をスカウトすることも許可しよう」


 これ以上王女に話をさせぬよう、王様が代案を出す。


「わかりました。お力添え、ありがとうございます」


「邪竜王討伐、期待している」


 ここで、視界が暗転する。


 ……確か、ここで仲間になるのは『竜騎幻想』における最強職の1つである【竜騎士】と【軽戦士】、【修道士】の男3人。まぁ、話を聞いた限りのムッチミラであれば喜んで彼等を仲間にするだろう。


 それと直接は触れられていないが、デンドロム王国は現在【聖女】のカリスマ性を必要としている。第二王妃の娘である第一王女が【聖女】であることで、とある反勢力を黙らせているが、その嘘がバレると困るので、もう1人の【聖女】候補が邪魔なんだよな。




 視界が明るくなり、再びアニメーションだが内容は直ぐに思い至った。ちなみに俺はこのシーンを見て、やり直しを決断して二度と海路を選んでいない。


「罰当たりな行為はお止め下さい!」


 そう叫ぶのはユイディア。場所はデラフトウッドの教会。革命軍の鎮圧を手伝った『邪竜討伐軍』。その最後、革命軍に保護されていたユイディアがカオリアリーゼと囲まれていた。


「無駄な抵抗はするな。投降しろ」


 兵士の1人が近づき強引にユイディアを掴もうとする。


「近づくな!」


 カオリアリーゼがその兵士に斬りかかるが……。


「うっ……ゴメン……ユイちゃん……」


 ……まぁ、話的にはそういう流れになるよな。


 カオリアリーゼは兵士に返り討ちに遭い、その場に倒れる。


「いやっ、死なないで!」


 ユイディアが彼女に近づき、回復魔法を掛けようとした矢先に、口から大量の血を吐く。


 カオリアリーゼを倒した兵士とは別の兵士が彼女の胸を背中から貫き、引き抜いたかと思うとその勢いのまま彼女の首を刎ねた。


「これにて国を惑わす偽りの【聖女】は討たれた。本物の【聖女】はただ1人、第一王女リムザキュア様のみ」


 そう宣言すると兵士達が一斉に声をあげる。その異様さに『邪竜討伐軍』の面々が違和を感じ始める。


「あの、何も殺害する必要はあったのでしょうか?」


 『邪竜討伐軍』の【秘書官】がそう訴えるが、兵士達の隊長は冷たく言い放つ。


「制圧に関する協力には本当に感謝する。しかし、他所の国の者に干渉する権利はない」


 ここで視界が再び暗転する。


 そもそもデンドロム王国の話は、「再び邪竜王が復活した時、この地に【聖女】も復活する」という伝承が発端であり、国の調査の結果、2人の金髪金眼な【聖女】候補が発見された。それが第一王女リムザキュア姫と孤児のユイディアだった。


 海路でも陸路でも、話は大きく変わらない。王女派になるか革命派になるかの立場の違いだけであり、どちらにせよユイディアは亡くなる。ただ、カオリアリーゼは陸路の場合は死なないけれど。


 ……そんな事を考えていたら、目が覚めてしまった。




 目覚めが悪い。可愛いユイディアの死は回避できないとはいえ胸糞悪い。陸路の場合、彼女の死がカオリアリーゼの覚悟に繋がるのだが、海路の場合は後味悪いだけ。……ゲーム的には国王からの信頼と魔器の類が確か貰えたはずではあるが。


 とはいえ、カオリアリーゼの夢を見たということは、確実に彼女と出会うことになるはず。その際、彼女がもし仲間になりたいというのであれば正直助かったりした。


 『竜騎幻想』の前半である仲間集めパートは【戦士】が強い。【戦士】に盾を装備させるだけで、前半の敵の攻撃をかなりブロックしたり、ダメージ量を減らしたりできる。前半の敵は総じて弱いからね。敵よりも装備の無さと戦闘マップ内にあるギミックの方が厄介なくらいだ。


 しかし、【戦士】のほとんどが男ばかりなのでムッチミラが仲間として誘ってしまって、後衛ばかりがこちらに来ることになったわけだ。


 でもハルチェルカからムッチミラ達の話を聞けたおかげで、『邪竜討伐軍』が海路から入るのではないかと推測できた。海路からだと男が仲間になるとは知らないかもしれないが、余程のアホでなければ【秘書官】から優秀な男ユニットの情報も入ったはず。


 カオリアリーゼは彼女との会話から察すると【騎士】志望だ。だが、アミュアルナと同じく盾装備をさせていると【騎士】に進化することはない。もし【騎士】に進化させるなら、槍を装備させる必要がある。……だが、アミュアルナと違いカオリアリーゼは盾を装備したままでも【重戦士】に天職進化する。……そう、念願の【重戦士】である。


 【戦士】ユニットは今後もムッチミラ達が拾っていくのであれば、こちらに回って来ることは少ないだろう。だったら、カオリアリーゼには申し訳ないが【重戦士】になって貰うしかない。……もちろん、彼女から仲間になりたいと言ってきたらの話。これまでのパターンから言ってきそうではあるけどね。ちなみに言われなければスルーする予定である。彼女にはデンドロム王国でやることがあるからね。


 ……今回ばかりは言ってきて欲しいまであるんだけどな。


「いや、待てよ?」


「どうかしました?」


 ……これって、もしかして可能なのか?


「サティシヤのようにユイディアを助けられるんじゃ……」


 ……いや、俺が待て。


「なぁ、何時から居た?」


「主人の熟睡を確認した後、ベッドから落ちないように抱きしめておきました」


「……要らんのだが? むしろ誤解された時の方が怖いわ」


 ……あれ? でも、そうしたらカオリアリーゼの動機が無くなるのか?


「ユカルナはベッドから出て待機。服は着ているように」


 まぁ、萌えボイスで人気の美少女ペアが幸せになるのなら、そんな後日譚も良いかな。

読んで頂きありがとうございました。

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何卒よろしくお願いします。

尚、5日間連続投稿1日目+本日中にあと3回投稿します!

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