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ハルチェルカが推測で語る『邪竜討伐軍』の方針

 『聖女リアラインの棺』から出てきた時には完全に日が落ちていた。短期決戦になると思ったが、思ったより時間が掛かったからかもしれない。


 実は『聖女リアラインの棺』には罠を発動させないようにするための仕掛けがあった。考えてみれば、王族が参加する式典を行う聖域なのに、生贄を用意しなければならないなんて事はありえないし、相応しくもないだろう。


 ただ、今回はその装置と思われる場所が破壊されていた。だからハルチェルカが生贄として捧げられたのだろう。


 そして、生贄システムとは要は防犯システムなのだという。システムの無効化は特別なアイテムが必要なようで、基本的には使えない仕組みになっているらしい。そして、一度発動すると、扉を開けるのに生贄の間に生贄を捧げる。人と同じ重さの何かを置いても発動しないことから重量がスイッチではないらしく、解除はできなかった。……以上がクレアカリンの報告。


 ……俺なんかが解るわけないっす。『竜騎幻想』攻略中でも、そんな細かいことを気にした事もないわけで。


 あれから、とりあえず街には戻らずにコテージでハルチェルカの回復を待つ。彼女はただでさえ疲労して限界だったところを無理して戦闘したため、『聖女リアラインの棺』を脱出した段階で気が緩んで気絶してしまっていた。


「ところでサクリさん。あの斧は?」


「消えた」


 サティシヤの質問に短く答える。まぁ、サティシヤの目にもそう映ったはずだ。多分、本当に神器だったのなら、とても古い武器なのだから一撃しか耐えられなかったのかもしれない。むしろ、最後の一撃であの威力だったからこそ、俺も神器だったのかもしれないと信じられたと言っても過言ではない。


「本当に?」


「正直わからない。俺もみんな……少なくとも消えた状況を見ていた人達と情報は変わらない」


 一撃分の耐久力で、俺はあの場を救われた……つまるところ、そういうことだろう。




 翌日の昼時にハルチェルカが目を覚ました。


 食事をして貰い、風呂にも入って、完全に回復したことを確認できてから、彼女に話を聞くことになった。


「改めて助けて頂き有難うございました」


「いや、助けられて良かった。……それでハルチェルカさんは『邪竜討伐軍』に所属していたよね?」


「そうですね。多分、もう死んだ者として扱われているかもしれませんが……」


 彼女もそれを察していたか。……まぁ、助けに来なかったのだから、そうなるわな。個人的には彼女を助けるのは手段を知らないと難しいことを知っているけれど、自身の命が掛かっていたとなると、客観的に分析するというのは難しいかも知れない。


「それで、どういった経緯で残ることになったのか、教えて貰えないでしょうか?」


 こう言っては何だけど、ハルチェルカが生贄にされるとは予想外だった。……というのも、『邪竜討伐軍』に加わる【風水士】の中でも有能な部類だから。いや、比較対象がいないために【風水士】というだけで外された可能性も否めない。……彼女、簡単に【精霊術士】になるんだけどな。


「そうですね。わたし達が国外へ向かうことが決まって、『聖女リアラインの棺』で式典を行うことになったんです。ところが、そこで盗賊の集団によって国王の命が狙われる事態となりまして、撃退には成功したのですが、『聖女リアラインの棺』の防犯システムの解除装置が破壊されてしまい、非常用の解除装置を使ったわけです」


「そうね。そこまではあたしも判ってた」


 状況から判断したクレアカリンの推理通りというわけだ。


「わたしが残った理由についてですが、推測となることが前提となります。……多分、『邪竜討伐軍』でわたしが邪魔になったのかもしれません」


「邪魔に? 心当たりが?」


 まぁ、あるから言ったのだろうけど、相槌は大事……多分。


「ムッチミラさん……【剣の乙女】のことですが、彼女はどうも男性を優先にする傾向があるみたいで、仲間集めの際も男性が優先され、次に前衛で、女性の後衛は誘う様子も見られませんでした。……ですから、わたしが最初に切られたのだと思います」


 なるほど。【剣の乙女】のムッチさんはムッチミラという名前なのか。でも、仲間の集め方はそういった基準なわけか。……納得。


 ……でも、1度は仲間にし、かなりレベルが高かった彼女を何故生贄にしたのだろう?




「男性前衛最優先か。でも、多くが低レベルな中、ハルチェルカさんはかなりの高レベル。正直、貢献度は高いと思うんだけどな」


 とりあえず違和感があってカマをかけてみる。普通に考えて男性優先とはいえ、女性後衛キャラは他にもいると思う。そんな中、あえて高レベルのハルチェルカを生贄にする必要はやはりないと思うんだよ。


「まさかハルチェルカさん以外の後衛は全て男性とか?」


「いえ、そんなことはないですよ」


 ……だよねぇ。仮に男性チームを結成できるにせよ、それは先の話。今はまだ人選できる余裕はないはず。


「うーん。ますます解らないなぁ」


「多分、男連中は気づいていないとは思うんですけど、多分わたしが独身で男連中に話しかけられるタイプだったからではないかと」


「……えっ? もしかしてモテて嫉妬されたって話?」


「いえ、それとは違う感じです……わたしが話していない時もその男連中にムッチミラさんが話している様子って見た事ないですから……というか、彼女はプライベートな会話をしていないと思いますよ」


 ……ますます解らない。逆ハーレムで男にチヤホヤされたいって感じじゃないのか?


「だから、よく解らないんです。でも、レベルの開示はしていたし、実際わたしよりレベルの低い女性後衛も残っています。なので、彼女達と自分の違いは何かと考えたら、わたしが一番男性陣から声を掛けられるってことくらいで」


「ちなみに女性後衛って後は誰が?」


「【学者】の方と【獣操士】の方、それと【狩人】の方ですね」


 ……なるほど。確かに推しではないが、グアンリヒト王国で仲間になる女性はあとそれくらいか。……【狩人】が後衛かどうかは別として、物理アタッカーを優先したってことか?


 確かに魔法に限定していうのであれば、【風水士】は微妙だからなぁ。




「なるほど。色々教えて頂きありがとうございました。それでは最後に『邪竜討伐軍』は国外へ向かうと言ってましたが、どちらへ向かうか聞いていますか?」


 これで、あとは彼女が『デンドロム王国』と答えてくれれば、概ね『竜騎幻想』のメインシナリオの想定通りに動いていると安心できる。


「あの、それに答える前に1つ教えて頂けないでしょうか? 貴方達は何故、そんなことを聞くのでしょうか? 目的は何ですか?」


 ……真っ当な質問。当然ながらあからさまな『邪竜討伐軍』の動向を探っているのだから、警戒されて当然とも言える。


「俺達……いや、主に俺の個人的な目的になるんだけど、救うべき人達がいるんだ。そんな人達が幸せそうにしているなら放置。困っていそうなら手助けしたい。命の危機だったら助けたい。……まぁ、みんなにはそんな自己都合に付き合って貰っているんだ」


「ということは、わたしも?」


 その問いに俺は頷く。すると、何故か彼女は嬉しそうだ。


「『邪竜討伐軍』は『聖女リアラインの棺』を出た後、イーベルロマへ向かって『光霊王の古祠』を経由してデンドロム王国へ向かうと聞いています」


 ……やっぱりデンドロムか。


「ありがとう。……俺達も少し時間をおいてからデンドロムに向かおう」


「少し時間をおくのですか?」


「うん。俺達は『邪竜討伐軍』の戦力を削ぐことをしたくないから、彼女達が通った後、救うべき人達の様子を確認する」


「……戦力を削ぐ?」


 ……解らないだろうなぁ。俺だってそのつもりがなくとも仲間が増えちゃうんだから。




 多分……いや、絶対ハルチェルカは理解できていないだろう。だって、俺も理解できていないから。……聞いてもはぐらかされるしなぁ。


「俺が関与することで、『邪竜討伐軍』に影響を与えてしまうことがある。それにより俺が原因で討伐失敗となった場合、目もあてられない。だから、俺達は先行をしない。それに、俺達は正義の味方という献身団体でもないから、被害にあった助けたい人のみ助ける。そういうスタイルなんだ」


 ハルチェルカは周りを見回し、全員がそれに納得していると理解したのか、それとも理解せずとも呑み込んだのか。


「……そんな、考えすぎだとは思いますけど……でも、わたしがその助けたい人に含まれていたことは正直嬉しかったです。改めてありがとうございました」


「いや、助けられて良かった。それで、この後はどうしますか?」


「この後?」


「『邪竜討伐軍』に戻りますか? それとも、ブライタニアに戻りますか?」


 俺の質問の意図に気づいたのか彼女は少し考える。


「……そうですね。まだ何も考えられないですね。ただ、『邪竜討伐軍』には戻り辛いというか……」


 ……多分本人も気付いているとは思うけれど、戻っても殺される可能性は高いと思うよ。




「あの、サクリウスさん。幼い頃にブライタニアに来たこと無かった? 6歳くらいの頃の話なんだけど」


「確かにあるけれど……俺、ブライタニア出身じゃないって言ったかな?」


「……お家、商売されていない?」


「サイファリオ商会っていう雑貨を扱う店をやっているよ」


 ウチの店のことを知っているのか? でも、何でこんなに嬉しそうなんだろう?


「……見つけた。憶えていない? わたし、ハルだよ! ずっと貴方を探していたの」


「ハル?」


 まだ思い出していないけれど、どうやら彼女のイベントでの初恋の人は俺だったようだ。

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