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新人【魔工師】ユミウルカの『プラムリア魔工房』

 ナッツリブア冒険者支援組合を出た後、位置的に冒険者の店へ向かうより近くにマリーさん紹介店一覧にあった魔道具工房があると気づいて、北の広場へと向かっていた。


 ブライタニアの端。東西南北に存在する門の近くにはキャンプができる広場があり、宿代が厳しい冒険者や大所帯すぎて宿を取れなかった冒険者、荷物の多い商団とか、いろいろな事情を抱えた人達が各々テントを張って滞在期間を生活している。


「……多分、この辺」


「名前、何ですか?」


「『ブラムリア魔工房』って名前らしい」


 サティシヤに答えつつ、似たようなテントを探す。多分、数はそれほど無いので直ぐに見つかるはず。


「あっ……サクリさん、アレでは?」


「おっ!」


 テントにしてはサイズが大きい。長期間滞在しているのか、テントの周りには生活感が滲み出ていた。樽が2つ並べられており、そこに看板が置かれていた。


「……間違いない、ここだな」


 看板に書かれている店名を確認すると、開けっ放しとなったテントの入り口を覗いてみる。


「真っ暗ですね」


「……2人とも?」


 中に人がいるか判断できず、クレンが呼ぶので諦めて振り向くと女の子が立っていた。


「もしかして、直販希望のお客さん?」


「あっ」


 背後から声を掛けられてサティシヤがビクッとする。


「マリーさんから紹介されて、魔石の買取りをしてくれると……」


「売ってくれるの?」


 その反応はどうやら、ここの人のようだ。


「うん。できれば、今日だけでなく常時買取りしてくれると助かるなと思って」


「助かるぅ。仕入れはいつも苦労しているから。とりあえず中に……ちょっと狭いけど」


「「「お邪魔します」」」


 彼女に勧められるまま、4人してテントに入ると入り口をしっかり閉じられた。




 テントの中はまさに工房だった。テントなのに数多くの収納があり、加工用の工具類も視界に入る。その中に完成品と思われる商品もいくつかあることに気づいて、それで「直販希望」と聞かれた訳か。


「あたしは【魔工師】のユミウルカよ」


 彼女はそう言って自身の冒険者カードを提示する。アイアン級でレベル1。つまり、まだなったばかり……もしくは、スキルを使った仕事をしていない可能性……か。


 サティシヤと同じくらい長い、股上まである淡い紫色の髪、そして灰色の瞳。背は160センチと冒険者女性の平均サイズ。何となく雰囲気的に猫をイメージさせる容姿をしていた。


「サクリウスです」


 俺も作りたての冒険者カードを提示し、彼女に確認して貰う。


「クレンです」


「サティシヤです」


 俺と違い、2人は冒険者カードを見せない。……何故?


「丁寧にありがとう。でも、何故マリーさんが貴方達をあたしに紹介したのか意味がわかったわ。3人ともまだ冒険者になったばかり?」


「そう」


 ……これはアレだ。交渉を全部俺にさせるつもりってことか。まぁ、俺が売るのだから当然なんだけどさ。


「見ての通り、あたしもなって間もない新人【魔工師】。商売経験も少ないし、買取りだって高額買取りは無理よ?」


「いいよ。いつまでも誠実に取引して貰えるなら。マリーさんが紹介してくれた人だし、俺は信じるよ」


 多分、ナッツリブア冒険者支援組合に行く前に来ていたら内心ガッカリしていたかもしれない。しかし、冒険者の階級について話を聞いた後だと同等の力量である必要があるのだと考えさせられたばかりだ。


 ……多分、一緒に成長するつもりでいた方が良い。『竜騎幻想』にはいなかったキャラだったし、魔道具の製作者が出てくることなんて無かった。この人ならメインシナリオだけでなくサブシナリオでも絡むことはないはずだ。


「いいの? それなら、品を見せて?」


 いきなり全部換金してお金を多く持ち歩くことに不安を感じたので、とりあえず1つ出してみる。


「魔石ね。……これなら100ナンスかな」


「1つ100ナンス……じゃあ、あと99個で100個売却を……」


 俺がそう言うと彼女は驚きつつも、全てを買い取ってくれた。




「随分沢山ね。……これだけ戦闘ができるなら、正式に依頼があるのだけど、やる?」


「……やりたいけど、今日は動けないかな。明日以降であれば」


 そう答えると、彼女は俺に右手を差し出す。もちろん、その手をとってしっかりと握手する。


「成立ね。内容はレベル1でも問題ないわ。街の近くに天然の洞窟があるの。そこに霊石を取りに行くの。その間の護衛をお願いしたいの」


「霊石?」


 隣で黙って聞いていたサティシヤが思わず話に入る。黙っていられなくなったのかな?


「霊石は、魔石からの魔力を吸収して各種エネルギーに変換して放出する効果があるの。例えば、魔光ランプは光霊石から光を発しているようにね」


 魔石は魔獣や妖魔の核であり、倒せば体内に残っている物なのだが、霊石は鉱石の一種で、洞窟で採掘するしか入手できない。……もちろん、購入するという手もあるけども。


「そうなんですね」


「じゃあ、明日の朝出発?」


「ううん。出発は明後日でお願いできる?」


 彼女の要望を了承する。それはこちらも助かるんだよね。挨拶回りは終わらせておきたいし。


「あの、ボクから聞いても良い?」


「何でしょう?」


 クレンも黙って話を聞いていたのだが、質問したのは俺が独断で依頼を受けたからか?


「護衛なら、命の危険性が多少なりともあるということ。ボク達で良いの?」


「えぇ、大丈夫。わたしでも対応できるくらい弱いし、ただ魔獣達を警戒していると採掘速度が落ちてしまうから、効率のためね」


「なるほど。じゃあ、それを何故面識もないボク達に依頼しようと決めたの?」


 ……あ~、それは思った。マリーさんの紹介だからとはいえ、簡単に1万ナンスを支払えるくらいなのだから、他に顧客がいると思う。適任の護衛がいるのではと考えるのが普通か。


「まぁ、マリーさんの紹介だからというのは大きいけれど。でも、一番の決め手は同レベル帯だからかな。あたしの客は失敗品目当ての高レベル帯で、格安で使い捨て扱いの魔道具を買っていくの。……ほら、高レベル帯って所持品全ロスとかも普通にあるらしいから。でも、素材集めは大変でね。素材収集を付き合ってくれそうな冒険者と仲良くなりたいっていうのが本音」


 素材集め用の冒険者の依頼というのは報酬が安すぎて敬遠されがちなのだという。




「なるほど。それで報酬は?」


 あっ、そうか……ついゲーム感覚で承諾しちゃったけど、報酬の交渉をしてなかったわ。


「報酬の相場はレベルの合計に階級貨幣額と100を掛けるから、正規通り3000ナンスを最低報酬として……あ、他に仲間が増えたなら、その分も払うからね。あとは討伐した魔物の素材を買い取る形でどう?」


「無難かな。みんなもそれで良い?」


 クレンの交渉に文句無し。むしろ、代わりに交渉させて申し訳ない。


 俺とサティシヤが頷くのを確認すると、クレンはユミウルカに再び顔を向ける。


「それじゃ、改めて交渉成立だね」


「悪い、クレン。値段交渉抜けてた」


「いいよ。それがボクの役割だし」


 ついゲームだとクエスト受けて報酬は貰った後で知るパターンばかりだからなぁ。今後は気を付けないと。


「霊石、売る?」


 大した量が必要でないなら、売っても良いとは思ったが……。


「え? 霊石まで持っているの? そりゃ売って欲しいのは山々なんだけど、生憎買い取る所持金が心許なくて。だから、それはあたしの懐具合が暖かい時にでも売ってほしいな」


「わかった」


 そう答えると、クレンもサティシヤもビックリしていた。


「ちょっ、いつの間に?」


「え? ずっと袋に入れて預けてあっただろ?」


「いちいち見ないよ、サクリの預かり物」


 そんな俺達のやり取りを聞いて、ユミウルカは面白そうに笑いだす。


「……本当に仲良しなのね。羨ましい。あたしとも仲良くしてね」


 どうやら彼女からの印象は良かったようで、何とか信頼関係を築けそうだ。




「そういえば、失敗品が売れているようだけど、どんなのがあるの?」


「うーん、あまり見せられるようなモノでもないんだけど。例えば、コレ」


 そう言って見せてくれたのは、口と鼻を覆うマスクのような物。


「これ、水中呼吸用の魔道具なんだけど、失敗品で魔石の消耗速度が速いの。長い距離を使用すると、途中で効果が切れる可能性もあって……」


 ……おおう。深海で切れたら即死じゃん……。


「だから、成功品より安く販売しているの。これでも短い距離なら問題ないわけで」


「ちなみにいくら?」


「成功品は5万ナンス。失敗品は5千ナンスだよ」


 確かに、それを人数分となると安く上げたい冒険者もいるか。


「あの、このイヤリングは?」


 サティシヤがお洒落なデザインで銀材に桜色の石が埋め込まれたイヤリングを見つけた。


「あ~、それは……つけて見ると良いよ」


「いいの?」


 サティシヤが試着してみると、身体が縮んで幼くなってしまった。


「名前は無いけど、若見せのイヤリング。趣味で作った実験品だから売り物じゃないけどね」


 イヤリングを外すと、元の大きさに戻る。


「この淡いピンク色の石が霊石なんだけど、思ったのと違う効果になっちゃって」


 そう言って、彼女はそのイヤリングを元の位置に戻す。


「ねぇ、これは仕事抜きで好奇心から聞くんだけど、サクリさんって魔石や霊石って何処で集めたの?」


「あ~、『天職進化の儀』を受ける前に冒険者になりたくて、レア職が賜れるように必死に修行した際の戦利品なんだ。ちょっと現金が貯め難い環境だったから、素材を売却して最初は生活費にしようと思ってて」


「なるほどね。レベル1だけど既に戦い慣れているのね。……決めた。あたしの名前、名義貸ししてあげる。そうすれば、早くカッパー級になれるでしょ? だから、素材集めの協力はよろしくね。もちろん、報酬はちゃんと払うから」


 とりあえず返事は保留。後程3人で話し合って決めようとは思う。……しかし、何故だろう? 妙に俺の女難感知が注意しろって促しているような気がするんだよなぁ。

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