表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/208

クリア済みの遺跡『聖女リアラインの棺』の罠

 グアンリヒト王国の西。ブライタニアから馬車で半日ほどの距離に『聖女リアラインの棺』がある。『聖女リアラインの棺』の西は国境になるのだが、『聖女リアラインの棺』から国境までは馬車で2日以上掛かる距離である。そして、西の国境の先はヒューム族の生活圏外。他種族や野獣や魔獣、妖魔の領域である。


 『聖女リアラインの棺』を通り越して西に1時間ほど歩いた場所にコテージを展開し、俺達は様子を見ている。一応、罠の影響がないと思われるルーチェに中の様子を見に行って貰い、確かにヒューム族の女性が囚われていることを確認して貰った。


 ……ただし、ルーチェの姿は俺にしか見えない。


「ねぇ、どうして入らないの?」


 尋ねてきたのはマオルクス。近くに来ているのに向かわないことに違和感があったのだろう。


「ちょっとだけ外行こうか?」


 他の連中に聞かれるわけにもいかず、部屋に入っても誰か来る可能性がある。一番は外に行くのがベストだろう。


 外に出たついでに近隣の村まで向かう。子供連れの2人なら警戒される可能性は低いはず……まぁ、マオルクスは子供じゃないんだけど。


「それで、外へ連れ出した理由は?」


「まぁ、みんなに知られては困る話だからね。……一度話した通り、あの『聖女リアラインの棺』には生贄として1人囚われているんだけど、実は『邪竜討伐軍』には囚われた仲間を助けることが可能なんだ」


「そうなの?」


「ただ、助けるかどうかは判らないけど……特定の人物に会って仲間にして戻ってこなければならない。ただ、そいつは遠くにいて急いで行って戻ってこないと、囚われた生贄は死んでしまうことになる」


「お兄ちゃんは『邪竜討伐軍』が戻って来る可能性を考慮して入るのを待っているの?」


「そういうこと。俺はあいつ等の戦力を削ぎたいと思っているわけじゃないからね」


 そう。『邪竜討伐軍』には、ちゃんとクリアして貰わないと人の世界は終了するし、俺がみたいと思っている推し達の幸せな後日譚を見る事が叶わなくなる。


「なるほどね。それが【剣の乙女】より先に会いに行かない理由なのね」


 俺のせいでクリア不可能になることだけは許されないからね。




 囚われた生贄を救出するには、最短ルートで北の隣国サンドルローム王国の【怪盗】を仲間にする必要がある。馬を潰すつもりで飛ばして最短で4日。仲間にして、速攻で戻ってくれば助けることが可能である。ただし、敵にエンカウントした時点でタイムオーバーである。……もちろん『竜騎幻想』の話。


 現実問題の正解は判らないが、安全かどうかわからない状況下で、たっぷり時間を使用して国内で専門家を呼んで……は難しいんじゃないかと思う。


「……まぁ、来ないな」


「でしょうねぇ」


 これは憶測でしかないが、国としては国王を守るためとはいえ、たかが冒険者1人の命を救うために迅速な行動をとるとも思えない。また、『邪竜討伐軍』はどうすれば助けられるか解らない以上、先に進まざるを得なくなっていることだろう。……攻略を知っている『竜騎幻想』のプレイヤーでも見殺しにするルートだしね。


「行こうか。多分中の人も限界が近いと思う」


「みんなを呼んで来る」


 各々行動をしている中、ずっと傍にいるマオルクスはこうなることを予想していたのかもしれない。もちろん、ゲーム的な意味ではなく国の内情的な意味で。


 装備を整えて準備を終えると、みんなも集まり始めていた。


「……お待たせ」


「これで全員かな?」


 最後にアッツミュが来て全員が揃った。ちなみにシオリエルとユミウルカは休み。というか、クエストの場合は参戦しなくても良いと思っている。金策と資材集めの時に戦って貰えれば良いかとも考えている。……死なせないために。


「じゃあ、行こう」


 総勢8名で1時間ほど歩き、『聖女リアラインの棺』へと辿り着く。ルーチェからの情報では既に中に囚われている生贄はかなり弱っていると聞いていた。


「ちょっと待って」


 俺は近くにある木に短剣を思いっきり刺す。


 ……〈マーク〉


「これで良し。非常用の脱出手段も確保したし、中に入ろう」


 まだ式典をしたばかりなのか綺麗に掃除された形跡がある。入り口から下り階段になっており、階段が終わると見慣れた戦闘マップが現れる。よく見ると戦闘の形跡も見られ、そんな中でも真っ先に囚われている場所を見に行く。……良かった。ゲームと同じ場所だ。


「……大丈夫ですか?」


 声を掛ける。倒れている白い髪の少女が顔を上げ……俺の夢が予知夢だと確定した。




「あ、貴方は?」


「俺はサクリウス=サイファリオ。冒険者です。貴方を助けに来ました」


 近くを見回し解除スイッチを躊躇わずに押す。……仕掛けの仕組み、知っていたからね。以前なら『竜騎幻想』とは違うかもしれないと躊躇したかもしれないが、今はあれが予知夢であると確信している以上、同じ仕組みに違いない。


 案の定、彼女を捕らえていた魔法的な壁が解除され、代わりに出入口への道が壁で閉ざされる。この仕掛けがプレイヤーのやる気を削ぐことで有名な罠の1つだ。


「わたしは、ハルチェルカ=セレニティ。助けてくれてありがとう」


「動ける?」


「えぇ、ありがとう」


 極力動かないようにして体力を温存していたのだろう。……けれど多分体力的な有余はあまりない。


「さて、それじゃあ……」


「サクリ、敵!」


 いち早く気づいたクレアカリンが鋭く警告を飛ばす。


 ……敵? そんなもん居ないはず……あ~、また例のアレか。メインシナリオから逸れた行動を修正する力……または他の転生者の策略か……。


「敵は7体。尚、ボーンモンク、ボーンタンク、ボーンナイト各2体。レベルは2。弱点は打撃と光です。奥に居るのはボーンプリースト。〈アナライズ〉にはもう少し時間を下さい」


 急ぎ口調でレイアーナが敵と距離を取りながら告げる。


「光、了解」


「打撃、了解」


 アッツミュとアミュアルナの気合いが入る。……頼もしい限りだ。


 一方、もう1人の光系の術の使い手であるルーチェに手を貸す雰囲気は無い。やはり直接力を貸す気はないのか? ……そう思ったのだが、彼女はハルチェルカの方に向かい、彼女を指してからシャドーボクシングをする。 ……あぁ、そういうこと。


「ハルチェルカさん。申し訳ないけれど、こういう事態です。一緒に戦えますか?」


「やってみます……お願い、プルーム達。少しだけ力を貸して!」


 ハルチェルカがベルを鳴らすと心得たようにルーチェは彼女の周りを踊り始めた。




 最初に動いたのはハルチェルカとサティシヤだった。2人が妖精の力を借りて弱体を行ったのだが、同じスキルなのに効果は違うモノだった。


「サティシヤさんの〈フィールドフォース〉の効果。周囲の敵の移動力のダウンを確認。それとハルチェルカさんの〈フィールドフォース〉の効果。……えっ、これは……周囲の敵の命中率と回避率が大幅ダウン。それと魔法防御力ダウンの効果を確認です!」


 レイアーナが驚いている。そして、ドヤ顔でサムズアップするルーチェ……思わず苦笑いが浮かぶ。


 続けてマオルクスの強化魔法の発動。その後、アッツミュが広範囲光属性魔法にてダメージを与える。……相手がアンデッドだから盲目にならないのな。


 あとはみんなで殴る。相手がレベル2ということもあって、割と簡単に敵を倒せる。特に適正のあるアミュアルナが圧倒的な速度で粉砕していった。


「この調子なら……」


「待ってください。先程倒したボーンタンク、復活しました!」


 思わず耳を疑いレイアーナを見るが、訂正することは無かった。


「奥に居るボーンプリーストがどうやら復活させているようです……ボーンナイト、復活しました!」


 ……おいおい。


 ボーンプリーストは奥に居て接敵することはなく、攻撃をするでもなく様子を見ていたが……放置するわけにはいかないってことか。


「仕方ない。俺が何とかする……と、その前に〈アナライズ〉の結果は?」


「ごめんなさい、あと少し……」


 嫌な予感がするんだよな。こういうのって、『竜騎幻想』では見なかったんだけど、他の種類のゲームでステータスが判らないって、絶対ボス戦じゃん?


「わかった。とりあえず俺は行くから、判ったら直ぐに教えて」


 それだけ伝えて嫌な予感を引き摺りながらボーンプリーストの元へと向かった。




 ……確か打属性が有効っと……。


 装備している大剣の腹でボーンプリーストを殴る。……確かに攻撃は当たっている。


「ん? 何か手応えが無い?」


 いや、当たった感覚はあるんだけど、相手に効いているという感覚がないんだよ。それに、相手からの反撃も無い。


「サクリさん、わかりました。ボーンプリーストのレベルは8。物理攻撃と光属性が無効。弱点は闇属性です」


 いや、闇って……どうしろと? いや、奥の手はあるよ? でも、〈サイコブラスト〉1発で倒しきれる保証は無いんだが?


「……まずいな……これ、詰んだか?」


 一歩後退る。すると、コツンと足に堅い物が振れた。一瞬視線でぶつかった物を追う。


「ユカルナ? 何でここに?」


 視線は一瞬で戻しつつも大剣は背に戻しつつ、ユカルナを握る。


[攻撃してください]


 一瞬、脳内に一度聞いたことのある声が聞こえた。テキストを機械音声で読ませたようなイントネーションに抑揚のない声。


 ……攻撃ねぇ。


「やああああっ!」


 一か八かで殴りつけた斧での一撃。その一撃はボーンプリーストを消失させるに充分だった。


「……一撃?」


 自分でも驚くほどの重い一撃。それは闇がボーンプリーストを割ったように見えた。


[ユニット名:サクリウス=サイファリオの全ての情報を獲得しました。これよりユカルナの最適化を開始いたします]


 頭の中に再び声が聞こえて、そして……持っていたユカルナが気体化して、まるで溶けるように消失した。


「はい?」


 ボーンプリーストを倒したことにより、他の敵の殲滅も無事に完了した。


「……まぁ、きっとまた明日の朝には部屋に置いてあるだろ……」


 深く考えず、今度は俺が生贄になって脱出させた後、〈リコール〉でさくっと脱出した。

読んで頂きありがとうございました。

下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします!


もし続きが気になって頂けたなら、ブックマークして頂けると筆者の励みになります!


何卒よろしくお願いします。

尚、5日間連続投稿3日目+本日中にあと2回投稿します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ