サクリも知らぬ妖精達に伝わる伝承。守護と献身と永遠の契約
「おつかれさん、ルーチェ。助けてくれてありがとう」
「ご無事で良かった……ですぅ」
身長60センチくらいに成長……? うーん、まぁ、そんな感じで大きくなったルーチェを抱っこしながら、ルミナスの元に戻る。
「彼女をクイーンの元に運んであげたいんだけど、先に話を聞くよ?」
「大した用事ではないので、気にしなくて良いですよ。それに、今の貴方を見て無用の心配だと悟りましたし、きっと他の誰かが語るでしょう……さぁ、クイーンの元へ行きなさい」
「え? ……気になるんだけど……まぁ、そんなこと言っている場合じゃないか……」
見た感じルーチェの意識はまだある。だが、彼女の質量をしっかり感じる辺り彼女の力が入らなくなっている可能性もある。
みんなも魔石等の素材回収を終えたのか戻ってくると、ルミナスが改めて声を掛ける。
「ヒューム族の皆様。ご助力下さりありがとうございました。私1人であれば負けることは無かったにしろ甚大な被害があったと思います。……これは細やかではありますが私からの礼です。有効に使って下さいね」
少なくとも俺の知らない手段でウィスプが箱を運んで来る。多分、魔力による何らかの手段なんだろうが……それを受け取ると話が気になりつつもクイーンの元へと戻った。
「おかえ……ルーチェ……これはいったい……」
クイーンの元へ戻ると抱えてきたルーチェを見て彼女が慌てて駆け寄る。
「ルーチェがこの姿で助けに来てくれて……」
クイーンに今あったことを一通り話すと彼女は少し考え、話し始める。
「そうでしたか。……サクリ様、ルーチェの成長と2人の関係について、知ってることを話します。どうか知っておいて貰えませんか?」
「まぁ、聞くだけなら……実際、俺達の関係って特殊なようだし……」
そもそも、『竜騎幻想』に妖精族は存在しないことになっているんだよな。……【風水士】がスキルを使う際に呼びかけはするけれども、その実態を確認することはできない。見えないものは存在しない……一般的にはそう思われているも同然だからな。
「わたしが生まれる前の話です。元々、妖精界はこことは違う世界とも繋がっています。我々の祖先は別の世界を拠点としていたのですが、この世界に移り住んだそうです」
……ん? こことは違う妖精が存在する世界があるってことか?
「そんな我々に伝わる話なのですが、我々妖精族は他種族と絆を深めることで進化をもたらします。ただ、誰とでも絆を深めることができるというわけではなく、妖精1人につきこの世界の住人1人しか居ないと言われているのです」
「なるほど。だから俺にはルーチェが見えて、他の連中は見えないということか」
「そういうことです。絆を紡ぐことができた者同士は魂が共鳴し、不思議と直観的に深く理解できるそうです。……それは即ち、貴方はルーチェの恋人としての素質があるということ」
……いやいやいや、そういうのは要らんよ。嫌だよ? ルーチェ相手に女難が発動するのは。
「かつて、わたしもプルームだった頃。勇者様と共鳴し、彼に力を貸しました。寿命が違うためにもう会うことは叶いませんが、彼のおかげでわたしは多くの子供達に恵まれることとなりました。妖精族が増えるということは、精霊族が物質界に増えるということ。それは即ち、物質界の全ての生命に影響があります。……おそらく、ルーチェはわたしを継ぐ存在になる可能性が高いのです」
「勇者も……」
……いや、待て。勇者が存在していたのは『竜王の時代』。遥か昔の時代……しかも、物質界より妖精界の方が時間の経過が早いって言っていたよな? つまり……。
「サクリウス様。あまり変なことはお考えにならぬよう……それは邪推というものです」
……あれ? 心読まれた?
「気づいているとは思いますが、ルーチェはサクリウス様のことを慕っております。ですが、わたしの時もそうでしたが、貴方にそういった感情は芽生えていないはずです。流れる時は違うのですから、貴方は自分のペースで良いので、娘を大切にしてあげてください」
そう言って深々と頭を下げられる。
「……そうすれば、サクリウス様にもきっと、素敵なことがあるかもしれませんよ」
そういうのは損得勘定ではないと思うけれど、それでも少しは楽しみでもあった。
まだ帰るのに時間の猶予があるとのことで妖精の里でゆっくりすることになったのだが、何故か俺だけ引き留められた。
「ところで、ルミナス様から話は聞きましたか?」
「いや、どうせ他の人から聞くことになるって……」
そう答えると、彼女は深々と溜息を吐く。
「……確かにそうですけど……全く教えてあげないのは不親切すぎると……サクリウス様、今この世界の運命は大きく歪められています。その原因というのが悪意を持つ転生者の存在です。このままではサクリウス様が人助けのために運命を歪めた際にも大きな影響があるかもしれません。どうか、悪意ある転生者を対処して頂けないでしょうか? きっと、サクリウス様の助けになるかもしれません」
……そういうのは基本嫌なんだけど……俺にも影響があるなら仕方ないのかもしれない。
「他の精霊王も力を貸してくれるはずです。お願いできますか?」
「……できる範囲で良いなら……」
そう言わざるを得なかった。……転生者が原因って、他人事じゃないし、耳も痛い。
「そう言って頂けると思っていました。ルミナス様が渡した品はその依頼の報酬なのですよ」
……適当だな、ルミナス。きっと、その辺の感覚も大きく違うんだろうなぁ。
「サクリ様」
MPの大量消費からくる疲れから少々仮眠をとった後、俺も里を見てこようかと思ったタイミングで少し回復したのか、ルーチェが起きてきた。浮遊できる程度には回復したようだが、声が小さくフラフラしている辺り、結構ギリギリ頑張っているのかもしれない。
「お別れする前にお願いがあります。わたしと契約して頂けないでしょうか? 契約することで、わたしとサクリ様は魔力と魂の繋がりを得ます。サクリ様はわたしの魔力を得て、わたしは存在の力を得ます。……如何でしょうか?」
……よく解らないけど相手はルーチェだし、お互いに得るモノがあるなら構わないかな。
「うん、いいよ。ただし、後でちゃんと詳しいこと教えてほしい」
「はい、喜んで」
……まるで、居酒屋の店員のような返事なのだが、違うのは本当に嬉しそうだった事。
「ルーチェ、決断したのですね?」
クイーンの問いにルーチェは頷く。
「わかりました。では支度をしましょう」
多分、別空間に繋がっていると思われる穴を出現させると、よく判らない赤黒い液体を取り出し、その液体でルーチェの掌に魔法陣のようなモノを描く。そして、両の掌に魔法陣を描き終えると、ルーチェは俺の前に立つ。
「サクリ様、両手を貸してください。こちらに掌を見せるように……ありがとうございます」
掌を見せるように向けるとそこに自分の掌を重ねてきた。
「掌をそのまま顔の近くに……それで大丈夫です。あとは目を瞑って下さい……」
俺が目を瞑るとルーチェはよく解らない言語で何か詠唱をして、それが終わると唇に何かが触れた……まぁ、触れたものは想像が付くんだけど……。
「終わりました。これで契約完了です。……異界の魔法でしたが発動して良かったです」
唇が触れた瞬間、目を少し開けてしまったので、キスされていることは判っていた。これが同じヒューム族なら先に言えって怒るところだけど……その辺も感覚が違うのだろうか?
「あの、キスをするならすると……」
「あら? サクリ様。幼児扱いしていたわたし如きに狼狽えているのでしょうか? 子供のすることです。お気になさらずに。それよりサクリ様、左手の甲を確認して下さい」
そう言われて確認すると、何か紋様が浮かんでいる。
「それはわたしとサクリ様との繋がった証。普段は消えていますのでご心配なく。ですが、ご自身の意思で光らせると、どんなに離れていてもわたしと話せますよ」
……魂の繋がりというのは、こういうことなのか?
ルーチェは体力の限界も近いはずなのに、俺に肩車される形で妖精の里を案内してくれた。その過程でルーチェは身体が成長したわけではなく、種族としてプルームからプリュメリアへ進化したのだと嬉しそうに話してくれていたが、急に彼女の表情が曇ってしまった。
「サクリ様。そろそろ時間の限界だそうです。戻りましょう……皆様も既に集まっています」
帰りはクイーンが地上まで魔法で転送してくれるという。
「全員いますね? それでは地上へ転送します。皆様の無事をここから祈っています」
「サクリ様……回復したら、今度こそずっと傍に……心はいつでも貴方と共にいますから」
最後のルーチェからハグをされ、想いを伝えられた後、彼女がゆっくりと俺から離れた。
「「それでは、お元気で」」
クイーンが何やら呪文を詠唱したかと思うと視界が光に包まれ……周りが見るようになった時には遺跡『光霊王の古祠』の入り口に全員で立っていた。海は干潮になる寸前であり、本土への道が海面からしっかりと見えていた。
「さぁ、コテージに帰ろう」
自分でも意外ではあったが、イーベルロマから出てくる時よりも結構な喪失感に襲われていた。平然としていようと思ったがルーチェの顔や声を思い浮かべてしまう。
[サクリ様、聞こえますか? ……色々とわたし側に条件はありますが会話もできます。サクリ様は平気かもしれませんが、わたしが寂しくなったらお喋りしましょうね!]
……不覚にも喜んじまったじゃないか……ちと悔しい。
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