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依頼者への依頼達成報告と心配なリリアンナの環境

 人攫い集団の生存者は存在しなかった。……もちろん、命のやりとりをしたのだから数名は死なせてしまったかもしれない。でも、無力化して生き残った者は村の自警団を経由して兵士に突き出すなりするつもりだった。別に人殺しを目的としていないんだから。でも、自害した者までは助ける余裕がなかった。……それが、自分の意思でやったものではなかったとしても。


 ……多分、目標の敵だけを倒したら戦闘終了する系のマップの種明かしって、こういった結末なのかもしれないな……。


 ぶっちゃけ、兵士の立場であったならば大失態ではあるけれど。でも、俺達冒険者にとってはどうでも良い話でもある。重要なのは村長の娘の生存である。……一応ね。


「一応、討伐証明の冒険者カードと証明になりそうな品とは別に装備も貴重なモノは盗ったよ。……彼があたし達のリーダーね」


 クレアカリンが戻って来たのだが、一緒に1人だけ女の子を連れてきた。


「助けて頂き、ありがとうございました」


「いや。えっと……?」


「わたしはメイディロッサの村長の娘でマリアキュラ=ピアスピルナと申します」


「あ~、無事で良かった。でも、お礼は貴女のお父様に行った方が良い。とても心配していたよ。ちゃんと送り届けるので、もう少し待っていて欲しい」


 確保報告で連れて来て、わざわざ礼を言ってくれたことは感謝しているが、俺的にはまだ油断できる状況じゃない訳で。


「そのぉ、彼等はこの後どうするのか聞いて貰ってよい?」


 リリアンナに尋ねる。……まだ名前を聞いていないから呼び方が判らなくて困る。


「そのエルフの兄妹はデンドロムにある森出身らしくて、帰りの際も勝手に戻るそうです」


「兄妹だったのか。……そりゃ、必死に守るよな」


 妹か……うん、自分で言って耳が痛い。


「恩義は一生忘れないって」


 そう彼女が言ったタイミングで、エルフの兄妹は頭を深々と下げた。




 少女……まぁ、同世代だけどさ……の人達を護送しつつ、メイディロッサへ向かう。何事もなく無事に村へ辿り着きそうだ。


「そういえば、リーダーさんのお名前は何て言うんですか?」


 通訳のお礼がてら隣を歩くリリアンナに名を尋ねられた。


「サクリウス=サイファリオ。君は?」


「リリアンナ=レーモンドです。そういえば、名乗ってなかったですね。言ったつもりでした。……って、あっ……えっと、さっきのエルフの方々ってマサークイールさんとワカナディアさんって名乗ってたって話を訳しましたっけ?」


「いや、初耳……」


「……ごめんなさい」


 割とかなり問題のあるウッカリさんだったとは思うが、推しだし、日常会話がおっとり系ロリボイスだし……癒されたから無問題かもしれない。でも、これで歌う時はアップテンポで高カロリーな曲を圧のある声色で歌うから、かなりギャップがあるんだよな。……いや、実際にはどうだか知らんけど。


 彼女の声に癒されたこともそうだが、収穫もそれなりにあった。アイツ等はお金も持っていたし、宝石類も持っていた。装備品もそれなりに良いものを持っていて換金すれば、良い額になるだろう。ただ、この妖精っぽいものが入っている瓶だけは謎の品である。何故か俺以外にその中の妖精を見る事ができないみたいなんだが。


 雑談をしながら歩いていたら、あっという間に村まで辿り着いた。ここまで来れば、別の村の住人であろうと全員が安全に家へ帰れるだろう。


「あぁ、マリア!」


「お父さん!」


 村長の姿を見つけたマリアキュラが駆け寄ってハグをする。それに続いてどんどん村出身の子達は両親や友人に駆け寄っていく。……1人を除いて。


「リリアンナさん、迎え来てない?」


「あっ……いえ、ウチは大丈夫です」


 そう言って、割と辛そうに苦笑する。……そう、全然大丈夫に見えない。


「そっか。まぁ、家庭事情は人それぞれ。それに本人が無事なことが一番だからね」


「そ、そうですね」


 彼女はその場から動くことなく、ただ周囲の様子を羨ましそうに見つめていた。


 ……せめてもの救いは村出身じゃない人達も羨ましそうに見ていたことかな。




 本当にリリアンナさんに友達はいないのだろうか? 家族がダメでも友人なら……ましてや彼女はエルフ語を通訳したことを考えてもゲーム通りに【話術士】のはずだ。【話術士】は人に好かれる才能があるから授かることができる天職。そんな彼女に友達がいないのは考え辛い。


 よく見るとリリアンナさんをチラチラと意識している男達がいる。……まぁ、彼女くらいの美少女であれば、この世界の住人基準であっても美少女と言っても過言にはならない。


 ……でも、来ないのは何故だろう?


「うーん……気分悪いな……どう見ても、そこらの男連中、リリアンナさんを意識してるじゃん。何故来ないん? ……「心配していた」っていう大義名分があるのに」


 答えたくなければリアクションしないだろうと、返事が無くとも独り言と処理できる程度に呟く。だが、それほど期待していなかった彼女から即答された。


「それは、わたしが拒絶しているから」


「拒絶? 何故??」


 少なくとも彼女は目の前に広がる光景を羨ましそうに見ていた。それでも拒絶している理由というのが想像できなかった。


「うーん。サクリウスさんって、好きな女の子います?」


 質問に質問で返すのはマナー違反。それでも聞いて来るってことは質問に対する答えに前提の条件があるということか?


「沢山いる……かな。でも、それは恋愛的な意味じゃなくて、力になりたいって意味かなぁ」


 所謂、『親友以上、恋愛対象未満』という、ライク表現にしては重い感情なのだが、言葉が不自由すぎるな。


「力になりたいって、恋愛感情だと思うんだけど……まぁ、いっか……そんな人の容姿が急に醜くなったら、どう思う?」


「まずは心配するかな。でも、性格が変わっていないなら関係が変わることはない」


「わたしは、それで態度を2度変えられた経験があるの。だから周りを拒絶してる」


 ……よく解らないが、見た目が変わったことで態度が変わる人を信じられないってことか。




 一瞬、アドバイスとして、村に留まる必要性が無いなら、親元を離れて暮らすのも良いんじゃないかって言いそうになるが、辛うじて堪える。……フラグな気がしたから。


「冒険者の皆様。無事娘が帰って来られたのは、全て冒険者様達のおかげ。本当にありがとうございました。報酬は用意しておりますが、ささやかではありますが宴の場を準備しております。今夜はどうかゆっくりして行ってください」


 村長からの申し出に俺達は甘えることにした。


「あの、サクリウスさん。宴の席、御一緒しても良いですか? ……多分皆さんと一緒の席が一番居心地良さそうなので」


「うん、全然構わないよ」


「ありがとうございます。ちょっとだけ家に戻ってきますね」


 俺も推しと話せるのは嬉しい。……ただ、本当に彼女をこの村に残して帰ることが彼女の幸せな後日譚に繋がるのかって事が気掛かりにはなっていた。


「あの、わたしも一緒して良いですか? お話伺いたいです」


 そう言ってきたのはマリアキュラさん。


「良いけど、マリアキュラさんは彼女に嫌われていないの?」


「どうでしょう? 他の子達と違って態度を変えたことはないので、平気だと思います」


 若干自信は無さそうなものの、何か事情は知っているようだった。


「リリアンナさん、村の男の子に好かれ過ぎて、好きな男の子がいた女友達を敵にまわしちゃったんですよね。喧嘩になって、男の子を拒否して、人間関係こじれちゃって……」


 俺だけに聞こえるようにコッソリと耳元で囁く。


 ……俺に助けを求めているように聞こえるんだが? いや、でもそれは……。幸せになって欲しいとは心から思っているけれど、深く関わったら俺が死ぬかもしれんしなぁ……。




 宴でご馳走を頂き、報酬も貰って、翌朝には俺達はブライタニアに向けて出発する。


「それでは、他所の村の子達のこと、お願いします」


「大丈夫ですよ。責任もって送り届けます」


 村の出身ではない女の子達も全員が近所の村出身ということを確認し、各村への護送を村長にお願いしたら、快く引き受けて貰えた。


 プロだから、仕事外のことは原則やらないようにしないといけない。まぁ、道徳的な観点からノーマル職の方に任せることが危険ならば話は別な場合もあるが、近隣の村へ送り届けるくらいのことは誰でもできるだろう。


 ……それよりも、最初はリリアンナさんの他にもマリアキュラさんも下手したら仲間に加わりたいと言ってくるかと警戒していた。幸い、ゲームの進行通りに俺からリリアンナさんは誘わない限り仲間に加わることはなく。そして、マリアキュラさんに至っては、14歳で未成年だということでセーフだった。


「本当は一緒に行きたいんですけどね。でも、来年は仲間に入れて下さいね? 『天職進化の儀』をしてレア職だったなら、絶対に追いかけますから!」


 宴で話をしたことで気に入られてしまったようだ。……本当に未成年で助かった。


「それじゃあ、行こうか?」


 何故か、チームのみんなが少し機嫌悪かったのだが……俺には理由が判らなかった。




 村の外れに設置した携帯用コテージに荷物を片付けてからサイズ縮小しようとしたら、そこにリリアンナさんが立っていた。


 ……そういえば、村外れで誘われ待ちをしているんだった。


「リリアンナさんも世話になったね。俺達に何か用?」


 流石に無視するのはゲームじゃあるまいし、気まずいので声をかける。確か仲間に誘わなければ問題ないはずだ。


「いえ。お見送りに。みんないるところでは見送りし辛いから」


「そっか。ありがとう……元気でね!」


 ……これでよし。でも、可能であれば自力で幸せになったところを見届けたいんだよな。

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