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カッパー級冒険者チーム “サクリウスファミリア”

「おかえ……サクリさん?!」


 何とか“朽ちぬ日輪”亭に辿り着いた頃には、割と限界に近かった。死にはしないだろうけど、満身創痍と言った感じだったとは思う。


「おじさん、急いでお兄ちゃんを部屋に!」


 たまたま食事をしようと降りてきたマオルクスが俺の異変に気づいて、直ぐに対応しようとするが、過剰反応すぎる。……まぁ、慌てされているのは俺なんだけど。


「……大丈夫……部屋までは歩くから……」


 それでも、店の親父さんは俺に肩を貸し、部屋まで連れて行ってくれた。


 店を手伝っていたシオリエルも急遽中断し部屋にやって来る。


「おじさん、ありがと。あとは仲間が治療するから大丈夫です」


「そうかい? お大事にね」


 そう言って、親父さんを退室させると直ぐにマオルクスはイヤリングを外す。元の姿に戻る時は基本見ないように背を向けるのだが、今の俺にはそんな余裕は無かった。けれど、彼女もそれは承知しているのか、何も言わない。


「サクリ君、事情は後で聞くから、今はじっと座っていて」


 それだけ言うと、彼女のスキルによって、俺の身体は嘘のように一瞬で完治した。




 翌々日の夕飯時。


「丁度良いタイミングで降りて来たね。お客さんだよ」


 親父さんの視線が店の出入り口へと向けられ、その視線を追った先にはアミュアルナが立っていて、ペコリと頭を下げる。


 今日の彼女は鎧を身に纏っておらず、普通の村娘にしか見えない。プライベートだからだろうか?


「こんばんは、サクリウスさん。今日はお礼とお願いがあって来ました」


「お願い?」


 そんな会話をしている間にチームメンバーも部屋から降りて来て、彼女の存在に気づいていた。みんなの視線が彼女に集まっていることも、本人は気づいていて気恥ずかしそうだ。


「こんばんは。……みんな、どうしたの?」


 丁度良いタイミングと言って良いのか、ユミウルカが来たので奇しくも全員集合となってしまったのは、何か思惑があるのかと偶然を疑ってしまう。


「アミュアルナさんがサクリさんに会いに来たみたいで……」


 ……うーん。


「えっと、アミュアルナさんは食事しちゃった? 良かったら一緒に食べない?」


「確かにまだですけど……良いのですか?」


「うん、大丈夫」


 この「良いのですか?」の意味は、一昨日の件は俺とアミュアルナだけの秘密にしといてほしいと言ってあった。でも、この秘密を仲間にもするつもりはなかった。




 注文した料理がテーブルに並ぶまでの間。


「改めて、一昨日は助けて頂いてありがとうございました」


「……ん? 一昨日って……」


 勧められて座ったばかりのアミュアルナは再び立ち上がって俺に頭を下げる。一方、彼女の言葉を聞いて、クレアカリンを筆頭にこの場にいた全員が状況を理解したようだった。


「なるほどね。そういうこと……」


 彼女の一言でアミュアルナもここにいる全員が一昨日の事を知っているのだと理解した。でも実のところ、トロールと戦闘をしていたことは知っていたがアミュアルナを助けるために戦闘したことを彼女等は今知ったんだけどね。


 クレアカリンの冷たい視線が突き刺さる。


「つまり、サクリはこっそりアミュアルナさんとデートしていたところをトロールに襲われ、格好つけるために彼女を逃がして、1人で戦ったと?」


「それは違う!」


 何でそう解釈される? 王国兵団がトロール討伐に向かった噂は聞いていただろうに。


「実はですね。その件がキッカケで王国兵団をクビになってしまいまして」


 ……は? 俺は彼女が何を言っているのか、理解できなかった。




「何で?」


 ……それでは予定と違う。


 アミュアルナというユニットは、両親の反対を押し切って兵士になったという経緯がある。多分、関連クエストの内容を知る限りでは、傷心で帰ってきても受け入れてくれる家族だとは思うけれど、彼女に関連するクエストは王位継承問題による兵団の腐敗を正そうとする物語だ。だから、彼女が城から居なくなると問題があるのではないか?


「理由は報告にあった戦況の変化に関しての連絡ができていないこと。本来責任をとるべき隊長及び隊員の全員が既に亡くなっている事。その責を負うべきわたしにはその手段がないこと。よってクビだということです」


「言っていること、滅茶苦茶すぎる」


 アミュアルナの弁にユミウルカが憤慨する。


「まぁ、理由はこじつけだと思います。もう、王国兵団は政争の道具になっているようで」


 ……やっぱり、その辺は設定通りか。そうなると、アミュアルナがこの後兵団に戻って来る話が出てくるか、彼女の役割を背負う別の人物が現れるのか……?


 問題は、想定されていないルートで生存した彼女の未来が変わってしまうことだった。




「それはどういう事ですか?」


 遠慮がちにサティシヤが尋ねる。……ここで黙っているマオルクスは何か心当たりがあるのかもしれないが、今聞くわけにもいかない。


「王国兵団には3種類の兵士がいるんです。1つは王族推薦枠の兵士。もう1つが兵士を家族に持つ身内推薦枠。最後に推薦する者がいない一般応募枠です。わたしのような一般応募枠で兵士になった者の配属先は主に3つ。男性のみが配属される対妖魔斥候部隊。料理ができる者のみが配属される補給・炊事部隊。それと女性のみが配属される衛生慰安部隊の3択です」


 対妖魔斥候部隊は死亡率の高い得物を釣る餌の役割を果たすと言われている。補給・炊事部隊は永久に出世することなく戦場で料理を作る退役の無い部隊。衛生慰安部隊は好きでもない男の相手を複数しなければならない国のために戦いたい女性にとっては地獄のような部隊だ。


「そして、その進路を拒否した者達が今回の訓練兵によるトロール殲滅隊だったんです」


 それで100人くらいの部隊になるというのは、全員が推薦無しというわけではないだろうけど、明らかに不要な人物の処理目的で出撃させた疑いがあるってわけか。……そんなん、『竜騎幻想』の設定資料にもない話なんだが?


「そういうわけで、わたしも王国兵団には未練が無いんです」


 ……そんな訳がない。設定通りであるならば、兵士になるのは彼女の夢だったはずだから。




 料理が完成してテーブルに並べられる。それらを食べながら、彼女は再び話を切り出す。


「それで、お願いの話なんですけど……今こうして生きていられるのは、全てサクリウスさんのおかげです。ですので、貴方の力になりたい。……わたしを冒険者チームに加えていただけないでしょうか?」


 ……うーん。推しの頼みは聞いてあげたいが、難しい頼みだなぁ……。


「その、冒険者以外の仕事は考えたりしていない?」


「はい。サクリウスさんの為にこの命を使うと決めているので……ダメですか?」


 ……ダメとは言い難いんだよなぁ……。


「あたしは構わない」


 最初の意思表明はクレアカリンだった。……まぁ、チームの問題として前衛が足りていない現状において彼女の加入は助かるとは思う。


「わたしもいいですよ」


 サティシヤが続き、結果的に全員がアミュアルナの加入を承認する。ただ、その反応は俺の予想に反していたし、内心も判らない。


 俺の予想では彼女の加入を反対すると思っていた。


 特にクレアカリンは最初、サティシヤにも厳しい対応していたし、他の女性陣加入に際し好意的ではなかった。例外はシオリエルとマオルクスの時だけ。他は警戒していたような気がする。……どういう風の吹き回しなのだろうか?


 全員の視線が俺に集まっている……残りは俺の決断のみと目が語っている。


「……誰も反対がいないのならば……アミュアルナさん、これからお願いします」


「はい!」


 ……いやね、推しが仲間に加わるのは嬉しいんだけど、そうなると幸せなのは俺であって、彼女が幸せかどうかは違ってくるんだよな。


「あの、アミュアルナさんの家は?」


「わたしは王都出身じゃなくて。今朝までは王国兵団の宿舎で暮らしていたのですが……ここは部屋が空いていますか?」


「なら、宿代節約のために同じ部屋でみんなと暮らしませんか?」


 シオリエルの商売っ気に返事した彼女に対し、アッツミュが提案する。


「そうなると、やっぱり俺はますます別の部屋に……」


「そうですね。節約のためとはいえ狭すぎても何ですし、もう1部屋借りて別れましょうか?」


 ……あれ? 思ったのと違う?? 男の俺だけ分離するという考え方はもう無いのか?


 俺の言葉を遮るように言ったサティシヤの発言内容に彼女からの阻止する意思を感じた。


「うーん。それじゃあ、アミュアルナさんとアッツミュさん、マオルクスちゃんで1部屋。あたしとサティさん、サクリの3人で別れれば良いかな?」


「え~! わたしはお兄ちゃんと寝る~!!」


 同じく俺の意思を無視するようにクレアカリンが3人ずつ分割すると、即マオルクスからの不満が出る。


「……ず、ズルいです! わ、わたしも……サクリウスさんと一緒に……」


 そこまで言って顔を耳まで赤くするアミュアルナさん。……かわゆす……ってそうじゃなく。


 アッツミュ、ユミウルカ、シオリエルの3人が生温かく見守る中、分割案は却下された。




「お待たせしました。こちらがカッパー級の冒険者カードになります」


 ナッツリブア冒険者支援組合にチームメンバー全員で訪れた。流石にレア職以上が6名になったし、レベルも上がったことで判断し、話し合った上で決断した。


「カッパー級冒険者になられたのでチーム名を登録するのですが、決まっていますか?」


 ……チーム名? 考えてないんだが?


 思わず周りに視線を巡らすと、何故かサティシヤと目が合った。


「あっ、じゃあ……“サクリウスファミリア”ってどうですか?」


 彼女の提案に俺以外の全員が賛成する……あれ? これって茶番じゃないだろうな?


「……じゃあ、それで……」


 “サイファリオファミリア”じゃないのかと思いつつも、パーティは正式に結成された。

読んで頂きありがとうございました。

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何卒よろしくお願いします。


尚、書き溜めた分の投稿を完了しました。

次回以降の投稿日は未定ですが、なるべく早く投稿できるよう頑張ります!

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