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アイシア姫と再会して、正式に護衛依頼を要請される

 最近、天候に恵まれている。今日も良い天気なのは多分俺が晴れ男だから……なわけがない。何なら運気はどんどん下がっている自覚がある。多分、チームメンバーの誰かが晴れ女なのか、それともクリスターク王国が雨の降り難い気候なのか……知らんけど。


 メンバーを厳選してアフタンダークへと向かう。馬車は1台で総勢8名。ただしダクネスは数に含まない。彼女はまるでヘルメットのように後頭部にしがみつき、肩車状態になっているが、それを目視できる者が俺の他にはいない。


 御者台にはリンクルムが座る。手綱は握っているけれども形だけ。彼女なら直接指示を出すだけで問題が発生しない限り馬は道なりに進んでくれるだろう。


 あとは護衛要員であるカノエルン、ヨークォット、サオリスローゼとヒカルピナとアフタンダークの宿泊先を提供してくれるという事でサチカーラ。それと護衛対象のアカネムが荷台に乗っている。


 天職進化したサチカーラは装備を整えて、何処から見ても冒険者である。


 装備を見ていたら、視線を感じて……サチカーラと視線が合った。


「どうしたの?」


「いや、天職進化した連中が増えたからね。今後の戦略について考えていた」


「どういう事?」


「あ~、サッチンは知らん? ウルトラレア職になると、この辺だと経験値がほぼ入らないんだよ。厳密に言うとただのゴブリンとかオークという最下位種からね。で、チームを強化するために主力メンバーを入れ替えて育って貰うという訳」


「わたしは、ガンガン戦えるよ?」


「本当に?」


 サチカーラのアピールに苦笑する。


 サチカーラの天職【封監士】は本来強い。特にレベルが上がった事でパッシブスキルが増えて間違いなく強くなったし、何より現状はスキルの出し惜しみもしている。


 ……動き見てればバレバレなんだよなぁ。多分何らかの事情で力を制限しているようだけど……。


「真偽はともかく、サッチン以外のみんなも進化して特に【軽戦士】が2人も増えた。歌バフも増えて、聞き慣れない【武僧】とかも確認しないといけないし」


「そういうのはサクリ君に任せた方が良いんだよね? わたしじゃ死なせそうで……」


「それは任される」


 別に前世の永時さんが下手というわけじゃない。『竜騎幻想』は普通に死人が出る事前提のゲーム。俺の推しを1人も死なせない石橋を叩いて叩き割る程慎重なゲームスタイルが異常なだけで。


「そんなわけだから、せめて俺だけにでも本当のサッチンの能力を教えて欲しいんだけどね」


 そんな話をしている間に2泊3日の行程を経て、何事も無かったかのように目的地に着いた。




 特に問題なくアフタンダークへ入る。もちろん、道中に襲撃は存在した。でも、一方的に相手を倒す事を危険とは言わない。ヒカルピナがいる時点で馬車にダメージを与える事は高難易度なのだ。


 王都は相変わらず物騒な連中が視界に入るけれど、俺達の噂も広まってきて表立って喧嘩を売るような連中は近づいて来ない。


 ……冒険者の店で依頼を受けた時点でこうなる事は予想していたし。


 馬車のまま街へ入り、スヴァルキュリテ城敷地内の入り口前で停車する。すると一度フラクタル家まで迎えに来たアイシア専属メイドと名乗っていた人物が迎えに来ていた。


「お待ちしていました、アカネム様。それと、是非サクリウス様もアイシア様がお待ちしていますので、どうぞ城の中に」


 ……つまるところ、前回同様に他は城に入れないぞって意味ね。


「……仕方ない、行ってくるよ。みんなはサッチンの屋敷で待っていて」


 まぁ、ただの幌馬車が城の敷地内に入れて貰えただけでも特別待遇なのだと思う。……知らんけど、多分そう。


 こんな荷馬車は普通、城の裏手を通されると思うしね。


 一度来たことがある、アイシアの私室へアカネムと共に通される。てっきり応接室へ通されると思ったけど……。


「サクリウス様、またお会いできて嬉しいです。今日はどのくらい一緒に過ごせますか?」


 タックルするような勢いで彼女は抱き着いて来る。……予想済みだったので受け止める準備は万端だった。


 そして、やっぱりアカネムとメイドさんは驚き慌てる。……まぁ、デスヨネ。


「アイシア姫様。今日は俺ではなく、そちらがお招きしたお客様なのでは?」


「あっ、そうでした。……貴女がアカネム=マリーベルさん?」


「初めまして、【絵描師】のアカネムでございます」


 彼女はスカートの横を摘まんで軽く頭を下げる。


「少々来るまで待ちましたが、サクリウス様を連れてきたので不問とします。なるべく早く、わたしの肖像画を描いてほしいのです」


「畏まりました。直ぐに取り掛かりますが、宜しいでしょうか?」


「少々待ちなさい。ナツ、他のメイドに衣装を持って来るように伝えて」


 ナツと呼ばれたアイシア専属メイドさんは部屋を出ていく。


「それでサクリウス様が会いに来てくださった理由は、そこの【絵描師】の護衛ですか?」


「はい、その通りです。俺達は城までの往復の護衛ですよ」


「城までの往復ですか?」


「はい。ですので、そろそろ戻ろうかと……」


「もう少し良いじゃないですか。できたらお洒落したわたしを見て欲しいのです」


 ……これで「断る」とか言ったら、俺ヤバいのか? 無問題なのか? 微妙なライン過ぎる。


「わ、わかりました。じゃあ、衣装替えするようですので別の場所で待機しますね」


 そう言って、何とか廊下で待機させて貰う。次に呼ばれた時には綺麗に着飾られていたアイシア姫が再び俺に抱き着こうとするのをメイド達に阻止されていた。


「むぅ……如何ですか?」


「とても綺麗だと思います」


「ふふっ、ありがとう。……それではアカネムさん、お願いしますね」


 彼女は椅子に座り、アカネムは仕事を開始した。




 ……よし、今がチャンス。


「それでは……」


「サクリウス様。紹介したい人がいるの」


 ……むぅ。帰れなかったでござる。


「紹介したい人?」


「顔は何度か見ていると思うのだけど、わたし専属のメイドのナツよ」


 名前を呼ばれた瞬間、そのメイドがスッと俺に向けて軽く頭を下げた。


「改めまして。ナツキヨノ=ソレイユと申します」


 背はヒューム族平均より少し高いようだ。多分157センチくらいかな。顔の整った美少女だと思う。白い瞳に白い髪。尻まで届く髪を高い位置でポニーテールに結っていた。声は推し系統とは違うが儚げだが芯のある清楚系の声だ。


 ……多分、芯のある感じがしたのは彼女自身がしっかりしている感じだからかも。


「彼女はね、一応「専属メイド」という形式をとっているけど、実は正規のメイドじゃないの。理由は幼馴染みな親友も兼ねているから」


「幼馴染み?」


 姫様の幼馴染み……でも彼女は王族じゃないよな?


「わたしの家は商家でして。お城への出入りも特別に許可されています」


「なるほど」


「たまたま姫様と年齢が一緒という事で、姫様の遊び相手になったのが始まりでしたね」


「そうね。幼い頃は体格的にも妹扱いしていたのに……今じゃ立場逆転よ」


「姫様、動き過ぎなので……」


 アカネムに指摘されて、スッと姿勢を元に戻す。


「そうですね。今では姫様専属メイド兼ボディガード兼ツッコミ役ですね」


「わたしはボケと言いたいのかしら?」


 雰囲気から察しても親友というのは嘘では無さそうだ。


「だって、姫様。わたしがボケてもツッコミして貰えませんし……」


「え? ボケたの? いつ??」


 アイシアとナツキヨノ、本当に仲が良いのはよく伝わったので、話の続きを促す。


「それより姫様。何故ナツキヨノさんを俺に紹介したんでしょうか?」


「流石サクリウス様。とても良い質問です。実はですね、正式に冒険者チーム“サクリウスファミリア”の皆様に依頼があるからなの」


「……依頼……ですか?」


 ……そこまで俺を城から出したくないのか?


「サクリウス様。姫様の依頼は思い付きではなく、以前から考えていた事ですよ」


 俺が何を考えていたのか察していたかのようにナツキヨノがアイシアへのフォローを加えた。




「まずは話だけ伺えますか?」


 受けるにしても断るにしても、内容を知らない事には判断できない。ただ城に引き留めるだけの方便なら即終了して帰れば良いだけの話。


「知っているとは思うけれど、クリスターク王国の王族女性は成人したら原則海外の王族……可能であれば王家に嫁ぐのが基本政策なの」


 ……前にマナティルカから聞いたな。


 少なくともナッツリブア大陸には『貴族』と呼ばれる階級は存在しない。それは『竜騎幻想』内の設定資料でも一緒だった。あるのは俺達のような平民と初代国王の血を継いでいると各国で定義されている王族。そして、現在の国王とその家族である王家。


 このクリスターク王国の王家を含む王族は、他国に対して情報収集や政治的工作のために表向き人質として女性は国外に嫁がせる。


 例外は王家に嫁いだ女性だけと聞いたような?


「なので、王族に生まれた女性は幼い頃から学術、武術、礼儀作法などを厳しく躾けられるの。それはわたしも例外では無く……理想は未成年の内に……遅くとも20歳を迎える前に嫁ぐのが一般的なの。でも、それを免れる手段がある」


「免れる手段?」


「スヴァルキュリテ城の地下には『王位継承試練場』と呼ばれている遺跡があるの。その最下層まで行って、その証拠を持ち帰れば自由を保障されるの」


「証拠とは具体的に判る?」


「下に降りる程強い妖魔が徘徊しているから、その妖魔の身体の一部でも持って帰れば……」


「その妖魔って判る?」


「判らないわ。昔、一度だけ行った事があるだけだし、その時は妖魔居なかったから」


 判れば別の場所で狩ってきたモノを用意すれば良いと思ったんだけど……。それ以前に俺の知るアイシア姫様なら、そういったタイプのズルはプライドが許さないか。


「それで具体的な依頼内容は?」


「最下層まで行き、戻ってくるまでの護衛。遺跡の広さから言って、雇いたいのは2パーティ分。ただ、ちゃんとゴールド級の依頼として正規料金である1000万ナンスに連れてきた人達のレベル分を掛けた額を用意するわ」


「いや、1億2000万ナンスで良い。その代わり、道中で倒した妖魔から出た素材や魔石、道中で発見したモノの所有権を保障してほしい」


 例の証拠品と遺跡の装飾以外は了承され、俺はこの依頼を受けても良いと考えた。




「2パーティか。なぜその人数で?」


「広くないの。大勢連れて行っても逆に狭くて戦えないわ」


「そんなに?」


「武器を振うのには問題ないわ。でも、1アライアンスでも狭いの」


 ……通路幅は武器を振るのに問題なし。ただし人同士の距離を取るのが難しいくらいフロアが狭い……か。


「なるほど。でも、どちらにせよアフタンダークへは1パーティでしか来ていないから、もう1パーティ分呼びに行く事になると思うけど」


 いちいち指摘しないが、最短で片道2泊3日。多分、俺なんかよりもアイシアの方が把握しているだろうし。


「それなら、ウチの【見術官】を使うと良いわ。どうせ、この前の官職の方々と一緒なのでしょ? なら、その者と連絡とれるはずよ」


 ……仕様が判っていないけれど、そういうもん?


「お願いできるなら……あとは誰を呼ぶか……か。罠とかってあるの?」


「王族の女性が挑む遺跡よ? そんなもの既に解除済みに決まっているじゃない。小細工無しの武力のみで制圧する『力の証明』をしに行く場所なんだから」


「な、なるほど……なら……」


 ……流石に呼称で伝えるのは作法的に悪いか?


「ハルクアルマ、アオルッティ、ナオリン、ソラナディア、アイミトン、イクミタンの6名を呼んで下さい。城内に入る許可も一緒にお願いします」


「ナツ、伝えに行って貰って良い?」


「畏まりました」


 ……これで片道分の時間は稼げたけれど、それでも突入は3~4日後って感じかな?




 ナツキヨノが部屋を出る。話し声が薄っすらと聞こえる辺り、自分で言いに行くわけでなく正規の城勤めのメイドに頼むのかもしれない。


「それで……今日からの宿泊なんだけど……サクリウス様。是非、お城に……」


「大丈夫ですよ。ちゃんと部屋を用意して貰っていますから」


 ……言うと思った。


 うっかり依頼が真面目なものだったから忘れかけていたけれど、一応警戒していたから即答できたわ。


「そこをキャンセルして、特別に同じベッドに寝ても良いですよ?」


「姫様、それは俺に処刑されろと言っていますか?」


 ……はっ! うっかりツッコミしてしまった。


 しかし姫様の機嫌を損ねたかと思ったが、意外と笑って貰えたので安堵していた。

読んで頂きありがとうございました。

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何卒よろしくお願いします。

尚、5日間連続投稿2日目+本日中にあと4回投稿します!

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