普通のダンジョンっぽく見える遺跡『土霊王の古祠』
遺跡『土霊王の古祠』は『竜騎幻想』と同じ場所、砂漠内に存在している。道案内にランファスが居るので迷う心配は無い。
とはいえ、遺跡まではレッツアレーナより遠い。例えシャドウメイデンでの移動で1泊は不要だとしても、厳密では無いが国の端から真反対側への移動のようなモノのため、休憩も含めて早朝から結構な時間を必要とした。
……それでも馬車移動だったら何日も掛かる道程だったけどね。
ちなみに、逆回りで訪れていたとしたら、ユニットが育っていないために全員生きて辿り着くのは困難な難易度だったりする。北周りが人気のない大きな理由の1つがそれだったりする。
「ペガサスでの移動、早いですね」
「そうだね。この子が優しくて利口な子で助かるよ」
休憩中のシャドウメイデンを撫でる。
動物の制御にはスキルを使用する。実際、御者や厩舎、酪農の仕事などはスキル持ちが就くのが普通だ。とはいえ、スキル持ちだけで仕事をしていたら人手不足間違いなし。そのため、当然スキルの無い別天職の人も動物を制御できる。……でも、それは努力の末にできる事。
俺みたいに、命を助けて懐かれたからといって乗りこなす事は普通できないと聞いた。とはいえ、こうして乗っているのだから幸運だったという事だろう。
「利口といえば、サッ君が気絶した後も数で圧される危機があったけれど、4匹のモノセロスが加勢してくれたの。お利口さんよね」
……いやいや。そういう話だったの? てっきりジャイアント族からの手土産だと……。
モノセロスの存在は知っていたし、レッツアレーナからみんなを帰す時に出したゲートを通った時に視認している。誰も何も言わないし、おとなしかった。野生の魔獣が従順になる事は稀だし、モノセロスは扱いの難しい魔獣である。
「今、事情を知ったんだけど……」
「あらあら。でも、サッ君とカナエアリィって方に懐いていたよ?」
……懐くも何も、気絶していて知らないんだが?
「そうだったの?」
「戻ったら、お礼を言うと良いかも?」
「……もっと早く言ってよぉ……」
知っていれば、出てくる前に厩舎へ寄っていた。
……それにしてもモノセロスか……。モノセロスといえば、クリスタークでオークから助けた2匹を思い出すけれど……まさかね。
「あそこです」
ランファスが指す先に遺跡の入り口が超小さく見えた。……随分先にあるが、視界一面が砂漠で、その周囲だけ草木が生えているので目立っていたし、不自然でもあった。
周囲に水……植物の成長に必須なモノが揃っていない時点で自然の摂理に反している。だからこそ目立っていて遠くからでも認識できた。
高度を少しずつ下げながら減速し、遺跡の手前で着地する。
[ニチリカ、到着した。準備が出来たら呼んで]
[畏まりました]
ゲートを開く前に一ヶ所に集まって貰う。好きな場所に開く事ができないし、維持にMPを消費してしまうので、短時間で大勢移動してほしい。
「シャドウメイデン、ありがとうね。ゲート開いたら、戻って休んでいて良いからね?」
そう声掛けながら首を撫でる。すると、彼女は不本意だったのか俺の影に潜ってしまった。
……そう、シャドウメイデンへは指示する事ができず、お願いするだけなんだよね。
[集合しました]
エスパフに《望郷への門》を使って貰い、仲間を呼び寄せる。
メンバーはアリーエル、キョーカロナ、マレイゼリン、サユミズキ、マミルリーヌ、リョーコロン、アヤルンゼール、ユイリーナ、カナエアリィ、ニチリカ、ミナコールとマリアキラの13名で挑む。それと、遺跡には入らないがヒナミイシャも呼んでいた。
「やっぱり、中は砂地ですね」
カナエアリィが遺跡の中を覗いて言う。
「……だろうねぇ。でも対策はしてある」
そう言いながらマリアキラを見る。
現在のマリアキラは一応保険として変身ベルトを身に付けて変身済み。普段は211センチある身長もヒューム族サイズの172センチになっている。……それでもかなり大きい。幸いなのは、ジャイアント族女性はワンピースを身に付けている。理由はすぐ脱いで巨大化できるようにという習慣だ。
……でも、今回は巨大化されたら困る。
マリアキラに確認したところ、〈砂漠の加護〉というのは砂漠に限らず、砂地であれば無条件に発動する。自身でオンオフする事のできないパッシブスキル。……まぁ、そんな事が可能であれば、俺の女難もオフできるわけだが……いや、無理か?
変身ベルトでの突入も考えたが、全スキル使用不可になるのは厳しい。
そこで考えたのが、巨大化で5倍の大きさになるのなら5分の1に縮小すれば良い。という事でヒナミイシャに頼んで『縮小の呪符』なるモノを作って貰った。
「準備オッケー」
マリアキラは変身を解除して211センチに戻る。
「じゃあ、先に入ります」
マリアキラとヒナミイシャが遺跡の中に入る。続けて女性陣が続けて入り、最後に俺がヒナミイシャと入れ替わりで入り、ヒナミイシャは役目を終えたので撤収していった。
例によって地上1階はただの洞窟。しかも、狭い。直ぐに地下1階の階段。多分今まで行った古祠の中でも最短だと思う。
地下1階も見た目は変わらない。ただ、広い。少し歩いただけで広さが実感できる程で中を徘徊しているのはセルケティオだった。もちろん〈砂漠の加護〉で強化されている。とはいえ、ただのセルケティオ。アーク種でもハイ種でもない。だから、サポートさえあれば3人で余裕だと思った。
3人というのは、ユイリーナ、アヤルンゼール、マリアキラ。彼女達だけが1段階進化だから、もっとも経験値を得られる。
「やあっ!!」
アヤルンゼールが先制魔法攻撃を放ち、マリアキラが攻撃を引き受け、ユイリーナが急所を狙う。能力的にそれが一番適切。……そんな事を考えなくともゲームならば3人で殴っていれば倒せるはずなんだけどね。
ドシッと重い音と共にセルケティオが倒れる。何とかユイリーナの攻撃が有効打になり倒すことが出来たのだが、どうも連携が取れていなかった。
……彼女は理由を語らないけど、多分ジャイアント族と行動を共にしているから……それは簡単に推察できた。
「ユイリン、しっかりしなさい。ここでの貢献具合がサクリ様の評価に繋がるのですから」
「申し訳ありません」
ユイリーナは【盗賊】。どうしても火力のある武器を扱い辛い。それでも戦う術はいくらでもあるんだけど、こればかりは口出しできない。
……やっぱり組み合わせが悪かったか? でも、ユイリーナではセルケティオを抑え込むのは難しいだろう。
「次、いこ~♪」
一方、マリアキラは気にする様子も無く、次の索敵を始めている。
マリアキラはヒューム族化ではなく、ただ縮小しただけという選択をしたため、巨大化以外の〈砂漠の加護〉を得ており、言うなればセルケティオと同等の強化を得ている。はっきり言えば、2人よりマリアキラの方が少し強い状態にあるわけで。
……それでも、レベルが上がれば様子も変わるかもしれん。
移動距離が増えた事で敵との遭遇回数も他の古祠より多い。複数出現はもちろん、連続出現などもあって、これで相手が強かったらと思うとゾッとする。
……ただ、この時は違うモノに襲われている事に気付いていなかった。
気付いたのは、地下4階に到達した頃だろうか。
「はぁ……はぁ……」
最初にユイリーナとアヤルンゼールの息が上がり始めた。ユイリーナはまだ理解できるがアヤルンゼールが疲れている事は意外だった。
そして、ニチリカやミナコールと息が上がっていき、地下5階に到達する頃には俺とマリアキラ以外が疲れ切っていた。
「少し早いけれど、休憩にしよう」
……何故だ? 疲れる程移動はしていないはずだ。
戦っているメンバーとノーマル職のミナコール以外は理解に苦しんだ。
そうは言っても疲れている以上戦闘は厳しい。休憩をせざるを得ない。階段に腰掛けて休んでいると隣にマリアキラが座ってきた。
「なぁ、マリアンはジャイアント族と黄鱗の竜人族の盟約について、どのくらい知っている?」
雑談のネタとして気になっていた事を聞いてみる。
「サクリさんは『竜王の時代』の話って知っていますか?」
「もちろん……とは言っても詳しい方では無いけど」
「アダマスオーロの民も地竜王には助けて頂いた過去があるそうです。当時は天職も無かったのでヒューム族は弱く、わたし達ジャイアント族も共に戦ったと聞きますが、それでも竜人族の力は軽く凌駕したと言われています」
……でしょうね。
これまで聞いた『竜王の時代』の話を聞く限り、竜人族以外は無力と聞いている。だからこそ、ナンス様は危機感を覚えたらしいけど。
「最後には風竜王に敗れたけれど、それでもジャイアント族は共に戦った証として、困っている時は助けるという盟約を交わした……らしいです」
ヒューム族ほど伝承伝達は劣化していないと思うけれど、それでも生まれる前の話だ。
「わたし達は地竜王の封印後も、密かに黄鱗の竜人族と交流していたの」
竜人族の多くが内陸にある迷宮で生活拠点を築いて暮らしているという事実を聞いた。
休憩で少しは回復したが、戦う事よりも疲労の方が本格的に厳しくなっていた。その理由に気付いたのは二度目の休憩となる地下7階から8階に降りた頃だった。
「砂に足を取られるのが地味にキツイね」
そうミナコールのボヤキが聞こえた事がキッカケ。言われるまで正直気付かなかった。
理由は1つ。俺の身体は砂に沈まない。パッシブスキル〈レビテーション〉の効果で砂の上に乗っている状態だ。でも、他のメンバーは普通に足の甲まで砂で埋まっている。靴に砂が入れば重くなる。砂に足を取られる。……それらがみんなの体力を奪っていた。
「無理は良くない。少し休憩にする」
3人ともレベル9。戦う数が多いから、最下層に到達する頃にはレベルクラウンになるのではないだろうか?
今度は俺からマリアキラの隣に行き、地下6階での話の続きを始める。
「ところで、ヒューム族代表の集団を最初から里に招く予定だった?」
「もちろん。【杯の乙女】の同行を条件にしましたけど……サクリさん達が居ると聞いて、急遽サクリさん達も招待して貰いました。……そういう意味では【杯の乙女】を知った時に毎回の恒例とは違って里へ招く事を決定したと聞いたかな?」
「何故?」
「単純に怪我人が多かったんですよ。【杯の乙女】はどんな重傷すら治せる薬を出すことができる。その事をお父さんが知っていたの」
「なるほど」
……まぁ、『女神様の使徒』であれば知っていても驚かない。
逆に言えば、重傷者が多数出てしまう程にセルケティオ族の襲撃は厳しかったという事か。
想定通り、3人で徹底して戦闘をさせて無事に全員レベルクラウンになった。ただ、想定外な事に俺とマリアキラ以外の全員が疲れすぎて限界を迎えつつあった。中には足が痙攣している人もいて、洒落になっていなかった。
でも、何とか最下層にまで辿り着いた。その瞬間、全員座り込んで動けなくなってしまった。
……まぁ、仕方ない。
「砂地、馬鹿にできないな」
「みたいですね」
移動力半減、回避力減少、スタミナ減少……ゲームで言うとこんな感じだろうか? やっぱり砂地での戦闘は思った以上に厳しいと思い知る。
みんなが移動できる程度の回復を待ってから、ベヒーモスへ会いに向かった。
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