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携帯用コテージの購入で念願の快眠生活をゲット!

 ……やっと……買える……。


 今日までの間、表向きの理由としてはアミュアルナのレベルを俺達に追いつかせるために、馴染みの坑道で経験値稼ぎをしていた。


 【戦士】アミュアルナの経験値を稼ぐ際にこちらから頼んでデフォルトの片手剣と盾から双棍トンファーへと武器を変更して貰った。実はこれが彼女の次の天職への進化条件の1つだ。【戦士】の間は盾持ちの方が強いけど、彼女の成長のためには必須な変更である。


 幸い、彼女もレベルが5まで上がって、俺達に追いついた。しかし、俺達の異常な成長速度はボチボチ噂になり始めていた。


 ……ギリギリ間に合ったって感じだな。


 経験値稼ぎのコツを知っている人は多分、『竜騎幻想』経験者しかいない。何故なら常識(NPC基準)的に考えて1年で1レベル上がるくらいの認識だから。


 カッパー級冒険者故の安い依頼料と、異例な強さのチームだと噂が広まることは基本的にありがたいことではあるのだが、今はまずい。理由は噂を聞きつけて【剣の乙女】が来てしまう可能性が上がるからだ。……絶対に逃げなければならない。


 そういった理由から街での滞在時間を極力減らしてまで金策に明け暮れていた。……その本当の理由を知られる事なく。


「はい、『携帯用コテージ』よ。盗まれないようにね」


 マリーさんがショーケースから取り出したジオラマ等で使うミニチュアのコテージを差し出す。その料金は2000万ナンスほど。それを200万ナンスにまけて貰って購入した。


 実際、普通のお客にはそんな値引きはありえないのだが、相手が俺であることとマオルクスが所属していることもあり、原価割れ……実質プレゼントのようなものだろう。


 それでも、俺達みたいに冒険者になって2ヶ月程度の新人冒険者にとって200万ナンスは大金。それを支払い可能にしたのは【魔工師】ユミウルカと【家政師】シオリエルが資金を援助してくれたおかげとも言う。……もちろん、条件付きではある。


 2人曰く、「信用の証としての投資」と言われたけれど。


「それにしても、多分コテージとしては最大級の高級品……よく買おうと思ったわね?」


「うん……全ては俺の安眠のためです……寝るって大事なんです」


 規格としては18人が生活できるように設計されているコテージで生物以外は格納した状態で縮小できる……まさに、携帯用倉庫なのだ。




 昼食後にウッキウキでチーム全員を引き連れて北のキャンプ場へ向かう。ユミウルカとシオリエルは知っているので俺と同じテンションかもしれないが、他の連中は何事かと思っていると思う。


「何をするの?」


「コテージを設置する」


 【魔術師】アッツミュの問いに簡潔に答える。ただし、詳細は見てのお楽しみ。


 北の広場は相変わらずスラム街のような雰囲気と治安の悪さを醸し出しているけど、実際のところは兵士達の監視の目が行き届いているし、悪評判が広まっては困る人達の方が多く滞在していることもあり、見た目ほど怖い場所ではない。実際に人の入れ替わりも激しいし。


 北の広場の一角。比較的『ブラムリアの魔工房』に近い場所を選んで、兵士に許可を得た後にコテージを展開する。


「おっきい!」


「すごい」


 各々感嘆の声が漏れる。……頑張った甲斐があったというもの。自分が賞賛されたように感じて思わず頬が緩む。


「さぁ、中に入ろう」


 ……後でどのくらいの土地が必要か確認しておかなきゃ。


 家は2階建てになっていて、1階は入って直ぐはリビング兼ダイニングのように使える大部屋になっており、キッチンや食糧庫に使えそうな広めの部屋が何部屋かある。大部屋は天井吹き抜けになっており、2階には8畳程度の広さの個室が出入口を大部屋側に面するように18部屋と1つだけ広い部屋があった。……ゲストルーム的なモノだろうか?


「2階は個室だから、当面は1人1部屋使ってほしい」


 ウキウキだった4名のテンションが露骨に下がる。俺の意図に気づいたようだ。……そもそもこれが健全というものである。


「1階の部屋は約束通り、仕事部屋としてユミウルカとシオリエルに1部屋ずつ提供するので個室とは別に使って欲しい」


 そう。作業部屋として好きに内装を弄っても良いという条件で資金提供をして貰った。だから、彼女達の当然の権利とも言う。……あえて言葉にしたのは他の人達にそのことを知って貰うため。……けして、贔屓であげたわけではないということをアピールする意味で。


「それで、サクリの部屋は何処にするの?」


「……というか、コテージの主だし、そこは1つだけ大きかったあの部屋でしょ」


 【盗賊】クレアカリンの問いにユミウルカが断定する。


「みんながそれで良いなら……」


 丁度正面角でベランダ付きの部屋ということもあり、贅沢なその部屋を自分の部屋にした。




 部屋割りは俺の想像の斜め上を行く壮絶な争いだった。


 特にクレアカリンと【風水士】サティシヤと【占星術士】マオルクスとアミュアルナの4人がバチバチに争っていて……語ると長いから省略するが、話し合いでは決着がつかず、最終的に公正なジャンケンという手段の結果、隣はアミュアルナ。ベランダを共有する斜め前はサティシヤ。アミュアルナの隣にマオルクス、サティシヤの隣にクレアカリンとなった。


 ……いや、何処でも同じ部屋だと思うんだが……。


 その証拠にアッツミュは俺達から少し離れた場所の部屋。ユミウルカとシオリエルは他のベランダ付きの端部屋を選んだようで。


「じゃあ、部屋も決まったし、荷物運搬は後回しで今後について話したいんだけど」


 1階のフロアに集まって考えていたことを話そうと頭の中を整理する。


「まだテーブルも椅子もないけど、ちょっと聞いて欲しい。実はみんなも気付いていると思うけれど、“朽ちぬ日輪”亭には今、俺達とは別に3人の男性冒険者が泊まっている。しかも、彼等は俺達の仲間になりたいと話していた。……そうだよね?」


 そう、この話は俺に言われた話ではない。声を掛けられたのはクレアカリンとアッツミュだった。


「うん。でも断ったよ?」


「何で?!」


 ……俺は男の仲間が欲しかったんだが?


「うーん……嫌な感じがしたから……かな? あたしじゃなくてリーダーに言いなよって言ったのに、君から紹介してほしいとか言われたし……ね、アッチュ?」


「そうですね。声を掛ける前も値踏みするような視線を感じた気もします……自意識過剰で気のせいかもしれませんので断定はしませんが……絶対トラブル運んできますよ?」


 うーん。まぁなぁ……健全な男なら女に興味がない方が不気味とは言うけれど……仲間との恋愛は仕事に影響するよなぁ、絶対。……あれ? もしかして、美少女ばかりのパーティじゃ男の仲間を加えるのって不可能なのか?


「そっか……よくわかった。じゃあ、それはいいや。レベルも5で均一化できたし、これから仕事を2件受けたい。そのために日用品や調度品、食料などを買い溜めしておいて。しばらく街を離れるから」


 ……目的は『邪竜討伐軍』が拾い漏らしたユニットの内、推しの現状を確認するためだ。




 グアンリヒト王国内には仲間にできるユニットが初期キャラを除いて10名近くいたはずである。もちろん、俺にとってのアッツミュのように没キャラも加わっているなら増えているかもしれないが。


「初依頼だけど、どうして急に受けることに?」


「俺が『邪竜討伐軍』の動きを警戒していたのは知っているよね? どうやら連中がそろそろグアンリヒト王国を出国する雰囲気なんだ。今まで鉢合わせしそうだったから避けていたけれど、もう依頼を受けても大丈夫だと思うから」


「……お兄ちゃん、今度はどんな女の子助けにいくの?」


 必死に言葉を選んでいたのに、マオルクスが台無しにしてくれた。


「お兄ちゃんはスキルで助けられる人の未来、見られるよね? だから、アミュタお姉ちゃんのこと助けに行ったんでしょ?」


 ……このぉ……せっかく頑張って考えた言い訳が……。


「はぁ、そうだよ。厳密には助けられる可能性の高い、死なせちゃいけない人な。多分『邪竜討伐軍』に関連があるのかもしれないけど、俺は正義の味方をする気はないから。でも、助けられる人は助けたいなって。もちろん、そのために命を張る気は無いよ」


「なら、そう言ってくれれば……」


 サティシヤが心配そうに言ってくる……ほら、面倒なことに。それに結果として嘘を吐く形になるんだから、秘密の方が都合良かったんだよ。……全く、余計な真似を……。


「えーっと……普通、「未来がわかるんだ!」なんてドヤ顔で言ったら、頭がおかしい人って思うだろう?」


「普通は思うかもしれないけど、サクリさんは【念動士】だから信じるよ」


 ……おぅ、天職って中二病も許容するのか? 周りを見ても似た反応だし……。


「わかった。でも、やっぱり俺からいちいち説明しないから、察して欲しい。誰でも救うことができるわけじゃないから、知られたくないんだ」


 最後だけ本音を言っておく。予知じゃなくて、攻略サイトの知識が正しいんだけどね。




 こうして、会議が終わると各々荷物の移動や買い出しが始まった。


「ふふっ、どうよ? 良いアシストだったでしょ?」


「……いや。結果的に嘘を吐く羽目になったんだが?」


 買うものが無いのか、マオルクスだけが俺に付いて来る。……あっ、違うか。子供の1人歩きが危険だから警戒して付いて来ているのか。


「でも、推しに会いたいからって理由よりは理解されると思うよ?」


「まぁ、それはそうだけど」


 そう、推しに会いたいというだけが目的だと知られたら、ただのストーカーと変わらない。動機が違うだけで結果が同じになるという……相手からすれば怖いだけ。


「わたしはサクリ君が恋愛感情じゃないっていうところを評価して後でフォローしやすいように布石を打っただけなんだけどな~」


「まぁ、推しと言っても俺の本当の推しは神絵師による二次イラストだからなぁ。それが実在するとなると、モニター越しかどうかくらいの差があるんだよね」


「三次元には興味ないの?」


「……今は無いかな。可愛くて優しい女の子はもちろん好きだけどね。むしろ、嫌いな男はいないんじゃない? ……まぁ、好みは人それぞれだとは思うけど」


 そう言って躱すと彼女は不満そうに唇を窄ませる……露骨だ。


「まぁ、毎日あんな状態で寝ていても手を出さなかったくらいだし、ヘタレなのは知ってるし」


 ……え? 何故刺した? 俺、何か悪い事言ったか?!




 1日掛けて買い物をし、生活に必要な最低限の調度品は整えられた気がする。少なくともイーベルロマの俺の部屋よりは充実した部屋になったと思う。


 ……何より、1人で寝られる! 安眠万歳!!


 しかし、個人的に驚いたのはベッドや家具類もその日に購入してコテージに搬入されたこと。オーダーメイドじゃないから、サービス満点だったようで。……時間ができたらオーダーメイドも良いかもしれない。


 ……プライベートが確保される生活……最高だ~。本当に久しぶり!


 これで少しは女難の規模が縮小されれば良いんだけど……まぁ、甘いか。


「さて、一通り買い物も終わったし、俺は冒険者の店に行ってくる」


 依頼が張り出されている冒険者の店も当然ながら全部把握していた。

大変お待たせしました! そして、読んで頂きありがとうございました。

下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします!


もし続きが気になって頂けたなら、ブックマークして頂けると筆者の励みになります!


何卒よろしくお願いします。

尚、5日間連続投稿1日目+本日中にあと4回投稿します!

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