昇級! シャドウ級冒険者チーム“サクリウスファミリア”
買ってきたものを片付け終えたので1階へと降りてメアリヤッカとハルチェルカを待つ。共に冒険者支援組合に行って冒険者登録をする予定となっていた。ただ、それを聞きつけて「ついでに冒険者カードの更新に行こう」という話になっていて、結局ユカルナと彼女を見張るためにカロラインとフィルミーナの3人には留守番を頼む形となった。
「サクリ君、冒険者カードの更新に行くんでしょ?」
「うん」
話しかけてきたのはエルミスリー。宿代節約のためにコテージを間借りしているんだけど、会った当初は自分の耳を疑ったっけ。
「成長早いよね。どのくらいになったか見ていい?」
「うん、いいよ」
エルミスリーはサティシヤの『天職進化の儀』の際にはとても世話になったし、充分に信用できる人物だと思っている。
「それじゃあ、失礼して……えっ?!」
エルミスリーは【職審官】。スキルで【学者】と同じ〈アナライズ〉が使える。
「ちょっと待って。レベル9って何? わたし、まだ2なんだけど……」
「いや、ノーマル職とレア職だと上がり具合が違うし、得られる経験値も冒険者の方が獲得しやすいもんなんだよ。だから、あまり気にしない方がいいよ?」
普通の生活をしていれば、ノーマル職であれば1年で早くて1レベルアップくらいが目安なんだよね。遅いと2年かかる場合だってある。それだけ、日々スキルを使い続ける状況というのはないんだよ。……だから、冒険者は必死に活動していれば成長が早くなる。
「いや、でも9って……ちょっと、他の人達も確認したい」
「当人が良ければ……許可とってから見てねー」
待っている間、エルミスリーはチームメンバー全員を〈アナライズ〉していく。結果、前回リスポーンする骨どもを倒し続けたアッツミュとアミュアルナ、それと最初の金策分経験値を稼いでいたクレアカリンとアッツミュの4人が2レベルアップのレベルクラウンになっていた。
「4人もクラウン……みんなレベル1からだったのよね?」
「そうだね。例外はハルチェルカくらいだな」
そう、本来は『竜騎幻想』の主人公であるムッチミラ達だけが異様な速度でレベルが上がる世界のはずだった。でも、それは所詮ゲームではという話。この前のルーチェの話通りに『竜騎幻想』を知る転生者が他に居て、冒険者をしているのであれば俺と同じく異常な速度で経験値を得ることができているはずなんだよね。
「……そうだ。折角エルミがいるんだから、『天職進化の儀』をお願いできないかな?」
「4人か……本来ならダメって言うところだけど、いいよ。ただ、【学鍛童】と違って確実に進化するわけじゃないことは知っているよね?」
「もちろん」
実際、次への進化する可能性は一部の例外を除いて1割と言われている。
「進化できなかったとしても、ブライタニアなら他にも【職審官】はいるから、何なら紹介するし」
1割というのは一般論。実際は条件を満たせれば成功率は上がり、絶対成功するまで上げることも可能だったりする。……ゲームの仕様が適応されているならばだけど、多分適応されているとは思うんだよな。
「助かるよ」
「うんうん、助かるよね? ……それでさ、実はわたしからもお願いがあるの」
「お願いって?」
むしろ、要求してくれるくらいの方が助かるというもの。まぁ、『天職進化の儀』は元々無料で受けられる上に、エルミスリーが顔なじみだから気軽に頼んでしまったが、もう冒険者なのだから、無料には警戒しなきゃいけないよな。
「実はね、最近大陸中に冥職持ちが増えているという報告が上がっているの。大陸中の国家がそういった情報を共有していて、問題視しているわけ。各国で対応しましょうって話になっているけれど、他国の報告なんて真に受けるわけいかないじゃない? そこで、自国でしっかり調べましょうってことになって……わたしが選ばれちゃったのよ」
「おお、大抜擢?」
「……なのかなぁ? まぁ、そういうわけで大陸の国々を巡ることになったのだけど、サクリ君達に護衛して貰えたらなって。もちろん、それに関しては報酬が国からでるからさ」
「巡る順番が決まっているわけでないなら……俺達もこれから国々を巡る予定だから」
まぁ、『邪竜討伐軍』を追いかけられるなら問題なしということで依頼を引き受けた。
4人ともコテージで『天職進化の儀』を受けられると知って驚いていた。……みんな、教会じゃないと受けられないと思っていたらしい。まぁ、自分のところに招いて儀式を受ける人なんて王族くらいではないだろうか? ……サティシヤがイレギュラーなんだよな。
そんなわけで、空き部屋を1つ使って『天職進化の儀』を執り行って貰っていた。
「サクリさん、【拳士】に進化しました! やったー!!」
最初に儀式を終えたのはアミュアルナだった。
勢いで俺にハグをして喜んでいたが、冷静になった途端、凄い勢いで離れる。……何て言うか、ありがとうございました。……本人には言わんよ? キモいと思われても嫌だから。
アミュアルナの天職を進化させる条件は、鋼拳や爪などの格闘系武器で経験を積むこと。盾戦士として育ててしまうと便利で有用ではあるが、進化しないというユニットなんだよね。まぁ、現実なのだから盾戦士でも進化するかもしれないし、双棍を装備しても進化しない可能性はあったんだけど……『竜騎幻想』の仕様と同じだったようだ……多分ね。
「わたしも【魔道士】に進化した」
アッツミュの進化条件は魔法系ステータスの成長も必須ながら、一番大事なのは中級魔導書の入手である。魔導書には初級、中級、上級と存在していて、彼女は既に邪属性の魔導書3冊入手済み。だから、殴って経験値を稼ぎ過ぎない限り、順調に進化し続けるだろう。
「サクリさん、【精霊術士】に進化したよ!」
サティシヤも無事に進化した。【風水士】の進化条件が一番理不尽なんだけど、髪色と瞳色が同じユニットのみ。装備やアイテム、ステータスなど関係ないから育てる【風水士】ユニットは決まっている。……いや、知らんだけで何かあるのかもしれないけど、前世で生きている間に発見はされていないはず。
「あたしも【怪盗】になったよ」
「……何て言うか、全員進化とか、どんな確率よ……」
最後のクレアカリンと共にエルミスリーも一緒に来た。連続でスキルを使ったからなのか、エルミスリーはちょっと疲労気味だったけど、全員無事に進化して内心ホッとしていた。
『天職進化の儀』も終わり、レベルクラウンに達した4人全員が進化したことに浮かれた俺達はお祝いムードで盛り上がっていたが、時間も経過していたことに気づいて慌ててナッツリブア冒険者支援組合に駆け込んでいた。
「“サクリウスファミリア”の皆様、いらっしゃいませ」
「こんにちは。カードの更新とチームメンバーの追加登録に来ました」
「畏まりました。こちらで少々お待ちください」
いつものお姉さんに要件を伝え、冒険者カードを提示する。それらを全て持って奥へと向かって、直ぐに戻ってきた。
「それでは、測定しますね。先に新規で冒険者登録される方を測定しますね。それで登録される方というのは……?」
「わたしです」
返事をしながらメアリヤッカが前に出るとカナシリアも一緒に前に出る。
「お2人ですか? ……畏まりました。では、こちらにご記入下さい」
いつぞや俺達も書いたシートに2人も名前などを記入し始める。
「では、他の方は更新のために測定しちゃいますね。……それでは失礼します」
例によって〈アナライズ〉をしながら、俺達の能力値を確認しているのだろうが、お姉さんは溜息を零す。
「毎回思うのですが……本当に“サクリウスファミリア”の方々の成長速度は異常ですよ? いったい、どんな活動をされているのですか?」
「主に金策ですよ。何をしているかは秘密ですが」
「それは残念です。……えーっと……あの、職業の違う方がいるのですが……」
「えぇ、天職が進化したんですよ。わたし以外にもいますよ?」
見られていたサティシヤが答えた瞬間、彼女は本気で驚いたのか動きが止まってしまった。
数秒フリーズしていたお姉さん、再起動したのか雑談も中断したまま急いでステータスや必要な情報を記入していき、終わると即奥へと入って行ってしまった。「大変です」なんて声が聞こえていたので、きっと動揺しているんだと思う。
数分後に戻ってきた彼女は少し疲れているようにも見えた。……あれ? これって有名な「何かやっちゃいました?」案件かな?
「お待たせしました。更新の方のカードをお持ちしました」
そう言って、持ってきたカードは全部黒いカードになっていた。
「皆さんは今日からシャドウ級冒険者になりました。……異例過ぎて困惑しますよ。多分、直ぐにブロンズ級になっちゃいますよ……だって、スーパーレア職が既に4人もいるんですから」
呆れ気味にそう言うと、カードを持ち主に渡していく。
「そうそう。アイアン級だったハルチェルカさんのチーム登録もしておきました」
そう言って、ハルチェルカに黒い冒険者カードを渡す。
「新規の方はもう少し時間かかりますので、もう少しお待ちくださいね」
「……あっ、そうだ。あの、俺達、近日中に隣国へ向かうんですけど、冒険者カードの手続きとかって他所でもできますよね?」
「はい、大丈夫ですよ。……ただ、サクリウスさんとマオルクスは注意してくださいね」
そう言われて、初めてユニーク職が問題になる可能性があるということに気づいた。
とりあえず、他の国に行ったら、その国のコネが必要になると言うことを今回で学んだ。……ユニーク職は更新も一苦労なんだなぁ。
ナッツリブア冒険者支援組合から戻りながら色々考える。とりあえずほぼ間違いないだろうと思えることは、育成方針に関しては『竜騎幻想』の仕様に準じて良いということ。それならば故意に1割の確率を引き続けることが可能だ。……絶対という確信はないけど、ほぼ間違いない。
「俺達もついにシャドウ級冒険者か……ますます気を付けないとだな」
「そうだね。分不相応なクエストは受けないように慎重に吟味しないと……」
それだけでなく、『運命修正力(仮)』に対抗できるよう、気を一層引き締めた。
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