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『亡国の廃城遺跡』の探索と未踏破エリアへ転移する罠

 朝7時頃。村の外にレイアーナさんは待っていた。


 『竜騎幻想』では一瞬で『亡国の廃城遺跡』に移動できたのに、現実は生い茂る林の中を3時間程度掛けて歩くことになった。だが、外観など見たことが無かった俺は、『亡国の廃城遺跡』を外から見て圧倒された。


 ……こんな外観だったのか……口をついて出てきそうになった言葉を呑み込む。


 廃城というだけに遺跡そのものが城であり、所々崩れている壁には蔦が這う。まるでホラー映画に出てくるような城を彷彿させ、恐怖からの圧迫感を軽く感じていた。


「想像以上にでかいな……」


「そうですね、竜人族が出入りしていた城ですから」


 城を見て思わず出た感想に隣を歩くレイアーナさんが答える。


 少なくともナッツリブア大陸では最強の戦闘民族にして、大陸での旧文明の支配者。しかし、現在は他種族に姿を見せない。本当に数ヶ月前までは滅んだのではないかと疑われていたほどだ。……まぁ、実在するんだけどね。『竜騎幻想』の終盤で少数だけど仲間になるユニットも存在する。


 しかし、『竜騎幻想』では廃城の外観など見る事はないから圧迫感があったのかもしれない。


「『竜王の時代』の城か……」


「『竜王の時代』の頃、大陸は2つの派閥に別れていました。その城はかつて聖竜王が治めていた城だという話です」


「当人は居心地が悪かったらしいけどね」


 その辺の設定は、割と有名な話だ。……『竜騎幻想』では。だからなのか、俺がその事を知っていたことに彼女は興味を持ってしまった。


「ですが、城が陥落した際は既に聖竜王は不在。留守を預かっていたのは光竜王だったのです」


「そうなんだ? だとするなら、聖竜王は何処に?」


「所説あるのですが、【邪竜騎士】によって封印されたのではないか? ……というのが一番濃厚な説です。【邪竜騎士】というのは、暴君になってしまった竜人族の王達を封印するべく女神ナンス様より武器を賜った選ばれし英雄達の1人ですよ」


 ……あぁ、ゲームタイトルの伏線か……。


「そんな人達がいたんだ。【勇者】の話は幼い頃から聞いたことがあったんだけど、英雄達の話は知らなかったな」


「英雄達の存在は結構マイナーな話です。学院で専門に研究している人以外だと知る人は少ないかもしれませんね。……それで、留守を預かっていた光竜王は、この城で【闇竜騎士】の手によって魂を封印された……という伝承があります。確証は無いですけどね」


 正直、英雄の存在は本当に初耳だった。【邪竜騎士】や【闇竜騎士】なんて存在も初耳。ユニーク職なのかもしれないが聞いたことも無かった。


 得意気に語るレイアーナは上機嫌だったが、羨ましそうにリリアンナがこちらを見ていた。




 中は踏破済みと言われているものの、やはり緊張して身体が若干強張る。もちろん、よく見ると人が大勢出入りした痕跡が残っている。それでも……本格的な遺跡探索は初なのだから、緊張するなという方が無理だろう。


 ……〈マーク〉。


 遺跡の入り口付近に短剣を突き立てる。この〈マーク〉も何にでも使えれば良いのだが、長い事愛用している装備品にしか使えない上に気を失ったら効果が無くなるのだから、都合よく使えないあたり不便である。


 ……思えば、仲間が増えていなければ、既に詰んでいたかもしれん。


 薄暗い中、奥を目指す。先行はクレアカリン。その後ろにアミュアルナ。続いてリリアンナとレイアーナさんとサティシヤ。その後ろにアッツミュとマオルクス。最後尾は俺。申し訳ないが、ユミウルカとシオリエルは遺跡の外にコテージを展開し、待機して貰っている。敵はゲームと同じくシャドウウルフやグラップモンキーなどの野生動物、ホーンラビットやスライムなどの魔獣のレベル1。想定通りだったこともあり、戦闘にも余裕があった。


「お強いですね」


「そんなことは……でも、ここに現れる程度の敵であれば問題ないですよ。ただ、妖魔系が現れたら気をつけて。魔獣よりタチが悪いから」


 背後から声を掛ける。実は内部事情をちゃんと把握しているのは俺だけ。どういった敵がでるかも想定して準備していたから、答えられるものの、他の連中は何故俺が知っているのかと勘繰っているのも居て……全部「スキルだから」で逃げた。こういう時、ユニーク職というのは便利だよな。


 気持ち良く処理をしていくクレアカリンとアミュアルナを見て、気が緩んでいるレイアーナに注意する。


「こういう遺跡や洞窟ってね、実は人が一番恐ろしいんですよ」


「……そうですね」


 これまで色々試してきた結果、妖魔は同レベルで比較した場合、HPやMPは多いものの、力まかせの攻撃だったり防具を装備していなかったりする分、種類にもよるが総合的に弱い。だけど、人相手だとそうはいかない。同レベルだと装備によっては敵が強いのだ。


 城内を抜けて中庭に出る。そこを抜けて、研究室らしき場所へ向かうのだが。


「クレア、この辺で食事休憩にしよう」


「ん? ……あぁ、そうだね」


 中庭の敵を掃除し終えたタイミングで、食事をする。理由はレイアーナの体力の問題だ。


「大丈夫ですか?」


 心配そうにリリアンナがレイアーナに声を掛ける。


「はい、何とか……こういう時、運動不足は深刻な問題かもしれませんね」


「がんばって」


 当たり障りない感じでリリアンナが励ます。まぁ、レイアーナも疲労で動けないという感じではないので、食事休憩後は普通に歩けるだろう。


「日が落ちるまでに帰るため、出発しましょう」


「そうですね」


 食事を終え、出発を促す。まぁ、大丈夫だと思うけれどね。行きは戦闘があるから大変かもだけど、帰りは日が落ちない限りは敵が現れることはないだろう。とはいえ、彼女の体力を考えると早めに帰った方が良いかもしれない。


 中庭を抜けて、城内奥へと入って行った。




 障害を排除しながら進み、想定時間内に目的地へと到着した。……さて、ここからが本番である。


 ゴゴゴゴゴッ。


 重い扉がゆっくりと開かれ、室内に溜まっていたカビ臭い空気が吐き出される。しかし、足元を見ると、古いながらも既に誰か来た痕跡もしっかりと残されていた。


「……それでは仕事を始めます。少々時間を頂きますね」


 俺は頷いて、部屋を中心に警護するため配置を指示する。……そう、本番はここからだ。


 部屋の中の警護は主に俺。あとは現状戦力に数えることができないリリアンナ。部屋の直ぐ外はサティシヤとアッツミュとマオルクス。そう離れない程度で周囲を見回るのがクレアカリンとアミュアルナ。俺達のレベルはリリアンナ以外全員6。正直簡単に負けるわけがない……それでも、また想定外の問題が発生する可能性を考慮して単独行動を禁止し、見回る2人にもサティシヤ達から目視できる範囲の外へ行くことを禁じている。


 ……これだけ用心すれば、即死するような襲撃は受けないと思う。


 作業する彼女の後姿を見て、例のイベントシーンなのだろうなって思いつつも、やっぱりアニメーションは美しいんだなって実感していた。


「残念なことに、コレを写し終えると仕事が終わってしまいます」


 コレとは、壁に埋没しかけている古代文字の刻まれた石碑である。彼女は最初、蜘蛛の巣や詰まった埃などを軽く払い落とした後、紙にその文字を写している。


「恐らく、これが終わったと報告すれば、次はもっと危険な場所に派遣されることでしょう。それはきっと死ぬまで続きます」


 知ってる。しかも、貴女を殺す目的は、ただの第二夫人への嫌がらせだ。そして、学院もグリモヴァード家も王室……つまるところ、国王の名を利用しているので断ることも不可能だろう。ゲーム内でもレイアーナの家庭事情は少し触れられている。そして詳細は公式ファンブックに記載され、やがて薄い本に利用されるんだよな……。


「ですから、考えました。護衛を雇おうとした……という名目で旨味の無い依頼書を出せば、放置されるのではないかと……まぁ、それが狙いだったわけです」


「学院、辞めちゃえば如何ですか?」


「そういう問題じゃないんです。……わかりますか? 帰る場所がないということが。わかりますか? 家族に命を狙われるということが」


「わかりますよ。俺も似たような境遇なので」


 そう返すと、吐き出されていた彼女の言葉が止まる。そして、再び紙にペンを走らせる。


「そうだったのですね。ごめんなさい」


「いえ。嫌なら逃げるのが一番だと思いますよ。逃げないのは嫌じゃないという意思表示ですから」


 そう伝えたが、どのくらい彼女の心に響いたのか……俺にはまだ判断できなかった。




 レイアーナの仕事が終わるのを待つこと2時間。……イベントだと直ぐだったが、思ったより長い作業だったのだと今知った。


「終わりました。では、戻りましょうか」


「その前に、念のため武器を構えて下さいね」


「え?」


 それがどのタイミングになるのか時間では判断できなかった。唯一の合図は、レイアーナの仕事が終わるタイミングであるということ。もちろん、みんなには事前に話しておいて、注意するように伝えてある。


「ギギッ」


「ギャッ」


 ……ゲームでは存在しない敵の声。予定通りに俺達のいる部屋はアンテグラによって囲まれていた。ゲーム的には終わったと思っているプレイヤーへのサプライズイベントとなるのだが、現実である今の状況は多分、何処かにアンテグラの巣があって、偵察が俺達を見つけて仲間を呼びに行った……という感じなのだろう。


 ちなみにアンテグラとは妖魔の1種族で、例えるならばモグラ人である。武器は巨大で頑強な爪。地中を進み、遺跡や坑道、迷宮などを壊す厄介な種族だ。


「本当に現れた……凄い」


「言った通りだったろ? 準備は万端だろうな?」


 俺の問いにリリアンナは頷く。ゲームでは全滅したら、ただのゲームオーバーだ。だが、現実だと惨い仕打ちが待っている。これが不意打ちだったとしたらゾッとするものがある。


 ただ、俺も見落としが1つあった。それはレイアーナにこの事を説明できなかったわけだが、それによりパニックになることを見越せなかったこと。……何故なら、ゲーム状ではそこまで混乱していなかったからだ。


「ひっ!」


 アンテグラの数にビビッてしまったからなのかもしれないが、バランスを崩してよろめく。レイアーナが身体を支えるために石板に左手を触れた瞬間……手が石碑に吸い込まれる。


「え?」


 抵抗を試みるも触れた左手からどんどん身体が石碑に吸い込まれていった。


「あぁ、もう……」


 助けを求めて伸ばした右手は何も掴むことができず、石碑に吸い込まれる。


 最後に残した彼女の声は後悔の色が透けて滲んだ。




「ここは……」


「多分、隠し部屋。転移系魔法の罠が作動したんだと思う」


「え?!」


 多分、彼女は独り言のつもりだったのだろう。だが、思わぬ返事が返ってきたことで驚いて俺の方を見た。


「何でここに?!」


「これ」


 そう言って、俺は掴んだ彼女の髪の毛を見せる。


「レイアーナさんが吸い込まれる瞬間、貴女を掴もうと……そしたら幸いなこと髪の毛の毛先を掴むことに成功したんですよ」


 正直、掴めなかったらアウトだった。こんなシーンはゲームに無いし完全に油断していた。


「頭、痛くありませんでしたか? 助けるためとはいえ、咄嗟に髪を引っ張ってしまって申し訳ありませんでした」


「そんなこと、気にしなくて平気ですよ。帰り道、探しましょう」


 探索する程の広さは無かった。物理的な別の出口の無い密室。しかし、呼吸ができるということは、通気口が存在していることを意味する。全体的に暗いが壁から薄暗い光を放っている。


 少しだけ歩くと広い空間に出る。小学校の体育館くらいの広さだろうか?


「……行き止まり?」


「みたいですね。ただ、来た時と同じく転移系の魔法が仕込まれている可能性が高い」


 レイアーナの問いに答えつつ、様子を伺う。すると部屋の中、4ヶ所が光り輝き、地面から明らかに格の違うアンデッドが湧く。


「諦めるな。俺が死なせない」


 強そうなアンデッド達を前に絶望し全てを諦めようとしていた彼女を背に庇うように構えた。


「ごめんなさい。わたしも頑張ります。……敵はボーンナイト3体。他に潜伏している敵はいません。弱点は火と光と聖。物理攻撃と闇と邪は無効です」


 あぁ、【学者】のスキルを使ってくれたのか。……ということは、〈サイコブラスト〉を使わなきゃ倒せないんだが……3体を倒せるほどMP無いぞ?


「了解」


 ……とは言ったものの……どうする?


「任せて下さい。ここはわたしが守ります」


 そう言ったのは、ルーチェだった。彼女は圧倒的な光属性の精霊魔法の攻撃であっさりと撃退してしまった。


「倒せましたね。では、戻りましょう……って、ん?」


 ボーンナイトのドロップ品が明らかに変だった。

読んで頂きありがとうございました。

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何卒よろしくお願いします。

尚、5日間連続投稿2日目+本日中にあと2回投稿します!

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