町の危機を救ったメグルーナをコトリスティナが誘う
……終わった……か?
一瞬口にしたらダメな一級フラグ建築を辛うじて呑み込み、思っただけだからセーフと言い聞かせる。
「凄い、サクリ君!」
「何ですか、その強さ?!」
コトリスティナとメグルーナが俺に詰め寄る。
見慣れた連中は別として、アイシアやナツキヨノも何か言っているが、神器を使った反動なのか、疲労がヤバイ。……語彙力は無いが、それくらい疲れている。気を抜けば意識を失う自信しかない。
「ありがとう、冒険者の人!」
そんな声も薄っすらと聞こえてくる。……調子の良い事だ。礼を言っただけでチャラになると思うなよ? 世話になると思っていなかった連中の故意な悪態を俺は忘れないからな?
……疲れた……早く休みたい……。
もう完全に寝る時間だし、仲間に声を掛けてコテージへ撤収しようと思って周囲を見回す。
「もう、夜も遅い。全員撤収。……それと、メグルーナさん。今日はコテージに泊まりな」
「ありがとうございます」
彼女は何処かぎこちない笑顔で俺に応える。しかし、その理由には俺も気付いていた。
周囲は町民で溢れている。ちょっとした怪我をした者はいても命に別状はない。自警団員以外の死亡者は無く、その功績に感謝はされていた。……ただし、メグルーナは除かれていた。
翌朝。アオランレイアとアイシアを連れて町長宅へ向かう。
「こんにちは、町長。改めて自己紹介するけれど、俺はゴールド級冒険者チーム“サクリウスファミリア”リーダーのサクリウス=サイファリオ。そして、こちらにいらっしゃるのは、クリスターク王女にして俺達のチームメンバーであるアイシア=M=クロノワール姫様」
本来、冒険者は普段から必要がない限り本名は言わない。それでも依頼主には冒険者カードを提示するのが礼儀なため、本名を言う。……まぁ、今回は町長にプレッシャーを与えるためだ。
「そして、こっちがチームの【秘書官】でアックアイル王国王族のアオランレイア=K=ブルーローズ。俺達3人がお伺いした理由は、今回の報酬を頂くために参りました」
今回の報酬に関しては、かなりふっかけている。……言い方が悪いので言い換えるなら、足元を見ている。……あれ? あまり変わらないか。
「報酬? いやぁ、まだ準備ができていませんので後程……」
「後程? 町に銀行あるわね? 使いを走らせたら如何?」
幼い声で圧を放つアイシア。……やっぱり連れて来て正解だった。
「返事は考えてする事をご忠告しますよ? ここはクリスターク王国。貴方は王族ではありますが、相手にしているのは魔人族を一撃で倒すゴールド級冒険者リーダーとこの国の王女様である事、よくお考えの上で発言してください」
「……わかりました。少々お待ちください」
本人ははっきり言わないが、多分俺1人だったら報酬を踏み倒した可能性がある。まぁ、予想していたからアオランレイアとアイシアを連れてきたんだけど。
流石に魔人族が何なのか知らないかもしれないとしても、昨日の戦闘を見て武力で何とかできると思わないだろう。
俺達は報酬として1.2億ナンス……霊銀貨120枚を手に入れた。
貰うモノを貰えば用は無い。
「確かに。それでは我々はこれで」
……充分な報復である。これ以上は過剰になるかな……なんて考えていた。
「クソッ! 冒険者風情が……」
「おや? わたしは1.2億ナンス支払って、お前の首を刈っても良いんだが? 自分の命を1.2億ナンスで買ったと思えば安い買い物でしょう?」
アイシアのトドメの一言で黙らせて町長の家を出る。……うん、スッキリした。
「ありがと」
「えへへ。褒めて?」
先程の圧を放っていたアイシアとは別人のように甘えてくる……改めて好かれて良かったと内心安堵する。
町長の件が解決して、今度はフォクスポワール家へ。
「サクリ君、聞いた? あのシャドウ……例の消えた遺体だったの」
「という事は、墓荒らしの犯人はフォモル?」
「そういう事になりそうです」
フォクスポワール家には先にメグルーナが来ていた。メグルーナは昨夜に関してはコテージに泊まって貰った。理由は、町民の彼女への対応に怒りを覚えたから。
「そういう訳で……チームに入るね。これから……よろしくね」
そう話す彼女は歯切れが悪く、明らかに表情が曇っていた。
ガチャと扉が開かれて、メイドに支えられた父親が入ってきた。
「私の事は気にしなくて良い。彼女と2人きりになりたいんだ……娘なら気を利かせなさい」
およそ父親らしくない台詞ではあるのだが、多分父親なりの気遣いだろう。彼女が気持ちよく出て行けるよう背中を押しているようにも見えた。
「もう、サイテー。……お父さん、行くね。長い間、お世話になりました」
「あぁ。自分の幸せを掴め。改めてサクリウス君。娘を頼みます」
「あっ、サクリ君。仲間に加わるけど、可能ならメグルーナさんも一緒に仲間に入れないかな?」
頷いたタイミングでの再度提案。……いや、実はそれ、俺も思っていた。何処に行ってもこんな不遇な扱いをされるのならばソロ活動は厳しすぎる。かと言って、スカウト枠でもないのに俺から誘う事もできず。そういう意味ではコトリスティナの提案は都合が良かったが……。
「メグルーナさん的にはどう?」
本人の気持ちが一番大事。余計なお世話は困らせるだけだからな。
「あたしがソロで活動している理由って兄……と言っても実兄ではないのですが、共に育った兄のような存在がいるんですが、彼を探す為で……」
「そういう事なら、俺達は大陸を巡るチームだから都合良いかな?」
そう提案してみたが、メグルーナの反応はあまり良い感じではなかった。
翌日の午前中にはスキアーオスクリタを出発する。
コトリスティナの父は見送りに来ないものの、家で充分な別れを惜しんで送り出された事は知っている。一方、アカネムは両親にかなり渋られていた。……まぁ、普通の親御さんなら娘の冒険者入りを喜ぶわけが無い。……結局本人の強い希望で最後は認めたようだけど。
それで、メグルーナだが最終的には条件付きで仲間に加わる事を決断した。その条件というのが、「兄に繋がる情報が入ったら、そちらの優先を許す事」。……まぁ、仕方ない。
本人も、一昨日の戦闘で興奮していて、仲間に加わりたいとは思っていてくれたようで、それでも難しいだろうと諦めていたらしい。
「忘れ物ない? ……暫く来る予定はないよ?」
……ちなみに今回入った報酬は、一昨日の戦闘と前に来たメンバーで均等に割る予定。
「辛くなったら帰っておいで。絶対無理するんじゃないよ?」
アカネムの母親が娘に向かって声を掛ける。その表情は今にも泣きそうだ。
「帰らない。大陸一周したら家に寄るよ」
アカネムの返事を合図に馬車はポーンブラへ向けて走り出す。
その際の町の人々は助けて貰った時の事なんて無かったかのように無視している。……まぁ、そういう町なのだろう……別にいいけど。
「何、あの態度……町から出ていくんだから恩義を感じているなら頭くらい下げても良いのに」
……まぁ、住民であるコトリスティナはともかく、俺達から言うのも変な話だしなぁ。
行きも狭かった馬車が更に狭くなり……馬を気の毒に思いつつスキアーオスクリタを離れた。
「みんなに話がある」
4日間掛けてポーンブラに戻ってきた。もう日が暮れて日没寸前に帰って来た事もあり、船上の客が退けてから、全員を甲板に集める。
「改めて、アカネムが正式にメンバー入りする。それと、スカウト枠でコトリスティナを入れる。あとメグルーナもコトリスティナと共に入る事になった。みんな、よろしく頼む」
チームメンバーは全員、この説明でコトリスティナがユニーク職持ちで、メグルーナが彼女のバーターである事は理解するだろう。
心配だったのはメグルーナの髪と瞳の色に嫌悪する人がいるかだったが杞憂に終わった。
夜。疲れているので寝よう……そう思っていたのに。
「こんなに……みんな転生者なの?」
驚くコトリスティナ。何故か俺の部屋にマオルクス、サキマイール、ヒカルピナ、ナオリン、シャワール、サチカーラの7人が部屋に押し掛けた形。俺に会ったのが初の転生者と言っただけあって驚いていた。
「そうそう。まずはコトリスから自己紹介ね」
「コトリスティナ=フォクスポワールです。年齢は今年18歳。天職は【幻術士】。前世の名前は夢咲胡桃。よろしくお願いします」
「「えっ、胡桃さんなの?」」
コトリスティナの自己紹介が終わると同時にサキマイールとナオリンが反応した。……まぁ、するよな。
この後、全員が自己紹介して思い出話に花が咲く。……毎回、この流れになるんかな?
「舞歌ちゃん、美鼓ちゃんも転生して仲間になっていたのね……2人とも雰囲気変わったね」
「胡桃さんは前世に似た感じ?」
髪と瞳の色以外は確かに似ているかもしれない。
「これでサクリさんの予想通り、あの事故で死んだ人が転生しているみたいですね」
「ほぼ決まりかもね」
シャワールにマオルクスも頷く。
あのバスに乗っていた者が転生するという条件だとマオルクスやヒカルピナ、シャワールが説明つかなくなる。だから、現状共通しているのが、トンネル事故で死んだ者という条件になる。……と、毎回話しているわけだが。
「でも、何故なんだろう?」
サチカーラの疑問は俺もずっと考えているが答えは出て来なかった。
「さぁな。多分それこそ女神ナンス様のみぞ知るって話だし、今の情報量で結論はでないかな。むしろ俺は、この条件で転生者が現れているなら、杏珠と花蓮も転生している可能性の方が気になってる」
「確かにしているかも」
「え? 誰?!」
コトリスティナは同意したが、知らぬヒカルピナが早速騒ぐ。
「妹と妹分。……さて、そろそろ寝たいから出て行って」
部屋の外で待機していたオートマタ達と入れ替わりで、みんなを強引に帰らせた。
「ふぅ……やっと帰ったか」
……まぁ、久しぶりの再会になるのだから話が弾む気持ちはとても解る。
「おつかれさまぁ」
そう言いながらダクネスは俺に抱き着いてきた。……集まっている最中、万が一にも潰されないように部屋の隅にこっそり退避させていた。
「……どうしたの?」
俺がやっと眠れるという喜びには程遠い表情だったのかもしれない。
「実は、今回は消化不良なんだよね。1番のポイントは魔人族が何故町に出現したのか? 他にもアカネムを王都に行かせなかった理由とか、臆病なゴブリンが町を狙った理由とか?」
……これ、全部繋がっているかもしれないんだけど……きっと気のせいに違いない。
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