経由したポーンブラで、アカネムはチーム入りを希望
翌朝、流石に太陽が昇り始めで空はまだ全体的に暗く空気が冷たい。
微妙に熟睡できなかった俺は若干ウトウトしていたが、全員を乗せて2台の馬車はポーンブラへ向けて出発していた。
「アカネムさん、納得していない感じですか?」
割と狭い馬車の荷台の中、アスカーナが尋ねていた。
「いえ、仕方ないと思っていますよ」
アカネムはそう答えていたが、そんな風には見えないんだよな。
「もう町から結構離れたかな? それなら、そろそろ大丈夫か。なら俺から少し納得するための材料を教えるよ。まず、考えるべき事は国……正確にはアイシア姫からの依頼なのに、迎えの馬車が来ない。何故?」
「それはゴブリンが……」
「国が本腰を上げれば平地のゴブリンなんて簡単に一掃できるよ」
……そう、本当にゴブリンなら。
「恐らく、もう結構な兵士が犠牲になっていると思うよ」
「えっ?」
「それと、国からの迎えは真っ直ぐにスキアーオスクリタに向かうはず。もし、邪魔をするならば、その最短ルートで待ち構えていると思わん?」
これが俺の確証が無い、引っかかっている事の1つ。
「そして、この予想が当たっていたら襲撃するメンバーはスキアーオスクリタを拠点にしていると思う。できるだけ村に引き付けて襲えば、国の気付くのが遅くなるだろ?」
「あ~……」
アカネムにとっては想定外の話だったのかもしれないが、驚き過ぎてフリーズしていた。
「まぁ、そういう訳で。アカネムさんにとってもポーンブラを経由した方が危険な目に遭わずに済むって事」
……と、ドヤ顔で説明をしてみたが確証ないから、俺の妄想だった可能性もあるんだよな。
帰り道の3泊4日も行きと同じくお世辞にも平穏で快適な旅にはならなかった。
人からの襲撃は同レベル帯でも強い上に倒しても魔石が手に入らないから正直、あまり戦いたくない。
幸い、危機的状況になる事は一切無く、現れた強盗は全てヒカルピナとミナコールの経験値になった。
「ポーンブラ、見えてきましたよ」
御者台にいるフィルミーナの声。
「予定より早く着きそうだな。だけど、やる事色々あるからポーンブラで一泊するよ」
「えー?」
露骨に不満そうな表情を俺に向けるアカネム。
「馬を休ませる必要もあるからね?」
「むぅ」
アカネムも長い馬車旅でかなり打ち解けていた。
馬車はゆっくりと進み、そしてポーンブラへと入った。
「報告する前に『天職進化の儀』をしちゃった方が無駄はないから、先に船へ帰るよ」
以前は『竜騎幻想』に出ていなかった人は進化するのか不安だったけれど……みんなが進化してしまう仕組みを聞いちゃったから、きっと全員進化するだろう。
……エルミスリー、また驚くかな? 流石に慣れたか?
「……っていうか、何か町全体が明るくない?」
もちろん、日差しの話では無くて町の雰囲気の話だろう。
「俺はクリスターク王国内で一番治安が良い町だと思うよ。とは言っても、他に知っているのはアフタンダークとスキアーオスクリタだけなんだけどね」
「いいな……住みやすそう」
「そうだね」
ここで「スキアーオスクリタもこんな町になってほしいな」と思うか、「ポーンブラに引っ越ししようかな」と思うかで印象は変わるんだけど、彼女はどちらも言わなかった。
港で馬車が止まる。やっと帰って来た。「到着」と誰かが言う前に全員が馬車から降りた。
「船、でっか……」
「ようこそ、冒険者チーム“サクリウスファミリア”の拠点へ」
そう言ってアイナッツとミハーナルがアカネムの手を引く。
甲板に行って再び彼女は驚く事になるのだが、案内は2人に任せる事にした。
「あのぉ、エルミさん。少々お仕事お願いしたいのですが……」
出迎えに来てくれていたエルミスリーにお仕事を依頼する。
「……はいはい、経験値稼ぎが主だった事は聞いているし……って、何なの?」
……多分、〈アナライズ〉したんだろうな……。
「何なのって?」
「ほぼ全員がレベルクラウンになっているじゃない?」
「そりゃ、内陸側に行ったから」
SRPGというよりはMMORPGのようなレベリングを行ったのだから、アホみたいに経験値は稼げたわけで。
「……それで、明日までには再度出発予定で……」
「……わかったわよ! やってやるわ!!」
何故か半ギレで準備に向かう。きっと船室の空き部屋を利用してやるのだろう。レベルクラウンの連中もぞろぞろとエルミスリーの下へと向かい、一息休憩を入れていた。
10分もしない内に1人目が帰って来た。
「サクリさん、【ハイドワーフ】になれました」
そう言ったのは当然ユミリア。加護がない状態でハイオークを倒したのは大きかったかな。ただ、『竜騎幻想』に亜人種のユニットは存在しないから、スキル関連がどうなっているかは詳しく知らないんだよな。
「サクリさん、何か【獣騎手】っていうのになりました」
「おおぅ、おめでとう」
まだ成人したばかりのフィルミーナも、もうスーパーレア職をゲットできた。【獣騎手】というのは、中型以上の動物や魔獣に乗って戦う事ができる天職。
「……つ、疲れた……まだ半分も終わらないよ……」
フィルミーナ以降も天職進化の報告を全員がしてくれる中、エルミスリーは消耗し過ぎて疲労困憊に見えた。
休憩を挟みながら、『天職進化の儀』を続けていく。マナティルカは【野伏】、サヤカレットは【付与術士】、カロラインは【神官】、アスカーナは【退魔士】、カナージャは【精霊術士】、ルイ―リスとアヤカシアは【軽戦士】、アヤメルディは【武僧】、アイナッツとミハーナルは【詩人】、ミューディアは【怪盗】、カナディアラは【豊緑騎士】、ユッカンヒルデは【人形術士】、ユキサーラは【舞踏士】へと進化した。
そんな報告を合間に聞きつつ、俺はというとアイナッツとミハーナルの『天職進化の儀』への呼び出しの代役としてアカネムの甲板案内を引き受け、そのまま終わっても案内に付き合う形となってしまった。
「わぁ、これも貴女が作ったんですか?」
「もちろん。材料はみんなに調達して貰っているけど、船で売られているモノは全部あたし達で作っているよ」
アカネムの問いにユミウルカが答える。
ユミウルカの天職【魔工師】は割と早くレベル9に至っているが、そこまで戦闘で上げてしまったので現在は魔道具製作で経験値を稼いでいるところだが、やっぱり難しいらしい。
「こんなのクリスタークでは見た事無いよ……あっ、少なくとも王都には無いね」
多分、クリスタークの街や町を全て見たわけではないのだろう。……気持ちは伝わる。
「クリスタークの職人さんは特殊だと思うよ? 環境的にとても高難易度だから」
ユミウルカの言葉に思わず同意する。今まで見て来た国で一番町や街へ移動する事が難しいからな。材料調達も不便すぎるだろう。製品発展の最低条件に流通の良さって絶対入っていると思うし。
「2人とも、そろそろ船内……客室と風呂場とトイレの案内をそろそろしてあげて」
俺が許可した事でアイナッツとミハーナルは下へと降りて行った。
日が沈みかけると甲板が賑やかになっていく。それは、ウチの一番人気の店であるマユシェの料理に住人が群がるからだ。やはり、船が停泊している期間限定なので、最初の閑散とした状況が嘘のように混雑していた。
「牛肉のワイン煮、あがったよ!」
「かしこまっ! ミニピザ、ハリケーンピザ、盾ピザの注文入りました」
元々あったメニューは普通なのに、ピザだけ独特の商品名だ……なんて思いながら、ヒミカンヒルデがウェイトレスをしている。彼女だけでなく、未成年組はウェイトレスをしている。この時間帯はいくら人手があっても足りない状態だしな。
「凄い、大盛況ですね」
「だね」
少し離れた場所でアカネムと店の様子を眺めていた。みんな忙しくて手が空いている俺が彼女の相手をしていた。
「いいな、好きな事できて……。わたし、本当は風景画を描きたいんですよ。でも、現実は厳しいですよね。無名の【絵描師】では風景画は売れないし、仕事の依頼は肖像画ばかり。……仕方ないんですけどね。【絵描師】の存在が貴重だしね」
絵描きは【再現師】が多い中、王族の肖像画だけは数少ない【絵描師】が描くのが常識。
「ノーマル職で大陸を巡る旅をできるのは羨ましい」
「言っておくけど、ノーマル職のメンバーだって好きな事だけしているわけじゃないよ? どちらかというと好きな事のために他も全力で頑張ってくれている系の人達だから」
入りたいと言われた時に釘刺しているからな。好きな事だけするなら冒険者をする意味がないんだよね。冒険者という職業なだけで自分の命を賭けるわけだから。
「それもそうだよね。うん……あのさ、わたしも入って良いかな?」
「何のために?」
「大陸の風景を絵に収めるため。もちろん、天職によるサポートのない事も頑張るよ」
……多分、〈女運の加護〉の影響だろう。彼女が冒険者になる理由は無いと思うし。しかし、残念ながら仲間達からは歓迎され、依頼達成し報酬支払い完了後に仲間に加わる事が決まった。
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