2人のチーム加入とアスパラオウム王国へ向け出港
「さて、残りの問題は……」
ロープのようなものに繋がれていた2頭のモノセロス。多少傷付いているが致命傷には程遠く、生存活動には何ら問題ない健康なモノセロスだった。
判っている事として、少なくともロープに見えるそれは、ロープでは無い事。ただのロープだったら繋ぎ止めておく事はできない。だから、拘束するための魔法か何か付与されているのかもしれない。
「流石に外してやらないと生き残れないだろうな……どうする? 連れて帰る?」
念のためカナエアリィとミッコイーヴァに尋ねる。
「いえ、手に余ります」
「飼うにしても、厳しいでしょうね」
ミッコイーヴァが首を横に振り、カナエアリィも断ってきた。
「……なら……」
一番簡単なのは直接外す事なのだが、多分その瞬間に殺される。モノセロスからすれば、捕らえたのもヒューム族だし、見た目で違いは判らないだろう。
……〈サイコキネシス〉。
極力離れた位置まで全員を下がらせた後、遠隔でロープを外した。
ナイルナットへの帰り道。
遺体の数は多かったが、18人全てがナイルナット及び周辺の村出身だという事で連れて帰る事になった。身体がバラされた遺体を含めた8体を運んで帰り、残り10体はサチカーラが〈フィクスィティ〉を使用し、固定した。……何のためかを尋ねたが、直ぐに判るという。
「あの、サクリウスさん。本当に逃がして良かったのですか?」
ミッコイーヴァからの問い。当然モノセロスの事だと直ぐに判った。
「もちろん。モノセロスの価値は知っているけれど、今の俺達には必要ない」
……一瞬、求めた力はモノセロスかもしれないと思ったけれど、彼等の敵意から違うと判断して逃がす事を決断した。
森を出るまでにも魔獣等に絡まれたけれど、レベル9の連中に率先して狩らせて、安全にナイルナットへ戻ってくることができた。
「サクリ君。ちょっと手伝って」
みんなに遺体を運んで貰って、町の外に残った俺とサチカーラ。彼女は適当に石を固定した。
「これで全11枠全部固定したんだけどね……こうすると……」
一瞬で石が遺体の1つに代わった。
「は?」
「固定した石とさっき固定した遺体の1つと位置を入れ替えたの……内緒ね」
……いや、内緒って……。
全ての遺体をサチカーラのスキルで移動したモノを〈サイコキネシス〉で運び、ミユルシアに埋葬し弔って貰う。……こうして、俺達の受けた依頼は無事に完了した。
「あの、サクリウスさん。ちょっと良いですか?」
ミッコイーヴァから報酬を貰って撤収しようと思ったタイミングでカナエアリィに呼び止められた。
「えーっと?」
……多分、仲間に入れて欲しいって話かな?
「報酬、ゴールド級冒険者を雇うには少なかったですよね? 何故、モノセロスを逃がしたのですか? 価値、ご存知でしたよね?」
「俺達の依頼はモノセロス捕獲じゃないし、それに……例えば、ゴブリンに拉致されたとして、別のゴブリンが助けに来た。そのゴブリンを信じるか?」
「それ、多分横取り……」
「だよな? モノセロスもそう見えたと思う。だから逃がした。一緒に来たいと意思表示されたり、攻撃されて反撃の必要性があったりしたわけでもない」
実際、ロープのようなものを外したモノセロス2頭は何も攻撃をせずに森の奥へ消えた。
「変わった考え方ですが、とても素敵だと思います。……あたし、ソロでの活動に限界を感じていたのですが、初めて入りたいチームに会えました。……あの、入れて頂けませんか?」
……思ったより前置き長かったけれど、やっぱりチーム入りの打診になったか。
「えっ! それは困りますから!」
カナエアリィの話にミッコイーヴァが即反応した。
「カナエルは大切な毛皮の卸業者。居なくなっては安定した毛皮の仕入れも困るし、毛皮のために乱獲する冒険者の素材は買い取りたくないの……」
「どういう事?」
そう尋ねると、カナエアリィが代わりに答える。
「あたしは基本、人を襲う魔獣を間引いたり肉を食べたりするために野獣を狩るの。そして、狩った生物の毛皮をミコロンに独占で卸していたの。でも、普通の毛皮を売りに来る人はお金になるから売りに来る。当然、高級品ばかりになるから……」
……あ~、なるほど……高級素材ばかりで必要な素材が手に入らないという……。
「そういった事情で信頼できる冒険者から仕入れたいけれど……」
ミッコイーヴァが言い淀む。……そんな信用が簡単に築けるならば、クリスタークはもう少し住みやすい土地だよな。
「じゃ、じゃあ、わたしもチームに入れて欲しい。ダメ?」
ポーンブラに戻って全員の了承を得てからと説明し、旅立つ準備をするよう伝えた。
コテージに戻ってくるとミサキオレが出迎えて抱き着いてきた。……寂しかったのかと思いきや、震えていて……怖かったのだと理解した。
「大丈夫、怖くないよ」
「……」
……コイツは甘えん坊さんだなぁ。
一瞬、微笑ましくて保護欲が出てきたが、その汚れ具合に現実に返る。
「とりあえず、お風呂入ろうか?」
「……」
何も言葉を発しない。それでも、俺の行くところはトイレですら付いて来ようとする。
……まぁ、仕方ないか。
助けてくれたゴブリンに巣穴へ案内されたヒュームが、はたして安堵できるかという話。
幸い、〈女運の加護〉の影響なのか俺に対して滅茶苦茶懐いてくれて、全く離れようとしないため、風呂に入れる事も簡単だったし、洗ってあげても嫌がる様子は無かった。食事を拒否する様子も無いし、夜も眠ってくれる。ただし、離れる事を極端に怖がる。
「これは撤収だな……」
予定より滞在期間が短かったが、翌日にはポーンブラへ向けて出発した。
ポーンブラに戻って来て、数日過ごして慣れた頃には会話ができる程度にはミサキオレのメンタルは回復していた。
助かったのはヒューム族基準の食事でも美味しく食べてくれた事。それとメンタルが回復して、船内であれば俺から離れても平気になった事。ただ、まだ俺が船から出ようとすると彼女も付いて来ようとするのが少々困っていた。
ただ、彼女の完全回復を待つわけにもいかない。
「ミサキチ、俺達は今後移動する。元々暮らしていた場所から離れる事になるけれど、どうする? 残って森に帰るなら送っていくよ?」
「嫌っ! サクリと離れたくない!」
そう言って、ミサキオレはしがみ付く。
「いいの? 俺達と共に行くという事は、育ってきた森に帰れなくなる事を指す。このタイミングを逃せば、「やっぱり帰りたい」と言われても難しくなるよ?」
「ずっと傍に居る!」
そうは言うが、まだミサキオレは幼い。
多分、ミサキオレがクラウディの言う『力』なのだと思う。彼女が母親のようにドラゴンの姿になれるのなら、圧倒的な戦力になる事は間違いない。
だとしても、俺にそれを制御できると思えない。
ミサキオレは少なくとも精神的には幼い。幼い子というのは自分の感情を制御できない生き物だと思っている。また、出来なくても責める事はできないとも。
ただ、子供特融の癇癪からドラゴンとして暴れられたら……想像するだけで恐ろしい。
「わかった。ただ、2つ約束。船に乗っている仲間の事はちゃんと憶えてお手伝いをする事。それと、怒りに負けて竜の姿にならないこと。……約束できる?」
「……する!」
そう言って、再びギュっと俺に抱き着く。
……可愛いなぁ。なんか、マリアンジュみたいだ……何となく、重ねて見てしまう……流石に失礼だと思うから言葉にはしないけれど。
確か、竜人族は総じて一度竜の姿になったら人の姿に戻れないはずなんだ。そして、それを例外的に一時竜化という形で元に戻る事が可能なアイテムとして竜晶があったはず。
ミサキオレに対応する闇竜晶はこの前入手したけれど、それで竜化したとして、大事になってしまう事は目に見えている。だから竜の姿にはならない方が良いはず。
「わかった。約束を守る限り、ずっと一緒だ」
そう言って、彼女の髪を撫でると嬉しそうに俺を見上げた。
ボチボチ出航しようと考えていた。そんな矢先、食事時に俺へ来客があった。
「どうも、お久しぶりです」
「今日は居てくれて良かった。大事な話があるんだ」
訪ねてきたのは町長のマナティルカの父親だった。
「大事な話?」
「結論から言うと、明後日には出国するべきだと忠告に来た。もちろん、協力もする」
「……何故?」
元々考えてはいた事だけど、追い立てられるような感じで複雑な気分だった。
「サクリウスさん。最近、魔人族やオークロードを倒してないだろうか?」
「はい、倒しましたけど……?」
「その事に関して宰相が招集をするべきかと話し合っているという話を聞いた」
……おぅ、それはめんどくさい。多分発見した事より倒した事の方が問題なんだろうな。
「拘束目的……ですよね?」
「恐らく」
「わかりました。食料だけお願いして良いでしょうか? 早々に撤収します」
ミサキオレの同行決定とカナエアリィ、ミッコイーヴァをチームに加えて食料も積み込んだ事で、翌々日の早朝に俺達はポーンブラから出航した。
……ただ、当面ミサキオレは俺の部屋で世話する事も決められてしまった。
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