墓荒らしの正体に怯む町と挑むメグルーナとの共闘!
滞在して4日が過ぎた。しかし、新たな墓荒らしは発生していない。
経験値稼ぎは継続して貰い、トモリルはユールオリンデの補助として同行して貰っている。
クリスタークに滞在している間、普段亜人種は全員ヒューム族の姿に変身している。それは、亜人種への偏見や差別に対応するための手段だった。だが、ヒューム族姿ではスキルや魔法が使えない。ステータスだけ成長した【学鍛童】のようなもの。
だが、それでは戦闘ができない。よって、国境を越えた時点で変身を解除するのだが、ユールオリンデに関しては足が無いので、トモリルの空属性魔法で浮遊させ運んで貰っている。逆を言えばトモリルが居ないと変身を解いた時点で動くのが大変になってしまう。
一方、町に残っている俺、アカネム、エルミスリーとコトリスティナ、メグルーナの5人で無駄かもしれない調査を行っていた。
無駄な可能性が高い理由として、墓荒らしが発生して日数が経過し過ぎている。既に自警団の人が調べていて証拠が手に入っていない。……まぁ、こういった場合は自警団がポンコツの疑いもあるんだけど、前世の時のような科学捜査ではない以上、ただの自警団にそこまでの捜査能力がないのが平均的とも言えた。……もちろん例外もあるけれど。
「……ん?」
「また?」
俺達の事を監視するような複数の視線。それに気付いて視線を合わせようとすると、フイッと視線を逸らして何処かへ行ってしまう。
それらは他の連中も気付いていて、好意的な視線に思えないからこそ不快なのだが、断定はよくないし、冒険者が町中をウロウロしているのが気分良くないという気持ちも判る。
「仕方ないとも言えるからな。余所者が武装して町で聞き込みしている。ましてや、最近墓荒らし等不安な事件が起きている。……不安を感じないわけがない」
「まぁ、そうかもしれないけれどね」
エルミスリーは理屈が理解できても感情的には納得できないようだった。
……幸いなのは、コトリスティナの協力で自警団には捜査する事を許可されている事だった。
「逃げろ! 化け物が出たぞ!!」
その日は満月の夜だった。時間は19時過ぎ。夕飯を食べ終えたばかりだった。
ガタッと勢いよく全員が席を立つ。
「待って」
今にも外へ出ようとするメンバーを引き留めた。
「何故ですか?」
「今出ていくとタダ働きになる。……まずは自警団の仕事を拝見する」
自分でも割とひとでなしな事を言っている自覚はある。だが、元々俺達は正義の味方として活動せずに基本的には依頼を受けて解決する仲間第一のチームとして活動していた。
今回に関しては普段であれば自分達にとっても都合が悪いので、無償で協力する事も構わないと判断していた。だが、今回はダメだ。非協力的な町の住民、都合よく利用しようとする姿勢。そっちがそういう態度であれば、こちらにも考えがある。……子供っぽい? 知るか。
「サクリさん、敵は魔人族のシャドウ6体です。流石にまずいのでは?」
多分〈アナライズ〉をしたのだろう。アオランレイアが俺に報告してくれる。
「相手は魔人族か……これは大変だな……」
「そんな他人事な……」
「実際他人事ではある。……他のオークやゴブリン程度なら「大変だね~」で済ますつもりだったけど、魔人族か……仕方ない。みんな、もう少しだけ待機。アオッチは来て」
アオランレイアを連れて外へ出ると、やはりパニックになっていた。
「やぁ、町長。大変ですね」
「頼む、助けてくれ!」
町長宅へ向かうと想定内の反応。……普段なら言われるまでもないんだけどね。
「それは正式な依頼ですか? 俺はゴールド級冒険者チーム“サクリウスファミリア”のサクリウス。魔人族討伐依頼は相場で1人2000万ナンスですが、何人雇いますか?」
「!!」
そう言いながらゴールド級の冒険者カードを見せる。……まぁ、無茶振りである。
ちなみに同世代のシャドウ級を雇うなら1人2万ナンス。町長への無茶振りだが、王族ならば支払えるだろう。
「わかった、6人雇う。助けてくれ!」
「了解した。アオッチ、契約の書類作成頼む。俺は仲間に声をかけてくる」
当然、馬鹿正直に6人で戦うわけがなく。……町長に仕返しができて満足していた。
魔人族シャドウはアンデッドのような魔人族だとアオランレイアが説明していた。
シャドウの元に駆け付けたが何もしていなかった。立っているだけ。近づいても攻撃される事は無かった。……何故?
そんなんでも魔人族。不意打ちの初手一撃では絶対倒せない。……あっ、神器を使えば一撃で倒せるかもしれないが、直ぐにガス欠する自信しかない。
一応、アカネムとエルミスリー、ヨシノノアとユールオリンデを除き、全員が出撃する。各個対応指示して分かれた後、途中でメグルーナと合流し、俺はアオランレイアとメグルーナの3人でシャドウと対峙したのだが。
「さて、どうするか」
周囲には自警団員と思われる人が倒れている。様子を見るに死んでいる可能性が高い。
「動いていないなら、周りを運ぶのが先かも」
周り……生存可能性が0ではない倒れている人達。……まぁ、そこからだな。
一応警戒しつつ、運んでいく。持った感じでは死んでいるとは思うけど、放置するわけにいかない。
「これで良いかな。絶対一撃では終わらないから……ちなみに弱点は判った?」
「光と火ですね」
「なら……来てくれ、ルーチェ」
呼ぶと宙に魔法陣が描かれ、そこからルーチェが飛び出してくる。
「なるべく強力な単体攻撃を」
「はい、サクリ様。……《光精の蹴撃》!」
光属性の近距離単体攻撃魔法。その一撃は剣というより斧のような一撃。結構なダメージを与えたとは思うが、相手のリアクションが無いので判らない。ただ、新たに骨を召喚した。
「新たにボーンファイター出現。……他のシャドウも召喚したようです」
見た目スケルトン。アンデッドと間違われ易いが実は魔法生物らしい。
ボーンファイターはシャドウとは違い、俺達を無視して速攻で町の中央へ向けて走り始めた。
「メグルーナさん。ここは良いから……あのボーンファイターの討伐を任せて良い?」
「わかりました。……来て、スケルトンナイト“アリス”!」
メグルーナの影から出現するスケルトンナイト。こっちは正真正銘アンデッド。
「目標はボーンファイター」
スケルトンナイトは返事をする事なく追いかける。素早い動きのスケルトンナイトはボーンファイターに追いついて攻撃を仕掛ける。
攻撃を当てた事でボーンファイターも止まり、スケルトンナイトに相対した。
「アリス、〈エボリューション〉!」
スケルトンだった身体に肉が付いて行く。
「行って! ゾンビナイト“アリス”」
……えっ? そんなスキル見た事ないんだが?
内心驚きつつも、味方なら良いと自分に言い聞かせる。多分、『竜騎幻想』には実装されていないスキルなんだろう。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
シルエットで女性と判るゾンビがゾンビと思えない程の素早さで間合いを詰め、ボーンファイターを殴る。俺の知るゾンビより明らかに強すぎる彼女は一方的にボーンファイターを殴っていく。反撃はあるものの、全てを躱して殴り続ける辺り強さに差があるのだと思う。
「サクリ様、あの……そろそろ……」
シャドウと俺の実力差は明確にあるようで……ルーチェもシャドウを気の毒そうに見ている。
「ダクネスも足止めありがとう。リキャストは大丈夫そう? やっちゃって」
「はい、サクリ様。……《光精の蹴撃》!」
リキャスト時間を充分に稼いだルーチェによる魔法の一撃でシャドウを討ち倒した。
「サクリさん、シャドウ6体の消失を確認。みんな倒し終えたようです」
「ボーンファイターは?」
「存在確認できません」
……とりあえず落ち着いたか?
「サクリさん、町の中央に1体出現。魔人族のフォモルです」
想像通りなら俺以外相手にできない。ダッシュで走ると近づく程に悲鳴が聞こえてくる。
「アリス!」
メグルーナが一言発すると、承知と言わんばかりに常識外の速度で走っていく。
俺も〈リコール〉と〈テレポート〉を駆使して置いて行く形になるが、屋根に上がっての移動は早く、フォモルの前に辿り着いたが、ゾンビナイトも既に到着していた。
町民はゾンビナイトに驚いていたが、彼女がどうやら町民を守っているようだ。
「グッジョブだ、アリス ……ルーチェ!」
「《光精の刺角》」
フォモル……見た目は真っ黒な人なのだが、避ける事なく光が貫く。……しかし、リアクションは無く、開けた風穴は直ぐに埋まった。
……効いてないか?
どうしようかと考えていた矢先、足元に神器『ユカリッサ』が転がっていた。
「サクリさん、フォモルはシャドウと見た目一緒ですが、本体は影の方です!」
“ユカリッサ”を握りながら、追いついたアオランレイアの声を聞く。
[攻撃してください]
脳内に機械のような無機質な声。毎度の案内を聞き流しながら〈テレポート〉で間合いを一瞬で詰めると、フォモルを身体、影の両方を一瞬で断ち切った。
[ユニット名:サクリウス=サイファリオの全ての情報を獲得しました。これよりユカリッサの最適化を開始いたします]
フォモル消失と共に神器“ユカリッサ”も溶けるように消える。
……今回、被害が最小限だったのはメグルーナとアリスのおかげかな。
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