表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/208

推しユニットの1人、【戦士】アミュアルナ=リップルト

「落ち着いて。さぁ、あなたが賜った新たな天職は?」


「えーっと……剣の……乙女?」


 オープニングムービー冒頭で流れる台詞。これは主人公で金髪金眼の少女が16歳の誕生日を迎えた日に行われた『天職進化の儀』のイベントで実際に流れるシーンだ。


 主要キャラクター達と主人公のアニメーションと共にアップテンポな主題歌が流れて、最後に『竜騎幻想』のタイトルが表示される。


 ……なるほど。また夢か……。ゲームのプレイ内容の記憶か?


 それにしても懐かしい……そう感じていたらタイトルが消え、別バージョンのムービーが始まる。それは直前にプレイされたセーブファイルにいるユニット達の内の1人が紹介されるんだよな。


「落ち着いて。さぁ、あなたが賜った新たな天職は?」


「あっ、わたしは【戦士】です! ですので、王国兵団の入団試験を受けようと思います」


 教会にて【職審官】へ宣言した幼く聞こえる弾んだ声がその嬉しさを表していた。身体に対して小さな顔に大きな深い橙の瞳が更に幼さを際立たせている。淡い橙の髪は腰に届くまで伸び、誰がどう見ても美少女でとても戦士を賜るような少女には見えないのだが、多分同じ村の人達なら納得したかもしれない。……想像だけど。


 アミュアルナ=リップルトのオープニング。つまり、彼女を仲間にした後のデータか。


 視界が暗転し、別のシーンになって続きのムービーが始まる。


「ねぇ、アミュちゃん。本当にブライタニアに行くの? 危ないから辞めて、村の自警団に勤めてもお母さんは良いと思うのだけど……ねぇ、お姉ちゃん?」


「無理よ。……この子、頑固だもの」


 アミュアルナの母親が娘達と夕飯の支度をしながら、巣立つアミュアルナを止めるべく、アミュアルナの姉に同意を求めるが、あっさりと拒否される。


「アミュ姉、頑固なの?」


「そうよ、頑固なの」


 アミュアルナの妹が姉に尋ねたが、多分彼女は事の深刻具合を理解していない。


「もう、お母さんもお姉ちゃんも……確かにわたし頑固かもだけど、挑戦しないと絶対後悔するし、落ちたら帰って来るからさ……気持ち良く行かせてよ」


「……でもねぇ……ねぇ、お父さん?」


 ……そうそう。アミュアルナが兵士になることを家族は望んでいなかったんだよね。


「アミュ。父さんはアミュを兵士にするために育てた憶えはない。アミュは家族と離れてまで兵士になりたいのか?」


 アミュのお父さん、筋骨隆々だが農夫なんだよな。いや、農夫が非力とかではなくて、農夫らしくない筋肉の持ち主という意味で。


「……お父さん……ごめん。わたし、試したい」


「まぁ、好きにすれば良い……そして、一度経験すれば理解するだろう」


 このお父さんの言葉の意味を彼女は早々に理解するんだよなぁ。




 視界が暗転し、場面が変わるとそこは入団試験の会場になっていた。


「次の方どうぞ~」


「よろしくお願いします」


 意気揚々とブライタニアで行われた入団テスト。その受付での出来事。


「お名前と……推薦状はお持ちですか?」


「アミュアルナ=リップルトです。推薦状は無いです……無いとダメでしょうか?」


「……そんなことないですよ。こちらの受付番号を胸に付けて下さいね」


 受付の人はアミュアルナをジッと数秒見た後、番号札を渡す。


 その後、何人かテストの様子が流れて割と苦戦しているのを見つつ、アミュアルナの番になる。そして……。


 ガンッ、ゴンッ、ゴンッ、ガッ!


 木剣と木盾がぶつかり合う連続音が会場に響く。アミュアルナの身体能力は他の受験生に比べて高く、試験管も戸惑うほどに強かった。


 最初はニヤニヤしていた試験官も一撃を受け止めてから様子が代わり、かなり必死に防いでいたように思える。ご丁寧に汗のモーションが表示され、試験官の必死さを表現しているくらいだから。


「やぁ!!」


 ゴッ!!


 彼女の木剣は試験官の木剣を弾き落とし、追撃をしようと彼女が振り被る。


「そこまで!」


 審判役の試験官の中止の合図で木剣の動きがピタっと止まる。


 ここで視界が再び暗転するわけだけど、結果は彼女が一番の成績で試験を合格し、無事に王国兵士団員になったんだよな。


 ……あれ?


 本来であれば、訓練シーンで如何に優秀なのかというのを表現される彼女のシーンとか、周りに慕われる様子とかが描写されていたはずなのだが、どうやら大幅にカットされたようだ。


「アミュアルナ訓練兵を呼び出したのは今後の進路についてだ」


「はい」


 場所は隊長室なのだが、そこにいるのは隊長ではなく副団長だった。


「確か君は王城の外を巡回する哨戒兵隊希望だったな」


「はい」


 哨戒兵隊は国内の国境付近の村々を巡って国防守備隊を補助したり、トラブルを解決したりする隊だ。この哨戒兵隊が彼女の兵士になる動機だったりするんだよな。


「申し訳ないが、君にはそこに所属する権利がない」


「え?」


「君に選べる兵隊は2つ。衛生兵隊か炊事兵隊だけだ」


「何故ですか?!」


 このオープニングイベントだけでは知りえない事情だけど、衛生兵というのは女性兵のみの部隊で男性の性事情の相手をする仕事も含まれている。一方、炊事兵は団員の食事の用意をする兵士のことだ。武器は握らされることなく、ただ料理の練習のみとなる。


 そして、そうなる兵士の理由というのが……。


「それは君に誰の後ろ盾もないからだ。一般人が入団した場合、雑用兵扱いになる。まぁ、得体の知れない者の責任は誰も負いたくないということだ」


「そんな……他にないんですか?」


 ここで画面が暗転する。彼女が選んだ選択が彼女の未来を決めたんだ。




 彼女の選んだ、別の選択。これまでの成績故に例外的に認められた措置だった。まぁ、結果的に配属されることはないんだけど。


「次!」


 配属先を希望したことでアミュアルナへの当たりは明らかに強くなった。彼女が選択した新たな第三の所属。それが男性兵のみの部隊である斥候兵隊だ。国の内外問わず異変に対して調査と報告、それと戦闘も義務付けられた兵隊であり、基本的に捨て駒扱いだとされている。


 そして現在、通例を覆したことで多くの反感を買っているアミュアルナは主に男性兵……当然推薦された訓練兵によって模擬戦を行われていた。目的は明らかに可愛がりなのだが……。


 ゴンッ!


「ゴフっ!」


 彼女の振る木剣が相手の側頭部にヒットし吹き飛ぶ。


「次!」


 ……こんな感じで可愛がられることなく、返り討ち状態が続いていた。


 ガツッ!


「次!」


 アミュアルナは勝ち続けるが、彼女だけ休憩なし。充分に可愛がりである。


「次!」


 何十人と倒してきたが、やがて疲労が蓄積し、集中力が落ち……。


「きゃあっ!」


 有効打を受けたわけではないが、バランスを維持できず、ついに転倒してしまった。


「そこまで! ……何をしている?」


「た、隊長?! いや、俺達は別に……なぁ?」


 ガッ!!


 訓練兵が手にしていた木剣を奪い取ると、号令をしていた兵士を木剣で殴り飛ばす。


「リップルト君。大丈夫か?」


「た、隊長……大丈夫です」


 そう言って抱きかかえて隊長は救護室へと連れて行くんだけど、残念ながらこれはオープニングムービーでアニメーションではなくゲーム画面なんだよなぁ。


 再び視界が暗転し、救護室で1人ベッドに寝かされている。……これが最後のシーンか。


 ……ガラガラ。


 扉が開き、男が入って来る。


「……リップルト、済まない。私の不注意だった」


「班長……わたしは大丈夫です」


「そうか。ゆっくり休んでくれ」


 そう言って、最低限の確認だけして救護室から出ていく。


「班長、済みません。アイツの心、折る事ができなくて……」


 声が小さくなっていくのを聞きながら、自分が斥候兵隊に来ることを望まれていないと知る。




 再び視界が暗転。これでオープニングムービーは終わりのはず……なのだが。


 今度は戦場画面。画面内には倒れた沢山の兵士達。そして敵表示されている6匹のトロール達。あとは主人公である【剣の乙女】と他の味方6名が表示されている。


「大変。3匹という報告だったのに6匹になっているわ」


 画面には表示されていない主人公のサポートで【秘書官】である女性が主人公に警告するが……まぁ、主人公も画面見てれば判るんじゃなかろうか?


「そんな……兵士さん達が全滅している! まだ間に合うかもしれないわ。助けないと!」


「行くぞ、我々の力を見せる時だ!」


「「「「「おー!」」」」」


 ……こうしてバトルが始まるんだけど、この戦闘は主人公にトドメを刺させるようにしながら他の兵士で対峙していると割と死なない。あっ、【修道士】と【魔術士】は別だけど。そんなことを思っていると、ありえない速度で戦闘が終了する……夢故に早送りか?


「……これは全員息が無さそうだな。多分、報告すればすぐに【魂葬官】が処理するだろう」


 戦闘が終わると、隊長の【機戦士】が状況を伝えるが、俺に言わせれば誤誘導でしかない。


「お疲れ様でした。どうしますか?」


 【秘書官】がそう尋ね、選択肢が出る。


 ここで「帰る」を選択すれば、すぐに城へと戻ってしまう。何も選ばずに悩んでいると30秒くらいで仲間が撤退し始める。


 だが、ここで「生存者を探す」を選ぶと、アミュアルナを仲間にするイベントフラグが立って、当たりを引くとアニメーションが流れる。


「聞こえてる? 返事して!!」


 三頭身キャラではなく八頭身で金髪金眼の【剣の乙女】が何度も声を張りながら倒れている兵士を1人ずつ確認していく。


「んっ……」


「あっ!!」


 アミュアルナの呻く声が聞こえ近づくと大木の下敷きになっている彼女を発見する。


「みんな、来て! 生きている人がいるわ!!」


 男達の力で大木は動かされ、【修道士】の治癒魔法で身体が回復する。


「……助けて頂き、ありがとうございました」


「良かった……生きている人がいて……さぁ、一緒に帰りましょう!」


 ここでアニメーションが終わって、イベントも終了するんだけど、この後は彼女から志願して『邪竜討伐軍』に加入する。




 再びの暗転。今度は何処に飛ぶのかと思ったら……普通のプレイ画面かよ……でも、これ……俺のプレイ画面じゃない?


 現実とは違い、ゲーム上では基本的には1対1で行われる。しかもスキルを使っていない限り1回ずつ攻撃しあって1ターンが終了するのが基本だ。


 このプレイヤーが操作するアミュアルナは片手剣に盾、金属鎧とタンカー職として使っていて、前線に立たせているから、すくすくと成長し、すぐにレベルクラウンに到達する。しかし……。


「アミュアルナ=リップルト様。申し訳ございませんが、貴女の天職は進化する兆しが見られません」


 街に戻り、大聖堂へと向かう。そこで【職審官】に声を掛けるが返って来た言葉は無慈悲な言葉だった。


 どんなユニットにも育て方というのがある。それは知らないとどうにもできないし、実際彼女はしばらくの間、【戦士】止まりのユニットだと思われていた。それは需要的に盾戦士が必要だったからなのだが、それだと成長できないように設計されている辺り、制作者側の意地の悪さが伺える。


 再び視界が暗転……次に視界に広がった景色は見慣れた天井だった。


「……あっ、起きたのか……」


 前もそうだったけど、全然寝た気がしない。……まぁ、あんな夢を見た原因は間違いなくムッチと呼ばれる【剣の乙女】が城に来た噂が広まったことに違いない。


「それにしても、嫌な夢だよな……プレイヤーが下手過ぎる」


「んっ……」


 ……やばい。ボーっとして無自覚に独り言をしていたが、周りには寝ている人がいるんだった……本当に慣れとは恐ろしい……。美少女に囲まれて眠ることに慣れるとは思わなかったわ。


 ちなみに、天職進化できなかったユニットの末路は囮か生贄役として利用されることになる。




 周りを起こさないように細心の注意を払いながらベッドから出る。


 ……アミュアルナが『邪竜討伐軍』で活躍するには天職を進化させる条件を整える必要がある。ただ、知識がないと難しい。事実、プレイヤーの中では総ユニット数の枠を確保するためにわざと彼女を仲間にしないプレイヤーもいるくらいだ。


 トロール達との戦闘の際に助けなければ仲間にならない……ただし、その場合は彼女が死ぬ。でも、死んだ描写などもないものだから、彼女の存在が知られるまでは時間が掛かっており、発売されて間もない頃は知らないまま辞める人も多かったのではないだろうか?


 ……タイミング的にもうそろそろだよな……イベント……もし、俺が助けて、『邪竜討伐軍』に加わらなかったら、彼女は幸せになるのだろうか?


「……まだ死ねないの……お願い……助けて……」


 アミュアルナの声が聞こえたかと思い意識が覚醒する。……ベッドに寝ていた自分に一瞬驚きつつ、起きた夢すら見たのかと呆れていた。

読んで頂きありがとうございました。

下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします!


もし続きが気になって頂けたなら、ブックマークして頂けると筆者の励みになります!


何卒よろしくお願いします。

尚、本日中にあと3回投稿します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ