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エルミの客による「イーベルロマが壊滅した」という知らせ

「ただいま~」


「おかえりなさ~い!」


 上機嫌なアミュアルナの「ただいま」に、留守番組のカロラインが出迎える。当然傍にはユカルナと彼女の面倒を見ているフィルミーナも一緒だ。


 コテージも大所帯になったなと、最後に入って賑わう1階の様子を見て……もういつ死んでもおかしくないと心臓がキュッとなる。……まだ死ねないけどな。


「おかえり、サクリ君。ちょっとこっち来て」


 エルミスリーに呼ばれて近づくと、見慣れない女性が居て、初めて来客中であることに気づいた。


 その女性は立ち上がると、こちらに向かって軽く頭を下げる。


「こんにちは。……えーっと、こちらの人は?」


「初めまして。グアンリヒト王国所属【報道官】のアグリシアと申します。この度はお世話になります」


「ご丁寧にどうも。……って、お世話になる?」


 明るい茶色の股上まであるロングヘアーと深い藍色の瞳。童顔にエルミスリーより低い低身長。挨拶を聞いていなければ年下かもと疑念が過るかもしれないが、主に胸がその説を強く否定していた。


「国からの依頼の同行者。さすがに1人でやれって言われてないし、国側も1人では行かせないってこと。……まぁ、実際はお互いを監視するためだとは思うけれど」


「だよねぇ」


 ……と、アグリシアさんの紹介が終わったタイミングで2人の表情が真剣なものに変わる。急に変わった雰囲気に思わず身構えた。




 てっきり仕事について話が始まるのかと思いきや、エルミスリーとアグリシアさんはお互いの顔を見合わせて話をしようとしない。


「……えーっと、何かあるの?」


 流石に何もないということはありえないと思い尋ねると、アグリシアさんが話し難そうに口を開く。


「これは【報道官】としての正式な通達です」


 【報道官】という職業……まぁ、ノーマル職の天職名でもあるんだけど……の主な仕事は国からの公式な情報を街はもちろん、町や村にも伝える仕事である。……とは言えども、テレビなんて無いし、新聞……厳密には安価な印刷という文化もない。なので、直接叫ぶわけだ。もちろん、叫ぶだけでは喉が枯れてしまうので、壁新聞のように情報を記した大きなサイズの紙を掲げながら叫ぶわけだが、それだけでもかなり大変な職業であり、官の名が付く職業なので、当然ながら公務員扱いである。


 そして、当然ながらコレだけが仕事なわけでもない。


「イーベルロマ島に大量のアンテグラが発生しました。スタンピードによりイーベルロマ村が壊滅しました。なお、村民の生存状況は不明となっています」


 ……えっ? 早くないか??


 実はこのイーベルロマへのスタンピードは『竜騎幻想』でも発生するイベントである。当然ながら知っていて、いずれ村人達が生死不明になることは知っていた。しかし、俺の知っているイベントはタイミング的にもっと遅いはずなのだ。


 ……そして、その事実を俺は誰にも話していない。


「……えっ……」


 最初に言葉を発したのはカロラインだった。


「生存状況不明って……国は動いているんですか? 生き残りがいるという情報は無いんですか?!」


 少し離れて聞いていたカロラインとフィルミーナ、メアリヤッカがアグリシアさんに詰め寄る。一応、クレアカリンも気にはしているが、3人の取り乱し具合の方が酷かった。


「ごめんなさい。生存者の情報はまだ入ってきていないわ」


 ……実際、『竜騎幻想』でも生存者は長いこと不明だった気がするんだよな。




「……帰らなきゃ……」


「えっ?」


「きっと困ってる……助けに行かなきゃ……」


 フラフラと部屋に戻ろうとするカロラインの肩を瞬間的にクレアカリンが掴む。


「心配なのは解るけれど、今戻るのはダメだよ」


「何故ですか! クレンは心配じゃないの?!」


 あ~。クレアカリンをクレンって呼んじゃうよな、わかる……。


「心配な気持ちは解るけれど、あたし達では何もできない……むしろ足手纏いになるのよ」


 不思議なのはクレアカリンが冷静なことなんだよな。俺は若干動揺しているものの、謝罪されたとはいえ、村での直近の思い出は悪すぎる。だから、判断力にそれほどの影響力はない。そして、サティシヤも村に家族がいないことと、島で過ごしていたとはいえ、環境的に村へ何かを思うほど思い入れのある人はほぼ居ない。だが、クレアカリンは別だ。


「そんなことはないよ。わたし達だって何か助けに……」


 必死なカロラインにメアリヤッカは首を横に振る。


「あのね、ご両親はカロンが無事なことは知っているの。だから、戻ってきてほしくないと考えているはずよ? それに、仮に合流したとして、ご両親はカロンの分の安全と食事まで考えなきゃいけなくなるの。……わかる? ここに居る方がご両親は助かるの」


「……でも……だけど……」


 我慢の限界なのかポロポロと彼女の目から涙が零れる。フィルミーナがそんな彼女を抱きしめて、声をあげて泣き始めた。


「メアさんの、指示……従お?」


 そう言ったフィルミーナの声も上擦っていて、彼女も我慢の限界を迎え一緒に泣き始めた。




 泣いている2人に迂闊に声を掛ける事ができずに怯んでいると、アグリシアさんが話し始めてくれてホッとする。


「あのね、気休めかもしれないけれど、一応極少数ではあるけれど、逃げて生き延びた人もいるという情報はあるの」


 ……迂闊に慰めの言葉を掛けて、どんなことになるかが怖かったんだよな。


「極少数ってどのくらいですか?」


「さっきも話したけれど、生存状況不明なの。生き残っている人がいるというのも、確認がとれていなくて、そういう話があるという程度。……心配かもしれないけれど、先程のメアリヤッカさんの言う通りだと思うわ。せめて避難状況が入ってくるまでは会いに行かない方が良いと思いますよ」


 結局、確定情報はない噂レベルの内容……だから気休めなわけか。


「……皆さん、ごめんなさい。少し落ち着く時間が必要だと思いますので、わたし達は部屋に戻ります」


 しゃくりあげて泣いてしまっているカロライン達の代わりにメアリヤッカが伝えて3人ともそれぞれの部屋に戻る。


「サクリ君は大丈夫?」


「うん、不思議と平気。……多分あの2年間が直近の思い出だからだと思う」


 エルミスリーが心配そうに尋ねてきたが、先程感じたことを素直に伝えると彼女も納得しているようだった。


 ……個人的に一番心配しているのは両親共にノーマル職なメアリヤッカのことだった。




 メアリヤッカ以外の2人は眠ってしまっていて夕食時にも顔を出すことはなかった。


「2人の分はとっておいて、起きたら食べられるようにしておきますね」


 シオリエルは2人のことも心配そうではあったが、食事をしているメアリヤッカやクレアカリンのことも心配しているのが表情だけでも伝わっていた。


 風呂から出て部屋で一息吐く。自分の気持ちを整理するべく考え事をしていると部屋がノックされて、返事をする前にメアリヤッカが入ってきた。


「おっ、ビックリした」


「ごめんね。ちょっとここに入って行くところ見られたくなかったの」


 メアリヤッカは既に風呂後のようで、思ったより考え事に没頭していたことに今更気づく。


「どしたの?」


「まぁ、ちょっと弱音を吐きにね」


 そう言って、寝転がっていたベッドの縁に彼女は腰掛ける。


「流石にさ、カロンとフィナの家族はレア職持ちだから1人は生きていると思う。でも、わたしの親は……正直厳しいかなって、お風呂で考えたら辛くなってきて……」


 そう言って、彼女は泣きだしてしまった。


 長いこと泣いて弱音を吐いて、メアリヤッカが部屋に戻ったんだけど、村に居る時は凛としていて弱音を吐いたところなんて聞いたことがなかったので、彼女にとっても余程辛かったんだろうな……と、流石に思う。


 ……本当に『竜騎幻想』での設定でも生存情報って聞いたことないもんなぁ……。


「サクリ様は大丈夫なのですか?」


「ん~……父さんだけ、気にはなるけれど……まぁ、俺は心の準備できていたから……」


 心配そうにルーチェがこちらに近づいて来ては顔面に張り付くように俺を抱きしめる。……苦しいながらも彼女の意外な気持ちには感謝し、優しく彼女の髪を撫でた。

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