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サクリを守る! プリュメリアに進化したルーチェの決意!

 ルーチェの様子は気になったものの、多分彼女には時間が必要なのだろう……多分ね。


 洞窟のような造りの妖精の里。入り口から見た最深部に当たる場所。俺達はそちらへ向かうと光の下位精霊であるウィスプが数体、誘導するように行き先を先行して浮遊している。


「こっちみたいですよ」


 サティシヤがそのウィスプの後を付いて行く。


「解るの?」


「うん、何となく」


 俺にも普通に精霊の姿が見えるのは、それだけ精霊界の濃度と表現するのが正しいのかは判らないけど、濃くなったせいで誰にでも見えるようになっているのかもしれない。そして、サティシヤが何となく意思疎通できるのも彼女が【精霊術士】になったからかもしれない。


 ……結局推測の域で確認する術なんて無いんだよな……。


「よく来ました。サクリウス、ハルチェルカ……それと彼等の仲間達。貴方達が来るのを何年も前から待っていました」


 ……何年も前? 未来を見る力? いや、クイーンから聞いたのか、それとも逆にクイーンが彼女から聞いたのか。


「私はルミナス。光の上位精霊と呼ばれてはいますが、古の神々の一柱です」


「古の神?」


 見た目は雌のホワイトライオン。背には純白の大きな翼があり、言葉は口から発せられているのではなく、脳内に直接響いている精神感応というやつだ。その声は『竜騎幻想』での声優による優しい感じのお芝居というより大人の艶っぽいお姉さん系でママ味が溢れていた。


「えぇ。まだ、この世界に女神や魔王、竜人などがいなかった頃の神だったの」


 ……「竜王の時代」より前の古き神か……。


 知らない話に戸惑いつつも、彼女の目的が気になっていた。




「サクリウスが尋ねたい内容については概ね把握しています。しかし、回答は思ったより長くなってしまいます。そこで、先に私の用事を済まさせて下さい。……ハルチェルカ。貴女に会わせたい者が居ます」


 そう話すと、遠くから白く光るリスのような生き物が現れる。


「やぁ、ハルチェルカ。こうして直接会うのは初めてだね」


「あっ!」


 少年のような声の生物。この世界では見た事無いが、そのフォルムには見覚えがあった。そして、ハルチェルカはどうやら、彼の声を既に聞いたことがあるようだった。


「ボクは光の中位精霊、カーバンクル。ねぇ、ハルチェルカ。ボクと契約をしようよ?」


「契約?」


 ……まるで、何処かの魔法少女アニメを思わせる誘い文句に嫌な予感がしてしまう。


「君はもうすぐ【精霊術士】になる。その際に光属性の精霊魔法はボクが力を貸してあげる。その代わり、君が力を付けて強くなった時にボクの古き友を助けてほしい」


 ……ん? こんな内容だったっけ?


「古き友って?」


「今はまだ……仮にボクの力を引き出しきれなかったとしたら、この話は忘れて構わないし、君への協力を辞めることもない。……どうかな? 君にとって損な話ではないと思うけれど」


 ……ちょ、知らない話なんだが? まぁ、俺は【剣の乙女】じゃないから違って普通なのか?


「カーバンクル。悪いけれど話は中断です。招かれざる客が来たようです」


 ルミナスが立ち上がり翼を広げ、臨戦態勢を整える。


 そこら辺から小さな魔法陣が浮かんだかと思うと、そこから牛くらい大きなカブト虫のような生物が出現する。それも複数。


「……何故、この領域に魔獣が?!」


 ルミナスの指摘で、この生物が魔獣なのだと知る。……このエリアは湧かないはずでは?


「みんな、武器を構えて! 相手は魔獣のミラービートル。光属性攻撃を反射する魔獣です!」


 レイアーナが指示を飛ばし、俺達はルミナスやカーバンクルを助けるために武器を構えた。




 魔獣ミラービートル。レイアーナの〈アナライズ〉によると、弱点は氷と闇。光を反射で物理半減という厄介な敵だ。だが……ここは特殊な空間。


「お願い、プルーム達。少しだけ力を貸して!」


 ハルチェルカのスキル〈フィールドマジック〉で弱体を試みるが無効化されてしまう。


「そのスキルより〈フェアリートリック〉を使うと良いよ。普段より効果が大きいはず」


 カーバンクルのアドバイスにハルチェルカが頷く。その間にもマオルクスが全体に強化魔法を掛ける。


「光属性がダメなのよね? ……ならば……」


 アッツミュが白い本から銀の本に持ち換えて呪文を詠唱する。


「《呪球の放擲(カオス・ドリーム)》」


 広範囲系邪属性攻撃魔法により複数のミラービートルのMPにダメージを与えたのだが……ダメージを受けたミラービートルは同士討ちを始める。


「アッツミュさんの攻撃を受けた敵6体、混乱しています!」


 即、レイアーナの説明が入る。


 ……なるほど。これなら大量の数にも対応できるかもしれない。しかし……。


「新たな敵の出現を感知。前にいる人達は下がって下さい」


 言われるまでもなく、危険を感知したクレアカリンの指示で後退している。


「ほう……想定外の敵がいるか」


「皆さん気を付けて下さい。現れたのは魔人族です!」


 リリアンナが叫ぶ。傍にいたルミナスから聞いたのかもしれない。


 大きめの魔法陣から現れたのは魔人族。いや、『竜騎幻想』に魔人族は存在しないし、そもそも存在自体フィクションだと今の今まで思っていた。人語を使うその存在。レイアーナが何も言わないということは〈アナライズ〉できないのだろう。




 ミラービートルはどんどん駆逐しているが増え続けてもいる。まずはこの召喚を止めるためにも魔法陣を破壊する必要がある。……まぁ、知識無くともそれくらいは想像できた。


「〈フェアリートリック〉!」


 ハルチェルカがスキルを使用するが何も起きない。


「ハルチェルカさんのスキル使用により、自身に光属性無効の効果と身体能力が大幅強化されました」


 レイアーナの実況で、ハルチェルカも意味を理解したのか細剣を抜いて敵に攻撃を仕掛ける。


 他にも攻撃を繰り出すも魔法陣を破壊するには、現れた魔人族を倒す必要があるようだ。


 ……仕方ない。


 MP温存のため元々殲滅速度の遅い俺が魔人族の相手をするべく斬りかかる。


「無駄だ」


 斬撃は躱され、代わりに鋭い蹴りを貰い吹き飛ばされる。


「うぐぅ……強すぎる……」


 これは1人では無理かもしれない……しかし、手の空いてる仲間も居ない。事実、マオルクスもバフは1度だけで、攻撃に回らないと捌ききれない状態になっている。


「それでも……」


 〈サイコキネシス〉で短剣を飛ばす。鎧を狙っても攻撃は通らない……だから、隙間を狙う。しかし、相手もそれを見抜いていた。


 短剣を薙ぎ払った後、こちらに向かって何かを放つ。正体不明の魔法ではない何か。しかし、それは俺には着弾せず、前には大きな光の盾が現れて攻撃を完全に防いでいた。




「サクリ様!」


 声から察して、後方から現れたのはルーチェだと確信して振り向き、思わず硬直する。


「大丈夫ですか? わたしが貴方をお守りします!」


 戦闘中だというのに意識がそちらに奪われてしまった。……アナタ、ダレデスカ?


 いや、ルーチェだろう。でも、彼女の姿が大きくなって三頭身になっていた。……成長?


「わたしの姿に動揺するとは思いますが、今は……目の前の敵に集中して下さい」


 そう言われて、気持ちを強引に切り替える。


「サクリさん! 魔人族はわたし達には厳しいらしいです。それよりも魔法陣の破壊を優先して下さい!」


 リリアンナの大声が聞こえ、多分ルミナスの指示なのだろう。


「させると思うか?」


「やるんだよ ……〈サイコブラスト〉!」


 どのくらいのダメージを与えられるか判らないが吹き飛ばすには充分の効果があるはずだ。その隙に俺はミラービートルを薙ぎ払いながら魔法陣を破壊していく。


 最後の魔法陣を破壊し、周りを見渡すと……想定外にも重症を負った魔人族が立っていた。


 ……あれ? もしかしてかなり有効な攻撃手段?


「貴様! よくも、よくも……許さん!!」


「そこを何とか……これに免じて……よっ!」


 〈テレポート〉により一瞬で間合いを詰めると至近距離から〈サイコブラスト〉を放つと更に光の剣が魔人族を切り裂く。


 その瞬間、俺を守ってくれていた光の盾が消えて、浮力を失ったルーチェを両手で受け止める。……これで2度目か……体力切れの彼女を見るのは。


 残りのミラービートルを倒し終えた頃には俺とマオルクスの冒険者カードも点滅していた。

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